« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

2010年11月

2010年11月30日 (火)

秋の飛騨高山(上)

先日、講演のため飛騨高山を訪ねた。
茅野から上高地の横を通り、高山へと向かった。
紅葉まっさりだったが、今年の紅葉はいまひとつだ。

講演は、1300人の会場はあふれて、たくさんの立ち見が出た。
せっかく高山に来たのだから、高山ラーメンはお約束。
甚五郎らーめんに立ち寄った。
溜まりしょうゆのスープは、ちょっと濃い味で昔風。
細めんは、鎌田好みだ。

101113image706_2

かつて高山はとても寒かった。
すぐにお客にラーメンを出せるように、50秒くらいでゆであがるよう、細めんなのだという。
ラーメンも、その土地の風土や文化を映しこんだ立派な郷土料理なのだ。

101112image705

    ↑えごまの串団子をほうばる鎌田。

|

2010年11月29日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(57)

「白いリボン」

フランスで映画をつくってきた鬼才ミヒャエル・ハネケ監督が、母国語のドイツ語で、モノクロの映画をつくった。

美しい静かな村で、第一次世界大戦の前夜、奇妙な事件が次々起こる。
ドクターの落馬事故、小作人の転落死、男爵家の火事、子どもの失踪・・・。
タイトルの「白いリボン」とは、少年少女が何か間違いをしたときに腕に巻き、反省して誠実な人間になるためのしるしである。

力のある不思議な映画である。
引き込まれるようにしてみた。
しかも二回。
傑作だと思う。

2

人間の心を見事にあらわしている。
ぼくは『よくばらない』(PHP研究所)に、「まだら」という詩を書いたが、まさに人間の心のまだらさが、恐ろしいほどにあらわれている。

あたたかな心と獣の心、やさしい心と異常な心。
心を大事にしてきた牧師の家のなかで、不気味な心が成長していく。

規律と礼儀をわきまえる教育を受けた子どもたちから、ナチスが生まれいることを考えれば、子どもを育てるときには、隙間のようなものが必要なのだろう。
現在の日本のように隙間だらけで、子どもたちを放任にしてしまうのも問題であるが、子どもたちから隙間を奪い、鞭打ち続けることも問題だ。
子どもたちの心のなかの獣を暴れさせずに、やさしい心をどれだけゆっくりと育てていけるか、家庭や地域、教育のあり方が問われているところだと思う。

結局、事件は解決しないが、とても含みのある映画である。

|

2010年11月28日 (日)

久しぶりの快挙

バレーボール女子世界選手権で、日本が久しぶりに3位になった。
1978年のレニングラード大会以来である。
それまでバレーボールは日本のお家芸で、世界選手権でも6大会続けて金か銀であった。

凋落の一途をたどってきた日本のバレー。
その理由の一つを、ぼくはこう考える。
世界選手権なのに世界で持ちまわらず、異常なほど多く日本で開催されてきた。
これでは日本のバレーボールはいつになっても強くならない。
内弁慶になっているのである。
今の日本経済が内向きで、韓国や中国に負け始めているのとまったく同じスタイルである。

Img_0765

もう一つは応援のあり方だ。
会場にアイドルを入れ、アイドル目当ての若い女の子たちがコンサートのような盛り上がりをみせる。
しかも、ニッポン、チャチャチャとマイクを使って、がなりたてる。
スポーツマンシップとしては、よくないことだ。
日本で開催し、日本だけをマイクを使って応援するなんて、かつての日本人の態度ではない。
外国の敵のプレーでも、すばらしいものがあったときには、味方以上に大きな声援を送ってきたのが日本人がとってきた態度である。

Img_0751

今回は、マイクを使ってがなりたてるような扇動はみられなかった。
中国のようなおとなげない国になってはいけない。
日本は、強くて、あたたかくて、やさしい国として、凛としていてほしい。

今回の女子バレーは、勝っただけではなく、応援のあり方を含めて、少しはまともになった。
うれしいことである。

写真は、富士見のカフェ「コバ」にて

|

2010年11月27日 (土)

鎌田實の一日一冊(87)

『ゆらしぃ島のスローライフ』(金丸弘美著、学習研究社)

