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2011年7月

2011年7月31日 (日)

原発事故301

アメリカの大統領補佐官ホルドレン氏が日米して、今後、除染活動の日米共同研究を行う方針を明らかにした。
汚染水の除染なども大きなテーマであるが、土壌の除染も考えているようだ。

おそらく日本の政府もアメリカも同じデータのもとに、推測しているはずである。
データの収集と分析という点で、日本の政府の非力さを痛感してきたが、データも予測データも、日本政府は悪いものは隠そうとしている可能性がある。

1107274__ 木陰が涼しい諏訪中央病院の庭

たとえば、ホルドレン補佐官来日に伴う発表のなかでは、現時点で、除染しなければ居住できない区域は1000平方キロメートルあるとある。
40キュリー以上(148万ベクレル以上)の高汚染地は、以前から600平方キロメートルと推測されていたが、1000平方キロメートルに見直しされていると推測できる。

15キュリー以上(55万ベクレル以上)の農業禁止区域もさらに広がっている可能性がある。
以前は700平方キロメートルぐらいと想定されていたが、もしかすると、数千平方キロメートルの除染が必要になるのかもしれないといわれている。
この数千平方キロメートルがどの程度の汚染レベルを想定しているのか、詳しくはわからない。

稲わらからの牛肉汚染、川魚の汚染、そして、安全と思われる地域のなかの個人の家の雨どいなど、水が集まってくるところにできた小さなホットスポットが存在する事実などを考えると、想像以上の汚染がある可能性がある。
日本政府は、データもふくめて、すべての情報を公開してほしい。

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子どもたちの作文

石巻で巡回診療を行っている諏訪中央病院の後期研修医の奥先生が被災地の状況を、長野県原村の小学生に話した。
子どもたちはその話をとても真剣に受け止め、作文を書いた。

Img_7097

その子どもたちの思いが入った作文が、石巻の入釜谷地区の人たちにしっかりと届いた。

あたたかい交流が始まっています。

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再度のお願い

先日、石巻で在宅ケアに取り組んでいるJIM-NETに、中古車のご寄付あるいはレンタルのお願いをしました。

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-84d6.html

さっそく、よい反応をいただきました。
山口県の光福寺さま、松本でJCFの車ボランティアをしている太田さまからお申し出がありました。
こんなに早く反応していただき、本当に感謝です。

1107175__ 大型バスが建物の上に。石巻では、あの日の風景が手付かずで残っている

現在、JIM-NETは石巻で川添看護師を中心に在宅ケアを行っています。
多いときにはボランティアが2人加わり、4人で縦横無尽に活動しています。
7月から諏訪中央病院から医師と理学療法士らが加わり、連携して活動してきました。

在宅ケアを展開していくために、これまでレンタカーを使用してきましたが、長期戦になり、負担が大きくなっています。

また、JIM-NETでは、イラクで劣化ウラン弾の問題に取り組んできましたが、その経験を福島の放射能問題に生かそうという理事会の方針にしたがい、福島でも活動を始めました。

これらの活動には、足となる車が必要です。
さらに福島に一台、石巻に一台(石巻はできれば軽自動車を望みます)があると、たいへん助かります。
ご寄付いただくか、貸していただくことができれば、レンタカーに充ててきた費用を、被災者支援にまわすことができます。

ぜひ、ぜひ、お力添えをお願いします。

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鎌田劇場へようこそ!(78)

「バビロンの陽光」

戦地で行方不明になった父親を探す少年と祖母。
2人はお金がない。ヒッチハイクをしながら、12年会っていない父親を探す。

場面はイラク。
父親はクルド人。
探しても見つからない。
死んでいるのではないかと、墓地を探して歩く。

1

何十万人ものクルド人が犠牲になったといわれている。
フセインが虐殺したのではないかともいわれている。

ベルリン映画祭などで絶賛された。
なんとも感動的な映画である。

2

震災発生後、東北へ行ったりきたりするなかで、また映画もみるようになってきた。
旅行をしたり、映画館に行ったり、家族で食事に行ったりすることが、日本の経済をよくし、結果としてそれが東北の応援につながる。

久しぶりに映画をみてはいかが。

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2011年7月30日 (土)

原発事故300

フード・ファディズムという言葉をご存知だろうか。
食品にのめりこみ、神のようにたてまつるという意味だ。

『がんに負けない、あきらめない』(朝日新聞社)のなかで、食生活教育家の高橋久仁子先生と対談したことがある。
高橋先生は『食べもの神話」の落とし穴-巷にはびこるフードファディズム』という本を書いている。
ある乳がんの患者さんはサプリメントや食品に頼ろうとして必死だった。
がんの医療では、サプリメントや食品が効かないことは明確になってきている。

1107252__ 白い花を咲かせている岩次郎小屋の百日紅

いま放射能に対するおそれが広がるなかで、同じような現象が起きている。
味噌は発酵食品で体にいいことはまちがいないが、何年ものの味噌が放射能を排出するなんてことはありえない。
EM菌の水がいいとか、およそ考えられない。
だれかがお金儲けをたくらんでいるのである。
原発の安全神話を批判しながら、やっかいな食べ物神話をつくって、根拠のないことにのめりこんでしまうのだとしたら、変な話である。

民主主義社会に、神話はいらない。
神話になったとたん、議論の対象にならない。
原発の安全神話は、ぼくたちの暮らしを破壊した。
安全な食べ物を求めることは大事だが、神話としてたてまつるのはどうか。
根拠のないものにのめりこまないようにしたい。

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お知らせ

Photo_2

「日経マネー」9月号では、測量王手のパスコの社長をたずねた記事が載っている。
人工衛星と飛行機を使い、コンピュータを駆使した測量。
東日本大震災で地形がどんなふうに変わったかを示した図はすごい。

この画像は震災の30時間後くらいに作られ、関係機関に無料で提供された。
この画像があれば、どこが孤立化しているか、どこに支援をしなければいけないかということが、すぐにわかるすぐれものだ。

外国からも依頼を受け、会社としては軌道にのっている。Photo_3
日本のすぐれた技術力が世界に貢献できるのはうれしいことだ。

NHKテキスト「社会福祉セミナー」8~11月号は、教育テレビやラジオ第二放送の福祉を学ぶテキスト。
5/4、11に鎌田が出演した「東日本大震災~追い詰められる高齢者たち」という番組の内容が収録されている。
治療が受けられず自宅で孤立している高齢者、避難先を転々とする施設の高齢者など、現状と課題が提示されている。

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2011年7月29日 (金)

31日は諏訪看祭

諏訪中央病院看護専門学校の第9回「諏訪看祭」が31日、開催される。
テーマは、「まごころ」。
模擬店やバザー、看護体験ブースなどが用意され、看護に親しみながら楽しめる。
シンガー・ランニング・ドクターの福田六花氏の講演もある。

1107271__ 「生きているってすばらしい」のカマタの筆文字入りうちわは、東日本大震災被災地の義援金として寄付される

諏訪看祭では、チャリティーうちわを販売する。
カマタの筆文字がデザインされている。
1本300円。この売り上げはJCFを通して、東日本大震災の被災地の義援金として寄付される。

ぜひ、諏訪看祭においでください。

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おむつの寄付

福島県田村市の特別養護老人ホームときわ荘に、大王製紙からご寄付をいただたおむつを届けてきた。
ときわ荘は、20~30キロ圏で使用できなくった特養の利用者を引き受けてきた。
個室が多く、しかも広かったので、緊急的に二人部屋として使い、多くの人数をお世話することが可能になった。
そのため、お年寄りも遠くの施設に移らずにすんだ。
2人の施設長がいて、職員たちも職を失わず、介護を続けられている。
お年寄りの表情もいい。

110716 大王製紙のおむつを、ときわ荘にお渡しするカマタ

庭にヒマワリの種を植えさせてももらった。
8月下旬ごろ咲いてくれるといいなと思っている。

大王製紙のアテントは、開発のときに、いくつか意見を言わせてもらったことがある。
だから、ぼくはこのおむつにちょっと「親戚」のような親しさを感じている。
大王製紙には、11月11日の介護の日などで応援してもらっている。
今回の震災でも、たくさんのおむつを寄付していただき、福島や石巻に届けた。

3.11以降、いろいろな企業が社会貢献をしている。
資本主義社会のなかで厳しい運営をしながら、その利益で社会貢献する。
こういうのが当たり前になるといいなと思う。

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2011年7月28日 (木)

子どもたちの夏休み

カタログハウスと茅野市が福島の母子にプレゼントした、7泊8日の夏休みがはじまっている。
白樺湖のホテル約20カ所で迎え、8/8までは行われている。
あたたかく迎えてあげたいと思う。

1107272__ 緑に囲まれた諏訪中央病院の庭

ぼくは30日、第一弾のグループのお母さんたちに、チェルノブイリと福島の放射線についてレクチャーする予定。その間、子どもたちは、諏訪東京理科大のキャンパスで理科の勉強をする。
希望がある子どもには木曜日、信州大学で健診の時間を用意してもらっている。

