鎌田實の一日一冊(101)
「なみだ」(文・細谷亮太、絵・永井泰子、ドンポスコ社、1260円)
娘を亡くした母親の涙が語られている。
美しい文と美しい絵がマッチした素敵な絵本である。
娘を忘れられない母の気持ちが、涙の雫のなかに見事に描かれている。
母親のおなかに新しい命が芽生える。
それでも涙は落ちてくる。
親子3人で何をしていても、亡くなった娘を入れて家族は4人。
涙は、徐々にあたたかなものになっていく。
母親もだんだん年をとっていく。
おばあちゃんになったときには、おばあちゃんの涙が流れる。
涙の質が変わっていく。
この母親は家族の絆のなかで安心して涙を流している。
家族の絆の大切さが見えてくる本だ。
東日本大震災で2万人近くの人の命が亡くなった。
いまこの日本で、生きている人たちの多くの人の心を支えてくれる絵本がここにある。
「いつもいいことさがし2」(細谷亮太著、暮しの手帖社、1470円)
細谷亮太先生は、聖路加国際病院の小児科医。
どんな毎日のなかにも必ずいいことがある。それを探すことが人生を豊かにしていくと考える著者が、医師として父親としての日々を綴っている。
「がんばれについて考えました」というエッセイがあり、ぼくの父・岩次郎のふるさと青森のねぶたの話が出てくる。そのなかで鎌田の『がんばらない』についても話が展開されている。
「がんばんべえなあ」
「がんばれ」という言い方をちょっと変えるだけで、素敵な言葉になったり、力のある言葉になったり、支える言葉になったりするような気がする。
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