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2011年8月

2011年8月31日 (水)

9/9講演会

9月9日、鎌田實のチャリティ講演会がある。
テーマは、「チェルノブイリ・フクシマ―困難な時代をどう生きるか」。 
                    
日時:9月9日(金)9;45~11:15(開場9時)
会場:豊島公会堂(豊島区東池袋1-20-10  池袋駅東口徒歩5分)
入場料:1000円 (うち200円を福島に寄付)全席自由

主催:ミツバチin東久留米
「ミツバチin東久留米」は、鎌仲ひとみ監督作品の原発建設で揺れる祝島とエネルギー自立へ向かうスウエーデンを描いた「ミツバチの羽音と地球の回転」を、5月に東京の東久留米で自主上映した主婦仲間です。
連絡先 「ミツバチin東久留米」(代表 志藤美和さん090-9151-9186)
888higashikurume★mail.goo.ne.jp(★→@)

チケットは、eプラス(http://eplus.jp/sys/main.jsp)ファミリーマートで販売中。

ぜひ、講演を聴きに来てください。

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原発事故324

福島市と南相馬市のユズから、680~2400ベクレルの放射性セシウムが検出された。

チェルノブイリ原発があるウクライナの規制では、野菜は40ベクレル以下、果物は70ベクレル以下。
日本は果物に対する暫定規制値はなく、野菜は大甘の500以下になっている。

もっと内部被曝を防ぐためには、食品の規制値はもう少し下げたほうがいいと思う。
魚も肉も野菜もみんな500ベクレル以下というのは、どういう根拠なのか。
放射線に汚染されたものはできるだけ市場に出さないという原則を貫くなら、ウクライナの規制値くらいのほうがいいように思う。

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鎌田實の一日一冊(105)

「空白の天気図」(柳田邦男著、文春文庫、830円)

原爆によって壊滅した広島に、超大型台風が迫ってきた。
死者・不明者3600人を出した枕崎台風である。
原爆によって通信も組織も壊滅した状況下、自らも放射線障害に苦しみながら、観測と調査を続けた広島気象台のスタッフたちの闘いを描く傑作ノンフィクション。
柳田さん渾身のノンフィクション、さすがに読みごたえがある。

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広島に原爆が落ちた後、19キロ離れた山村に黒い雨が降った。
気象台のプロフェッショナルは、それを記録する。
それが後に、被爆者の補償問題に役立っていく。
倫理観をもったプロフェッショナルが、国民のためにできるだけのことをする。
その大事さが、この本を読むとよくわかる。

はたして今回のフクシマの原発事故では、国民の命や健康を守るために全力投球したプロフェッショナルはいたのか?

1981年に新潮社から発行されたものの文庫化。
鎌田は解説を書かせてもらった。

「子どものとき、戦争があった」(いのちのことば社出版部編、いのちのことば社、1260円)

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ぼくの友人、広島で被爆した笹森恵子さんのことが書かれている。

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2011年8月30日 (火)

雫の音楽

「アクアコンフォート 八ヶ岳の森・泉の雫の音で奏でる神秘の音楽」(神山純一)がついにできた。

人間の60兆個の細胞にやさしく語りかける、美しい音楽。
水の音楽で、ぼくはざわめきながら、ときめき、落ち着く。
細胞のなかの水は、空も、大地も、海も、すべての生き物も、みんなつながっている。
神山純一の音楽はそのつながりを教えてくれる。

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NHKラジオ「鎌田實 いのちの対話」のテーマミュージックは、神山純一さんの「蓼科紀行」を使わせてもらっている。

たくさんの人から、いい音楽だと好評だ。
ぼくが今年、NHK放送文化賞を受賞できたのも、この音楽のよさが理由の一つだったかもしれない。

この新アルバム「アクアコンフォート」は、不思議な音楽で、眠れないときには睡眠導入にいいし、仕事のときには集中力を増す。

アルバムのなかの言葉を鎌田が書かせてもらった。おこがましいが「監修・推薦」になっている。
自然の雫の音を集めてつくった音楽。
ぜひ、聞いてください。

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明日、新刊発売

『希望 命のメッセージ』(東京書籍、1470円)が明日31日発売される。

JIM-NETの佐藤真紀事務局長が撮った写真に、鎌田實がエッセイを書いた。
鎌田初の写真エッセイである。

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東日本大震災とイラクの子どもたちに焦点を当てた。
津波に遭った小学校の壁に奇しくも残った「希望」という習字の文字。それを表紙のタイトルにした。
もう一枚残っていた「希望」の字を書いた小学生は、津波で命を奪われたという。
子どもたちの「希望」がこの津波で流された。
しかし、生き残った人たちが、彼らの「希望」を引き受けながら、生き続けなければならない。
そう思って、一冊の本にした。

この本の利益や印税はすべて、石巻の千人風呂プロジェクトや河北地区の在宅医療、福島の子どもたちを守るための活動資金に使われる。

自分で言うのもおかしいが、本当にいい本ができたと思う。
子どもをもつ親御さんや学校の先生にも読んでいただきたい。
子どもたちに大震災をどう伝えるか、ヒントになると思う。
福島や石巻の子どもたちを救うため、そして、イラクの子どもたちを救うために、応援してください。

この出版を記念して、鎌田の講演会とサイン会を行う。
9月16日午後7時から9時、丸善丸の内本店(東京駅丸の内北口オアゾ内)のセミナールーム。
応援に来ていただければうれしいです。

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2011年8月29日 (月)

福島産の野菜

カタログハウスの東京店が、福島産の野菜の販売を始めた。
日本の暫定規制値を超えない野菜であることはもちろんだが、日本よりもさらに厳しいウクライナの規制値を超えない野菜を売っている。

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ウクライナの規制値はなかなかうまくできている。
野菜は日本が500ベクレルに対して、ウクライナは40ベクレル。
果物は日本ではないが、ウクライナでは70ベクレル。
水は日本が500ベクレルだが、ウクライナでは2ベクレル。
肉は日本が500ベクレルなのに、ウクライナでは200ベクレル。
魚は日本が500ベクレルなのに、ウクライナでは150ベクレル。
幼児の食品の基準値は日本ではないが、ウクライナではすべて40ベクレル。

福島から来ているお母さんたちの話を聞くと、日本の食品の基準値に不安や不信感をもっているようにうかがえた。
ウクライナのように厳しい基準値のほうが、風評被害は起こりにくいし、不安や不信感も払拭しやすい。

ちなみに、ぼくたちJCFが医療支援をしているベラルーシでは、飲料水は10ベクレル以下、野菜は100ベクレル以下、肉は200ベクレル以下である。

民主党も新政権ができたら、食品の安全規制値を見直したほうがいいと思う。

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東京店に並べられた福島産の野菜は、ほどんどがND(不検出)となっていた。
店には線量測定器が置いてあり、きちんと○ベクレルという数字が示されているので、買うための判断ができる。買いやすい空気になっている。
26日の初日は大混雑だったが、東京の人など買いに行ける方は福島の農家を応援してあげてほしい。

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原発事故323

午前中、原村診療所で診察した後、尖石遺跡で、福島っ子の夏休みで信州に来ているお母さんたちに放射能の話をした。
お母さんたちの心配は尽きない。

健康診断では、健康に対する心配事を記入する欄があるが、多くの人がたくさん記入していた。
震災直後、断水になり、3/15前後に水をもらうために外で立って並んでいたが、そのときに被曝していないか心配する人がいた。
こういうのを聞くと、政府や東電の対応に憤りを感じる。
彼らにとっても何がなんだかわからなかっただろうが、「大したことない」ということを官房長官が必死に繰り返し、原発推進の科学者が「大丈夫」と言い続けた。
しかし、実際は、11日の夜、14~15日にメルトダウンが起きている。
さらに21日には再溶融が起きたと思われる。
この時期に、浪江、飯舘、伊達、福島、郡山などにたくさんの放射性物質が飛散している。
「大丈夫」といってごまかすのではなく、事故の重大性を話すべきだったと思う。
せめて屋内退避を命じていたら、と悔やまれる。

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庭が毎時2.5マイクロシーベルトという家がけっこうあることに驚いた。
それでも、転居したくてもできないという。
そこで暮らし続けなければならないとしたら、どうしたらいいか、みんな心配している。
年間20ミリシーベルト以下は大丈夫と思わずに、0.1マイクロシーベルトでも下がるように除染活動をするようにお母さんたちに話した。

行政が調査している福島産の野菜も、ほとんど放射線量が不検出になりはじめている。
「不検出」とは、まったくゼロか、あっても10ベクレル以下。
野菜の宅配のらでぃっしゅぼーやも、多くの福島産の野菜は3~10ベクレル以下になっていると聞いた。
ほぼ心配ない段階まで下がっていると思われる。

Img_4492 福島っ子の夏休みで信州に来ている子どもたち

しかし、ホウレン草やトマトは低いか、サツマイモやジャガイモは比較的高い。
子どもはできるだけ気をつけたほうがいい。
今年は、おそらくセシウムは土の深いところに達してないと思われるのでそれほど心配ないかと思われるが、来年以降は、放射性物質が雨で深く浸透していくため、地下にできる野菜は要注意である。

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2011年8月28日 (日)

鎌田写真館~美瑛は秋の気配

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美瑛の丘は、すでに夏から秋に変わろうとしている。

そばの花やラベンダーが刈られはじめ、少し彩りがさびしかったが、青々とした丘の光景は、北海道のどの風景よりも好き。

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美瑛にある「拓真館」には、前田真三氏、前田晃氏の写真が展示されている。
そのなかに、鎌田の詩も6点ほど一緒に飾られている。
ぜひ、北海道を訪ねたら、美瑛の拓真館まで足を延ばしていただきたい。

「PHPほんとうの時代」で、鎌田が詩を書き、前田さんの写真とともに掲載している。
最近、前田晃さんの新しい写真集「ミッフィーのいる丘」(講談社)が出た。
こちらでも、美瑛をご堪能いだたけると思う。

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2011年8月27日 (土)

バルトークの世界

サイトウ・キネンフェスティバルが松本で開かれている。
バルトークのバレエ「中国の不思議な役人」を見てきた。
不気味な作品である。
山賊が、美しい娘に美人局のようなことをさせ、役人を殺して金を奪おうとする。
だが、殺されても殺されて役人は生き返り、恋した娘にとりつく。
舞台は、エロスやタナトスに迫ろうとしている。なかなか優れた舞台であった。

もう一本はオペラ「青ひげ公の城」。
これも、バルトークの1911年ごろのハンガリーで作られた作品。
これまた幻想的な作品で、青ひげ公の城には血塗られた部屋や涙の部屋など7つの部屋がある。7番目の扉の向こうには先妻たちが生きていて、第一の女性は夜明け、第二の女性は昼、第三の女性は夕べを支配している。
主人公の姫は、青ひげ公から「お前が一番美しい」といわれ、第四の女性として扉の向こうに消えていく。
合間に幻想的なバレエが入る。
不思議な味わいのオペラに仕上がっている。

本来は小澤征爾が指揮をとるはずだったが、肺炎のため、急遽、指揮者が代わった。
小澤征爾だったら、もっともっとつややかな作品になった気がするが、十分不思議の世界を堪能した。
それにしても、なぜバルトークを選んだのか、小澤征爾に聞いてみたい気がした。

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六花亭を訪ねて

JIM-NETでは、毎年バレンタインのチョコ募金を行っている。
今年は、イラクの子どもの医療支援のためだけでなく、東北の子どもたちを支える活動にお金を使おうと考えている。
昨年は12万個が完売。今年は14万個をめざして、イラクの子どもの絵を使い、いま缶のデザインがすすめられている。
すばらしいものになりそう。
六花亭のチョコレートだから、と買ってくれる人もいる。

その六花亭を訪ねてきた。
ゲストルームで夕飯をいただいた。
翌日は富良野にある六花山荘で昼ごはんを食べた。
予約制であるが、一度行ってみる価値がある山荘である。
抜群においしい。

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Img_4299 帯広空港に近いところに、六花亭の工場と六花の庭がある。この庭園がすばらしい。そこには、日経新聞で連載している小泉淳作の絵がたくさん収蔵されているすばらしい美術館がある。

