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2010年12月16日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(65)

「最後の忠臣蔵」

みんなが知っている忠臣蔵にこんな感動がまだ残っていたのかと思わせてくれる、すばらしい時代劇。
討ち入りの様子は数分だけ。
ほとんど斬り合いは出てこない。

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四十七士の吉良邸討ち入りの後、四十六人が切腹する。
切腹を許されなかった男は、佐藤浩市演じる寺坂吉右衛門。
志士たちの残された家族が路頭に迷わないようにすることと、事実を後世に伝える役を大石から命令されていた。
切腹できなったために、悲しみを持ち続けながら生きていく。
それでも寺坂には、使命があったため、まだ救いがあった。

もう一人、生き残った男がいた。
役所広司が演じる瀬尾孫左衛門。
突然、討ち入りの直前に孫左衛門は消える。
みんなに逃げたといわれる。汚名が続く。
しかし、孫左衛門にはだれにも言えない密命があった。
役所広司がばらしい演技をしている。

死ななかった二人の男の、苦しみのなかで生きる姿がじつにいい。

役所広司と桜庭ななみの別れのシーンは、切々と綴られる。
忠臣蔵がラブストーリーになった。

役所広司は、ある女性誌のインタビューに答えて、一瞬を大事にするという生き方は、現代人へのいい教訓というふうに言っている。
一瞬を大事にする心構えは、人生をそれだけ豊かにしてくれる。
いま、このとき、やらねばならないという一瞬が、だれにでもあるということである。
人が変わる一瞬にこだわって、『人は一瞬で変われる』(集英社)という本を書いたぼくとしては、なんとなく、うれしくなった。

最後の自害のシーンは、さらっと流してエンディングにもっていったほうがよかったと思う。
ちょっと残念だった。
ぼくが監督ならば、自害という生々しいシーンで終わるのではなく、自害したのだろうと想像させるだけで十分。
最後はラブストーリーで終わればもっと感動が残ったように思う。

このところ、ぼくは「強くて、あったかくて、やさしい国日本」と言い続けている。
まさにその「強くて、あったかくて、やさしい日本人」が、この映画のなかには生きている。

2011年は、東洋という視点や、日本という視点で足元を見直ししていくことが、ぼくたちの国にとって大事なのではないか。
その意味では、この映画は2011年の生き方のヒントを与えてくれる映画だと思う。

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