鎌田實の一日一冊(94)
「哲学する赤ちゃん」(アリソン・ゴプニック著、亜紀書房)
赤ちゃんは世界がどんなものかを知りながら、行動を変えていく。
その変革能力は、ほかの動物よりも高いという。
そして、遊びを通じて実験をし、実験によって得られた結果、世界についての考えを修正していく。
まず、周囲の人たちの心理や性格、感情を学ぶ。
周囲の人たちについて学習しながら、今度は自分の心を学習していく。
想像以上に、赤ちゃんはいろいろな能力をもっているいることが科学的に証明されているのが面白い。
ぼくは『人は一瞬で変われる』(集英社)という本を書いたが、まさに赤ちゃんは変わり続けている。
もともと人間は、変わるポテンシャルをもっているということである。
赤ちゃんがこれほどまでに複雑な学習をしているとは思わなかった。
赤ちゃんの驚くべき能力に気がつくと、その能力をどう開花させたらいいか見えてくる。
赤ちゃんは現実と非現実をわきまえ、空想している。
物事の因果関係がよくわかっている。
実験し、統計的分析をしている。
人の性格を読み取っている。
人のことを純粋に思っている。
にもかかわらず、大人になるとこれらの能力が発揮されない。
哲学する赤ちゃんの自由な脳が、年とともに退化してしまうのか。
年をとっても、哲学する赤ちゃんの脳を持ち続けていたいものだ。
おもしろい本である。
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