小田社長と雑誌の対談をし、興味深い話をうかがった。
この会社では、数字目標をもたいない。成長戦略ではなく、成熟戦略をめざしているという。
社員はパートも含めて、全員が有給休暇を使う。
今回の震災でボランティアに行くとには、有給休暇の20日以外に5日間のボランティア休暇もとれる。
さらに明確な計画案も出せば、外国でのボランティア活動もできるという。

社員は、精神的健康度が高いと小田社長。
有給休暇を使ってリフレッシュすることは、心の健康にはいい。
人にもやさしくできるのである。

JIM-NETでチョコルート募金をはじめるにあたって、チョコレートをどの会社にお願いするか考えたとき、森永や雪印など大手の会社でもきっと協力してくれるだろうと思ったが、地方の都市で哲学をもったお菓子づくりをしているところがいいと思って、六花亭にお願いした。大成功であった。
六花亭のチョコなら食べたい、買ってみたいという人が多いのである。

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六花亭は、北海道から店を広げていない。社長の方針である。
生キャラメルの大ブームを起こし花畑牧場は、成長戦略をとり、東京に進出した。
だが、いまは苦しそう。
六花亭は、北海道を出ないと言っている。このへんのわきまえ方がすごい。
すぐれたリーダーシップである。
六花亭のブランドは全国によく知られているが、おもに北海道で買うことができるというのがミソなのだ。

ぼくたちがお願いしているチョコレート募金のチョコを、利益のあがらないのに14万個もつくるというのは、とても大変なことだと思う。
本当に頭が下がる。
これからのチョコ募金のシーズン、六花亭のチョコレートとともに、協力を呼びかけていきたいと思う。

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2011年8月26日 (金)

おしらせ

8/27(土)、「報道原人」(BS11、10.0~)に出演する。

「チェルノブイリとフクシマを見た」と題し、二つの原発事故の被害を比較しながら、45分間たっぷりと話をする。
『なさけないけどあきらめない』で書いたいろいろなデータやチェルノブイリの写真を紹介しながら、両者の相違点、チェルノブイリから学ぶべきことを話す。

BSがご覧になれる方は、ぜひご覧ください。

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いのちの絵本、本日発売

鎌田の3冊目の絵本『アハメドくんのいのちのリレー』(集英社)が本日発売される。
絵は安藤俊彦さん。とても迫力があり、それでいてかわいらしく、たいへん気に入っている。
ピーターバラカンさんには英訳をつけてもらった。
瀬戸内寂聴さんには帯を書いてもらった。
たくさんの人が何度も泣いたと言ってくれている。

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息子を殺された。
にもかかわらず、父親は、息子を銃撃した敵の国の病気の子どもを救うために、息子の心臓を差し出した。
こんなことが人間にできるのだ。

世界のなかでも最も危険な地域といわれているパレスチナとイスラエルで、命のリレーが行われた。
困難も、憎しみも、横におくことができるのである。

ぼくは、「にもかかわらす」という魔法の言葉を絵本のなかに仕込んだ。
それは、絶望を希望に変える言葉になると思う。

大人が読む絵本である。
ぜひ、ご覧ください。

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2011年8月25日 (木)

野菜山盛り

今年も、鎌田農園で野菜が採れた。
にんじん、トマト、きゅうり、大葉。
おかかとしょうゆの味付けで、シンプルにいただく。

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山盛りの野菜が鎌田の健康法。
野菜の色素は、抗酸化力を高める働きがある。
血管を若々しく保ちながら、がん予防にもつながる心強い味方だ。

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21世紀型資本主義

夕張に行ってきた。

財政破綻した夕張にツムラが工場を出して2年。
畑では、漢方の生薬に用いるソヨウ(しその葉)が栽培され、「てみるファーム」の人たちが、栽培や管理の方法を勉強しに来ていた。
てみるファームは、障害のある人たちの就労の場。
ツムラは、生薬の栽培をてみるファームに委託することで、彼らの自立を手助けしようとしている。

110823__ 漢方の生薬ソヨウが栽培されているツムラの畑

障害のある人たちが町中のアパートで生活できるようにするには、最低でも月額11万円の給料が必要になる。
障害年金をもらっている人でも、町中で一人暮らしをするのは難しい。
ツムラの仕事は、とてもありがたいと言っていた。

ツムラの夕張工場で、芳井社長とお会いした。
以前、手紙をいただいたことがあり、ずっと会いたい人であった。
かつてツムラは経営的に厳しい時期があったが、今では会社経営を軌道にのせ、過去最高の利益を更新している。
すごいのは、財政破綻した町に工場を出し、雇用を広げようとしたこと、そして、障害者の自立をサポートしていることだ。

競争相手をふみつぶし、自分だけ大儲けをすればいいというのは過去のスタイルである。
あたたかな資本主義こそ、21世紀型の資本主義だ。
魅力的な人間にお会いすると、こちらもいい刺激を受ける。
とてもいい時間だった。

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2011年8月24日 (水)

おしらせ

「日経マネー」10月号で、野菜の宅配のらでぃっしゅぼーやを取材した。
きめ細かく放射線量の測定をしているという。
食の安全へのこだわりで、株価も上がっている。
福島の農家を助けたいとも言っている。

1107177__ らでぃっしゅぼーやの緒方社長(左)と

社長の緒方さんとは気が合った。
ぼくらJCFでは南相馬の除染作業を開始したが、農地の除染作業ならば募金活動に協力してくれるとも言ってくれた。

明日25日の「ニュースエブリィ」(日本テレビ系、16.53~)では、食品と放射線について取り上げようと思っている。
5時15分ごろからの放送。

主婦の友社の「私たちの年金生活」という本に、がんばるだけの人間はもろい、小さな感動の積み重ねがストレスに強い心をつくる、と書いた。
心をあたため、自己肯定することが大事。
「がんばっているね」と自分をほめてあげたいものだ。
そして、10パーセントでいいから、だれかのために生きるという目標に持つ。
一日何回か、意識的に感動する時間をもとう。
そんな提言をしている。

ぜひ、ご覧ください。

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鎌田劇場へようこそ!(86)

「神様のカルテ」

ついに鎌田もヤキが回ったといわれそう。
アウトサイダーの映画が好きな鎌田は、こういう映画はおすすめはしない。
この映画はカステラを食べているように歯ごたえがない。
何がいいのかというと、主演の宮﨑あおいが抜群にいい。

宮﨑あおいのファンなので、この映画を見た。
若い女優さんの名前はチンプンカンプンだが、以前、宮﨑あおいがぼくの絵本『この国が好き』(マガシンハウス)をある雑誌でほめてくれていたので、ずっと気になる存在として注目してきた。
こんな奥さんがいたら、夫になる人は幸せだろうなと思った。
古風で、ユニークで、可憐で、強くて、やさしい。
いい雰囲気を出しているのである。

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カメラマンの役を演じる宮﨑あおいが写真を撮っている光景は、ストーリーとはまったく関係ないのであるが、これは映画でしか表せないと思うようないいショットが満載。
宮﨑あおいは、外見ももちろんかわいいが、中身がとてもかわいい。
こういうかわいさは、女性だけでなく、男にもあったほうがいいのではないかと思う。

桜井翔も若い医師の役をさわやかに演じている。
内科医の名前は、一止(いちと)。合わせると「正」という字になる。
正しく生きるとはどういうことなのか、この映画の主題のような気がする。
まっとうな生き方が、できずらくなっている。
医学の世界だけでなく、経済でも政治でも教育でも人間が人間としてまっとうに生きるとはどういうことか。

地方の病院で助からないことがわかっている患者に寄り添おうとする姿がかっこいい。
いろいろな誘いにも乗らず、自分らしく生きていこうとする。

末期の胆のうがんの患者を演じる加賀まりこは、自分らしさに最後までこだわった。
こんな死ならば、死も怖くないと思わせてくれる。

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同名の小説がヒットしているときに、何人も人から諏訪中央病院の話ではないかと聞かれたが、違う。
松本のドクターが書いた小説である。

ピアニスト・辻井伸行が作曲した音楽も聞かせる。
3.11後、みんな絆の大切さを実感している。
桜井と宮﨑の夫婦の関係だけでなく、友だちや職場の仲間や患者さんたち、人と人とのつながりを大事に描かれていて、気持ちのいい作品だ。

映画としてはいまひとつ掘り下げが足りないような感じがするが、宮﨑のキュートさが際立っているので一見の価値はある。
まっとうな生き方、人としてのかわいさ、自分らしさ、というのがキーワードだと勝手に思いながら、映画を見た。

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2011年8月23日 (火)

原発事故322

福島県の0~15歳の1150人を対象にした内部被曝の検査で、45%に被曝が認められた。
全員0.1マイクロシーベルト以下。
安定ヨウ素剤をのむ基準である50ミリシーベルトは超えていない。

白樺湖にサマーキャンプに来た郡山の人と話をしたが、この人の知っている子どもが放射性セシウム137の生涯被曝値が1ミリシーベルト以下とわかったということで、とても不安そうだった。その子は、3月15日まで浪江町にいたという。

おそらく、福島の状況は、甲状腺がんが多発したチェルノブイリとは違うと考えていいと思うが、親御さんとしては少量でも内部被曝は避けたかったはずだ。
3月12日、14~16日、21日の再溶融の危険のときがあったわけだが、このとき政府や御用学者が「だいじょうぶ」と言わずに、慎重に屋内退避などの指示を広範囲に出すべきだったのだ。
特に放射線量がぐんと上がりだした14日からは、30キロ圏よりも広範囲に指示を出すべきだったと思う。
今となっては、セシウム131による内部被曝がどれだけあったのか、調べることもできない。

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2011年8月22日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(85)

「ホームランが聞こえた夏」 

韓国の映画。とにかくよくできている。
笑いと感動。最後は大泣き。
音のない世界で生きているろう者の青春。
聾学校野球部の実話をもとにしている。

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韓国の高校野球は日本のように、ほとんどすべての学校に野球部があるわけではなく、
プロ野球への登竜門として、数十の学校が戦う。
ほとんどが強豪チームのなかで、キャッチボールもままならない聾学校がある。
彼らにとってもどうすることもできない厚い壁、一勝すらできない。
そこへプロ野球で失敗した有名ピッチャーがやってきてコーチになる。

意識の改革が行われる。
若者が成長していく。たくましくなっていく。
かつて32対0で負けた相手と、本大会の第一選でぶつかる。
延長戦の死闘となる。
なんともうまくできている。

韓国は元気だなあと思う。
東日本大震災後の久々に映画を見るという人には適した映画だ。
映画は難しい、半分の人が大感動しても、半分の人がよくないという。
でも、この映画は95%くらいの人が感動するのではないかと思う。

薄っぺらとか、うまくできすぎているとかいう人がいるかもしれないが、
映画館のなかで大笑いもできるし、ハンカチで涙を拭ったり、見終わった後はきっとさわやかな感覚になっていると思う。

8/27から公開。

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原発事故321

陸前高田の松が京都五山の送り火に使われるか二転三転し、翻弄された。
陸前高田の市民にとっては納得できないことだろう。
自分たちが五山送り火で燃やして欲しいと望んだわけではない。
間に入った人は、善意から話をすすめた。
インターネットの無責任な批判により一旦使用中止になったが、京都市は陸前高田の松を使おうとする。それも善意だ。
しかし、結果として、松の皮の部分からキロ当たり1130ベクレルの放射性セシウムが検出され、使用中止となったことはご存知のとおりである。

こういう経緯ならば、中止になってもしかたないと思う一方で、京都は1130ベクレルという数字がそれほど高いものではないことを理解し納得したうえで、この松を燃やすという選択をしてもよかったのではないかと思う。
そうすることによって、東北の人の痛みを、京都の人が共有できると思うからだ。

1108175__ 富士見にあるカントリーキッチンのカフェは、サンルームのよう。本を持っていき、1時間ほど読書しながらおいしいコーヒーを飲むのが大好き。原村診療所で診察した後によく立ち寄るぼくの隠れ家。

結局、この松は成田山新勝寺が引き受けることになった。
復興祈願をし、9月に犠牲者の供養をするときに、護摩として焚き上げるという。
あたたかな申し出である。仏教徒としてとてもいい判断をしたと思う。
よくやった、成田山と拍手を送りたい。

京都市や五山送り火の関係者を、古いとか、不寛容であるとか批判するのは簡単であるが、京都は京都で東北の人のことを考えた結果である。

今回、いちばんはじめに陸前高田の松を五山の送り火の薪に使うのを反対したのは、インターネットを使った無記名の人たちによるものだった。無記名という形で顔を隠していると、人とのつながりは関係ない。だから、何かあると、たやすくなだれのようにバッシングに走る。