長野県が東北の子どもたちを招く夏休みプレゼントもはじまった。
伊達市や南相馬市、大熊町、そのほか宮城県から、子どもたちが信州の夏を楽しみにやってくる。
東日本大震災支援県民本部や地域実行委員会が自主的にすすめている事業を合わせると、子どもたちの数は約1450人。
長野県の阿部知事が福島県知事に会うなど、受け入れ態勢を整えてきた。
県と11の市町村、民間が協力し、子どもたちをサポートする。
県と県民本部が行う「子どもリフレッシュ募金」には、鎌田も県知事から頼まれて応援している。

東御市と長野市に、日本テレビのニュースエブリィが取材に入る。

こんな活動が、全国で広がっているようだが、とてもいいことだ。
東北の子どもたちを、みんなの力で支えてあげたい。

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もうすぐ500万アクセス

「八ヶ岳山麓日記」のPVがもうすぐ500万を迎えます。

日ごろのご愛読に感謝し、ぴったり500万回目の訪問の方には、鎌田實の本『ウエットな資本主義』(日本経済新聞社)を、前後賞(499万9999回と、500万0001回)の方には、『いいかげんがいい』(集英社)を、鎌田のサインを入れてプレゼントいたします。

ご送付先を明記して、諏訪中央病院 鎌田實宛にお手紙をください。
前回のプレゼントのときには、証拠となるカウンタをプリントしてお送りいただきました。

たくさんの方に閲覧いただき、また、あたたかい応援をいただいていることに、感謝いたします。

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原発事故299

美浜原発2号機は40年を超えたが、なお10年運転が可能と関西電力が国に報告書を出している。
ぼくは『チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない』(朝日新聞出版)という本のなかで、「エネルギー問題は民主主義が問われる」と繰り返し書いてきたが、その原点に立ち返るべきである。
なんとなく通してはいけない。
きちんと議論すべきである。

1107273__ 木陰が涼しい諏訪中央病院の庭

2号機は50万キロワット。
福島原発の原子炉と同じで、格納容器は古くて小さい。
以前、対談した河野太郎議員も、もともと原発は30~40年を想定して設計されているので、40年で廃炉にすべきと明確に言っていた。
大賛成である。

ドイツはこれから10年間かけて、原発をすべてやめると決定した。
日本もそうすべきだ。
10年といわず、7年くらいを目標にして、40年以上の古い原発は運転を許可せず、とめていく順番を決めるというのは、わかりやすいルールである。

原子力安全委員会は今回、福島原発の事故前も事故後もいい仕事をしたとはまったく思えない。メンバーを解散してもいいと思う。
現在の原子力安全委員会のメンバーを全面的に変え、反原発や脱原発の学者もメンバーにするべきである。
そういうメンバーで、ストレステストの方法も議論させたほうがいい。

いくら首相でも思いつきで発言してはいけない。
すべての国民が納得することはありえないのだから、議論のプロセスが大事になる。

推進派も、慎重派も、全力で議論して決められるような委員会を作るのが首相の役目である。
菅さんはそういう微妙なハンドリングができるとは思えない。
この国のために早く辞任すべきである。

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2011年7月27日 (水)

この夏の音楽

岩次郎小屋では木が年々生い茂り、いい木陰をつくってくれている。
窓には、ゴーヤのつるを這わせる予定。
今年も、エアコンなしで夏を乗り切ろうと思っている。

1107251__ 緑のカーテン、ゴーヤはこれからぐんぐん伸びていく。ゴーヤチャンブルが食べられる日が楽しみだ

8月にリリースされるという、バイオリニスト川畠成道のアルバムを一足先に聞かせてもらっている。
クライスラーの「愛の喜び」や「愛の悲しみ」などの代表作以外にも、クライスラーが編曲した「ユーモレスク」や「精霊の踊り」など、美しい曲を、川畠が味わい濃く演奏している。

青木十良のバッハ「無伴奏チェロ組曲第四番変ホ長調」もすばらしい。
かつて天皇陛下のチェロの先生をしていた青木ならではの演奏。

沖縄の重要無形文化財保持者の知念久光の竹笛もとてもいい。

そしてもう一つは、トモコの歌う「ザマナイ」。
カザフスタンで繰り返された核実験を市民運動により、とめた歌である。

朝のさわやかな空気のなかで、こられの音楽を聴きながら、本を読んだり、原稿を書いたりしている。

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神宮寺で展覧会

石巻や福島で一緒に支援活動を行ってきた高橋卓志住職の神宮寺で、7/27~8/5、丸木位里・俊の「原爆の図」の展覧会が開かれる。

JCFを支援してくれていた画家の故・貝原浩さんの「風下の村から」も展示される。
また、反戦、反核の映画の上映やキャンドル・ジュンさんのパフォーマンスもある。

展覧会では募金活動を行い、JIM-NETが行っている石巻の在宅ケアや千人風呂プロジェクトに資金の応援をいただけるという話もいただいた。

夏休み、松本の神宮寺にどうぞお出かけください。

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原発事故298

和牛に対する不安が広がっている。
これはとてもマズイ事態である。

放射線の汚染検査を徹底して、基準値以上の肉が市場に出ないようにすべきである。
食肉はキロ当たり500ベクレルが暫定基準値。
これをステーキで100グラムの肉を食べると、0.8マイクロシーベルトの体内被曝となる。
1キロを一ヶ月間食べたとしても、0.008ミリシーベルトの影響である。

汚染された稲わらを食べた疑いがある牛が1400頭いるとか。
すでに食べたかもしれないと不安になる人もいるが、心配しすぎるあまり、精神的にまいってしまうのはよくない。
できるだけ汚染したものは食べないにこしたことはないが、食べてしまったものに過度に不安をもつのもどうか。

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2011年7月26日 (火)

福島の中学生、出発

福島の子どもたちをピースボートの旅に送り出す「福島子どもプロジェクト」。
中学生たちが24日、成田を出発した。
子どもたちは、船旅を楽しんだり、スリランカの津波を経験した子どもたちと交流したり、きっと充実した体験をしてきてくれると思う。

旅の様子は、こちらに随時アップされている。

2011724

2011724_2

このプロジェクトには、田部井淳子さんや香山リカさん、田中優さん、湯川れい子さん、同級生の池田香代子さんの協力があり、700万円近く集められそうな状況になった。
あと100万円ほど足りないため、これからも募金を続けていきたい。
ぜひ、ご協力をお願いいたします。
詳しくは、右のバナーをご覧ください。

3/11から大変なことが続いた中学生たち。
いい夏休みを過ごしてもらいたい。
帰ってきて、さまざまな経験や夢を語ってくれると、大人たちも元気になる。
お力添えをいただいたみなさんに、心から感謝いたします。

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原発事故297

チェルノブイリでは、汚染された牛のミルクから6000人の小児甲状腺がんが発生した。
その教訓から、乳牛に関しては管理を徹底することができたと思う。
だが、肉牛に関してはとても心配していた。

飯舘村の畜産農家を訪ねたとき、稲わらは牛舎の天井に積み込んで、野外にはなかった。
あとは購入した飼料を与えているので、これは放射能に汚染される心配はない。
問題は稲わらと乾燥した牧草かなと思っていた。
稲わらの業者には油断があったと思うが、政府の対応の遅さに原因があると思う。

政府や東電が、原子力村の学者やマスコミを使って「だいじょうぶ」とか「たいしたことない」と洗脳してしまっているところに、今回のような失敗の原因がある。

1107253__ 岩次郎小屋の百日紅は、今年も白い花を咲かせている

ぼくもはじめはこれほどまでに汚染がひどいとは思わなかった。
2ヶ月ほど前から、フクシマの汚染はチェルノブイリに匹敵するのではないかと疑いを持ちはじめ、最近にいたっては明らかにチェルノブイリに近いと、このブログでも言い切っている。

国は被害を少なく見せようとするのではなく、現実をわかりやすく説明し、その現実のなかで健康を守るための食の安全をどう守るか、国民に対するプレゼンテーションの方法を変えたほうがいい。
でなければ、政府と東電の失敗つづきで、日本という国じたいもメルトダウンをおこしてしまいそうだ。

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地域医療をどう確保するか

「世界」8月号に小高病院前院長の遠藤清次さんと、管理栄養士の鶴島綾さんの二人が、南相馬に地域医療をどう確保すべきかという論文を書いている。
そのなかには、震災後30キロ圏に入った最初の医療チームとして、諏訪中央病院やJCFのことが書かれている。
諏訪中央病院の総合医の指導役である佐藤泰吾医師を筆頭に展開してきた巡回診療のシステムは、その後も南相馬で引き継がれている。
鶴島さんは、避難者たちの食事のことを書いている。
南相馬では当時、屋内退避指示が出ていたため、炊き出しができなかった。
3/25、JCFがレトルトのおでんを持ちこみ、おでんパーティーをしたことを紹介し、「救いだった」と述べる。