突然、東京から徳之島に、奥さんと子ども連れて移住する著者のノンフィクションエッセイ。

移住の理由の一つは、子どもが東京の学校で、担任の教師とうまくいかなくなったこと。
奥さんのふるさと徳之島での生活をはじめた。

徳之島は長寿の島として有名だ。
島民同士の絆が深く、助け合いの心がある。
子どもの面倒見もいいといわれている。
ゆったりしていて、凝縮した生活がある。

Photo_5

こんな島でスローライフを実践しながら、食と環境の専門家である著者は世界中を飛び回っている。
なんとも、うらやましい生活だ。

唐仁原さんの絵がとてもいい。
唐仁原さんは、ぼくの絵本『雪とパイナップル』や、『それでもやっぱりがんばらない』でもお世話になった。

|

2010年11月26日 (金)

1%はだれかのために

あしなが育英会で講演をしてきた。
ボランティアの講演だ。

交通事故や災害などで親を亡くした子どもたちが、寮生活をしながら大学で学んでいる。
講演の後、「とても感動しました」と日本語で話しかけてきた女の子は、ルワンダから来たという。親を失い、日本で勉強しているという。

ここでは、大学1、2年は、4人部屋で共同生活をしている。
親を亡くした子どもたちにもチャンスが与えられているということは、とても大事だ。

003

来月は、口蹄疫で牛をすべて失った宮崎県都農町や、長崎・ヒバクシャ医療国際協力会でボランティアの講演をする。
チェルノブイリやイラクの子どもたちの救援活動にたくさんの人のご支援をいただいているので、ぼく自身もできる範囲のところで何かをしたい。
常に「1%はだれかのために」生きようと思っている。

写真は、講演の後の記念写真

|

2010年11月25日 (木)

トーク&クリスマス・ジャズコンサート(12/22)のお知らせ

びんご・生と死を考える会20周年記念
トーク&クリスマス・ジャズコンサート

『命はすけて見えてくる』
~「がんばらない」けど「あきらめない」~

日時:2010年12月22日(水)18:00開演(17:00開場)

会場:ふくやま芸術文化ホール(リーデンローズ)大ホール

入場料:前売り券1,000円、当日券1,500円 (全席自由・定員2,000名)

出演:鎌田實、坂田明(サックス・クラリネット)、黒田京子(ピアノ)

Sakata Kuroda

詳しくはこちらをご覧ください

|

講演会(12/18)のお知らせ

「核に汚染された大地を歩いて~チェルノブイリ・カザフスタンが語り続けるもの~

平成22年12月18日(土)14:00~16:30

定員先着150名 入場無料(整理券が必要です)

東京と千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル10階

主催:長崎:ヒバクシャ医療国際協力会

14:45~「生きているってすばらしい~チェルノブイリ救援活動20年の報告~」
というタイトルで鎌田が講演をします。ご参加ください。

詳細・お申込みは、こちら

|

浜美枝さんと

浜美枝さんは、007のボンドガールで名を馳せた女優。
その浜さんのラジオ番組に出演することになった。
実に7年ぶりだ。

P1080492

楽しいトークになった。
この様子は、11/28と12/5の2週にわたって、「浜美枝のいつかあなたと」(10.30~11.0、文化放送)で放送される。

ぜひ、お聞きください。

|

2010年11月24日 (水)

凛として生きる男

宮城県の虹の園グループ「がぎゅうベーカリー」から、「味を見てください」とパンが送られてきた。

定番の食パン、そしてフランスパン生地にベーコンとチーズを練りこんだ、ベーコン・チーズ・フランス。これがめちゃくちゃおいしい。
他には、食パン生地にバターとハチミツをとかし込んだ「ボルガ」。
くるみ入りロールパン。どのパンもみごとにおいしい。

Rimg03871_3

「がぎゅうベーカリー」のパンは、日本産の小麦を使って手をかけて作られている。
作っただけあっという間に売れる。
障害者の作ったパンだから、かわいそうだから、買ってあげようというわけではなく、とにかくケタはずれにおいしので、パンは飛ぶように売れる。

虹の園では、ガラス工房も立ち上げた。
工房「美山の里」で作ったジャムも絶品。
例えば柚子ジャムは、蓋をあけた瞬間ゆずの香がわーっと漂う。ゆずがたっぷりと入っていて、実においしい。どのジャムもすべてうまい。

Dscn07071_2

おいしいピザのお店「パピハウス」では、今度はパスタマシンを全店に入れ、ピザだけでなくパスタを作るという。全障害者に3万6千円の工賃が払えるように、一歩一歩前進をしている。見事です。
応援団長をしている鎌田實としては、うれしい限りだ。

11月23日に放送されたNHKラジオ「鎌田實・命の対話」でも、虹の園の話をした。
テーマは「凛として生きる」。女性の話が多かったので、凛として生きる加藤くんの話をした。