人は、同時代を生きている人たちとの横のつながりだけでなく、親や子、孫というと縦のつながりのなかで生きている。
そのつながりを実感するはずの五山の送り火であったのに、一部の無記名の批判が暴走したのはなんとも残念だ。

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2011年8月21日 (日)

お知らせ

松本で軍縮会議が行われたとき、信濃毎日新聞の取材を受けた。

8/10付信濃毎日新聞の記事はこちら↓

「064.pdf」をダウンロード

来週発売される絵本『アハメドくんのいのちのリレー』(集英社)について、である。
息子が殺されたにもかかわらず、敵の国の病気の子どもを救うために、息子の臓器を提供した父親と、その臓器提供により生きて18歳になった少女の物語。

『雪とパイナップル』(集英社)はたくさんの人に読んでいただいた。
この絵本も、ぜひ、たくさんの人に読んでいただきたいと思う。
発売は26日。お楽しみに。

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鎌田劇場へようこそ!(84)

「ミツバチの羽音と地球の回転」

監督・鎌仲ひとみは、JIM-NETの理事である。
身内みたいなものだ。
彼女は、マネジメント能力がとても高い。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」というのが爆発的にヒットしている。
鎌仲ひとみがドラッガーを読んでいるかわからないが、ドラッガーの言っているマネジメントをよくわかっている人であることは間違いない。実にバランス感覚がいい。

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「ヒバクシャ 世界の終わりに」を撮って公開しているころに、一緒にイラクに行った。
ヨルダンのアンマンで、イラクのドクターたちが約20人、日本の医療者やNPO関係者が約20人、合計40人ほどをバランスよくコーディネートしていった。
「六ヶ所村ラプソディー」はさらに評判がよく、映画監督としてたくさんのファンをつかんだ。

祝島とスウェーデンを行ったり来たりしながら撮った「ミツバチの羽音と地球の回転」はさらに大人の作品になっている。
前2作では批判的な視点が強かったが、今作は原発の代わりに何があるのか必死に見つけようとしているのがわかる。

祝島に原発をつくろうとしている人たちの姿は、下品に見える。
卑怯な行いをしているように見えるのである。
どんなにいいことをしようとしていても、それが下品に見えたり、卑怯に見えたりするのは、どこかに問題があるからなのだろう。

「週刊朝日」で鎌仲ひとみ監督と対談した。
たいへん評判のいい対談になった。

鎌仲ひとみ監督と協力しあって、福島原発の事故の被害者たちを支えようといま計画をしているところだ。
まずは、この作品をご覧いただきたいと思う。

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まだまだ続く信州の夏休み

福島を中心に東北の子どもたちが信州の夏を楽しんでいる。
総数1849人、ぼくが住んでいる茅野市では1060人を受け入れている。

福島県の伊達市からは1165人が参加してくれた。
伊達市の富成地区などでは毎時3.1~3.2マイクロシーベルトが検出されている。
年間1ミリシーベルト以下に抑えるには、毎時0.11マイクロシーベルトくらいの範囲で生活しなければならない。
除染活動をはじめた家では、家の中ですら0.8マイクロシーベルトというところもある。
そういう家では、庭は3マイクロシーベルトもあったりする。

子どもたちに安心して暮らしてもらうには、まず除染活動をすること。
そして、少しでも放射線値が低いところで過ごすことが大事である。
土や草の上で遊んだり、プールで思い切り泳いだり、信州での夏休みが子どもたちの心にもいい影響を与えることができるといいなと思っている。

先週、阿部知事も街頭募金を行い、県と市町村、民間が一体となって被災地の子どもたちを受け入れようと活動。
ぼくも子どもリフレッシュ募金の呼びかけ人になっているが、1197万円が集まった。

1108171__ 緑の牧草が茂る八ヶ岳牧場

カタログハウスが行っているサマーキャンプも続いている。
絵本作家のいせひでこさんからたくさんの絵本をいただいたので、8/24、それを届けてきたいと思う。
いせひでこさん自身から、信州に来てくださるという話をいただいたが、子どもたちは魚つかみやサッカー、花火大会、プール、楽しいスケジュールがいっぱい。
お母さんたちに放射線の話をするという、ぼくの持ち時間も45分しかないので、そのためにいせさんにわざわざ東京から来てもらうのは申し訳ないということになった。

その代わり、9月にスケジュールが合えば、いせひでこさんと鎌田が福島のどこかの町を訪ねようと検討中。
いせひでこさんが子どもとお母さんに絵本の読み聞かせや絵本の話をし、鎌田が放射能と命、健康の話をしようと思っている。

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2011年8月20日 (土)

すし屋の誇り

塩釜の「しらはた」で、おすしを食べた。
塩釜は、おすしの町。人口比では日本一おすし屋さんが多い。
回転すしはこの町にはない。

1108172__ すし「しらはた」のオヤジさん

大震災後、7割が再開している。
「しらはた」は一階が完全に水没した。
3月11日、お昼を食べにきていたお客さんが帰れなくなり、4日間このすし屋の二階に避難を余儀なくされた。
火が使えないなかで、たくさんのお客さんたちを食べさせるのは大変だったと、オヤジさんは笑いながら言う。
えらい目に遭ったが、なんとか再開にこぎつけた。
まだまだお客さんは少ないという。
さりげないが、すし屋のオヤジの誇りを感じた。

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虹の園のいま

宮城県の虹の園では、障害のある人たちがピザハウス「ぱぴハウス」を運営している。
今回の大震災で、多賀城市と山元町にある二つのピザハウスが流された。
特に山元町は建物が根こそぎ流れされ、ピザを焼くレンガの窯も跡だけが残っている。

1108173__ 津波が襲い、ピザを焼く窯の跡だけが残る山元町のぱぴハウス

地震と津波が襲ってきたとき、障害者もその店で働いていた。
店の裏には山があり、その急斜面を登って、命からがら助かった。
虹の園では、障害のある人たちがピザハウスやお団子屋さんなどで働き、収入を得ている。
多くの障害者は月額約6万5000円の障害年金をもらっている。
あと3万5000円の収入を自分で得て、月に合計10万円を得られるようになれば、自立生活が可能になる。親がいなくなった後、将来の展望ももてる。
その目標が達成できるように、ぼくは8年ほど応援してきた。

目標の10万円を得るには、時給360円くらいが必要だ。
しかし、今回の大震災で障害者の仕事が減り、4月からは4割カットの時給180円になった。
たくさんの障害者たちがピザハウスやお団子やさんでまた働きたいと言っている。
なんとか復興させたい。

「鎌田實と命を語ろう」の生放送で仙台を訪ねた際、NHKの村上信夫さんが山元町にあったピザハウスの跡まで足を延ばしてくれた。
案内してくれたのは、ロッテドラフト一位の大リーガー加藤君だ。今は虹の園で障害のある人たちを支えている。

1108062__ 村上信夫さん(左)と案内する加藤君

多賀城にあるつつみ屋も、虹の園が運営するお団子屋さん。
「ここでの仕事はとても楽しい」と、お団子屋さんで働く障害者は言う。

1108163__ 多賀城のお団子屋つつみ屋で

そこで、機織で織られたストールを気に入って買った。3000円。

終戦の日の夜、「鎌田實と命を語ろう」の放送のため、仙台のスタジオに入ると、ゲストのサヘル・ローズが、このストールをほめてくれたので、プレゼントした。
サヘルは、これから仕事に行くときに、このストールを身につけてくれるということだ。

1108161__ 虹の園の手織りのストールは、サヘル・ローズにプレゼント

手作りでいい風合いである。
夏から秋にかけては、とてもいい色があるので、虹の園で買っていただけるとありがたい。
障害者の雇用拡大にもなる。

お団子は村上さんがたくさん買ってくれ、ゲストの人たちと食べた。
ゴマ、しょうゆ、あん、ずんだなどの味があり、どれもおいしかった。
虹の園では、障害のある人百七十数人が働き、自立を目指している。
それを支える七十数人のスタッフがいる。

お団子やピザ、パン、ジャム、お弁当などどれも本格的な味で勝負している。
ストールも、素敵だ。
宮城県に行かれたら、ぜひ、虹の園にお立ち寄りください。

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2011年8月19日 (金)

若者と語る(下)

南相馬のレン君は中学3年。
ピースボートでアジアをめぐる船旅に参加した。
ベトナムでは、枯葉剤の被害者と交流した。
いま福島県は放射能の脅威にさらされているが、楽観主義でいいのかと思ったという。

それに対してぼくは、楽観主義ではだめと答えた。
現実をきちんと直視して、本当の情報を得て、どうしたらいいのかそれぞれの人が自己決定していくことが大事だ。
そのためには家や学校や町がどんなふうに汚染されているかよく知って、それに対応したり、除染していくこと、と話した。

レン君は、スリランカで津波の被災者とも交流した。
日本よりもたくさんの人が亡くなっていることに驚いたという。
福島でも、スリランカでも、たくさんの人が亡くなった。
亡くなった人にはずかしくない生き方をしないといけないとレン君は考えている。

アジアの人たちと会い、英語をもっと勉強したいと思ったという。
戦争をなくすには、武力ではなく、交流が大事だと感じた。
いつかまたチャンスがあったら、外国に行ってみたいと思ったという。
若者たちに夢や希望をもってもらうことはとても大事。新しい世界をみることは、若者にこそ必要なんだろうと思った。

名取市のユウコさんは、仙台の高校3年。
震災当時スウェーデンに留学していた。
スウェーデンの小さな町で、たくさんの人から募金やメッセージをもらい、人のあたたかさを感じたという。
スウェーデンは社会福祉のお手本の国といわれている。しかし、極限状態になったときには略奪も起こる。
その点、日本はすごいと言われたという。
将来、人を助ける活動をしたいという。
若者たちはとてもしっかりしていて、すばらしいと思った。

最後に発言してくれたのは、女川の小学6年のヒロカさん。
津波でおばあちゃんとお母さん、お姉さんを亡くした。
先祖のお墓も流された。
女川の津波の被害はひどかった。壊滅的な状況である。

小学校の校庭まで津波が押し寄せてきた。
しかし、校庭のヒマラヤスギはどっしりかまえて倒れなかった。
なぜだろうと、校長先生が聞いた。
ヒロカさんはこう答えた。

「何千人もの卒業生やたくさんの人たちに、やさしく、あたたかいまなざしで見つめられてきたから、負けなかったのだと思います。
私が生きているということは、何かの役目があるから生き残ったのだと思います」

すごいなと思った。
悲しみのなかで、必死に生きている小学生。

倒れなかったヒマラヤスギのように、日本中が、東北の人たちに対してあたたかなまなざしで支えていく必要がある。
東北の人たちのやさしさや強さに、これ以上甘えてはいけない。

あたたかいまなざしがあれば、人は生きていくことができる。
東北へあたたかいまなざしを、ぼくたち日本にもあたたかいまなざしを。
そんなこと感じた、2時間の放送だった。

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若者と語る(上)

終戦の日にNHKラジオの「鎌田實といのちを語ろう」で、震災、平和、お盆を通して命のたてのつながりについて、若者たちと話しあった。
毎年感心することが多いが、今回は特に若者たちの考えに感動することが多かった。

いわき市の涼香さんは、中学三年の14歳。
長崎の式典に招待された。
長崎の原爆と福島原発事故の共通点が二つあると話していた。
自分たちも仮設住宅で不便な生活をしている。
自由を奪われたという点で似ていると思ったという。
「放射能が遺伝子に影響すると聞き、将来が怖い。当たり前の生活ができるか不安である」
同じような不安を、白樺湖に来た福島の15歳の少女も口にしていた。
みんな心配なのだ。

Img_0439 仙台から生放送でお送りした「鎌田實といのちを語ろう」

涼香さんは3/11、母親と乗った車ごと津波に飲み込まれ、車の上で救助を待った。
原発が水素爆発をしたと聞いたとき、放射能に汚染される恐怖を感じたという。
事実を直視しながら、不安をどうぬぐってあげることができるか、ぼくたち大人の役割だと思う。
子どもだからどうせわからないなどと思わずに、子どもたちに現実の大変さを語りながら、それでも安心して生活していけるようにするのだということを伝えることが大事だと思った。