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ぼくは3/14ごろから30キロ圏内のことが気になり、桜井市長や南相馬市立総合病院の医師たちと連絡を取り合いながら、30キロ圏内の人たちの命や健康をどう守るか話し合ってきた。
その経過は、『チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない』(朝日新聞出版)に詳しく書いた。
ポスト・フクシマをどう生きるかを考えて、一冊の本にまとめた。
日本をメルトダウンさせないため、これが絶対に正しいという生き方はないが、できるだけ○に近い△の生き方を探している。

「世界」をぜひ、お読みください。

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本日26付けの朝日新聞夕刊に『チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない』が取り上げられています。ご覧ください。

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2011年7月25日 (月)

ご協力のお願い

JIM-NETでは千人風呂プロジェクトを行ってきたが、今後もお風呂を続けてほしいという住民の要望が強く、続けていくことになった。

石巻で川添看護師を中心に取り組んでいる在宅ケアも、来年三月まで続けていく。
諏訪中央病院から医師や理学療法士、作業療法士が来年の春まで応援してくれることになったので、ともに協力しあって、被害の大きい石巻市の人たちの役に立つように活動していきたい。

1107176__ 石巻の入釜谷地区を、諏訪中央病院の奥先生、遠藤先生、看護師3人と巡回診療した。その後、地区の人たちがお昼を用意してくれた。あたたかなご馳走に感謝

神戸のある開業医が石巻にボランティアに入り、その方が中古車2台を東北で買うお金を出してくれた。
たくさんの方の支援をいただいているが、さらに充実した支援をしていくにはマンパワーが必要で、そのマンパワーをフルに活用するには、さらにもう1台、中古車があると活動しやすくなる。
来年春までJIM-NETに貸していただけるか、ご寄付いただけるとたいへんありがたい。
ご寄付いただいた場合、来年春以降は、その車は石巻の訪問看護ステーションなどに引き継いでいきたいと考えている。

石巻では、一時期、4人の看護師が活躍していたが、現在は3人。
石川から来てくれている鎌田の小学校の同級生マリちゃんが帰ると、重岡さんと川添さんの2人になる。
看護師の応援もありがたい。
できれば一ヶ月ほど休める人がいれば、ぜひ応援をお願いしたい。

金銭的な応援、中古車の寄付、人的応援、大歓迎です。
これからもJIM-NETをよろしくお願いいたします。

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原発事故296

稲わらの放射線の汚染状況を考えると、3/14~15にかけての風向きに影響を受け、かなり広範囲に広がっている。
原発から白河が80キロ。150キロ離れている宮城県の登米市や栗原市の稲わらも汚染されている。

気球というスポーツをやってみると、風向きが高度によって違うことを実感する。
風向きは、一方向ではない。
高度100メートルのところで北向きの風が吹いていても、1000メートル上空では西向きのことがよくある。
この高度差によって違う風向きを利用して、目的地に向かうのが気球というスポーツなのだ。

3/14~15、原発から放出された放射性物質は、南向きの関東へ向かった風に乗って放射能雲をつくり、その一部が北に向かう風に乗って、白河を汚染した可能性がある。
高さによって北西に向かった風は、飯舘などに達し、雨とともに放射性物質を落とした。
その一部が、登米市や栗原市まで到達したのではないか。

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2011年7月24日 (日)

原発事故295

福島市のなかで比較的空間放射線量が高い渡利地区では、高圧洗浄機やブラシを使い、道路や側溝などの除染をはじめている。
市の職員とボランティアが協力して行っているとか。
とてもいいことである。
チェルノブイリでも高圧洗浄機を使って側溝などのヘドロをきちんと処理することで、かなりきれいになる可能性がある。

福島市のなかにはこのほか、毎時3.39マイクロシーベルトの大波地区など高汚染の地域がいくつかある。
伊達市や川俣町と隣接しているところでは、注意が必要である。

何度も書くが、子どもを疎開させたい人にはできるだけ協力したいと思う。

以前、NHKの「あさイチ」で、30キロ圏から避難されるママたちの決断を取り上げていた。
そのとき、東京都の受け入れがあると紹介されていたが、一学期までだった受け入れが、原発事故が収束しないことから、延長された。
対象となる子どもは、小学校から高校生まで。
食費、宿泊費は無料。学用品も東京都が用意してくれる。
国の避難指示が出ている地域でなくても受け入れている。
特別支援学校の職員などが、子どもたちを日常的に見守るというという。
問い合わせは、こちら↓

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr110318j-2.htm

県外に出ている福島県民は4万5000人と推測されている。
どうしようか不安で迷っているお母さんは、一度相談してみるといい。

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2011年7月23日 (土)

JIM-NETは中華そば屋のそば

JIM-NETは高田馬場に事務所がある。
その事務所から7メートルくらいのところに、「べんてん」というラーメン屋がある。
そこはいつも行列ができていて、評判のラーメン屋だと聞いていた。
気になっていたが、並んでまで食べる気にはなれなかった。

1107178__ いつも行列ができているべんてんの中華そぱ

今月の臨時理事会に出るためにその前を通ると、なぜか、いつもの行列がない。
すぐに事務所に電話して、だれか一緒に食べてもらおうと誘った。
一人で食べるのは恥ずかしいので。
当日は、石巻から川添看護師が活動の報告に来ており、川添さんと事務局のひかりさんと3人で店に入った。
ひかりさんが「麺を半分に」という。
半分で、足りるのかと思ったが、それがちょうど一人前くらいあった。
魚のだしで、しょうゆ味と、塩味がある。
つけ麺を食べている人も多かった。

よろしければ、べんてんのラーメンを食べがてら、JIM-NETの事務局をのぞいてみてください。

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動画: 鎌田×さだまさし 東北支援トーク&ライブ

2011年6月、南相馬市原町第二中学校の体育館で行われた鎌田實の慰問講演会に、さだまさしさんが飛び入りでコンサートをしてくれた。二人の爆笑トークの模様を少しだけ・・・。

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原発事故294

いくつかのホットスポットがあるベトカの地区病院にはホールボディカウンタが一台ある。
簡易型のものである。
このベトカ市では、毎年60人近い新規の体内被曝者が発生している。
だが、食生活を改善していくと、カウンタの数値も改善していくという。
セシウムの半減期は30年と言われていると、体内では60~100日で体外に排出されるといわれている。

1107171___2 ピアノ演奏でシャンソンを歌うピーコさん。7/16の田村市での、鎌田の講演&ピーコさんのトークライブの模様

田村市にピーコさんと慰問に行ったとき、市長さんとお会いした。
この市では子どもと妊婦に積算線量計を貸し出したり、食品の線量測定をできるようにしたり、前向きな取り組みを行っている。
市長さんにホールホディカウンタの購入を検討したらどうかと提案したところ、前向きに検討するといわれた。
福島の汚染の現状から考えると、市町村ごとにホールボディカウンタを一台もたなければいけない状況になってきているように思う。
田村市がホールボディカウンタの設置を前向きに検討し、国と県に3分の1ずつ負担してもらうようになれば、ほかの市町村も田村市の後を追って、取り組み出す可能性がある。

田村市の汚染状況はそれほど深刻ではないが、前向きな取り組みはいいことだと思う。
市長さんに、今後も応援することを約束した。

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2011年7月22日 (金)

再び寒天ブーム

「ゆほびか」9月号の「ショウガ寒天ダイエット」という特集があり、鎌田が「食物繊維の王様、寒天と代謝を高めるショウガは最強タッグ」と話している。

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ショウガをとることで分泌されるアディポネクチンという生理活性物質は、動脈硬化を抑制してくれる。
アメリカの国立がん研究所がまとめたがん予防にいいとされるデザイナーフーズでは、ショウガは最上位の一つにランクされている。
7/13のNHKの「あさイチ」でも、鎌田のトマト寒天が取り上げられた。
テレビでも反響がよかったようだ。

「ゆほびか」では、「ドクターかまちゃんの寒天ゼリー」が紹介された。
トマト、ショウガレモン、ブルーベリーの3種類入って1000円。
これを買っていただくと、そのうちの半分が東北の支援にあてられる。
自分の健康を守りながら、東北の支援にもつながるのだ。

夏に、冷やした寒天は最高のおやつ。
簡単にできるので、健康づくりにお役立てください。
詳しくは、こちらを↓

http://jcf.shop-pro.jp/?pid=25710050

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原発事故293

南相馬市やいわき市の一部にも、ホットスポットがあることがわかってきた。
福島市のなかにも一部、線量が高いところがあるのではないかと伝えてきたが、市のいっせい測定で、平ケ森の市営住宅で毎時3.8マイクロシーベルトを計測した。これは年間20ミリシーベルトを超える可能性がある。