かつて、プロ野球ロッテにドラフト1位で入団。すぐに2勝。しかしひざを負傷。その後大リーグに入団。
そんな男が、この虹の園で汗びっしょりになって仕事をしている。
かつてはバッターをびっくりさせるようなボールを投げる練習をしていた男が、障害者とキャッチボールをして、どうしたら捕りやすい球を投げられるか考えている。

加藤くんは、「凛とした生き方」をみごとにしていると思う。

虹の園へのご来店、ご注文は、ホームページを御覧下さい。
http://www.nijinosono.or.jp/

|

トーク&サイン会

『人は一瞬で変われる』(集英社)が発売されて1週間。
11月28日11~12時、長野駅の前にある平安堂長野店で、鎌田のトーク&サイン会が開かれます。
参加は無料です。
ぜひ、生の鎌田を見に、お越しください。

Photo_7

Photo_8

↑こんなチラシができました。
画像をクリックすると大きくなります。

|

2010年11月23日 (火)

いい日いい日

11月11日の「介護の日」は大忙しだった。
午前中は新宿区の講演会、午後は「がんばらない介護を考える会」のセミナーがあった。
午後のほうでは、小宮山厚生労働副大臣との対談が実現した。

101114image704

民主党はせっかく政権をとったのに、前向きな政策論争をする余裕がなくなり、批判に対する言い訳に終始していて、国民の心はちっともあたたまらない。
なんとか、小宮山副大臣から、あたたかな政策を聞こうと思った。
小宮山副大臣は、自分のお父さんが6年近く介護を必要としたため、自らの経験に沿った介護の話をしてくれた。
なかなかいい対談になった。

NHKのニュースや、日本テレビのニュースエブリィでも取り上げられた。
いい日いい日、幸せ介護の日は、だいぶ広がってきたのではないか。

写真は、諏訪中央病院の黄色く色づくイチョウ

|

2010年11月22日 (月)

子牛の名は・・・

ホルスタイン血統登録証明書のコピーが送られてきた。
子牛の名前を見てビックリ。
「MBカマタミノルジュニパー」
この子牛は、岩手県金ヶ崎町の橋本さんが、ラジオ「鎌田實 いのちの対話」を聴きながら出産に立会い、無事に生まれた。
そして、カマタミノルの名前がつけられた。

Dsc_0039

笑ってしまった。
もちろん、証明書のコピーが送られてきただけで、子牛が送られてきたわけではない。
2年後にこの牛が出産したら、その子牛には「カマタ・ミノル・イノチ」と命名したいという手紙が添えられていた。

今度、岩手県に行ったときには、カマタミノルジュニパーに会ってみたい。

「鎌田實 いのちの対話」は、11/23(9.05~、NHKラジオ第一)に放送されます。
橋本さん、また聴いていてください!

|

2010年11月21日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(56)

「うまれる」

監督は豪田トモ。

両親が不仲だった夫、虐待された経験がある妻は、親になることに戸惑っていた。
出産予定日に、おなかのなかで子どもの心音が止まり・・・若い夫婦は死産を乗り越えていこうとする。
遺伝子の異常で障害をもつ子を授かった夫婦は、その子を必死に育てている。
不妊治療の末、子どものいない人生を受け入れた夫婦もいる。
そんな妊娠、出産、育児を巡る4組の夫婦の感動的なドキュメンタリーだ。

Photo_6

つるの剛士くんがナレーションをしている。
つるのくんとは、一緒にベストファーザー賞をもらったことがある。
つるのくんは、仕事人間だったぼくと違い、正真正銘のベストファーザーだ。
だからこそ、ナレーションがあたたかい。

黒柳徹子さんと二人でつくった『ずっとやくそく』(ソフトバンク社)という本が文庫になった際、つるのくんに解説を書いてもらった。

赤ちゃんが好きな人、赤ちゃんがほしい人、ほしいけれど授からない人。
あたたかくなる映画です。ぜひ。

|

2010年11月20日 (土)

鬼鯖鮨

長崎県の五島列島は東シナ海に近く、おいしい魚が獲れるところだ。
そこで獲れた鯖を旨酢につけこんだ、生に近い鯖ずしを食べた。
その名も鬼鯖鮨。

Img_1038

Img_1042

ご飯の部分より、鯖のほうが2倍くらい厚い。
こんな鯖ずしは食べたことがない。

|

2010年11月19日 (金)