女川の真奈さんは高校二年生の17歳。
女川の災害FMのアイドルになっている。
両親が離婚し、母子家庭で育った。今回の津波でその大切な母が亡くなった。
おばあちゃんと仮設住宅で暮らしている。
自分もつらいのに、被災した人のインタビューをして聞き役にまわって、明るい笑顔で町中の人たちに夢や希望を与えている。なんともすごい17歳だ。

自分の悲しみを横において、町の復興に全力投球している若者のすがすがしさがまぶしいほどだった。

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2011年8月18日 (木)

原発事故320

旧日本原子力研究所の田辺文也さんは、3/21午前1~3時の間に、3号機の圧力容器の圧力が急上昇し、再溶融が起きたのではないかと考えているらしい。
これはとても納得できる。

3/12と3/15にメルトダウンが起こり、放射性物質が風に乗って拡散したが、3/21も放射線量の高いデータが出ている。

原子力安全・保安院は上空に漂っていた放射性物質が雨で地上に落ちたと言っているが、それだけで放射線量がこんなに上がるというのは納得できない。
原子力安全委員会も原子力安全・保安院も原子力村の人たちも、大したことがないということをいうために、根拠のないことを言っていたのだと思う。

田辺さんの推論を聞いて、納得できるような気がする。
おそらく、東電側は3つのメルトダウンについては事前に懸念していたのではないか。
懸念していることをきちんと国民に伝えるべきであった。
原子力を扱うということは、徹底した情報公開と民主主義的な判断が必要だが、日本ではそれが行われていない。
おそらく田辺さんがいうように、21日に再溶融がおき、その一部が格納容器を溶かし、外へ出たと考えたほうがいいと思う。

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鎌田實の一日一冊(104)

「耳を澄ませば世界は広がる」(川畠成道著、集英社新書、756円)

川畠成道のバイオリンは、繊細で大胆。美しくて、強くて、柔らかい。
複雑な味わいが魅力的。
8/24に発売される「川畠成道~クライスラーを弾く」を聞きながら読んだ。

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目の見えない天才バイオリニストは、リアルな世界を丸ごとのかたちできちんと見つめている。
もう一人の自分とか、批判に耳を傾けるとか、自然体の大事さなど、困難のなかを生きる彼流の生き方に、たくさんのヒントが隠されていた。
この本に黒柳徹子さんと帯を書いた。
ぼくは、こう書いた。

「絶望のなかで希望をどうつくるか。彼の音楽のように芳醇なこの本には生きるヒントがいっぱいある。いまこそ読んでもらいたい一冊」

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2011年8月17日 (水)

鎌田實の一日一冊(103)

「寄りそ医-支えあう住民と医師の物語」(中村伸一著、メディアファクトリー、1365円)

研修医たちのあこがれの診療所になりはじめている福井県の名田庄村(現おおい町名田庄地区)の診療所。
著者の中村先生は、その診療所の所長を20年間続けている。
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも、平成21年7月に放送され話題を呼んだ。
諏訪中央病院も地域医療を行っている同じ仲間の病院である。

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10年ほど前から、中村先生は地域医療や総合医療を目指す仲間たちから高い評価を得ている。

この本は、やんちゃな中村伸一が地域の人に育てられながら、地域医療の若き騎手になり、どんなふうに地域に貢献しているか、わかりやすく、楽しく書かれている。
合併前の村は、老人医療費や介護保険料も福井県内でもっとも低いランクになっていた。
地域のきずな力に着目し、きずなという視点で医療を語っている。
ぜひ、ご一読を。

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原発事故319

南相馬市の放射線量が高い地区で暮らしている16歳以上の569人と、小中学生330人を対象に内部被曝の検査が行われた。

大人1人に1.02ミリシーベルトを確認、小中学生2人から0.41ミリシーベルトが検出された。
おおかたの人はほとんど検出されなかった。
まず一安心である。
放射性セシウムは半減期30年であるが、生体での半減期は約80日といわれている。
南相馬に多くの放射性物質が降り注いだ可能性があるのが3/12と3/21。
もう多くの放射性セシウムは体外に出ている可能性が高い。
もっと早く測定していれば、放射性ヨウ素を検出していたかもしれない。

100ミリシーベルトにはほど遠いので、身体への影響はほとんど問題にしなくてよいと思うが、
できるだけ食事による内部被曝が継続しないように注意し、今後もフォローアップをしていく必要がある。
きちんとフォローすることで2、3か月後に、検出されなくなる可能性もある。
チェルノブイリでは、厳重な食事の管理、汚染の森に立ち入らないなどのルールによって、内部被曝量が下がるという報告を聞いた。
厳重なフォローをすることが大事だと思う。

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2011年8月16日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(83)

「チェルノブイリ・ハート」

2003年のアカデミー賞ドキュメンタリー短編賞でオスカーを受賞している。
いい映画であるが、最後が気になる。

心房中隔欠損や心室中隔欠損、そのほかの複雑な心臓奇形の子どもは、日本でもある比率で、それなりにたくさん発生している。
それらの子どもたちは粛々と心臓外科手術を受け、救命できるようになっている。

が、ベラルーシでは医療水準が低いためになかなか心臓手術の順番がまわってこない。
そこにアメリカの心臓外科医がやってきて、手術を行っている。
母親たちは泣いて喜ぶ。

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この映画は、女性ドキュメンタリー作家がチェルノブイリの現地に入る話から始まって、心臓に疾患をもつ子どもが暮らしている施設を取材し、そして、最後にアメリカの心臓外科医が乗り込んで手術をしている。

この映像をみていくと、心臓に重大な疾患をもつ子どもは全部、チェルノブイリ原発事故が原因というストーリーになってしまう。
だが、心臓の奇形は、本当にチェルノブイリ原発事故によるものか科学的には実証できていない。
この映画でも、根拠は語られていない。

原発推進の人たちは卑怯なかたちで安全神話をつくった。
それと同じように、チェルノブイリや福島の悲劇が、神話になってはならない。
神話よりも、事実を見ていくことが大事なのだ。

心室中隔欠損や心房中隔欠損などで、心臓の手術を受けた福島の子どもを「フクシマ・ハート」などと呼ぶようなことになるとすれば、おそろしいような感じがする。
悲劇の神話をつくりあげるのではなく、3.11以前と比較して、丁寧にフォローしていく必要があると思う。
原発の安全神話を批判するなら、勝手な神話をつくらないようにしたいものだ。

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原発事故318

南相馬の除染にかかわりはじめた。
表土を剥ぎ取ると、放射線量は3分の1くらいに下がる。
さらにその上に汚染されていない土をかぶせると5分の1くらいに低下することがわかってきた。
雨どいの途中の枯葉などつまっているところや、雨どいで雨水が集まった土のところに高汚染があることもわかった。
日本瓦の屋根は溝のところに放射性物質が残り、部屋のなかでは屋根に近い2階の部屋のほうが高くなる。
屋根や雨どいを高圧線浄水で除染すると、放射線量が急激に下がることもわかった。
除染作業のジレンマを感じ始めたのは、このころからである。
除染した放射性物質をどこにもっていったらいいのか、ということだ。

1108094__ 諏訪中央病院の庭

高圧洗浄をした水は下水に流れ、下水処理場の汚泥に蓄積する。
いまのところ、これは仕方ないとされているが、下水場に集まってきた放射性物質の恒久的な除去を考えなければならない。

国は、除染コントロールセンターのようなものをつくり、汚泥や汚染された土をどうするか、地域のなかで議論しながら市民が納得する処理場をつくっていくしかないと思う。

核廃棄物をどう処理するか、事故によって放出された放射性物質の永久的な処理の仕方の答えを出さないかぎり、新たに原発をつくろうなんて絵空事のように思う。
福島の苦しみがわかっていない、20世紀型の経済優先オヤジの思想だと思う。

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2011年8月15日 (月)

原発事故317

読売新聞8/14付で「原発マネーに後悔」というのが社会面で大きく出ていた。
1965年ごろ漁業補償として、請戸地区の漁師に約200万円。
1975年ごろには、福島第二原発の建設に伴う補償金として約1000万円、2000年には第一原発の7、8号機の増設にからんで、一人当たり数千万円が配布にされたという。
ぼくが現地を訪ねたときには、確認はとれていないが、一人当たり5000万円という噂を耳にした。
漁師たちはみんな大きな船を買い、家を新築した。原発御殿という。
その家のほとんどが、津波で流された。
家族を亡くした人が「原発に反対した人が正しかった。自分たちは金に目がくらんだ」というようなことを語っている。

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この町は、第二次世界大戦末期、米軍の艦載機による機銃掃射を受けた。
「あの戦争だってこんなにひどくなかった」と、請戸の漁師たちは大震災と原発事故のひどさを言う。

6/11、許可を得て20キロゾーンに入った。
請戸の港をまわったが、町が跡形もなくなくなっていた。
しかも、放射能の問題で漁港は再開の見通しがたたない。
お金に目がくらんだのだとしたら、あまりにも代償は大きい。

写真は、原発から20キロ圏内にある請戸地区

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支える同士も支えあい

茅野市の往診クリニックの林先生から12月まで車をお借りした。
すでに諏訪中央病院から派遣された医師たちが、石巻で活用している。

諏訪中央病院からは、医師や理学療法士、作業療法士が交代で支援に入っているが、選手交代のときに引継ぎがうまくいくよう、医師は1週間重複するようにしている。
少し贅沢な感じがするが、ともに石巻で在宅ケアを行っているJIM-NETの川添看護師や重岡看護師の負担を少なくするための配慮でもある。

ここにも、支える人を支えようと思いがある。
そうやってお互いに支え合いながら、これからも石巻を支援していきたいと思う。

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看護師の応援のお願い

みなさまのご支援のおかげで、JIM-NETの石巻での地域医療は順調です。
先日、車のお願いをしましたが、ほぼこちらのお願いが満たされる形になり、いま最後の手続きをしているところです。
ありがとうございます。

在宅医療チームは、川添、重岡看護師の2人体制で、そこに日下部看護師がボランティアで来てくれています。
日下部さんは何度も応援に入ってくれて、本当に助かっています。
しかし、まだ十分とはいえません。

もう一人、看護師のボランティアを募集します。
できれば、一週間以上、石巻でお手伝いしていただける方を希望します。
泊まるところは、石巻の隣の涌谷町立病院の研修センターの畳の部屋を、男女一部屋ずつ確保しています。
それ以外は、ボランティアで協力していただけると助かります。

1108093__ 諏訪中央病院の庭

石巻では、自衛隊がお風呂を撤去したため、石巻復興協議会がお風呂をつくることを検討しているようです。

JIM-NETでは希望の湯や不動の湯を続けていますが、そこは入浴だけでなく、おしゃべりをしたり、お茶をのんだり、情報交換したりという場になっています。
復興協議会も、そういう場をつくろうとしているようで、仮設住宅での孤立や孤独を防ぐことになると思います。

少しずつ、少しずつ復興に向かっている石巻で、ボランティアとして汗を流すのはたいへんですが、とてもやりがいのある仕事です。

ぜひ、ぜひ、お手伝いをお願いします。

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2011年8月14日 (日)

鎌田實の一日一冊(102)

「美しい朝に」(作・絵 葉祥明、自由国民社、1575円)

Photo

原発のことを静かに考える絵本ができた。

朝を迎えることができる喜びや希望が静かに語られている。
いまこの困難な世界を、葉祥明はとても心配しているようだ。

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原発事故316

JCFはフイルムバッジを50人の方につけていただき、毎月データの情報を本人に戻している。
1ヶ月の放射線量が推測でき、生活の仕方を工夫するきっかけになっている。
希望があると、それぞれの家庭に行き、空間線量や土壌線量などを測定している。
先週は、JCFに事務所を貸してくれている原町中央産婦人科医院の高橋先生とともに除染活動を行った。

Photo 放射線についての講演の後、福島の若いお母さんたちに質問を受けるカタマ

フイルムバッジをつけたことにより、放射線への関心が深まり、その結果、栃木県に引っ越していく人がいた。
それはその人が自己決定した結果だ。
情報を得たうえで自己決定することが大事なのである。

完全な正解というものはない。
収入や生活、親の問題など、さまざまなファクターを方程式を解くようにして、悩みに悩んで生活の場を決めている。
どうすべきか心は揺れるだろう。当然のことだと思う。

