ウエットな資本主義③
大阪大学社会学研究所長の小野善康さんが、10月から内閣府参与になった。
ケインズやサミュエルソンによるあたたかな経済・大きな政府と、シカゴ派のフリードマンの競争重視の市場経済の両方の悪いところを否定している。
両方に与さないところが、ちょっとおもしろい。
今は小さな政府にするのは得策ではない、と彼は考えているようだ。
お金は、ただばらまいてはけない。
雇用というものを通して、お金をばらまかなきゃいけないというのが彼の考えのようである。
彼は、年収350万円くらいの仕事を160万人に与えることができるという。
彼の主張は、ぼくの言うウエットな資本主義の国家の下半身をあたためることに似ている。
子育て、教育、医療、福祉といった国家の下半身をあたためることで、経済が動き出す。
この分野に雇用をつくりだせばいいのである。
たとえば、医療ではいくらでも人手は要る。
ぼくが病院の外来をするときには、2人のアシスタントがついている。
日本の病院の医師は、世界屈指の忙しさだ。
医師に1人にクラークがつき、医師の指示のもとにカルテの記録や各種の書類を作成するようにすれば、医師は患者を診ることに専念しながら、医療現場でも雇用が生み出せる。
もちろんこの制度はすすめられているが、経営的に数人程度しか雇えない。
もっと大胆に増員すれば、病院の空気は変わるだろう。
看護師10人に1人のクラークをつけるのもいい。
介護の分野では、まだまだ人を増やすことがである。
24時間体制の在宅介護が可能なれば、施設をつくらなくてもすむ。
子育てでは、1歳までは有給で休め、それ以降は職場に復帰して、安心して働けるようにする。
教育現場には、1学年に1人あたり、心理療法的サポートができるスタッフを置く。
子どもたちの精神的な問題や教職員のメンタルヘルス、保護者たちの心理的サポートなどをするのもいい。
そうすることによって160万人の雇用を創出できれば、失業率5.2%は2.8%に改善する。
完全失業者数も350万人から190万人に減る。
これだけでもまず、この国を覆っている暗い気分が変わるだろう。
内需の拡大も起こる。
なかなかおもしろい考えである。
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