絵本のカリスマ

今週発売号の週刊ポストの連載「じたばたしない」に、内田麟太郎さんのことを書いた。
内田麟太郎さんは、絵本作家のカリスマ。
そのカリスマから、ぼくの2冊の絵本『雪とパイナップル』と『この国が好き』をほめていただいた。
詩人の内田麟太郎さんに、「文章がいい」なんていわれると、うれしくなってしまう。

内田麟太郎さんは、一つのシリーズで100万部を超えるような絵本を出し続けている。
大変な人気だ。
でも、絵本をいくつも読んでみると、その理由が納得できる。Photo_3
『おばけでんしゃ』(童心社)という絵本をいただいた。
子どもが喜ぶような明るいおばけが、西村繁男さんの絵でかかれている。
最後は、逆転ホームランのような、うっちゃりのような、とにかく見事な展開がある。
子どもも大人も楽しめる絵本だ。

週刊ポストには、内田麟太郎さんの名作についても触れた。
ぜひ、ご覧ください。

|

2010年11月18日 (木)

新刊発売

『人は一瞬で変われる』(集英社)が発売された。

『いいかげんがいい』『空気は読まない』のシリーズの第三弾。
「変わる」ということにこだわって、一冊の本を書いた。

Photo_2

白血病で99%助からないと言われ絶望した女性。
お姉さんから、「1%もあるやん」と言われ、人生が変わった。

エベレストで雪崩に遭って、全員下山という空気のなか、女性登山家は登ることを主張した。
「降りるより登るほうがリスクは少ない」
登ると決断した瞬間に、彼女の人生は変わったのだと思う。

だれの人生にも変わる一瞬がある。
意志が弱くても、がんばらなくても、行動変容できるのである。

さまざまな人たちの、人生を変えた一瞬について考えてみた。
ちょっとほろっとしたり、大笑いしたり。
生き方のヒントがいっぱいの楽しい本です。

ぜひ、お読みください。

|

2010年11月17日 (水)

各省幹部懇話会

各省幹部懇話会でレクチャーをしてきた。
「ウエットな資本主義」というタイトルで、この国をどんな国にしたらいいか、鎌田の考えを述べた。
『ウエットな資本主義』(日本経済新聞社)と『空気は読まない』(集英社)に書いた話を織り交ぜながら、強くて、あたたかくて、やさしい国日本をめざすべきと話した。

Img_0734

金融庁、財務省、総務省、外務省、防衛省、宮内庁、内閣府、会計検査院などの各省庁の局長や審議官など25人が聴きにきてくれた。

政策を提案すると、2つに1つは批判を受けるようだ。
だが、打たれても、批判されても、官僚がしっかりして、国民のための政策をつくっていく必要がある。
この10年、政治がしっかりしていないだけに、官僚がしたたかに国民のためになる政策提言をしてほしい。

いいチャンスをもらったと思っている。
ぼくだけではなく、多くの国民の声を聞いて、政策をつくるヒントにしてもらいたいと思う。

写真は、岩次郎小屋のデッキに生える木。

|

2010年11月16日 (火)

鎌田實の一日一冊(86)

『ラジオが好き!』(村上信夫著、海竜社)

村上信夫は以前、NHKの「おはよう日本」「ニュース7」などに出ていた。
ハンサムで、テレビ向きのアナウンサーと思っていたが、本人はラジオを心から愛し続けている。

Photo

その村上が、そのタイトルもずばりの『ラジオが好き!』という新しい本を書いた。
「心がつながるラジオ」とか、「感動いっぱいのラジオ」などの章がある。
「ラジオだからできること」のなかに「鎌田實 いのちの対話」のことも書かれている。

そう、村上信夫は、ぼくのパートナー。
初めて村上さんの番組に出演したとき、リスナーからべらぼうな数のファクスが寄せられた。
もういちど番組に出演したら、再びものすごい数のファクスが届いた。

100429image541

  ↑昨年4月ごろ、村上信夫のラジオ番組に出演したときのもの

村上さんの提案で、年に3回、NHK本社から三時間の生放送を行うようになった。
それがたいへん好評となり、「鎌田實 いのちの対話」は2004年から今の形の公開生放送になっていった。
全国を講演してあるくと、「ラジオ、聞いています」とたくさんの人から声を掛けられる。
ぼくにとっても、大切なラジオ番組である。

顔も声もハンサムな村上信夫の、ラジオへの熱い思いが伝わる一冊。
ぜひ、お読みください。

------------------------

今回の「鎌田實 いのちの対話」は、11/23(9.05~、NHKラジオ第一)岡山県矢掛町からお送りします。
テーマは「凛として生きる」。
ジュディ・オングさん、森下洋子さん、黒田福美さんをゲストにお招きして、お話をお聞きします。
ぜひ、番組をお聞きください。

|

2010年11月15日 (月)

冬が近づいてきた

岩次郎小屋に冬が近づいてきました。
朝日が上がるのを待つ薄い光のなかで、何ものかの気配を感じました。
雪が降っている?