子どものいる親たちは悩みが深い。
福島の小中学生はすでに7600人が県外へ転校している。
夏休み以降は、さらに1000人が県外に、4500人が県内に転校していくという。

3月の緊急避難のときに、南相馬から飯館に避難した人たちもいた。
もっと情報公開がされていれば、こんな悲しい避難をせずにすんだはずだ。
南相馬から福島市に避難して、しばらくして福島市のほうが線量が高いことがわかり、南相馬に戻ってきた人もいる。
徹底した情報公開がなければ、生活の場を自己決定することもできない。

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2011年8月13日 (土)

前後賞と特別な特別賞

500万回アクセスを記念した、鎌田の本プレゼント。
499万9999回目の人に、『チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない』にサインをしてお送りしました。

110810__ 「生きているってすばらしい」「夢 絆」とサインを入れた鎌田のサイン本

笑ってしまったのは、500万0006回目の人から「どうしてもほしい」ということでお手紙をいただいたこと。
おそらく500万回あたりで、バタバタと訪問者が増えたのでしょう。
500万回目でも、前後賞でもないけれど、特別に、特別賞を出すことにし、『いいかげんがいい』をお送りしました(笑)。

このブログを通じ、東日本大震災の支援を呼びかけてきましたが、たくさんの方からあたたかいお声をいただきました。
ブログというメディアが新たな人のつながりを生み、確実にJIM-NETやJCFの活動を支えています。

たくさんに人にご支援をいただいていることに感謝いたします。

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夢のX号

JIM-NETへの車の寄付あるいは貸与のお願いをしたところ、なんとなんと11台のお申し出をいただきました。
石巻のガレキが残っている町では、大きな車両では在宅ケアの訪問ができず、いいお話をいただきながら、すべてうまく話が成立しなかったことに深くおわび申し上げます。

1108091__ 夏の花が咲く諏訪中央病院

ある方から、中古車を購入しようと思ったところ、すでに決まってしまって残念というお手紙をいただきました。
その方は、もし車を寄付できたら、亡くなったお父様の名前X号をつけて、車体の背中の隅に小さく記したいという希望があったということです。
素敵なことだと思います。
頭が下がったのは次の言葉でした。

「がんと放射線治療に苦しみました。
放射線治療の副作用を目の当たりにしました。
そのことが今回、被災地のため、福祉のために何かしたいと私が思う原動力になりました」

石巻では、すでにJIM-NETが寄付した「JIM-NET号」が走っています。
JIM-NET号は、JIM-NETを応援してくださったみなさんの夢とあたたかい思いが一緒に乗っていると思っています。

あたたかなバトンが次々に手渡され、あたたかい日本になっていくといいと思います。
たくさんのご支援、ありがとうございました。

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2011年8月12日 (金)

緊急・原発事故315

京都の大文字焼五山送り火が16日予定されているが、岩手県陸前高田市の被災松を使うかどうか二転三転してきた。
当初、大文字保存会が、放射性物質が検出されていない被災松を使うことを拒否したため、それに対して批判が出ていた。
その後、大文字保存会が陸前高田市の市民感情を考えて、送り火の薪を使うと決定。
陸前高田市からし、新たに350本の薪が届けられた。
しかし、その新たに届いた松から放射性セシウムが検出された。
京都市は使用を断念したという。

Photo_2 クリックすると拡大します

原発事故306では、上の放射能汚染の地図を載せている。
福島第一原発の事故で3/12日と20日に北へ向かう風が吹いた。
そのために、岩手県一関市などの一部にも、放射性物質が流れていった。
陸前高田市も、この地図では毎時0.25マイクロシーベルトの領域にかかっている。

肉牛の汚染を広げた稲わらは、宮城県北部と岩手県南部のものであることが後でわかったが、この放射性物質の流れをみていれば当然ありえることであった。
肉牛の汚染も、この地図をみていれば推測することができたはずなのである。
それを考えれば、今回の陸前高田の大文字焼の松も、高濃度ではないとしても、放射性物質に汚染されている可能性はありえる。

ぼくが次に心配するのは、米。
千葉県の早場米からは、放射性物質は検出されなかったということだ。
しかし、この地図を見ると、15日に吹いた風が群馬の一部や新潟の一部にも放射性物質を運んだ可能性があることから、お米の汚染がないといいなと思う。

今回の大文字焼のようなことは、はじめに放射性物質を測定し、検出されないものを使うというようにしていれば、こんなにゴタゴタすることはなかったと思う。
放射性物質の流れのシミュレーションは、何度も見直したほうがいい。
3/12日前後と15日、20~21日にかけての大きな風の流れが、ホットスポットを作っている。
その風の流れには注意すべきと思う。

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上記の地図は、群馬大の早川由紀夫教授のブログから転載させていただきました。
http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-414.html

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鎌田劇場へようこそ!(82)

「未来を生きる君たちへ」

2011年のアカデミー賞最優秀外国映画賞を受賞している。同時にゴールデングローブ賞も受賞。
デンマーク映画。

子どもたちの世界にもいじめという暴力があった。
大人の世界でも夫婦が反目し合っていた。
主人公の父親がアフリカへ医療支援に入る。そこにも、納得できない暴力がはびこっていた。

Photo

デンマークの学校のなかで繰り広げられる暴力。
町のなかで繰り広げられる暴力。
アフリカのなかで繰り広げられる暴力。
憎しみが暴力を生み出す。暴力は戦争へ。
傷ついていく人間たち。
大人も、子どもも、どう生きたらいいのか、みんな悩んでいる。

悩みながら、この映画は復讐から「許す」ことによって、人間の絆の再生を考えていく。
絶望が続く、人間はどうしようもない動物だと思いながらみていると、最後にじわっと希望

がわいてくる映画である。

映画の醍醐味を楽しめる、おすめめの一本である。

                   ◇

福島の詩人、和合亮一さんと、「未来を生きる子どもたちへ」の映画の後のトークショーをした。

被災しながらツイッターで詩を発表し続けた。
外国にも呼ばれ、詩の朗読をしたり、テレビでも何度も取り上げられている。
大震災のことを、多くのメディアがビジュアルで伝えてきたが、詩という人間の心のフィルターを通した大震災は、見えない放射能に対する怒りやおそれ、悲しみを伝えていると思った。

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できることから

先日、いわき市にボランティアで講演に行ってきた。放射能の話をしに行ったのだ。
その講演会場で、「福島っ子の夏休み」で白樺湖に子ども二人を連れて参加していたお母さんに会った。

Photo_2 7/30、放射線の話をするカマタに、たくさんの質問や不安を語る福島のお母さんたち

「私は福島に生まれ育ったことを今でも誇りに思っています。
夫は転勤することが多い仕事で県内各地を回ります。
小学校一年と3歳の子がいるのでとても不安です。
先生が言うように、現実を直視して、家庭や周囲からできることをしていこうと思います。

長野はとてもすばらしいところですね。
景色もそうですが、人のあたたかさも伝わってきました。
これから福島はきっとよくなると信じていますが、もしものときは、先生と茅野市を頼らせてください」

こんなことを言われてしまった。
福島っ子の夏休みは今も続いている。
多くの母子たちが魚つかみやプール、サッカーに興じている。
信州の人たちのあたたかなもてなしが、感謝されているようだ。
ぼく自身もまた、福島のお母さんたちを励まし、放射性物質の話をしにいく予定だ。

こんなときは愚痴や批判ではなく、できることから、あったかく、をモットーにしたい。

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2011年8月11日 (木)

船旅で育て、子どもたちの夢

南相馬の中学生49人のピースポートの旅が無事終了したことは先日、ご報告した。
はじめての海外旅行の子がほとんどで、ベトナム、シンガポール、スリランカの3ヶ国をめぐり、海の向こうで暮らす方々との出会いをさまざまに感じたようだ。
船内で850人の一般の乗客の方々と交流し、運動会をしたり、楽しい思い出もできたようだ。
今度は英語を勉強しなければ、と思った人も多かったようだ。
ぼくたちの「夢と希望を」という子どもたちへの期待も、何か達成できたような感じがしている。

2011724 7/24、ピースボートの船旅に出る南相馬の中学生たち

船内では、ほかの子どもたちも船に乗れるチャンスをということで、チャリティーコンサートが開かれた。
子どもたち自身も積極的に募金活動をした。
乗船した方々がそれにこたえ、約40万円が集まった。
このお金は「南相馬子どもの翼」と「つながろう南相馬」に寄付し、ほかの子どもたちもこういう体験ができるように使ってもらおうと、子どもたち自身が決めたようだ。
とてもいいことだ。
あたたかさの回転が始まった。

スリランカでは、なんと大統領が中学生たちに会いに来てくれた。
被災した子どもたちを激励するためだ。
世界はときには厳しく、争い合ったりするが、ときにはあたたかい顔を見せる。
今回、子どもたちが見た世界はあたたかい世界だったと思う。

みなさんに緊急支援のお願いをしましたが、いくつかの企業からもご支援をいただき、ほぼ49人の飛行機代を集めることができました。
ありがとうございました。
田部井淳子さんや香山リカさん、田中優さん、湯川れい子さん、池田香代子さんのお力添えにも感謝いたします。

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鎌田劇場へようこそ!(81)

「ツリー・オブ・ライフ」

ブラット・ピット、ショーン・ペンの二大スターを起用した、テレンス・マリックという伝説の名監督の作品。
今年のカンヌ国際映画祭の最高賞を受賞している。
人生とは何か、家族とは何か、命のつながりを考えさせてくれる映画である。

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「父さん、あなたはそのときぼくに何を求めたのだろう」
息子は父の厳しさに耐えられなかった。
プラピ演じる父は自分の人生をうまく乗り切れないために、息子たちを強く育てようと必死だった。
「あのころぼくは父さんのことが嫌いだった」
その成長した息子をショーン・ペンが演じている。
これがなかなか渋くていい。
母親の存在の大きさもよくわかる映画だ。
父親と三人の息子たちがいつもぎすぎすしている。
しかし、徐々に雪解けを暗示して映画は終わる。

隙間がいっぱいで、見る人にいろんなことを考えさせる素敵な映画。
パルムドールを受賞したものうなずける。

この地球上に奇跡の命が生まれ、その命が脈々とツリーのようにつながっていく。
そのさまを映像美で表現している。
命を守るためにできた家族なのに、家族同士が傷つけ合う。
傷つけ合いながらも、家族の大切を見事に描いている。

完成度の高い映画だと思う。

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原発事故314

放射線は、受精卵が着床してから約4ヶ月の間、細胞のDNAを傷つけ、奇形などの障害をもたらす可能性があるといわれている。
国際放射線防御委員会は、100ミリシーベルトを超えないかぎり、妊娠中絶をする必要はないとしている。
しかし、妊婦の被曝はほんのわずかでも減らしたほうがいいということで、原町中央産婦人科医院の高橋先生が中心になり、7日、南相馬で妊婦さんの家の放射線測定と、20人のボランティアによる除染活動が行われた。

1108092__ 緑の木陰が涼しげな諏訪中央病院の庭

雨といの水が集まってくるところで毎時5マイクロシーベルトという高汚染が検出された。
この汚染は高圧洗浄機で洗浄し、0.6マイクロシーベルトまで減った。
屋根の上が1.4マイクロシーベルトだったが、0.2マイクロシーベルトに減った。
部屋の中は、屋根に近い二階のほうが高く0.8マイクロシーベルトあったが、屋根を洗浄したため0.7マイクロシーベルトに下がった。

庭の表土を10×15メートルの範囲で10センチはがし、庭の端に掘った深い穴に埋める作業は、什器を入れず人の力だけで行った。
その結果、1.5マイクロシーベルトから0.6マイクロシーベルトに下がった。
地上から1メートルの高さで1マイクロシーベルトから0.7マイクロシーベルトに改善した。
家の中は0.6マイクロシーベルトだったが、窓の外や庭、屋根を除染することよって0.5マイクロシーベルトになった。

高橋先生は、外側からの放射線を遮断できるような、金属や水の層を利用したカーテンをある業者とともに開発中だとか。
そのカーテンが使えるようになれば、部屋の中はもっと下がる可能性がある。

これらをみると、除染によって放射線の値が2~3割下がっている。
妊婦さんや家の人には、0.1マイクロシーベルトでも減るのはうれしいと、とても感謝された。
放射線値を測定し、見えない放射線を見えるようにすることが、冷静な判断のためのいい材料になる。

