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2011年8月16日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(83)

「チェルノブイリ・ハート」

2003年のアカデミー賞ドキュメンタリー短編賞でオスカーを受賞している。
いい映画であるが、最後が気になる。

心房中隔欠損や心室中隔欠損、そのほかの複雑な心臓奇形の子どもは、日本でもある比率で、それなりにたくさん発生している。
それらの子どもたちは粛々と心臓外科手術を受け、救命できるようになっている。

が、ベラルーシでは医療水準が低いためになかなか心臓手術の順番がまわってこない。
そこにアメリカの心臓外科医がやってきて、手術を行っている。
母親たちは泣いて喜ぶ。

Photo

この映画は、女性ドキュメンタリー作家がチェルノブイリの現地に入る話から始まって、心臓に疾患をもつ子どもが暮らしている施設を取材し、そして、最後にアメリカの心臓外科医が乗り込んで手術をしている。

この映像をみていくと、心臓に重大な疾患をもつ子どもは全部、チェルノブイリ原発事故が原因というストーリーになってしまう。
だが、心臓の奇形は、本当にチェルノブイリ原発事故によるものか科学的には実証できていない。
この映画でも、根拠は語られていない。

原発推進の人たちは卑怯なかたちで安全神話をつくった。
それと同じように、チェルノブイリや福島の悲劇が、神話になってはならない。
神話よりも、事実を見ていくことが大事なのだ。

心室中隔欠損や心房中隔欠損などで、心臓の手術を受けた福島の子どもを「フクシマ・ハート」などと呼ぶようなことになるとすれば、おそろしいような感じがする。
悲劇の神話をつくりあげるのではなく、3.11以前と比較して、丁寧にフォローしていく必要があると思う。
原発の安全神話を批判するなら、勝手な神話をつくらないようにしたいものだ。

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