行き場のない患者
統合失調症の男性が救急車で搬送先がみつからず、亡くなったという記事を見た。
東京都東久留米市での話だ。
日本中でこういう事例がたくさんあるという。
精神科がない総合病院では、統合失調症の患者さんを受け入れて手術をしたり、脳卒中などのリハビリをしたりするのは難しい。
それが現実である。
諏訪中央病院でも、精神科の常勤医がいない。
半年ほど前、統合失調症の末期がんの患者をみた。
ほかの患者さんへの配慮ができず、自分の世界に入り、ゴーイング・マイ・ウエイで、なかなかケアに難渋した。
ぼくが、回診のとき、患者さんの話し相手になってコミュニケーションをとろうとするのだが、「声が大きい」と一喝された苦い思い出がある。
ほかの患者さんやご家族が利用するラウンジも、独占することが多かった。
この患者さんを投げ出すのはたやすい。
しかし、病棟で何度も話し合いながら、ぼくたちがこの患者さんを投げ出せば、どこも診てくれるところがないと判断した。
精神科のある総合病院からは、高度医療をするところで、ベッドが空いていないと断られた。
精神科の病院からは、がんの末期患者を診たことがないと断わられた。
本当にどこにも行き場がないのである。
諏訪中央病院の緩和ケア病棟には、認知症の患者さんが末期がんとなり、入院してきたこともあった。
大声を出すおばあちゃんだった。
ほかの患者さんたちは、その声に明らかに参っていた。
しかし、この患者さんも、ほかのどこかで診ることは不可能と判断し受け入れた。
ほかの患者さんやご家族たちには、なんとか理解をいただき、マイナス点を挽回できるように全力でケアすることを心がけた。
行き場のない患者さんを、見捨てることはできない。
しかし、難しい患者さんを受け入れるために、必死にベッドのやりくりをし、あたたかな医療を展開しても、制度上、経営的なサポートがあるわけではない。
これが日本の現状である。
お寒い、お寒い、医療の現状が浮き彫りになっている。
写真は、諏訪中央病院の緩和ケア病棟から見た冬景色の庭と八ヶ岳。
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