チェルノブイリでは、40キュリー以上の地域が強制移住させられたが、40キュリーは毎時2.6マイクロシーベルトに換算される。
チェルノブイリでは、ホットスポットに対して強制移住という方法をとったが、まだら状に点在するホットスポットを把握し、ある意味できちんと対応したと思う。
人口4万人のベトカは2万人が強制移住となり、約60の村が強制移住の対象となった。

そのベトカの市区病院を、JCFでは支援し続けてきた。
ベトカは現在、カザフスタンなどから5000人が移住してきており、2万5000人の人が住んでいる。
年間20ミリシーベルトを超えると予測される地域に関しては、特定避難勧奨地点として避難してもらい、徹底した除染をしたほうがいいのではないかと思う。

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2011年7月21日 (木)

原発事故292

放射線と健康リスクをテーマにした国際会議が9/12に、福島医大で開かれるという。
世界のトップレベルの放射線の研究者が集まり、研究発表や意見交換、シンポジウムを計画しているようだ。
情報を明確にし、その情報をどう考えるか。
事実とその対応を、世界の専門家の目を通して、きちんと議論することはいいことだ。

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原発事故291

核燃料サイクル事業の根幹になっている高速増殖炉もんじゅは、まったく何の役にも立っていない。
1兆円の税金が使われた。

管理するだけで、毎年200億を超えるお金が使われている。
どぶに捨てているようなものだ。

六ヶ所村の核燃料再処理事業もまったく軌道に乗っていない。
使用済み核燃料を再利用するという夢のような話でだまし続けてきたが、核燃料サイクル事業構想そのものを考え直すべきときが来ている。

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お知らせ

「ニュースエブリィ」の今週のぼくの出演は、明日22日(金)。
福島の高校野球を取材した。

ぜひ、ご覧ください。

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2011年7月20日 (水)

原発事故290

福島県に行ってきた。
伊達、本宮産のビニールハウスで栽培したシイタケから、1キロ当たりの基準値500ベクレルを超えるセシウムが検出された。
高いものは、1770ベクレルをカウントした。

1107173__ 巡回診療で訪ねた石巻の入釜谷地区のみなさんと

もともと伊達市と本宮市では露地栽培のシイタケは基準値を超えていたので、出荷制限されている。
ビニールハウスのシイタケは、今回はじめて調査した。
温度調整のためにビニールハウスを開放することもあったという。

牛のえさとなる稲わらの汚染も70キロを超えて広がっている。
南相馬市で採れたビワが、基準値を上回って、出荷停止となった。
以前、川魚の汚染について触れたが、フクシマの汚染はチェルノブイリに近い状態になっていることは間違いなさそうだ。
非常に厳しい状況である。

子どもたちはできるだけ福島県外に出したほうがいい。
それができない場合は、夏季休暇や秋季休暇などで、少しでも放射線から遠ざける支援をしていく必要があると思う。

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2011年7月19日 (火)

お知らせ

明日20日午後2時25分~「大竹まこと ゴールデンラジオ」(文化放送)に出演することになった。
大竹まことさんには、ほぼ一ヶ月に一回、東京に出たときに番組に呼んでいただいている。
ぜひ、お聞きください。

20日午後8時55分~は、「八塩圭子のジャム・ザ・ワールド」(J-WAVE)に出演する。
チェルノブイリ、フクシマの話、東北をどう応援するかという話をする予定。
八塩さんとは一度、雑誌で対談をしたことがある。

こちらも、ぜひ、ラジオをお聞きください。

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動画: 南相馬市小高区

6月10日、南相馬市立小高病院と、仮設保育園となっている寺内公民館を訪ねた。

小高病院までの道には、津波被害を受けた国道を走る。

すぐそこの橋を渡れば助かるという状況で、車は大渋滞。歩道にまで車はあふれたという。

小高病院では、3月13日の避難指示を受け、全ての患者を搬送。

防護服に身を包んだ遠藤院長が語ってくれた。

公民館は仮設の保育園となり、子どもたち51人が預けられていた。

館内はパンク寸前。先行きの見えない臨時の保育が行われている。

子どもたちのかわいらしい姿がいとおしい。

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2011年7月18日 (月)

台湾はあたたかい

今年4月、病や障害のある人たちと一緒に台湾を旅行し、台湾のあたたかさをしみじみ実感した。

その台湾が、東日本大震災の被災者を、台湾に2週間、招待するという。
第一陣は25日に出発する予定だとか。
台湾でも1999年に大きな地震があり、そのときの日本からの支援に感謝する気持ちだという。

Img_3431 4月に訪ねた、ドリームフェスティバルin台湾のときの様子

台湾から日本に送られた義援金の総額は180億円になっている。
本当にあたたかな国である。

ぼくは台湾に4回ほど行っているが、何度訪ねてもあたたかさを感じる。
台湾、大好き。

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2011年7月17日 (日)

紙芝居

7月18日午後2時から3時半まで、長崎原爆資料館の平和学習室で、第4回紙芝居発表会が行われる。
そこで、ぼくの絵本『雪とパイナップル』が紙芝居になって、発表される。

今年の冬、ピースボートの旅でご一緒した長崎の被爆者、末永浩さんが紙芝居にしてくれたものだ。

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たくさんの人に見ていただきたいと思う。
お近くの方、ぜひ、お出かけいただけるとうれしい。

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日本医療維新の会

第16回日本医療維新の会が、田中一哉さんの山荘がある黒姫高原で行われた。

地域医療の神様といわれている増田進先生と↓

1107103__

増田先生は、岩手県沢内村で地域医療をつくり、日本ではじめて老人医療費を無料化した。
かつて不健康だった地域は健康になり、寿命が延びた。
暗かった地域が明るくなった。
老人医療費を無料化するということはどういうことか、村の人たちとよく話し合っていたため、医療費が天井知らずに伸びることはなかった。
老人医療費の無料化を守ろうとするならば、老人が無駄な医療を拒否するくらいにならなければ、無料化を持続することはできない。
みんなの保険料が使われているのだから、ムダなことはできないのだ。
命を守るためには、早期発見が大事ということで、健康診断が盛んになった。
その結果、医療費が安くなった。
そのことを住民自身がよく理解した。
そういう積み重ねが、沢内村にはあった。

日本プライマリ・ケア連合学会の理事長で、前北海道大学教授の前沢政次先生と↓

1107101__

石巻では、この学会が行っている東日本大震災支援プロジェクト(PCAT)の救援チームに、JIM-NETはたいへんお世話になっている。
JIM-NETと諏訪中央病院は、来年3月まで長期戦で支援を続けることになったので、PCATとの連携をスムーズに助け合い、石巻の被災者を支えようと話し合いが行われた。
日本医療の再生のためには、総合医の地域医療の視点が大事だということを確認してカンファランスは終わった。

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2011年7月16日 (土)

「いのちの対話」アンコール

7/18、「鎌田實 いのちの対話」アンコール

が放送される。

これは、「いのちの絵本」をテーマに、島原で収録されたもの。

以前、国会中継のため、3時間を3回に分けて放送した。
今回は、たっぷりと「いのちの対話」をお楽しみいただけるように、再編集してお送りする。
番組の後半には、鎌田が信州から生で、スタジオの村上信夫さんとやりとりする。

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Img_3705_2Img_3710ゲストの方々との公開収録の様子

ゲストは、画家の中島潔さん、作家の落合恵子さん、絵本作家の長谷川義史さん。
時間は、18日午前8時33分~、NHKラジオ第一

海の日の祝日なので、家でのんびりしている人、夏休みで車で移動中の人もいると思いますが、ぜひ、お聞きください。

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2011年7月15日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(77)

「海洋天堂」

カンフー映画のヒーロー、ジェット・リーがいい。

父親は、肝臓がんで限られた命である。
息子は21歳で自閉症。
妻はすでに亡くなった。

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父親は自閉症の息子に、自分亡き後の生き方を丁寧に教えていく。
水族館でイルカと遊んだり、亀と泳いだり、自分がいなくなった後も、息子に大切な絆ができるように、父は死の準備をしながら必死になって動き回る。
こんなにも人を愛し、愛されるというのは、すごいことかと思う。

父親の必死さに、周りの人たちが変わっていく。
父親がいなくなっても、息子を面倒をみようという人たちが出てくる。

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一度は脚に紐を結び、海に飛び込んで無理心中をはかるが、泳ぎのうまい自閉症の息子はすいすいと泳ぎ、助かってしまう。
海の光景や水族館の光景が、とても美しい。

