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2010年11月29日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(57)

「白いリボン」

フランスで映画をつくってきた鬼才ミヒャエル・ハネケ監督が、母国語のドイツ語で、モノクロの映画をつくった。

美しい静かな村で、第一次世界大戦の前夜、奇妙な事件が次々起こる。
ドクターの落馬事故、小作人の転落死、男爵家の火事、子どもの失踪・・・。
タイトルの「白いリボン」とは、少年少女が何か間違いをしたときに腕に巻き、反省して誠実な人間になるためのしるしである。

力のある不思議な映画である。
引き込まれるようにしてみた。
しかも二回。
傑作だと思う。

2

人間の心を見事にあらわしている。
ぼくは『よくばらない』(PHP研究所)に、「まだら」という詩を書いたが、まさに人間の心のまだらさが、恐ろしいほどにあらわれている。

あたたかな心と獣の心、やさしい心と異常な心。
心を大事にしてきた牧師の家のなかで、不気味な心が成長していく。

規律と礼儀をわきまえる教育を受けた子どもたちから、ナチスが生まれいることを考えれば、子どもを育てるときには、隙間のようなものが必要なのだろう。
現在の日本のように隙間だらけで、子どもたちを放任にしてしまうのも問題であるが、子どもたちから隙間を奪い、鞭打ち続けることも問題だ。
子どもたちの心のなかの獣を暴れさせずに、やさしい心をどれだけゆっくりと育てていけるか、家庭や地域、教育のあり方が問われているところだと思う。

結局、事件は解決しないが、とても含みのある映画である。

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