未来を支える子どもたちとお母さんにできるだけのことをしたい。
高橋先生はそうおっしゃっていたが、同感である。

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2011年8月10日 (水)

お知らせ

8/12、ピーター・バラカンの番組「東京ミッドタウン プレゼンツ ライフスタイルミュージアム」(18.30~、東京FM)に出演する。
ポッドキャストでも聞けるので、ぜひ、お聞きください。

Img_4275 ピーター・バラカン氏と

終戦記念日の8/15は「鎌田實といのちを語ろう」(20.05~、NHKラジオ第一)。仙台から若者と震災、平和、命のことについて語り合う。

8/18の「ニュースエブリィ」(16.53~、日本テレビ系)は、鎌田がおすすめの映画を語る。
夏休みに映画を見たい方、震災後久しぶりに映画を見たくなった方、ぜひ参考にしてください。

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原発事故313

2007年の浜岡原発のシンポジウムの参加者の3割が中電社員という。
さらに下請けの人たちもカウントできていたら、大半が電力会社関係者だった可能性がある。
そのシンポジウムでは、8割の参加者がプルサーマルに賛成とアンケートにこたえている。
こんなバカなことがあるか。
原子力は「いつも卑怯なやり方」をしないと、導入できない。
卑怯なことを繰り返すと、人間が腐ってくる。
原子力安全・保安院の院長が更迭されたが、それだけでいいのだろうか。
玄海原発や女川原発でも、保安院の元課長が九州電力と東北電力に動員要請をしていたという。やらせである。
腐っているなと思う。
悔しいけれど、人間社会は時々腐る。
腐らせないために、透明化をはかるしかない。
厳しい意見を言う人間が必要なのである。
原子力安全委員会も反原発の学者を入れること。
経済産業省の首脳のなかに、電力の改革派を入れること。
それでずいぶん変わると思う。

菅さんは、辞める前にここに手を打つべきだ。
形だけ経産省の3首脳を更迭したからもういいと思わせてはいけないのである。

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絵本作家からのプレゼント

絵本作家のいせひでこさんから、『木のあかちゃんズ』(平凡社)という絵本が100冊送られてきた。
いせさんは、何年も先まで制作予定が入っている、忙しい絵本作家である。
ぼくは、いせひでこファン。
一生の間に5冊、自分で絵本を出したいと思っていて、3作目の『アハメド君の命のリレー』(集英社)が8/26に出版される。
あと2冊は、できたらいせさんに作ってもらえないかという勝手な夢がある。

そのいせさんがぼくのプログを時々みてくれているというのはとても光栄。
「福島の子どもたちにさしあげてください」と、絵本を送ってくれたのだ。

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今、白樺湖に250人の福島の母子が来ている。
8/24午後、尖石の山荘で、「困難な時代をどう生きるか」という話をお母さんたちとしようと思っている。
そのときに、このいせさんの絵本をお母さんたちに渡し、子どもたちにプレゼントしてもらおうと思っている。
小さな木のあかちゃんが、丁寧に、ゆっくりと、必死に、明るく、生きる姿がとてもいい。
素敵な絵本である。

めまつよいぐさは何十年もの眠りから覚めて、芽吹く。
福島の物語にぴったりだ。
どんなことがあってもあきらめなければ、いつか必ず愛する福島は戻ってくる。
そう思えてくる。

東北の子どもたちだけでなく、日本中の子どもや大人たちに、ぜひ読んでもらいたい絵本である。

いせさんは、たくさんの絵本を抱えて、被災地へ行く。
みんなあたたかい。
こんなつらい時代は、愚痴や批判は避けて、あたたかく、あたたかく、あたたかく生きたいものだ。

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2011年8月 9日 (火)

原発事故312

経産省事務次官、原子力安全・保安院長、資源エネルギー庁長官が更迭されることになった。
方針はいいが、後任人事はいつもの玉突きで、想定内のことが行われるようだ。

官邸に人事でつっこまれる前に、海江田さんが組織温存へ先手を打ったという。
権力争いをしているときではないのに、困った人たちである。

エネルギー政策の改革をしようという考えは、海江田さんにはない。
菅さんはやりたくても、力がない。

三人の首脳すべてとはいわないが、一人でも改革派を入れて、新しい風を入れるべきである。
意見の違う人間を入れることによって、いい緊張感が生まれる。
悪いこともできなくなる。
官僚が甘やかされなくなる。

日本をよくすることに力を注いでもらいたい。

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支える人を支える

先月中旬、ピーコさんとボランティアで田村市を訪ねた。
鎌田の放射線の話や自殺予防の話と、ピーコさんのシャンソン、楽しいトークを田村市や三春町、小野町の人たちに聞いてもらった。

その後、保健師さんから感謝の言葉をいただいた。
ピーコさんの歌とトークで、多くの市民が元気づけられたという。
それだけでなく、疲れている市町村の職員や保健師たちにとっても、リフレッシュになったと言ってくれた。
支える人を支えることになったようである。

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055ときわ荘のお年寄りたちの笑顔は、支えている人たちがいるから

田村市では、巡回診療もさせてもらった。
特別養護老人ホームのときわ荘には、大王製紙からのおむつアテントを持っていった。
厳しい状況にもかかわらず、お年寄りたちには明るい笑顔があった。
職員の方たちが、心のこもった支援をしているのだろう。
ぼくたちボランティアが訪ねることにより、職員の方たちも元気になってもらえたらうれしい。

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核と人間の幸せ

6年ほど前、JCFは永井隆記念長崎平和賞をいただいた。
チェルノブイリの救援活動が評価されてのことだ。
平和賞をいただいたときは、チェルノブイリと同じような事故が、まさか日本で起こるとは思わなかった。

1107313__ 長崎の防空壕

核の悲劇を二度と起こしたくない。
フクシマの被害に苦しむ人たちを目の当たりにし、核と人間は相容れないものだとあらためて思った。
核燃料の処理が完璧にできないことを考えれば、「原子力の平和利用」という美しいフレーズが絵空事であることがわかる。
核と人間の幸せはつながらない。
日本はできるだけ早く、エネルギー政策の軌道修正をすべき。
そう、長崎原爆の日に思った。

長崎の人は、佐賀の玄海原発を心配している。
古い原発で、格納容器ももろくて小さい。
原発事故がおこれば、長崎も全滅だと脅威に思っている人もいる。

1107314__ 長崎には、たびたび呼ばれて講演している。講演の前に、押しずしとジャンボ茶碗蒸しをいただいた。

エネルギー問題は民主主義が問われているにもかわらず、玄海原発でもやらせが行われ、うその世論形成をしようとした。
玄海町の町長の弟の建設会社では、何十億もの原発関連の工事を受注してきた。
平和利用といいながら、核はいつもダーティーなものを抱えている。
こんなものが本物の幸せをくれるとは思えない。

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2011年8月 8日 (月)

鎌田實の一日一冊(101)

「なみだ」(文・細谷亮太、絵・永井泰子、ドンポスコ社、1260円)

娘を亡くした母親の涙が語られている。
美しい文と美しい絵がマッチした素敵な絵本である。

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娘を忘れられない母の気持ちが、涙の雫のなかに見事に描かれている。
母親のおなかに新しい命が芽生える。
それでも涙は落ちてくる。
親子3人で何をしていても、亡くなった娘を入れて家族は4人。
涙は、徐々にあたたかなものになっていく。

母親もだんだん年をとっていく。
おばあちゃんになったときには、おばあちゃんの涙が流れる。
涙の質が変わっていく。

この母親は家族の絆のなかで安心して涙を流している。
家族の絆の大切さが見えてくる本だ。

東日本大震災で2万人近くの人の命が亡くなった。
いまこの日本で、生きている人たちの多くの人の心を支えてくれる絵本がここにある。

「いつもいいことさがし2」(細谷亮太著、暮しの手帖社、1470円)

細谷亮太先生は、聖路加国際病院の小児科医。
どんな毎日のなかにも必ずいいことがある。それを探すことが人生を豊かにしていくと考える著者が、医師として父親としての日々を綴っている。

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「がんばれについて考えました」というエッセイがあり、ぼくの父・岩次郎のふるさと青森のねぶたの話が出てくる。そのなかで鎌田の『がんばらない』についても話が展開されている。
「がんばんべえなあ」
「がんばれ」という言い方をちょっと変えるだけで、素敵な言葉になったり、力のある言葉になったり、支える言葉になったりするような気がする。

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お知らせ

9月25日、東京都文京区で鎌田實の講演と対談がある。

健康ぶんきょう21 講演&対談
「いのちを想いあう  つよくて あたたかくて やさしい日本へ」

 日時・9月25日午後1時~3時半(開場 正午)
 会場・文京シビックホール 大ホール
 入場・無料(申し込みが必要です)
 定員・1000人

内容は、3部構成。
まず、鎌田實の講演がある。

次に、バイオリニストのジョン・チャヌの演奏会。
ジョン・チャヌは、ぼくもエッセイを書かせてもらったことがある超有名な演奏家だ。
力強く、繊細で、あたたかくやさしいバイオリンを聴かせてくれる。
JR新大久保駅で、転落した日本人を救おうとして韓国の留学生らが命を落とした。
事故の翌日、その駅で鎮魂の演奏をしたという、あたたかい男だ。
「鎌田實 いのちの対話」(NHKラジオ第一)にも出演してもらったことがある。
もしかしたら、ジョン・チャヌの演奏に、鎌田の詩の朗読があるかもしれない。

最後は、いのちのトーク。
鎌田と、駒込病院副院長の坂巻壽先生、公的骨髄バンクを支援する東京の会の大谷貴子さんが「いのち」について語り合う。

司会進行は、NHKエクゼクティブアナウンサーの村上信夫さん。

申し込み、問い合わせはこちら↓をご覧ください。

http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_seikatsueisei_kanrikeikaku_h22kenkoubunkyo21.html

http://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0026/2040/chirasi.pdf

文京区にお住まいでない方もご参加いただけます。
往復はがきでの申し込みは8/26必着、インターネットでの申し込みは8/25までですので、お早めにお申し込みください。

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原発事故311

体内被曝を測定するため、福島県内にホールボディカウンタが10台くらい必要になると話してきた。
田村市を訪ねたとき、ぼくは市長に、食物の放射線量の測定機器や、子どもや妊婦にフイルムバッジをつけてもらうという決断はすばらしいが、さらにホールボディカウンタを設置してはどうかと提案した。

諏訪中央病院が5月末まで支援してきた南相馬市立総合病院では、ホールボディカウンタが動き出した。動き出したと同時に、1万人の測定希望者が殺到。
今、希望者の募集は一時中断している。

多くの方は、検出されないことが多く、されても少量。
1ミリシーベルトを超える人は今のところいないという話だ。

Img_4268ホールボディカウンタで体内被曝の検査をする鎌田

チェルノブイリや福島に何度も足を運んでいるので、ぼくも測定してもらったが体内被曝は認められなかった。
昨年夏もベトカでホールボディカウンタで検査を受けたが、そのときも測定値ゼロだった。

Img_4270 鎌田の体内被曝は認められなかった

このように年一回、健康診断とともに体内被曝の検査ができるといいと思う。
そのためには、ホールボディカウンタを各市町村に設置することが求められる。
簡易型は約5000万円。
国と県、市町村、そして東電が4分の1ずつ負担して設置をすすめるとよいと思う。
市町村の負担が4分の1なら、実現可能なのではないか。

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2011年8月 7日 (日)

新連載スタート

現在発売中の「婦人公論」8/22号から新連載がはじまった。
「僕の好きな女性」というタイトルで、鎌田が月に1回、素敵な女性をゲストに迎え、生き方や魅力に迫る。

Photo_2

第一回は、森下洋子さん。
世界のプリマドンナとして活躍。今もしなやかな筋肉を鍛え続けている。
ストイックに鍛えつづける森下さんが、ふと垣間見せる女性らしさが素敵なのだ。

新連載、ぜひご覧ください。

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ご支援に感謝

JIM-NETへの車の緊急支援のお願いをしてきましたが、うれしいお声を方々からいただきました。
長野県のKさまよりパジェロミニ、名古屋のYさまからも石巻の訪問看護用に軽自動車をご寄付いただけるとお声をかけていただきました。
これらのお申し出をあわせると、なんと10台の新車や中古車が、ご寄付あるいはレンタルという形でいただけることになりました。