中国の政治スタイルは威圧的で、どうしても好きになれないが、こういう人間味あふれる映画をみると、いつか中国も大人になっていくだろうと期待させてくれる。

音楽は久石譲。
期待外れはない。見てお得な映画である。
心がぐんとあたたかくなること間違いなし。

最後の言葉がいい。
「平凡にして偉大なすべての父と母に捧げる」
ジェット・リーが平凡で偉大な父親を演じているのが、すがすがしく、魅力的だ。

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同級生と

今日は宮城県入釜谷地区の巡回診療を行う。
小学校の同級生のマリちゃんが看護師として、1ヶ月間、石巻に応援に来てくれている。
マリちゃんは聖路加看護大学を卒業している看護師のエリート。
ぼくらの時代は看護師の大学は2つしかなかった。
小学校の同級生と仕事をするのはもちろんはじめて。
楽しみにしている。

東京の杉並区にある和田小学校で一緒だった。
ぼくはいま長野県、彼女は石川県に住んでいる。
JIM-NETの川添看護師はてんてこ舞の状態だったが、いまや3人の看護師の応援が入り、4人で在宅ケアチームをつくって奮闘中である。
これから半年は、諏訪中央病院から医師の応援も続く。
諏訪中央病院から理学療法士、作業療法士の応援も入る。

石巻では、120近くあった医療支援チームがどんどん撤退しているが、ぼくたちは長期的な視点で支援を続けていこうと思っている。
ぜひ、JIM-NETや諏訪中央病院の活動を応援してください。

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2011年7月14日 (木)

続・子どもたちにどう教えるか

ぼくの『雪とパイナップル』が教科書の副読本に使われることになったが、以前から中学校の道徳の副読本に、「君がいちばん光るとき」というタイトルの文章が使われている。
高校時代から20歳まで悪性リンパ腫で治療したケンちゃんのことを書いたものだ。

感想文が時々ぼくのところに来る。
若い人にぼくの本を読んでもらえるのは、とてもうれしい。

1107104__ 黒姫高原の林の中はさわやかな夏

以前、このブログに「子どもたちにどう教えるか」という記事を書いた。
それに対して、お便りがあった。

定時制高校に通っていた方からである。
その方が教わった理系の教師は、水俣病や原爆、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故、ビキニ環礁実験などをじっくり教えてくれたという。
「私たちが生活していくなかで、忘れてはいけないことを学んだ」と、その方は言う。

この教師はこう言っていたそうだ。
「オレは進学校で教えるより、定時制で教えるほうが幸せだ、教科書にしばられてガチガチの授業をするより、社会に出たときに身になる授業をできる」

決められた教材以外は使えない教師たちも、ジレンマを抱えている。
子どもたちも大事なことを教えられていないから、余程のことがないと関心をもたない。
そんな国になってしまった、と憂いていた。

ぼくは「原子力村」を批判してきたが、その村には、もしかしたら教育界も入るのかもしれない。
エネルギー問題は民主主義が問われていると述べてきたが、民主主義がなければ生き生きとした教育は行われない。
原発の安全神話をつくりあげることではなく、原発にはリスクがあるということをきちんと子どもたちの教科書に書き、しかも人間はミスをする動物であることを子どもたちに教えながら、リスク管理や災害対策を教えていく必要があるのだと思う。

子どもたちにどう教えるかは、この国をよくしていくための、大事な初めの一歩だと思う。

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2011年7月13日 (水)

ピーコさんと講演&トークライブ

7月16日午後12時30分~福島県田村市文化センターで、いのちを守るイベント、講演&トークライブ「がんばらないけどあきらめない」が、三春町や小野町、田村市の協力で開催される。

もともと市町村で自殺予防のイベントを行っていた。
今回は、被災し、20キロ圏外の人たちの避難地として支え、市民みんなが疲れきっているので、うつ病や自殺に対応できるよう、明るく元気になる話や放射線の話をしてほしいと、保健師さんからぼくに講演の依頼があった。
よろこんで応援にいかせていただくことになった。

1107044__ 諏訪中央病院の庭

講演料はいらないとお断りすると、その講演料でどなたか市民が喜んでくれるような人を呼んでもらえないかという話になった。

ピーコさんにお願いした。
今までも、ピーコさんにいろんな応援をしてきてもらっている。
彼と言っていいのか、彼女と言っていいのか、とにかく、彼はやさしいのだ。

困ったときのピーコさん頼みでお願いしたら、いいわよ、と二つ返事。
おずおずと、歌ってほしいらしいんですが、とお願いした。
「アカペラねえ・・・」
話が止まってしまった。

保健師さんが、ピーコさんの事務所に講演料の話をしたら、「いらないわよ」という話。
ボランティアで行くから大丈夫という話になった。
それでは、浮いた、だれももらわない講演料で、ビアニストに来てもらおうという話になった。
ピーコさんのお友だちのピアニストに来てもらうことになったが、そのピアニストも「いりません、応援させてください」

みんな、あたたかいのだ。

こうやって次々にお願いしていくと、無料で10人くらい集められるかもしれないと大笑いになった。

ピーコさんが生のピアノでシャンソンを歌う。
鎌田が、命の話と放射線の話をする。
あたたかな、あたたかな時間にしようと思っている。
入場は無料。
ぜひ、お越しください。

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2011年7月12日 (火)

子どもたちによい夏休みを

7月末から南相馬の中学生50人が、ピースボートで10日間の旅をする。
ベトナムからスリランカまで3つの国を回り、外国の若者たちと交流する。
もちろん、子どもたちの健康を考えた、放射能疎開という目的もある。
このピースボートの活動に賛同し、「福島子どもプロジェクト」(右側をご覧ください)として募金活動の応援団長をしている。

8/5はいわき市湯本病院で、10/19は千葉県館山で講演することになっているが、その講演料は全額ピースボートに寄付してもらうようにした。

被災地の子どもたちに外国をみる夢をかなえさせてあげたいと思っている。
ぜひ、ご協力をお願いします。

11060181__ 諏訪中央病院の庭

長野県でも、被災地の子どもたちにサマーキャンプ「子どもリフレッシュ」を呼びかけているが、なんと、伊達市や南相馬市、宮城県、岩手県から760人来ることになった。
とてもすばらしい。

子どもたちにできるだけ楽しんでもらえるように、活動資金の募金をしている。
募金は7/5現在で116万円。
まだ十分ではないので、さらなるお力添えをよろしくお願いします。

みんなの力で、子どもたちがいい夏休みを過ごせるようにしてあげたい。

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原発事故289

南相馬の緊急時避難準備区域の牛から、キロ当たり3200ベクレルのセシウムが検出された。
基準値は500ベクレル。
今年の牧草を食べさせてない、昨年度の牧草と昨年の乾燥わらと配合飼料で、厳重管理しているから大丈夫と思わないほうがいい。全頭調査をしたほうがいいと思う。

『チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない』(朝日新聞出版)にも書いたが、チェルノブイリの強制移住させられた高汚染地域に近い汚染地域が、福島県にはかなりある。
600平方キロメートルの汚染地域がホットスポットという形で、まだら状に点在するので、注意すべきだと思う。

チェルノブイリでは25年たった今も放射能を出し続けている。
おそらく、福島原発も10年たっても完全にはコントロールではないだろう。
数十年間かかると考えたほうがいいのではないか。

もともと体内にもカリウムを中心にして、放射性物質があるのだから、内部被曝だって心配ないという人はいる。
たしかに年間0.3ミリシーベルトの内部被曝をしているが、さらに余分な被曝をすればリスクは上がる。
わずかだから心配ないという人もいるが、わずかでも配だという人もいる。
100ミリシーベルト以上になれば、がんになる確率が0.5%増えるとされる。

飯舘村、双葉町、浪江町、大熊町など17地点では100ミリシーベルトを超える可能性があるという。
20ミリシーベルト以上の地域は、53地点。

ガレキをどうするか、土壌改良をどう行うか、農作物や魚や肉の管理、子どもたちの健康、福島県の経済、4ヶ月たったが状況は非常に厳しい。
東北の人たちを支え続けなければいけない。

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2011年7月11日 (月)

お知らせ

明日12日、「大沢悠里のゆうゆうワイド」(TBSラジオ)に出演することになった。
午前8時30分から15分間ほど。
ぜひ、お聞きください。

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4ヶ月

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あの日から、ちょうど4ヶ月。
いまだに2万4000人の人が避難所で生活している。
旅館、ホテル、仮設住宅などで避難生活をしている人も入れると、10万人になる。
約5万戸で、断水が続いている。

日本赤十字社などに寄せられた2950億円近い義援金のうち、被災者に届いたのは600億円。
たった2割である。
相変わらずスピード感がない。
被災3県の仮設住宅は3万6000軒完成したが、入居率は14%にとどまっている。
与党と野党はもっと柔軟な話し合いをして、仮設が必要な地域と、仮設ではない住宅の支援が必要な地域と、区別して、それぞれに合った支援をしていくほうがいいように思う。

国会は、政局をしている暇なんてない。

写真は、黒姫高原

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2011年7月10日 (日)

寄付、海を越えて

アメリカの方から寄付をいただいた。
こんな手紙がついていた。

2011年6月24日

鎌田實先生へ

あなた方が日本の方々のために行っている震災救援活動に対し
100.00ドルの寄付を同封させていただきました。
宮城県のために使われることを希望します。
日本の復興を願う、私たちの深い想いと祈りをどうぞお受け取りください。

カーティス・フィルーンの一家より
※祖父デイビット・スコッツは、第二次大戦占領軍の退役軍人(米軍)で、19
45-46年日本に駐屯していました。

がんばって!