いえ、まだ11月中旬。季節はずれです。
雪が降るはずがありません。

Img_0996

  ↑すっかり葉を落とした岩次郎小屋のニセアカシア

よく目を凝らして見ると、岩次郎小屋の前に立つ大きなニセアカシアの木が、一斉に葉を降らせているのです。
御柱街道沿いのニセアカシアの木も、一斉に葉を降らせていました。
命の循環が季節をつくってくれています。

『よくばらない』(PHP研究所)に書いた一文を思い出しました。

  「ぼくは丘の上の1本の木だったことがある」

こんな文章で始まる、イモムシという長い詩です。

Photo

北海道の美瑛の林を「イモムシ」と名づけて、まるで一つの生き物のように変わっていく林の季節の姿を撮り続けた写真家がいました。
前田真三さんです。

ぼくはこの前田真三さんの写真と出会ったことで、一冊の詩集を作ることになりました。
前田真三さん、前田晃さん、そして鎌田實の三人展が、来年1月まで美瑛町の拓真館で開かれています。

おそらく美瑛は、もうすっかり冬支度ができているころでしょう。

|

2010年11月14日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(55)

「リッキー」

工場で働くシングルマザーと、平凡な男が恋をして、赤ん坊ができる。
だが、その赤ん坊の背中には、翼が生えてくる。

リッキーという翼をもつ赤ちゃんのおかげで、バラバラだった母と娘、そして新しい父親が、家族の絆をつくっていく。

Ricky

監督はフロンソワ・オゾン。
「8人の女たち」「スイミング・プール」などで評判を呼んだ監督だ。

赤ちゃんが空を飛ぶという奇想天外な構想がおもしろい。

|

2010年11月13日 (土)

鎌田写真館~秋の日光

日光へ行ってきました。
「錦秋」という言葉がぴったりです。

Img_0915

Img_0874

Dsc_0075

Dsc_0078

Dsc_0110

|

2010年11月12日 (金)

沖縄の食文化

沖縄に行ってきた。

沖縄の長寿を支えているのは、豊かな食文化だと思う。
やせ地のなかで、多様な野菜を作り出している。
島豆腐は、豆腐ちゃんぶるだけでなく、たくさんの料理に使われている。
発酵させた豆腐ようは、大豆のチーズだ。

Dsc_0048

豚やヤギなどの動物も上手に食べつくす。
ミミガーという、豚の耳の料理は、コリコリしてとてもおいしかった。

1011032image700

沖縄のドクターたちと、沖縄の長寿の秘密について語り合った。
『ちょい太でだいじょうぶ』(集英社)で、長寿王国を誇ってきた沖縄が、男性の平均余命が26位に下がった「26ショック」のことを書いた。
ぼくはその原因として、野菜の消費量が少なくなったことをあげた。
沖縄のドクターにいわせると、沖縄には多様な野菜があるように見えるが、収穫量は少ない。
スーパーには本土からの野菜が並ぶが、値段が高いため、野菜の消費量が減っているのだという。

Img_0794

もう一つの原因として、魚の消費量が下がったことをあげた。
これに関しても沖縄のドクターは、魚は豊富だが、どちらかというと白身の魚が多く、煮魚に適しているものが多いという。
刺身で食べるような魚は、少し北へあがったほうがいいようだ。

Img_0797

Img_0795

野菜も、魚も、沖縄は豊富と思っていたが、実際にはハンデを抱えていることがわかった。
むしろ長寿王国沖縄の驚きは、そういうハンデを工夫で克服してきたことだと思う。

しかし、その食文化も、アメリカの食文化が入り、壊れかかっている。

写真は、ミミガー、豚の三枚肉がのる沖縄そば、もずくの天ぷら、もずくご飯

|

鎌田實の一日一冊(85)

「晩節の宝石箱」(中尾實信著、鳥影社)

自分の誤診で乳がんを見過ごし、妻を失った医師が、大学教授を辞め、老人病院に赴任する。
丘の上の老人病院を舞台に、渾身の臨床を展開する。
人生の晩節にあたり、きらきらした淡い恋心もある。

