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2011年7月 1日 (金)

鎌田實の一日一冊(100)

「大震災のなかで--私たちは何をすべきか」(内橋克人編、岩波新書、861円)

33人のエッセイを集めた。
3.11の意味や支援、復興の形が語られている。

そのなかで盟友、神宮寺の高橋卓志住職が「大津波がのみこんだもの、震災と伝統仏教」というテーマで書いている。

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震災発生から長い間、お風呂に入れなかった入釜谷地区の人たち。
お風呂が壊れなかった1軒の家に、みんながもらい湯をしていたが、長期戦になり、お互いに負担が大きくなっていた。
そんなとき、巡回診療につきあって、被災した人たちの聞きとりをしていた高橋住職は、敏感にお風呂の問題をキャッチし、バスをチャーターして、集落の人たちをお風呂につれていった。
2週間続けた。
その後、道の駅にある温泉に自分たちで行けるようになり、その入浴代を応援するという形で現在も続いている。

高橋さんの視点のすごさは、生きている人の今をどう支えるかという緊急課題にこたえながら、僧侶として亡くなられた方を大切にするという配慮が行き届いていることである。
遺体安置所に入っても、警察の方とすぐに信頼関係を結び、静かにお経をあげる。
高橋住職の読経に、その場を訪れた方たちは感謝し、警察官までもが彼に最敬礼をするのである。
高橋さんといると宗教の大切さがよくわかる。

高橋さんはいつも宗教の危機について、厳しく語っている。
今回も、大災害のなかでの宗教のあり方を彼流に問うている。鋭い。

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