Ipmoletter

JIM-NETの活動を見ていてくれているようだ。
ありがたいことである。

すでにフランスやアメリカ、スイス、イラク、台湾の方たちからも、ぼくたちの活動にご寄付をいただいている。
インドネシアからは、ガイガーカウンターの購入資金として、JCFに寄付したいというありがたい申し出もあった。

感謝します。

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2011年7月 9日 (土)

鎌田實と東北へ行こう

9/27~29、ドリームフェスティバルin松島に参加しませんか。

病気や障害がある人、元気な人、親孝行の旅をしたい人、東北を応援したい人・・・。
希望者は、現在のところ76人。
まだまだ余裕がある。

障害があって移動に不安がある人も大丈夫。
クラブツーリズムの社員20人、福祉大学の学生さん3人、トラベルサポーター6人が、どんな状態の人でもサポートする。
施設に入っている親を連れ出して、親子でいい時間を過ごすなんていうのもいい。
親孝行をしながら、日本を元気にしよう。

東北の地域経済を活性化することは、日本にとってはとても大事なこと。
義援金を寄付するのもいいけれど、資本主義のルールにしたがって、東北のおいしいものを食べ、観光し、みやげ物を買うことで、東北の経済をよくすることが、東北を救うことになると思う。

ぜひ、鎌田と一緒に東北を救う旅をしましょう。

詳しくはこらち↓

http://www.club-tourism.co.jp/press/2011/0620.pdf

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さだシティ

さだまさしさんのファンクラブの雑誌「まさしんぐWORLD」7月号に、まさしさんと二人で南相馬を慰問したときのことが載っている。

まさしさんはあたたかい。
SOSを出すといつも応援してくれる。ありがたいと思っている。

Photo

そのさだまさしさんから新アルバム「さだシティ」が送られてきた。
これがなかなかいい。
「名画座の恋」は歌詞もいいし、曲もいい。
「6月に降る雪」なんていうフレーズはぞくぞくしてしまう。

「廣重写真館」「図書館にて」
さだまさしの心の中にある町は、こんな町なんだ。
「黄昏アーケード」「美術館」
なるほど、なるほど。

これからしばらく朝の時間は、コーヒーを飲みながら、さだシティをさまよった後、勉強をはじめたいと思う。

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動画:原発20キロ圏内で行われる大変な作業

2011年6月10日、鎌田は原発20キロ圏内へ。瓦礫撤去の作業に携わる建設業者が案内してくれた。放射線量が全く高くない場所もある。しかしこのエリアの瓦礫の処理をどうするかはまだ未解決のまま。業者は、「作ったものの形が残らない、残ったものを壊していくという作業に、気が滅入る」と嘆いた。

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2011年7月 8日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(76)

「ぼくたちは見た-ガザ・サムニ家の子どもたち-」

古居みずえ監督。
悲しみ、憎しみ、怒りがあふれている。
子どもたちの心が傷ついている。

少女は、両親が下敷きになって亡くなった廃墟で、一日の大半を過ごす。
顔に絵の具を黒く塗りたくる。
殺された両親のことをいつまでも忘れられない。悲しい。

Photo

イスラエルにやってきたユダヤ人たちの同胞は、かつてホロコーストの犠牲になった。
悲しみが身にしみているはずなのに、いまはパレスチナ人を悲しませている。
人間の心には魔物がすんでいる。
そんなことを思わせる映画だ。

しかし、映画は少しずつトーンが変わっていく。
監督が子どもたちの心を救っていくのだろう。
子どもたちの心が変わりはじめる。
「祈ります、そして、神を敬います。そして、我慢します」
両親を殺された怒りは消えようはずもないが、憎しみの連鎖を暴力や戦争へと広げないようにしようとする子どもたちの感性がみえてくる。

イスラエルの大人たちよりも、パレスチナの子どもたちのほうが大人だなと思った。
イスラエルとパレスチナがいつか分かり合える日が来ることを祈る。

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下品な行為

九州電力が佐賀県の玄海原発の運転再開をめぐり、県民向けの説明番組で、原発賛成やらせメールを子会社などに依頼したという。

エネルギー問題は民主主義が問われているといい続けてきた。
いろんな人の意見があっていいはずだが、電力会社がやらせで、一般市民が原発推進を支持しているようにみせようなんて、とんでもないことである。
民主主義を冒涜している。
下品な行為である。

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電力会社と、関連企業や子会社との関係は主従関係があるようで、不透明である。
ブラックボックスのある世界は、平気で下品な行為が行われる。
電力は、ぼくたちの生活に欠くことができない産業。
電力会社もポスト・フクシマを生き抜くために、生まれ変わったほうがいいと思う。

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2011年7月 7日 (木)

原発事故288

7/3付けの読売新聞に、20年後の電気代が原発撤退なら月2121円増、現状維持は372円増という学術会議の試算が出ている。
学術会議がどのような計算でこの数字を出したのか、もう少し詳しく調べる必要がある。
1万年続くかもしれない核燃料廃棄のコストをどう計算しているのか。
今後、原発はリスク対策が厳しくなっていくなかでそのコストは入っているのか。
廃炉にする場合の費用、そして、事故が起きたときの保険料など、きちんと計算されているのかどうか。

エネルギー問題は民主主義が問われていると、新刊『なさけないけどあきらめない』(朝日新聞出版)で書いているが、学術会議のなかに反原発の専門家も入れて、試算の根拠を示しながら議論していく必要があると思う。
その場の空気を読みあっている学者だけを集めて試算した数字では、インパクトが少ない。
この国をどうしたらいいか考える時期にきている今、反対側の意見を聞くべきだと思う。

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一方、同じ日の毎日新聞には、東京大学の茂木源人准教授がまとめたデータを紹介している。
脱原発をしても、2050年では経済的影響はほとんどないという。
太陽光パネルをすべて国内生産し、未利用の土地を活用することなどを条件に、計算されているようだ。

こういうデータをまな板の上にのせながら、脱原発をすすめると、経済が落ち込むのではないかと心配している人たちを納得させ、安全でまっとうな方向へ進むべきだと思う。

高くても自然エネルギーをよしとする選択もあるが、多く人に納得してもらうには、コストの問題は大事である。
原発を止めると、電力が足りなくなり、工場が外国に移り、日本の生産活動が空洞化するのではないかと心配されている。

しかし、茂木准教授が試算するように、新しい仕事と雇用が生まれ、GDPが変わらないという状況になるならば、末代まで核のごみを残すことに関して、どう考えたらいいかという判断ができると思う。

今までこういう議論がなされなさすぎた。

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本日、新刊発売

このブログで事故発生直後からずっと連載してきた原発事故の記事を中心に、救援や取材で入った福島や岩手、宮城で感じたことを、一冊の本にまとめた。

『チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない』(朝日新聞出版、1470円)

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鎌田が、怒っている。
貧しい情報公開に怒り、しだいに原発事故の実態が明らかになるなかで、さらに怒る。

放射能は嫌い。
原発も納得できない。
そう思い、チェルノブイリに20年間、94回医師団を出し、子どもたちの医療支援活動を行ってきた。
にもかかわらず、日本のチェルノブイリ化をとめることができなかった。

自分自身をなさけないと思い続けながら、「原子力村」「安全神話」「科学的」「大丈夫」という言葉に怒りをぶつけてきた。
「風評被害」「差別」「空気の読み遭い」
大嫌いなものがいっぱいあふれている。
この国を何とかしたいと思いながら、書き続けた。

「納得」「信頼」「発想の転換」「雇用」「絆」という5つの言葉を土台にして、困難な時代をどう生きるか考えてみた。
小異を捨てて、子どもたちにどのように手を差し伸べたらいいか考え、実践してきた記録である。
苦悩しながら、ポスト・フクシマの、新しい「生きる哲学」を考え続けている。

福島原発事故が起こる以前、チェルノブイリの汚染の地で生きる人びとや命のことを書いた『なげださない』(集英社)。
文庫化され、集英社のナツイチの一冊にもなっている。
こちらも、あわせてお読みください。

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2011年7月 6日 (水)

誕生祝、ありがとう

日テレの「ニュースエブリィ」の方たちが、誕生日を祝ってくれた。
キャスターの藤井さんや丸岡さん、小熊さん、お天気の木原さん、そして、そらジロー。
そらジローは頭の感じがつるつるしていて、ぼくは勝手に親近感をもっている。