Photo_6

著者は、医師でもある。
なかなかしゃれた本だ。
医療ものの小説が好きな人にオススメ。

|

2010年11月11日 (木)

今年のチョコ缶もかわいい

JIM-NETでは、毎年チョコレート募金を行っているが、今年の新しいチョコ缶のデザインが出来上がった。
花やカタツムリ、魚など、イラクの白血病の子どもが描いてくれた絵で、とてもかわいらしい。

Dscn3366

1つ500円で、このうち400円近くが、イラクの子どもの薬代にあてられる。
子どもたちの命を救うチョコ募金は、おいしいだけじゃない。
「哲学のある」チョコレートなのだ。

Dscn3367

今年は、このかわいい缶をつくってくれる会社に12万個を発注した。
厳しい経済状況のなかで、中小企業にはありがたいと喜ばれた。
袋詰めなどは、障害者の施設にお願いすることにした。
障害をもつ人たちも、きれいな缶を扱え、しかもイラクの子どもの命を救う仕事にかかわれるのが、うれしいと言ってくれた。
みんなが、大事な仕事として、よろこんでかかわってくれている。

チョコ募金の受付は、12/1から。
クリスマスのプレゼントやお年玉、ちょっとしたお礼、そして、もちろん義理チョコにも喜ばれると思う。

今年は12万個を販売する予定。
毎年1月後半からたくさんの問い合わせが殺到し、買いたくても買えない状態になる。
ほしい方は、今年はぜひ、お早めの予約をお願いします。

予約注文については、決まり次第、JIM-NETのHPでお知らせします。

|

2010年11月10日 (水)

鎌田實の一日一冊(84)

『山の神さん』(林郁著、社会評論社)

家庭内離婚のことを、すがすがしく書いた小説である。
山の女三代と、町の女三代を書きながら、ともに家庭内離婚について語っている。

Photo_5

戦いながら、報復しない。
日本的な、すぐれた対処の仕方。
寛容といっていいのか、大人の生き方といっていいのか。
あきらめているわけではない。
戦い続けているのに報復しないという人間の上品さが、この小説にはあらわれている。
林郁さんの小説はたくさん読んできたが、この小説は新しい世界だと思う。

|

2010年11月 9日 (火)

ウエットな資本主義⑥

アフリカのモロッコで、韓国のヒュンダイの車に乗った。
韓国の車は安いだけでクオリティーが低いと思っていたが、とても乗り心地がよかった。

S101023image691

韓国では、法人税を30%から24%に下げた。
中国でも33%から25%に下げた。
日本の法人実効税率は40.9%ある。
ただし、ここは難しいところだが、社員の年金や雇用保険などの社会保険料の負担が安い。
外国の企業に来てもらうためにも、社会保険料などを上げて、法人税を下げることが大事であろう。

写真は、国会議事堂周辺のビル群

|

2010年11月 8日 (月)

鎌田實の一日一冊(83)

『物語介護保険』(大熊由紀子著、岩波書店)

2000年にスタートした介護保険制度は、どうやって出来たのか。
また、介護保険によって、命がどう守られてきたのかがわかる。

Photo_3 Photo_4

この制度をつくることに命を注いだ人たちのドラマは必読。
そのなかに、当時、国会議員で、諏訪中央病院の元院長・今田澄さんの話も出てくる。
政治の世界や霞ヶ関の官僚、そして、命がけで働いている市町村の職員など、それぞれの現場で、情熱を傾けた人たちがいたことがわかる本である。

-----------------------

ゆうゆう12月号の「生きる元気をくれる言葉の力」という特集に、発生学の恩師・三木成夫先生のことを書いた。

Photo

38億年を生き抜いてきた私たちの遺伝子には、困難を生き抜く力が組み込まれているという三木先生の言葉について、である。

よろしければ、ご覧ください。

|

2010年11月 7日 (日)

カモシカ図書館

富山県舟橋村は、日本一小さな村。
10年前1500人だった人口は増加しはじめ、現在、3.47平方キロに3051人が住んでいる。

新しい住民と古くからの住民が理解し合うために文化祭をやってきた。
その文化祭の30周年の記念講演に呼ばれ、この村を訪ねた。

101031image697

村には立派な図書館があった。
駅と一緒になっているすてきな図書館だ。
人口比率で計算すると、日本一貸出率の高い図書館だという。

2年前には、ニホンカモシカもやってきた。
本を借りに来たのかどうかはわからない。

Photo_7

カモシカ君は、自動ドアの前でうろうろしていたが、ドアが開いたので中に入った。
しばらく館内を歩き回り、本の棚も物色。
このことは全国ニュースになり、「カモシカが図書館にやってきた」と話題になった。
前足を窓枠にかけて、外を見ているカモシカの写真が残っている。
とてもかわいい写真だ。