JIM-NETへ募金も少しずつ集まりはじめました。
高知県の主婦の方から、あたたかなお心をいただきました。
「何もできない主婦として、JIM-NETのみなさまの活動にいつも敬服しております」

本当にたくさんの方にあたたかなご協力をいただき、涙がでるほどうれしいです。
幸せなNPOだと思います。

石巻では、川添・重岡看護師を中心に在宅ケアを行っていますが、来年3月まで諏訪中央病院から医師が一ヶ月交代で支援に入り、さらに理学療法士らも加わることになり、連携しながら地域医療、在宅ケアを展開していく予定です。

また、JIM-NETを構成する8つのNPOが協力して福島を支援することを理事会で決定。
戦争反対、劣化ウラン弾の使用禁止を訴えてきた経験を生かし、福島で放射線から身を守る活動をお手伝いしていくことになりました。
佐藤事務局長と緊急支援スタッフの児玉さんが、福島に事務所を開設する準備を始めています。

石巻や福島で有効な支援を展開していくことが、たくさんの方々のお気持ちにお応えすることになると、スタッフ一同気持ちを新たにしています。

この国を「強くて、あたたかくて、やさしい国」にしたいと思ってきましたが、すでにそういう人たちがたくさんいることを実感しています。

ご支援、本当にありがとうございました。

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原発事故310

フイルムバッジの2回目の解析が行われている。

2回目の解析で新しく明らかになったのは、車である。
前回は非常に低い値だったのに、今回の解析で年間7ミリシーベルトという高い被曝予測値が出た人がいた。
何か生活に変わったことがないか聞き取りをしたところ、20キロ圏内の双葉町に置いていた車を持ちかえり、乗っているという。
車の中は、1.3マイクロシーベルトであった。
車の徹底した除染も必要なことがわかった。
きめ細かくデータをとり、それに対応しなければならないことがわかってきた。

3人家族でいちばん小さな6歳の子が、1回目の解析のときに年間5~7ミリシーベルトの被曝をするという予測が出た。
その子は、外遊びの場所や時間を選ぶことで、2回目では2.52ミリシーベルトに低下した。

飯舘村の子どもたちも前回、年間5~7ミリシーベルトの被曝量が予測されたが、できるだけ飯舘村に帰らず、避難所で過ごすようにしたところ3.36ミリシーベルトに低下した。

積算線量計を持つ意味が見えてきた。
福島県や市町村はフイルムバッジを普及させ、住民が自分たちでデータを確認しながら、自分たちで身を守れるような体制づくりをする必要がある。

生後3週間の赤ちゃんがいる家も測定。
前回は、庭の一部の雨どいの下に3.5マイクロシーベルトが検出されたり、窓の外が1.5マイクロシーベルトだったり、赤ちゃんのベッドが0.8マイクロシーベルトだった。
この赤ちゃんも改善傾向にある。

本日、JCFに事務所を貸してくださっている原町中央産婦人科医院の高橋亨平先生が中心になり、たくさんのボランティアが入り、JCFの貸し出したフイルムバッジで数値が少し高い妊婦さんの生活環境の除染を試みることになっている。

みんなで努力していくことが大事。
放射線量の低下に成功すれば、ほかの人にも広めていくことができる。

Photo妊婦や母子を支える産婦人科医の高橋亨平先生と(撮影者・板橋雄一氏)

先週の土曜、ぼくは高橋先生とお会いして、今後のことを話し合った。
高橋先生はいつもだれかのためにという思いが強い方だ。
コンクリートの建物は木造よりも放射線量がずっと低いので、自分の医院の寮や空いている病室で、妊婦さんや、お母さんと赤ちゃんがお昼寝などをして、そこで過ごす時間を多くしてはどうかと提案している。
すごい提案だ。
自分がもっているものは、すべて活用してもらおうという、オープンマインドを感じた。
たくさんの高橋ファンがいるというのもよくわかる。
南相馬市の復興会議の議長もしていて、人望もある。
高橋先生が、JCFの活動を高く評価してくださっていることで、ぼくたちも活動しやすくなっている。

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2011年8月 6日 (土)

ベスト・エッセイ集

日本エッセイスト・クラブ編11年版ベスト・エッセイ集「人間はすごいな」(文藝春秋、1800円)に、鎌田實のエッセイが載った。

幸せなことに、このベスト・エッセイ集には時々載せてもらっている。
この本も、今回が最後という。

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選ばれたエッセイは、「新婚旅行はアウシュビッツだった」という月刊文藝春秋に載せたものだ。
新婚旅行にも連れて行かず、25年間放っていた妻から怒られ、慌てて新婚旅行に行くことになった。
行き先は、アウシュビッツとチェルノブイリ。
旅の最後、妻が言った言葉。
「来てよかった。
アウシュビッツもチェルノブイリも、二度と起きないようにしないといけないと思ったわ」

1年半前に書いたエッセイである。
残念なことに、チェルノブイリと同じような事故が日本で起きてしまった。
悔しい。

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原発事故309

福島第一原発で毎時10シーベルト(1万ミリシーベルト)が検出された。
100ミリシーベルトでがんになる確率が0.5%上がるといわれているが、その100倍である。
べらぼうな放射線量であることがわかる。

3号機の2階でも5シーベルトを検出した。
両方とも、ベントをしたときの空気の通り穴が近くにある。
3月のベントで、放射性物質が放出されることは承知していただろうが、これほど高い値が出るとはだれも思わなかっただろう。
4ヶ月経っても、これだけ高い放射線が検出されるのは異常である。
やはり石棺の建設を検討しないといけないと思う。

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鎌田劇場へようこそ!(80)

「ワンヴォイス ハワイの心を歌にのせて」

ハワイ、オアフ島の120年の伝統を誇る高校で行われる合唱コンクールを1年間、追っている。
この高校の合唱コンクールは、消えかかっているハワイ語で歌うというのが原則である。
合唱コンクールでの優勝者たちは、高校を卒業して何十年も過ぎても尊敬される。
一生涯の誇りなのである。

高校生たちは、合唱を通してハワイ語を自分のものにし、ハワイアンとしてのアイデンティティを探してく。

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福島にボランティアに入るときの新幹線のなかで、ぼくはこの映画を見た。
高校生たちが、BEGINの「涙(なだ)そうそう」をハワイ語で歌っている。
「涙そうそう」のメロディとやさしいハワイ語が、とてもマッチしている。

その日、津波に襲われた福島の浜通りの漁師町を歩きながら、このメロディが頭のなかで鳴り続けた。
福島の人たちも、ふるさとの歌や民謡を歌えるようになる日が早く来るといいな。

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以前、このブログで紹介した映画「いのちの子ども」の新聞広告に、ぼくのメッセージが載った。

「震災後、映画を見る気になれなかった。久々に感動した。戦争という絶望のなかにわずかに見える「希望を」。「映画はいいなあ」と、忘れていた心を思い出した」

イスラエルとパレスチナのドキュメンタリー映画。
ドキュメンタリーなのに、とてもおしゃれで感動的だ。

8/26には、鎌田の3作目の絵本「アハメド君の命のリレー」(集英社)が発売される。
パレスチナからイスラエルへ、少年の心臓がバトンタッチされたお話。

お楽しみに!

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原発事故308

月刊「Voice」8月号で、ジャック・アタリがおもしろいことを言っている。
フランスの経済学者なので、当然、原発推進している論客である。

「まず、民主主義国家でなければ、いかなる国でも原子力エネルギーは使うべきではないと思います。私から見れば、民主主義は原子力エネルギーを使う必須条件です。
原子力エネルギーは透明性を意味するからで、透明性がなければ民主主義国家ではありません。中国は民主主義国家でないわけで、私は中国での原子力エネルギーの使用に懐疑的です。ほかの多くの国に対しても同じような印象を抱きます」

アタリとぼくとではまったく位置が違うが、「エネルギー問題は民主主義が問われている」というぼくの主張は、アタリのこの言葉と同じようなことだと思う。

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管理監督する原子力安全・保安院が「やらせ」をしたり、九州電力だけでなく四国電力や中部電力もやらせに近いことをしたり、佐賀県知事がやらせのきっかけをつくったり。
民主主義を冒涜することが日常茶飯事に行われる原子力村は、原子力を扱う必須条件である民主主義がまったく作用していないことを示している。

日本は、10年で原発を止めるドイツと競争して、より早く、原発依存から脱却し、新しいイノベーションを行い、それを貿易立国・日本の立脚点にすべきだと思う。

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2011年8月 5日 (金)

500万回御礼

先日、500万回アクセスを達成しました。
たくさんの方に読んでいただき、ありがとうございます。

震災発生からもうすぐ5ヶ月。
時間の経過とともに、東北の支援活動の内容も変わってきています。
現在は、福島の除染作業に取り組みはじめました。
12月には時間をつくってチェルノブイリを訪ね、作り上げたネットワークを使って、土地改良事業や食物の放射能測定システム、体内被曝測定のシステムなど、保健衛生的な視点から調べなおしたいと考えています。
それらの情報も、このブログで発信していこうと思います。

原発事故の問題やそこから見える日本という国を考える一方で、日本全体が元気になることを願って、旅や映画、本、音楽、食べ物の話題など楽しい話題も紹介していきます。

今後とも、ご愛読よろしくお願いいたします。

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お約束どおり500万回と前後賞の方にはサイン本をプレゼントしますので、諏訪中央病院 鎌田宛で、お手紙で送付先をご連絡ください。

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原発事故307

先日、南相馬に巡回診療をしに行ってきた。

南相馬市は空間線量が毎時0.5マイクロシーベルトくらいで、福島県内では決して高い地域ではない。
しかし、そんな市街地のなかでも、庭の側溝に12.33マイクロシーベルトという場所があった。
この値に24時間365日をかけると、年間107ミリシーベルトとなる。

この側溝を掃除し、周りの表土を10センチ削りとったところ、4.39マイクロシーベルトに低減した。ほぼ3分の1になったのだ。

また、10.75マイクロシーベルトの場所があり、ここは表土を削り、汚染されていない土を入れた。
すると1.82マイクロシーベルトになり、8分の1くらいになることがわかった。

あるお宅では、敷地内の複数箇所で測定したところ、0.36マイクロシーベルトのところと、12.33マイクロシーベルトのところがあった。

一カ所測って、うちは大丈夫と思わないことである。
自分の庭に、ミニホットスポットがある可能性がある。
除染作業は、きめ細かさが求められると実感した。

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サマーキャンプ真っ盛り

東日本大震災で被災した子どもたちを支援しようと、全国では約100のサマーキャンプが行われている。
北海道や長崎、沖縄まで、NPOが実施したり、県と市町村が協力しあったり、方法はいろいろだ。

長野県のように、県が中心になり、市町村や民間で組織する東日本大震災支援県民本部が実践部隊となって支援を展開していくというやり方もある。

京都のNPOは、長野県の富士見町に子どもたちを招待している。
茅野市の隣の原村には、南三陸の子どもたちを定期的にバスで送迎しながらリフレッシュしてもらっている。

たくさんの子どもたちに、いい時間を過ごしてもらうことが、ぼくたち大人の願いである。
伊達市の教育長さんは、草むらを転がりまわって遊ぶ子どもたちを見て、胸が熱くなったと語っていた。

ともあれ、信州は夏真っ盛りだ。

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2011年8月 4日 (木)

原発事故306(追記あり)

栃木県の日光や茨城県でも稲わらキロ当たり35000ベクレルの放射性セシウムが検出されている。
岩手の稲わらも汚染が確認された。
栃木県産の腐葉土からも放射性セシウムが検出。
千葉県柏市の焼却炉の灰から70800ベクレルの放射線が出ている。

Photo_5 クリックすると拡大します

汚染は予想以上に高く、広い範囲に及んでいる。
福島県だけでなく全国の自治体で、食物の放射線測定器を数台置き、徹底的に食べ物の放射線量を測定できるシステムを構築すべきだ。

JCFでも、食物の放射線測定器を購入することを理事会で決定した。
できるだけきちんと議論して、有効な使い方をしたいと思う。

上記の地図は、群馬大の早川由紀夫教授のブログから転載させていただきました。
http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-414.html