Photo 木原さんとそらジロー

Photo_2 チョコレートケーキ、とてもおいしかった

ありがとうございました。

7/7の木曜日は16.53~、ニュースエブリィに出演します。
ぜひ、ご覧ください。

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原発事故287

7/1付けの朝日新聞に、国境をまたぐ大送電網構想という記事が載っていた。
北アフリカのモロッコの砂漠のなかにあるウジュダで太陽熱発電をし、スペインに向けて、地中海の底に直流送電線を敷設する。

このことはぼくは、すでに1年前、モロッコを旅し、『ウエットな資本主義』(日本経済新聞社)のなかに書いた。

政府や電力会社は原発のコストが安いと言っているが、実際には天然ガスや水力発電のほうが安いという意見もある。
まちがいなく今回の原発事故で、賠償金やより高い安全性のハードルをクリアしていくとすれば、原発はもっと高い電力なるだろう。
もともと安くない原発の電力が、もっと高くなるのだ。
しかも、原発の使用済み燃料の行き場所がないという大きな問題がある。
再処理費用は実際よりも少なく見積もられたり、100年近くの年数、再処理にかかるコストも入れれば、膨大なコストになるはずである。
原発一基を誘致するのに、450億円の交付金が税金から出ていく。
これも、原発で電力をつくるための必要経費なのである。
こういうものをすべて足していけば、膨大なコストになっていく。

Dsc_0155 昨年、訪ねたモロッコ

太陽光発電はまだまだコストが高いが、技術革新と普及によって価格は低下していくだろう。すでに2010年、一年間で原発一基分に相当する100万キロワットを突破した。

天候に左右され稼働率がよくないという太陽光発電だが、原発だって点検のたびに休んだり、いまは再開が認められず休止している期間が長い。

太陽光発電が普及するように政策誘導して、発送電の分離をきちんと行えば、毎年、原発一基分の電力を自然エネルギーに切り替えることはそんなに難しいことではないと思う。

それまではしばらく、天然ガスの発電でしのぎ、自然エネルギーを広げていくことが大事なのではないか。

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お知らせ

本日6日、FM世田谷の小室等さんの番組「アフタヌーンパラダイス」(13.0~)に出演する。
鎌田が出るコーナーは、16.05~。
明日発売する新刊『なさけないけどあきらめない』(朝日出版社)を紹介してもらいながら、小室さんに鎌田を“料理”してもらう。

小室さんは7/11、音楽活動50周年ライブを控え、ますます円熟味を増している。
小室さんのこの番組にはこれから時々、水曜日におじゃまする予定だ。

ぜひ、お聞きください。

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2011年7月 5日 (火)

改正法、一年

改正臓器移植法が施行されて1年になる。
本人の明確な意思表示がなくても、家族の同意で移植が行われるようになった。
改正後、54例の臓器移植が行われた。
それ以前は、年間10件程度だったので、件数は明らかに増加した。
しかし、心停止後も含めた臓器提供者の全体数はあまり増えていないようだ。
子どもの臓器提供は15件が検討されたが、実際に行われたのは1例だった。
病院側が説明したが、家族が望まなかったり、虐待が完全に否定できないために病院が説明しなかった例もあったという。

1107042__ 木陰が気持ちいい諏訪中央病院の庭

生体腎移植をめぐる臓器売買で、内科医が逮捕された。
この医師は、腎不全で透析を受けていた。
宇和島徳州会病院で腎臓移植を行っているが、半年間で2度も養子縁組をしていることになぜ疑問をもたなかったのだろうか。
ふつうの病院の倫理委員会ならば、疑問をもつのではないだろうか。
どんどん臓器移植をしてしまう傾向はおそろしいように思う。

もちろん、今回の事件は、臓器移植法の明らかな違反である。
金銭が動く臓器売買を認めてしまえば、公平性が保てなくなる。
こういう事件があると、せっかく臓器移植が少しずつ増えはじめているのに、またストップしてしまいかねない。
ルールに違反してでも、自分さえよければいいという考え方は、どんなことがあっても慎まないといけない。

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原発事故286

日本で使っている、食品や水の放射線物質の指標値は、世界的にみると厳しい基準値になっている。
アメリカよりも厳しいことは、すでに書いた。
EUは、4月12日に日本と同じ基準値に切り換えている。

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/283-b965.html

世界保健機関と国際連合食糧農業機関によって設置された食の安全を保つための国際食品規格委員会(コーデックス委員会)では、飲料水、牛乳は1000ベクレル/キロ、野菜、穀類、魚、肉ともに1000ベクレル/キロとしている。

これらを見ても、日本の指標値そのものは甘い数値というわけではない。
ただ、現在の日本国民の不安感を軽くするには、もっときめ細かい情報提供が必要になるのではないか。
暫定基準値以下ならば市場に出すのはOKであるが、暫定基準値以下でも放射線量の値がいくつなかのか、地域ごとでもいいので示されれば、牛乳や野菜を買うときの参考になるのではないかと思う。

1107041__ 緑の陰が濃くなった諏訪中央病院

反核三部作の映画を撮った鎌仲ひとみさんと先日、対談をした。
この対談は、7/11発売号の「週刊朝日」に掲載される。

鎌仲さんは、暫定基準値以下の商品を出しながら、その放射線量も記入し、それによって値段に差をつければいいのではないかと言っていた。
なるほど、暫定基準以下の放射線量の程度と価格を比べて、食べるか食べないかを判断できる。
民主主義だから、情報がきちんと公開されて、選択できればいいのである。
暫定基準地以下のものを食べてもいいと納得できれば、食べればいいのである。

ぼく自身の生き方としては、精神衛生上、暫定基準値以下ならばもう放射能のことは気にしないで食べたい。
それがぼくの心と体を守るやり方だと思う。「気にしない」という選択もあってもいいと思う。

日本の暫定基準値をもっと厳しくすべきという意見もあるのはわかっているが、世界と比べるとまあまあのラインであることを考えると、このへんで仕方ないかとぼくは思う。

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2011年7月 4日 (月)

思いを継ぐ

昨年、大学の野球部の1年先輩(ぼくがキャッチャーで、先輩はピッチャー)から講演を頼まれ、北関東のまちを訪ねた。
講演の前、一人の患者さんに会ってほしいといわれ、病室に案内された。

その患者さんは、この地域では信頼される看護師であり、同時に看護学校の教授も長く務め、若い看護師を育てていた。
がんの末期であった。
それから半年ほどして、亡くなられた。
40歳前後という若さだった。

ご主人から何度もお手紙をいただいた。
奥さんが看護学校の授業で資料に使わっていた参考書や本を全部、諏訪中央病院看護専門学校に寄贈してくれることになった。あたたかい申し出だった。

1106294__ 諏訪中央病院の庭

最近、また、ご主人から手紙をもらった。
「妻のピアノを処分した代金を寄付させていただきたい」
お金が入っていた。
看護学生のために、本の購入に充ててほしいという。
「東北の大震災で多くの看護師さんがたいへんなご苦労をしていると思います。
看護学生がはやく活躍できるといいですね」という文が書かれていた。

ご主人は生活を180度変え、尾瀬の湿原で山林の管理をするという。
なんともかっこいいなと思った。
最愛の妻を亡くし、つらいのだろう。

あたたかな応援に感謝し、亡くなられた方の思いを継いで、看護学生をしっかり育てないといけないと思った。
いまは三年生の「看護哲学」の授業が終わり、一年生の「看護概論」を教えている。
これからキューブラー・ロスのがんになった後の患者さんの心の変容について授業をする予定だ。
全力でいい授業をしたいと思う。

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鎌田劇場へようこそ!(75)

「いのちの子ども」

イスラエルのドキュメンタリー映画。
イスラエルのプラパガンダだと思い、なかなか観る気になれなかったが、8月末、パレスチナ側からみた命の絵本を出版するので、念のために観ておこうと思った。
これが、傑作なのである。

イスラエル人の監督であるが、自分のポジションをニュートラルにしようと努力しているのがわかる。
先天性免疫不全のパレスチナの子どもを、イスラエルの医師と助けようとする。
カメラをまわして、お金を集めようとする。
そこへ、イスラエルとパレスチナの戦いで、息子を失ったという匿名の人物から、骨髄移植の費用500万円を全額寄付すると申し出があった。
このお金も含めて、イスラエル側が全部仕組んでいるのではないかという人もいるかもしれない。

Photo

しかし、この映画はドキュメンタリー。
パレスチナ人の子どもを守ろうとする母親の姿は本物である。
子どもをイスラエル人に助けてもらったとしても、聖地エルサレムを奪還するために息子がジハードの戦士になることもあり得るというところは圧巻。
ドキュメンタリーであるが、母親はまるで女優のようだ。
命に対してきちんとした哲学をもっているのがすばらしい。

イスラエルがガザ攻撃をするところも出てくる。
反対に、パレスチナ側からイスラエル側にミサイルが打ち込まれる場面も出てくる。
できるだけ、平等になるように配慮しようとしているのがわかる。

