報告・放射能のまちを訪ねて②
チェルノブイリ原子力発電所は、1号炉から4号炉の4つが稼動していた。
さらに5号炉、6号炉を建設中で、世界最大規模の原子力発電所となるはずであった。
あの事故が起こらなければ。
4号炉で爆発事故があった後も、ほかの炉では発電を行っていた。
被害の大きさに、すべての炉で運転は停止された。
ドニエプル川の支流プリピャチ川とつながる人工の川は、炉の冷却水に利用されていた。
富士山みたいな形の建物は炉心の温度を下げるための冷却塔だ。
あたり一帯が文明の墓場のようである。
現在も放射能の管理のためと、4号炉にドームをかぶせる工事のため、4000人の労働者がここで働いているという。
彼らは、2週間働き、2週間リフレッシュが与えられる。その間は、ほかの土地で働くこともできる。
しかも、サラリーがいい。
好条件のために、働く人たちはいる。
チェルノブイリ原発跡地から5キロほど離れたところにあるコルホーズは、廃屋になった姿をさらしている。
5キロ圏内では、かつて家屋が建っていたが、壊して土のなかに埋められた。
いまは、夏枯れの草むらになっている。
ガイガーカウンターで確認すると、6マイクロシーベルトが検出された。
林の奥に入ると、さらに汚染はひどくなるという。
これ以上は入らないほうがいいと言われた。
放射能汚染を示す、黄色いマークが点在している。侵入禁止という意味だ。
炉心溶解事故から24年たっても、放射能は飛散し続けている。
なかなか完璧な解決法は見つからない。
放射性ヨウ素を体内に取り込んだことが原因で、4500人の小児甲状腺がんが発生した。
内訳は、ベラルーシが2500人、ロシア共和国とウクライナ共和国で2300人。
これはWHOでも認めている子どもたちの健康被害である。
小児甲状腺がんの発生のピークは終わったとはいえ、あらたに25~35歳の成人型の甲状腺がんが多発しはじめている。
危機は続いているのだ。
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