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2011年1月17日 (月)

鎌田實の一日一冊(97)

正月はとにかく本をよく読んだ。
かいつまんで、ご紹介したい。

「根津甚八」(根津仁香著、講談社、1470円)

根津甚八の妻が書いている。

ぼくは、根津甚八のファンだった。
いつの間にか、根津甚八の顔をテレビや映画で見なくなった。
2001年、右眼下直筋肥大症。
右目の眼瞼の下垂は、手術で治ったが、ものが二重に見える複視が長く続いた。
腰痛症もあり、椎間板ヘルニアの手術も行った。
そのうちにうつ状態になった。
仕事ができなくなっていったのである。

根津甚八の芝居をよく見ていた。
「ジョン・シルバー」「愛の乞食」「吸血鬼」「二都物語」「唐版・風の又三郎」「糸姫」
歌もうまく、色っぽくて、状況劇場のスターになった。
その後、黒澤明の「影武者」や「乱」にも使われ、あれよあれよという間に映画界やテレビ界のスターになっていった。
かっこよく、なんでもやれる。
だが、知らないうちに根津甚八は疲れ切っていったのだと思う。

彼は、俳優は止めた、とこの本で宣言している。
どんな生き方でもいい、根津甚八らしい生き方をしてくれることを望む。

「クレアモントホテル」(エリザベス・テーラー著、集英社文庫、750円)

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著者は、あの有名女優と同じ名前だが、別人。
いま岩波ホールで上映されている映画「クレアモント・ホテル」の原作だが、なかなかいい。

「日本の解放区を旅する」(鎌田慧著、七つ森書館、2100円)

勇気ある生活者に耳を傾ける作家・鎌田慧の姿が迫ってくる。

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ぼくが10年前「がんばらない」を書いたときに、鎌田慧さんが手放しで評価してくれた。
それ以来、手紙でやりとりしているが、まだお目にかかったことはない。

「子どもが幸せになる学校」(菅聖子著、ウェッジ、900円)

「横浜サイエンスフロンティア高校の挑戦」という副題がついている。
いま、日本でもっとも注目を集める理数科専門の公立校だ。
昨年もノーベル賞受賞者が日本から出たが、科学にもう一度目を向けるいいチャンスだと思う。

「奇縁まんだら 続の二」(瀬戸内寂聴著、日本経済新聞出版社、2000円)

「奇縁まんだら」の続編につづく、第三弾。
美空ひばりがいたり、森重久弥がいたり、東郷青児や藤山寛美がいる。

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なかでも、埴谷雄高の話は出色である。
寂聴さんしか書けないだろうなと思う。
井上光晴が死んだときに、埴谷雄高がアカペラでハウプトマンの「沈鐘」を歌ったという。
寂聴さん70歳、埴谷さん80歳の夏のことだったという。

埴谷さんは、武田泰淳夫妻と仲がよかった。
埴谷さんは、武田さんの妻、百合子さんを連れてよく飲みに行き、午前様をしたという。
お二人とも亡くなった。
あの世であまり、百合子さんを連れ出すと、泰淳さんに焼かれますよというと、
「何をいうか、あの世では所有権なんてないんだ、フリーラブだ」と言ったという。
なんともすごい話だ。
こんな面白い話が満載である。

「脳卒中リハビリと生活ケア」(稲川利光著、雲母書房、2310円)

著者は、NHK教育テレビの福祉ネットワークに出演している稲川先生。
脳卒中の急性期から終末期までのトータルサポートがわかりやすく書かれている。

そのほか「持続不可能性-環境保全のための複雑系理論入門」(サイモン・レヴィン著、文一総合出版、2940円)を読んだ。

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