鎌田實の一日一冊(99)
「慈悲の怒り 震災後を生きる心のマネジメント」(上田紀行著、朝日新聞出版、1050円)
震災後、「みんなでがんばろう」といったメッセージが、毎日毎日投げかけられる。
でも、何をがんばればいいのか。
「がんばろう」の連呼しかできないような貧しいコミュニケーションが、今の苦難の状況を生み出しているのではないか、と著者は言う。
「原発をめぐる空気」という章もある。
ぼくが心配していたこの国の問題が、まさにここに書かれている。
「がんばろう」は、判断停止の言葉である。
「大丈夫」もいい言葉だが、この時期に使う「大丈夫」は改善する努力をとめてしまう。
学校の校庭を3.8マイクロシーベルトまでは大丈夫と言ってしまうと、少しでも放射能を減らしていく努力をしなくなってしまう。
判断を停止させる「がんぱろう」と「大丈夫」。
そして、空気に染まり、人の顔色をうかがう自立しないニッポン。
それが、まさにフクシマを起こしたのではないか。
「がんばろう」がいかに表層的な言葉で、「がんばろう」と言っている人のコミュニケーション能力が低いかに気がつくだろう。
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