◎追記

この地図を見るとわかると、かなりの汚染が広がっているのがわかる。
その広がりは、農地や米どころといわれるところにも容赦なく届いている。

これまで、野菜やお茶、川魚、稲わら、牛の汚染が確認された。
これから新米の季節になると、米の汚染が心配である。

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南相馬の共同作業所

この作業所では、障害がある人たちがお豆腐やお弁当をつくって販売している。
しかし、震災後、お弁当が売れなくなってしまった。
お豆腐を道の駅に出しても、観光客がいないため、まったく売れない。
今使っている福島産の大豆はだいじょうぶだが、来年からはおいしい大豆が手に入るか心配だという。

1107316__ おいしいお弁当やお豆腐を作っている共同作業所の人たち

給料は2万5000円くらい。
ちょうどお昼時訪ねたら、みんな昼ごはんを食べていた。
100円で食べられるという。とてもおいしそうだ。

障害のある人たちがこの作業所に来て、食べ、みんなと会い、仕事をして帰っていく。
大事な生活の基盤になっているのだ。

ポスト・フクシマで、こういう人たちの生活が置き去りにされないか、心配である。
応援することを約束してきた。

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原発事故305

2006~2007年の国主催のプルサーマルシンポで、やらせが行われていた。
ひどいのは規制監督をする原子力安全・保安院がやっていたことだ。
これでは規制ができるわけがない。

プルサーマルをやるという世論形成を卑怯なやり方でやっていたことになる。
原発はいつも卑怯なやり方が目につく。
お金に群がる人、選挙の票に群がる人。
馴れ合いの体質を早くやめなければ、この国は腐ってしまう。

11070311__ 諏訪中央病院の庭

もちろん、すべて民主党の責任ではない。ほとんどが自民党の長期政権時代に起きている。
海江田さんが安全・保安院や安全委員会を解体、再構築すればいいのである(本日、その動きが少しあったようだが)。

でも、ぼくは、本当にできるのは河野太郎くらいだと思っている。
河野太郎にこの国のエネルギー政策任せてみたい。
そのためには自民党と民主党が連立を組むしかない。

20世紀型のオヤジの不安は、原発を止めたら電力の案提供給がむずかしくなり、経済がしぼんでいくのではないかということだ。
この不安を払拭するためには、経済も支え、経済を支える電力を保障しながら、改革すればいい。
経済を大事にしている人たちにとってみれば、原子力でなければならないというわけではない。安定的で安く、安全な電力がほしいというだけである。
それに答えるような政策を打ち出し、7年間くらいで原発をすべて止めればいい。
そんなに難しい話ではない。

問われているのはリーダーシップである。
菅さんにも、海江田さんにも、リーダーシップがあるとは思えない。

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船旅から帰国

ピースボートの旅に参加した南相馬の中学生たちが、アジアの船旅を終えて帰国する。

ベトナム、シンガポール、スリランカと、無事に船旅を楽しんできたようだ。
ベトナムでは日本語学校に通う生徒さんと交流し、たくさん友だちができたとか。
子どもたちはプールを楽しみにしていたようで、船内のプールを楽しんでいる様子がブログで紹介されていた。

Photo _2ベトナムの日本語学校で

Photo_2 船内のプールを満喫

Photo_3船内の運動会の練習のもよう

Photo_4避難訓練

みなさまからたくさんのご支援をいただきました。
感謝いたします。

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2011年8月 3日 (水)

原発事故304

食品安全委員会は、内部被曝と外部被曝を合わせ生涯被曝限度を100ミリシーベルトとする答申を出した。

生涯被曝量をどう測定するか難しいので、ピントはずれな感じがするが、考え方には興味がある。
生涯被曝量100ミリシーベルトにすると、摂取する食品の放射線量はさらに基準値を厳しくしなければいけなくなる可能性が高い。
むしろ、不安感を払拭するために、魚や肉、野菜など食品の基準値を今の500ベクレルよりも低い値にし、それ以下のものに関しては、「心配なし」と考えたほうが精神衛生上よいのではないか。
学者間で意見が分かれて、とんでもないことだと言い合っていることのほうが国民を不安にさせてしまう。
基準値を厳しくしてもいいので、その基準値にしたがって、それ以上は心配しないようにしたほうがいいと思う。
それでも幼い子どもを抱える母親などは、被曝を極力ゼロにしようとするかもしれない。
それはそれで、その人の人生観と考える。自由主義社会のもっとも大事な原則である。

基準値はできるだけ厳しく設定すべきだと思う。

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15歳の少女の不安

先週末、福島の子どもとお母さんたちの第一陣が約300人、茅野の白樺湖にやってきた。
子どもたちは霧が峰や花火大会に大喜び。
雨に降られ、魚とりができなかったのがちょっと残念。
諏訪東京理科大のキャンパスを借りて、体育館やサッカーグラウンドで大はしゃぎしていた。

1107317__ 体育館で思いっきり体を動かす福島の子どもたち

ぼくはお母さんたちにチェルノブイリとフクシマの原発事故の相違点を話し、どんな心構えでこのピンチを乗り越えるか、一緒に考えた。
泣きながら聞いてくれる人もいた。
終わった後、次々に質問が出てくる。

郡山で、家の中で1マイクロシーベルトの家があるという。ちょっとびっくり。
15歳の女の子から、こんな質問が出た。
「将来、結婚して、子どもを生むときには、子どもは大丈夫ですか」
泣きながらの質問である。
みんな不安なのである。

「福島の人とは結婚できない」といわれているそうだ。
そんなのは事実ではないし、うわさでも許せないとぼくは強く否定した。
体内被曝を受けないように、できるだけ食べ物など注意したほうがいいけれど、いつかお母さんになることや、子どもを生むことを心配しすぎないようにしてほしいと伝えた。

握手をしたり、写真をとったり、できるだけ全員に元気を与えれるようにしてあげたかった。

茅野市の社協や市の課長たちがみんなボランティアで出てきている。
議員たちも応援にきてくれた。
茅野市は、あたたかいなと思う。

カタログハウスの10人近くのスタッフもてんてこ舞いの忙しさで走り回っている。
茅野市民のボランティアも10人ほどかけつけた。
みんなが福島の母子を気にかけている。

福島の人たちも、みんな茅野市を気に入ってくれたようだ。
いつか福島が元気になって、信州との交流ができればいいなと思う。

今週は第2陣がやってくる。
落合恵子さんや山本太郎くんが茅野に応援に来る。

ぼくは8月末に、大好きな尖石を案内し、放射線の話をしたいと考えている。

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あと少し! カウンタにご注目ください。 

500万アクセス達成しました。感謝です。

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再々度のお願い

石巻の地域ケアに取り組むJIM-NETに、車のご寄付あるいはレンタルをお願いしてきました。
これまでの記事はこちら↓

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-84d6.html

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-6a79.html

ありがたいことに、松沢さまから3台目の車のお話をいただきました。
ステーションワゴンのマニュアル車ということで、大変いいお話。
ただ、石巻はまだガレキがあって道が細く、できれば軽自動車を望みます。
普通車でもいいですが、オートマ車だとありがたいと思っています。
貸していただくのでもけっこうです。

車は、地域の在宅ケアには不可欠な足。
ぜひ、ぜひ、JIM-NETにご支援をお願いいたします。

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2011年8月 2日 (火)

松樹路人展

松樹路人展「終わりなき旅」が、茅野市美術館で始まった。

蓼科にアトリエを構える日本を代表する画家。
出身地である北海道の道東の町には、この人の絵が点在しており、ぼくは訪ねてあるいたことがある。
札幌の道立近代美術館や、横浜の美術館にも作品が収蔵されている。

Photo

勢いや感覚だけで描く絵とは違う。
絵の向こう側に音があり、未来があり、死を感じさせたりする。
不思議な絵が多い。
静かな絵である。
いろんなことを考えさせてくれる。
ぼくは大好きである。

20117304 7/30の開会式で、松樹路人さんと鎌田

今回の展覧会は、彼の大事な作品を集めている。
すぐれた展覧会である。
初日の開会式では、絵画界の重鎮にまじって、素人のぼくがあいさつをおおせつかった。

一見の価値ある美術展である。
会期は、8/29まで。
8/7、21の両日午後2時から、松樹さん自身がギャラリートークをする。

蓼科や白樺湖に遊びに来る予定のある人は、茅野駅前にある茅野市美術館に寄ってみることをおすすめします。

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いよいよもうすぐ! カウンタにご注目ください。

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8/5いわき市で講演会

いわき湯本病院の主催で講演をすることになった。

病院のご厚意で謝金をいただくことになったが、これを南相馬の中学生49人のピースボートの旅の寄付にまわしていただくことをお願いした。

チェルノブイリとフクシマを見てきた鎌田が、困難な時代をどう生き抜くかを語る。

日時:8月5日(金)13:00~14:40
会場:いわきワシントンホテル椿山荘 大宴会場「アゼリア」
参加:一般の方も参加可

お問い合わせは0246-42-3188

ぜひ、福島の方はおいでください。

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原発事故303

暗い話が多いなかで、すごいなという話が毎日新聞に載っていた。
福島市にある常円寺が、「身捨てるのは僧侶の務め」と言い、汚染土を引き受けているという。
作業には、近隣の住民や檀家などが約100人が参加。近隣住民に説明し、反対意見は出ていないという。
汚染土を捨てている、寺が所有する山は毎時8マイクロシーベルト。

国は、この寺に什器を貸し出して、せめて深く埋めことができるように力を貸すべきではないか。
汚染土や汚泥の扱いに困っているが、ボランティアの取り組みとして、これを一つの見本にすべきではないだろうか。
これをモデルに、自分たちも取り組もうという人たちがいくつか出てくるとありがたいと思う。

しかし、最も大きな問題は、国や自治体の対策が遅れていること。
「身捨てる覚悟」に甘えすぎないようにしたい。
「身捨てる人」を支える地域や国になるべきだと思う。

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2011年8月 1日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(79)

「木漏れ日の家で」

ポーランド映画。
傑作である。

91歳の女性が死を前にして、恵まれない子どもたちに最後のプレゼントをする。
あたたかくしゃれた映画である。

ぼくの詩に「1%だれかのために」というのがあるが、この女性は1%知らないだれかのために大切なものを残していった。

Photo

この映画を岩波ホールで上映中は、心が映画どころではなかった。
とても味わい深い映画。
劇場で見られなかったのが残念である。

全国各地では上映しているところもあるので、ぜひ劇場に足を運んでみてはいかがだろうか。

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原発問題302

やらせメール問題が大きく飛び火している。
原発を規制するほうの原子力安全・保安院がやらせで政策誘導。
佐賀県知事が「経済界の声を」と言って、九州電力のやらせを誘発したということだ。
とんでもないことである。

さもありなん。
この国のエネルギー政策には民主主義がないとずっと思ってきた。

議論の積み重ねをせず、やらせで空気をつくって、原発を推進してしまえばいいという、本当に困った連中の犯罪的行為である。
政治も、経済界も、保安院を中心にした官僚も、チェックを入れなければいけない学者たちも、金に負けて、福島の人たちの生活をズタズタにしてしまった。

とにかく早く原子力安全・保安院を経済産業省から離すこと。
佐賀県知事や九電の社長は責任をとること。
菅さんは何もできない人だから、菅さんは早く辞めて、新しい首相が原子力安全・保安院や原子力安全委員会を解体し、再構築することが大事だと思う。

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鎌田實といのちを語ろう

今年も8月15日、「鎌田實といのちを語ろう~これからをど生きるか~」(20.05~21.55、NHKラジオ第一)が放送される。

終戦の日の夜、若者たちと平和や生き方について語り合ってきた。
5回目の今年は、仙台から生放送。
被災地から「支え合い」をテーマに、若者たちと語り合う。

1107312__ 諏訪中央病院の庭で揺れる花々

ゲストは、ジャパン元気塾代表の加藤秀視さん、女優サヘル・ローズさん。
司会、村上信夫さん。
昨年、このメンバーで大変な反響をいただいた。

被災地を支え合う、国と国が支え合う、友だち同士が支え合う。
互いに支え合う関係をつくり、この先どう生きていくか。
電話でリスナーと結んだり、来場者のインタビューを通して、鎌田とゲストが命の大切さに深く切り込んでいきたいと思う。

10~20代の若者たちから、お便りをお待ちしています。
詳しくはこちらをご覧ください。

そして、8月15日の夜は、ぜひラジオの前でお会いしましょう。

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