秋の味覚じごぼう
今年は、じごぼうが不作だという。
夏の猛暑の影響だろう。
前の家のおじさんが、もう4回も山に入ったけれど、1本も採れないとこぼしていた。
じごぼうとは、信州ではなじみの深い地のきのこ。
唐松の林に生えている。
緩和ケア病棟に入院していたあるおじいちゃんが、しみじみと言った。
「じごぼうが食べてえなあ」
それを聞いた当時の看護師長が、季節外れの山に入って、じごぼうを見つけてきた。
おじいちゃんは、そのじごぼうをうれしそうに味わった。
その後、おじいちゃんは亡くなった。
翌年、またじごぼうの季節が巡ってきた。
今度は、おじいちゃんのご家族が、じごぼうを山で採ってきて、緩和ケア病棟に届けてくれた。
患者さんたちみんなでいただいた。
流通の場になかなか出てこないじごぼう。
だれかが山から採ってきて、みんなに届けてくれる。
じごぼうの向こうには、自然が見える。
そこで暮らす人の姿も見える。
信州の人にとって、故郷の温もりを感じさせてくれる特別な食べ物なのだ。
その貴重なじごぼうが、今年もぼくのところに届いた。
味噌汁にするとおいしい。
お湯でさっとゆがき、大根おろしと和えてもいい。
今日は、とっておきの秋の味覚が楽しみだ。
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