何度もテロ攻撃やイスラエル側の攻撃で、映画の企画がストップしかかるが、子どもの命を守ろうと必死になるイスラエル人やパレスチナ人がいることが救いになっている。
ガザ攻撃のなか、必死に安否確認をする姿は感動的である。

両国が小さな命を守り合うことで、お互いの憎みをときほぐしていくことができるのではないか。
平和という希望を感じさせる映画だと思った。

7/16~、ヒューマントラストシネマ有楽町で公開される。

http://www.inochinokodomo.com

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2011年7月 3日 (日)

まっとうな作法

警察関係の雑誌に、ぼくのインタビュー記事がのっている。
「まさか、鎌田先生にインタビューを承諾してもらえるとは思わなかった」という。

今回の震災で、ぼくは自衛隊や消防、警察官が厳しい状況のなかで働いている姿を見てきた。
頭が下がる思いだった。
インタビューのなかでも、「昔は(警察は)嫌いだったが」と正直に語ってしまった。
でも、震災のなかでの警察官の働きを正直に尊敬の念をこめて語った。

Img_3631 大震災の厳しい状況のなか、警察官の働く姿に頭が下がった

いいと思ったことはいいと語れる国にしたい。
右とか、左とか、なんてもう古臭い。ガラガラポンにして、右だった人が、あることに関しては左みたいな考えをする、反対に左だった人が右よりの発言するという柔軟さが、この国を強くする。
河野太郎はこのごろ、テレビや新聞でよく取り上げられているが、保守である立場の彼が、原発に関してはちょい左的な発想で脱原発を訴えているところがおもしろいのである。
もちろん、反対の話があってもいい。
原発をやめる前に、本当に自然エネルギーでまかなえるのか、経済界の人のような発言をするちょい左の人がいてもいいのだ。

いい活動に対して評価したり、感謝したりするのがまっとうな作法である。
ぼくたちの国は、このまっとうさが問われているような気がする。
勇気をもって、まっとうでありつづけたい。

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子どもたちにどう教えるか

来年発行される教科書の副読本などに『雪とパイナップル』や原発の問題が取り上げられる。

教科書で原発がどのように取りあげられているか、見たことがあるだろうか。
放射性廃棄物の処理に限界があることなどは、教科書では書き込めていない。
チェルノブイリのことも一時期、チェルノブイリの汚染地図と日本地図を重ねて載せたこともあったが、その後は具体的な記述はない。
国の原発推進策に自主的に配慮している感じがする。
政権が原発推進の立場をとったとしても、子どもを育てる教科書のなかでは、原発推進だけでなく、それに反対する二つの考え方が併記され、子どもたちにきちんと示されていることが大事だと思う。

110627__ 諏訪中央病院の花咲く庭

九州の方から、小中高校で、『雪とパイナップル』の読み聞かせをしているが、「メッセージ色が濃い」といわれ、学校での読み聞かせは中断させられたというお便りをもらった。

昔のように憲兵隊とか、具体的などこかの組織が妨害しているというのではない。
ぼくたちの心のなかある「空気」が、まわりの顔色をうかがい、その時代の権力者の考えていることにおもねってしまい、子どもたちにいろんな考え方があることを教えられない国になっているのである。
言い換えれば、本当の自由がなくなりかけているということ。
そのことに気がついてない人が多い。

ぼくの『雪とパイナップル』は、ちっとも過激ではない。
反原発的な言葉もまったく出てこない。
それにもブレーキがかかる。

ぼくは全国で講演会をしているが、原発がある市町村ではほとんど行われない。
だれが邪魔しているとかではなく、おそらく、その町にある「空気」がそうさせるのだろう。

エネルギー問題は民主主義が問われているといい続けてきた。
国民はもっと強くならないといけない。
いろいろな考えがあることを聞いたうえで、自分の考えを決めればいいだけだ。
いろんな人の考えを聞かなければ、正しい判断はできなくなる。
講演依頼は年間500以上あるから、もちろん原発立地市町村から呼ばれても行けないが、もし呼ばれたら、ほかをキャンセルしてでも、ボランティアででも行きたいと思っている。

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2011年7月 2日 (土)

被災地に一冊の本を

スマイルブックプロジェクトという、被災地に一冊の本を送る運動が行われている。
本好きの人はこの3ヶ月半の間、活字渇望症に陥っていることだろう。

朝日新聞社や各出版社が協力し合い、本をお届けするということだ。
ぼくの『この道 より道  まわり道』(潮出版社)も協力させてもらう。
被災地の人が読んで、元気をだしてもらえれば、こんなにうれしいことはない。

大きな災害に直面したが、より道、まわり道をしても、必ず夢にたどり着けることを祈っている。

Photo

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スキーで左ひざの半月板を損傷したが、震災のために、ずっと手術を延期してきた。
諏訪中央病院の整形外科と相談し、この夏の間に、関節鏡で手術をしようということになった。

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礼状のあて先

過日、ライフデザインセンター10周年記念で講演をしてきたが、そのお礼状が届いた。
神宮寺住職の高橋さんとの対談がおもしろかったようだ。
「神宮寺の檀家であることが誇りであります」と書いてあった。

1106186__ 岩次郎小屋のエゴノキ

笑ってしまったのは、その手紙に書かれたあて先。
「茅野市八ヶ岳山麓 鎌田實先生」とある。
こんなアバウトな住所で、郵便物がついてしまうなんて。
郵便配達をしている人のあたたかな配慮だと思う。

ビジネスライクに終わらせないで、そこにあたたかな血を通わすことができると、世の中はもっと住みやすくなる。

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2011年7月 1日 (金)

いい風

長野県でこどもリフレッシュ募金をはじめた。
とてもいい風が吹きはじめた。
すでに伊達市から450人、南相馬から40人の申し込みがあるというが、今後も増えそうな状況である。

1106296__ 蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

カタログハウスの企画も、母子400人の定員が大幅にオーバーしそうで、くじ引きになる可能性があるという。

子どもたちの健康を守ろうと、大人たちが一生懸命になりはじめている。
いいことである。
どこかを批判しているのではなく、やれる人がやれるところから汗をかくということが大事だと思う。

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鎌田實の一日一冊(100)

「大震災のなかで--私たちは何をすべきか」(内橋克人編、岩波新書、861円)

33人のエッセイを集めた。
3.11の意味や支援、復興の形が語られている。

そのなかで盟友、神宮寺の高橋卓志住職が「大津波がのみこんだもの、震災と伝統仏教」というテーマで書いている。

Photo_2

震災発生から長い間、お風呂に入れなかった入釜谷地区の人たち。
お風呂が壊れなかった1軒の家に、みんながもらい湯をしていたが、長期戦になり、お互いに負担が大きくなっていた。
そんなとき、巡回診療につきあって、被災した人たちの聞きとりをしていた高橋住職は、敏感にお風呂の問題をキャッチし、バスをチャーターして、集落の人たちをお風呂につれていった。
2週間続けた。
その後、道の駅にある温泉に自分たちで行けるようになり、その入浴代を応援するという形で現在も続いている。

高橋さんの視点のすごさは、生きている人の今をどう支えるかという緊急課題にこたえながら、僧侶として亡くなられた方を大切にするという配慮が行き届いていることである。
遺体安置所に入っても、警察の方とすぐに信頼関係を結び、静かにお経をあげる。
高橋住職の読経に、その場を訪れた方たちは感謝し、警察官までもが彼に最敬礼をするのである。
高橋さんといると宗教の大切さがよくわかる。

高橋さんはいつも宗教の危機について、厳しく語っている。
今回も、大災害のなかでの宗教のあり方を彼流に問うている。鋭い。

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破傷風に注意

宮城県で破傷風3例が発生している。
諏訪中央病院の奥先生が、石巻に支援に行ったとき、破傷風にかかった50代の男性にあった。
命拾いしたので、たくさんの人に破傷風の危険を知ってもらいたいと語ったという。

Img_3631 ガレキ撤去作業をする人は、破傷風に注意

破傷風は、ガレキなどの廃材や古いクギで刺し傷や切り傷をつくったりしたとき、注意しなければならない。
30~50%が致命率と言われている。

破傷風には、予防接種が有効である。
1968年以降に生まれた人は、三種混合ワクチンを受けているが、子どものときに受けていても10年間隔で追加接種をしないと免疫が確立しない可能性がある。
1967年以前に生まれた人や予防接種をしたことがない人の場合は、免疫グロブリンの注射も必要になる。

症状は、あごのこわばりや筋肉のけいれんで、傷を受けてから5~10日後に現れることが多い。
傷をつけたり、クギを踏んだりしたときは、破傷風の注意をしよう。
知らないと我慢してしまうが、我慢すると命にかかわる。
ガレキ撤去などにかかわっている人は、ぜひ、知っていてもらいたい。

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