この話は、「カモシカとしょかん」という絵本になった。
売れているらしい。

1010312image698

この図書館には、ぼくの本が9冊置かれている。
たくさんの方にぼくの本を読んでもらえて、とてもうれしい。
カモシカ君も読んでくれたかなあ。

下の写真は、富山空港で食べたかきあげそば(950円)。
白エビのかきあげ、おいしかった。

|

2010年11月 6日 (土)

鎌田實の一日一冊(82)

『がんの最後は痛くない』(大岩孝司著、文芸春秋社)

著者は、9年間で800人を看取った在宅緩和ケア医。
病院から退院するだけで、痛みが遠のく人がいると書いている。

こうした事例は、ぼくも医師として、しはしば経験している。

Photo_2

痛みには、肉体的痛みだけでなく、精神的、社会的、霊的な痛みがある。
心の痛みを取り除くことで、肉体的な痛みもコントロールできるのではないか、というのは鎌田の考え方だ。
心と体はつながっているからだ。

著者は、痛みをコントロールするには、在宅という場は適しているという。
さらに、「自立」というキーワードにもこだわる。
患者さんが自立した生活をしていると、痛みは和らぐ。
患者さん自身が自己決定していると、モルヒネが少なくてすむ場合が多いという。

「がんの終末期は痛い」と思われがちだが、ほとんどの痛みはコントロールできる。
著者が言う「七転八倒の苦しみなんてない」というのは、うなずける。

|

11/11介護の日セミナー

介護の日が近づいてきた。
今年も、「がんばらない介護生活を考える会」の介護の日セミナーが、11月11日、東京・新橋のヤクルトホールで開かれる。

Dsc_0021

講演会は13.0~16.30。
鎌田の講演のほか、介護保険の産みの親の一人岡本祐三さんとノンフィクション作家の沖藤典子さんのトーク、排泄の問題の第一人者葭田(よしだ)美知子さんのおむつの上手な使い方、選び方、秦万里子さんのコンサートなど、盛りだくさん。

会場では、全国障害者ファッション協会代表理事の鶴丸礼子さんによる服の併設展示もある。

セミナーの様子は、ニュースエブリィ(日本テレビ系)でも放送する予定。

介護の日セミナーの詳しい内容や申し込みはこちら↓

http://www.gambaranaikaigo.com/eve2010_kaigoday.htm

http://www.gambaranaikaigo.com/dl/2010_kaigosmnr.pdf

定員は先着550人。興味のある方は、お早めにお申し込みください。

|

2010年11月 5日 (金)

鎌田写真館~紅葉の水鏡

Img_0490

Img_0478

奥蓼科の御射鹿池(みしゃかいけ)は、周囲の木々を映しこむ美しい水鏡。
山の上のほうは、もう鮮やかに紅葉が始まっていた。

この写真は10月16日に撮影したもの。
今ごろは、昨年撮った写真のように、紅葉が深まっているにちがいない。

|

大竹まことは、すごい

シティボーイズミックスの「10月突然大豆のごとく」という芝居をみに、新国立劇場に行った。
芝居とコントの間のような、スピード感あふれる舞台だった。

大竹まことは、テレビやラジオで大人気であるが、それが仮の姿のようにも思えた。
「大竹さんは、これがやりたかったんだ」と、「10月突然大豆のごとく」ぼくは思った。

なんだかわからないナンセンスに、つい笑ってしまう。
こういうディープな自分をもっている人は強いと思う。
大竹まこと、かっこいいと思った。

ゴールデンラジオ(文化放送)に月一回ほど出ているが、スタジオでよく、きたろうさんとお会いする。
舞台のきたろうさんも、輝いていた。

みんな舞台が好きなんだなあ。

|

2010年11月 4日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(54)

「エリックを探して」

2006年カンヌで「麦の穂をゆらす風」で最高賞を受賞をしたイギリスの名監督ケン・ローチのコメディ映画。
主人公は、人生にことごとく失敗していく郵便局員のエリック。
苦境に立たされながら、失敗続きの人生が一瞬にして変わっていく。

Photo

サッカー界のスーパースター、エリック・カントナが本人役で登場する。
そのカントナが、ときどきエリックのイメージの世界に現れて、いろんな示唆を与える。
チャンスはどんなときにもあるとか、友だちを信頼しろとか。
なかなかおもしろい仕掛けだ。

主人公が最後に救ったのは、仲間だった。
カントナというカリスマ的なサッカーの点取り王が、思い出に残るゴールは何かと聞かれて、ゴールするためのパスだと答えた。
仲間を信じて出したパスが、思い出に残るゴールだと。

なるほどなと思った。
ケン・ローチが楽しみながら作った映画。
心をあたたかくさせてくれる作品だ。

|

2010年11月 3日 (水)

ネクタイを捨てる

季刊誌「環」で、過日、お亡くなりになった多田富雄さんの世界を特集していた。
多田さんは、世界的な免疫学者でありながら、能の台本を書いたり、詩やエッセイを書いたり、魅力的な人であった。

Dsc02394

「ネクタイを捨てよう」という多田さんの生前のエッセイはしゃれていた。
30歳代の後輩の免疫学者のことを、身なりにかまっておらず、傍若無人で、ときには臭いと書いている。
そして、「これは学問が発展する時期にはきまっていつも起こる現象だ」と述べている。
日本の若い研究者たちももう少しお行儀が悪くなって、自由に討論するほうがいいのではないかというのが、多田さんの意見だ。
ネクタイを捨てようというのは、型にはまるなということなのだろう。

ぼくは、ほとんどネクタイをしない。
しても、年に1、2回程度。
かしこまった学会の記念講演でも、しない。
先日の新聞週間に、新聞協会の関係者を前に、都内の大きなホテルで講演する機会があった。
パレスチナの臓器移植の話や、子どもが自分や家族のためにつくる弁当の日の話、なくなりかけた兵庫県の病院の小児科を、地域のお母さんたちが救う話など、たった一行の新聞記事から始まったという話をした。
そのとき、ぼくは珍しくネクタイをしていた。
多田さんのエッセイに励まされ、これからは堂々とネクタイを捨てることにする。

写真は、岩次郎小屋の庭に咲くシュウメイギク

|

2010年11月 2日 (火)

クリスマスに「食」を考える

12/25(14.0~16.0)、新宿のカタログハウス本社で「『弁当の日』からみる食の力」と題し、セミナーを開く。
講師は、42都道府県650校に広がった「弁当の日」を考案した竹下和男さんと、この活動を応援している鎌田實。
「弁当の日」を通して、子どもたちが親や食に感謝し、地域社会や農業や自然との命のつながりに関心を広げていくことで、子どもも親も、学校も地域も変わっていく。

Img_0733

欧米では、家族と過ごすことが多いクリスマス。
この日に、食や家族について考え直し、じーんと心にしみる講演会を聴きに来ませんか。

また、同じカタログハウスのセミナーで、11/10(19.0~21.0)内科医の井下俊さんの「イラクの病院、最新報告」がある。
井下先生は、イラク北部のアルビルにあるナナカリ病院に拠点を置き、日本とイラクを行ったりきたりしながら、JIM-NETの理事として活動を続けている。

カタログハウスは、JIM-NETの一員として、イラクの子どもたちの救援活動に参加している。こういう社会貢献をする企業がもっと増えてくれたらうれしい。

どちらのセミナーも先着150人、有料(参加費1000円)。
問い合わせ、申し込みは、カタログハウスの学校のHPをご覧ください。

http://www.cataloghouse.co.jp/weborder/contact?_T=CE01

写真は、紅葉がはじまった岩次郎小屋のニセアカシア

|

2010年11月 1日 (月)

鎌田写真館~一本の木

北海道の美瑛町にて――

Img_0563

(2010.10.18 撮影・鎌田 實)

|

新米つや姫

ぼくは、宮城県角田市にある障害者生活支援「虹の園」の応援団長をしている。
そのご褒美に、新米「つや姫」をいただいた。
これは、角田市の農家の面川さんが手塩にかけて作ったお米で、虹の園に贈られたもの。
そのおすそ分けが、ぼくのところに届いたのだ。

Img_0466

「つや姫」は、昨年、山形県で生まれたお米だそうだ。
今年はじめて蔵王連峰を越えて、宮城県の角田でも作られるようになった。

おいしいお米は芸術品と一緒だと思う。
おいしさに感動した。

写真は、岩次郎小屋から見た、稲刈りが終わった田んぼ

|

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »