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2011年11月

2011年11月30日 (水)

原発事故372

現在、福島第一原発から放出されている放射線は毎時6000万ベクレルという。
事故当時の1300万の1 に減っているというが、問題は今も放出が続いているということだ。
わずかでもじりじりと大気や大地を汚している。

1111205__ 岩次郎小屋のニセアカシアはすっかり葉を落とした

今後も、放出が続くのだとすれば石棺の建設も着手しなけばならない。
そして、放射線の「見える化」もすすめなければならない。
各地での測定をきめ細かくし、食品もできるだけ全品検査の方向をめざすべきである。
全品検査のシステムができあがるまで、できるだけ広い範囲でサンプル検査し、全品検査に近づけていく努力が必要だ。

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2011年11月29日 (火)

原発事故371

福島県二本松市小浜地区や福島市大波地区での米から放射性セシウムが検出された。
大波地区の周囲では予備調査と本調査で、28~136ベクレルの放射性セシウムが検出されていた。
隣接する伊達市では、163ベクレルが出ているところもある。

田んぼには水を引く。
福島市だけでなく伊達市も含め、この近辺一帯の山の水が流れているところは再調査すべきだと思う。

1111204__ 冬晴れの青い空にただよう雲

建設業者で除染作業をしている人からこんな話を聞いた。
校庭の除染が終わった段階で、台風がやってきて、校庭が水浸しになった。
山の水が浸水したためと思われるが、せっかく下がった校庭の放射線量が3倍くらいに増えたという。

この例から推測すると、里山も問題だと思う。
米の汚染も里山との関係に注目する必要があるように思う。

今回、大波地区の農家は自主的に米の調査を依頼した。
県や国が隠そう隠そうとするなかで、きちんと調べて公表したことは、評価したいと思う。
農家として立派な考えをもたれているようだ。
こういう農家が除染に成功し、来年は安心してお米をつくれるようにサポートしていきたい。

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2011年11月28日 (月)

原発事故370

福島市大波地区の米から1キロ当たり630ベクレルのセシウムが検出された。
同地区稲作農家154戸のうち、4戸がすでに地元米穀店などに出荷しているという。

1111203__ 雲のかさをかぶる八ヶ岳

もともと大波地区の米の予備検査と本検査では、28~136ベクレルのセシウムが出ていた。
暫定規定値の500ベクレル以下なので出荷制限がかからなかった。
やはり500ベクレル以下でも公表し、全品検査をするというのが、安全と風評被害を防ぐうえで大事だと思う。
同じ地区の米だからといって、ほかが汚染されているかは検査をしないとわからない。
検査が大事なのだ。

網の目からこぼれないようにするには、全品検査をすることが大事だと思うと以前から述べてきたが、その通りになったように思う。
風評被害が強まるとしたら、残念だ。

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2011年11月27日 (日)

鎌田實の一日一冊(115)

「十八歳からの十年介護」(町亞星著、武田ランダムハウスジャパン、1365円)

著者の町亞星は、日本テレビの女子アナだった。
40歳にしてフリーになった。

18歳のとき、お母さんがくも膜下出血で倒れる。
その介護のさなか、お母さんに子宮頸がんが見つかる。
さらに、お父さんが胃がんになる。
お酒に浸り、肝硬変になって、ウェルニッケ・コルサコフ症候群というアルコール性の脳の異常を起こす。
精神病院でお父さんは亡くなる。
女子アナ、報道記者としてずっと仕事をしながら、両親や妹や弟の面倒をみてきた。

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ぼくは著者から10数年前に取材を受けたことがあったが、こんな苦労をしているということはまったく知らなかった。
日本経済が悪くなっているときにフリーになるのは冒険だと思うが、両親の介護が終わり、やっと自由をつかんだ町さんのこれからに期待したい。
いい風が吹くといいなと思っている。

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2011年11月26日 (土)

原発事故369

ロシアの小児がんの専門家が来日し、述べたことが朝日新聞に書かれている。

この専門家は、ロシア連邦立小児血液・腫瘍・免疫研究センターのルミャンツェフ・センター長。
2009~10年にベラルーシに住む約550人の子どもの体内の放射性セシウムを調べると、平均で約4500ベクレルの内部被曝があったという。

検査法が同じかどうか確認が必要だが、日本の一般人で確認されている内部被曝は高くても50ベクレルくらい。
ウクライナではホールボディカウンタによる内部被曝の診断基準が統一されていない。
50ベクレル以上を内部被曝としている例が多いようである。
0~50、50~100、100~300という3つの段階に分けているようだ。

1111082__ 紅葉の諏訪中央病院の庭

このドクターの発言で注目したいのは、03年にベラルーシで亡くなった成人と子どもの分析では、脳や心筋、腎臓、肝臓など調べた8臓器すべてからセシウムが検出され、どの臓器でも子どものほうが濃度が高く、甲状腺からは1キロ当たり1200ベクレル検出されたという話である。

放射性ヨウ素131のように甲状腺がんとの相関関係が証明されていないが、セシウムが甲状腺に沈着することはありうる。
長い間にこれががん化する可能性は否定できない。
低線被曝はわからないことが多い。
だからこそ、速やかに、慎重に、そして継続的に検査をする必要があると思う。

子どもたちが2010年に体内被曝をしているということは、食品がまだ汚染されているということである。
そして、このドクターは子どもたちを汚染のない地域に3ヶ月間移住させると、体内のセシウムがかなり減ったと述べている。
このことは、ぼくたちもベトカで見てきた。

もう一つこのドクターの言葉で注目したいのは、ロシアのブリアンスク州の子どもの血液細胞を調べると、活性酸素などのフリーラジカルが通常の約2倍多かったということだ。
ぼくは来年の春、京都府立医科大学学長の吉川先生と共著で健康の本を出すが、吉川教授はフリーラジカルの権威で、「放射線もフリーラジカルの一つだ」と表現している。
なるほどなと思った。
動脈硬化やがん、糖尿病などは、フリーラジカルが引き金になっているともいわれる。
放射線に当たるということは、動脈硬化やがん、白内障を起こしやすくするということだ。
活性酸素などが2倍多かったというデータをロシアで調べるようになったことは、これからの対策に役立つと思う。

JCFでも、信州大学の小池教授と協力し、ナチュラルキラー(NK)細胞の測定をしたことがある。
放射線によりNK細胞がすごく少なくなり、免疫機能に影響することははっきりしている。
だが、一方で放射線によって逆にNK細胞が多くなるのことを説明することができず、学会に発表することはできなかった。
日本でも、放射線と免疫というのをテーマを研究する学者が出てくるといいと思う。

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2011年11月25日 (金)

原発事故368

福島県の各地をまわっていると、建設関係の仕事をしている人たちから不満を聞かされることが多い。
県や市と災害時の緊急支援協定を結んでいるため、3/11からすぐに警察や自衛隊が入れるように、ガレキを撤去し道を通れるようにする大仕事をしてきた。
メルトダウンが起きた3/12、15、21も知らされることなく、外で大変な仕事をしていたのだ。

しかし、除染作業は日本原子力研究開発機構を通して、大成建設、鹿島、大林組の3グループに委託されてしまった。
全て原発建設に携わってきた企業である。
地元の小さな建設会社にも仕事は来るが、完全に下請けの仕事。
除染という被曝の危険を背負いながら、うまみは全部東京の大企業に吸い上げられていく。
そんな不満の声である。

111107__ 九州新幹線さくら。先日、初めて乗った。

初めから直接、福島県内の建設会社に仕事の委託があれば、地元にお金が落ち、地元の経済が元気になっていくが、被曝というリスクだけ背負わされる今のような形では、やってられないと、業者は悲鳴を上げている。
ぼくは以前、20キロゾーンの中で働いている人たちの健康管理のために、20キロ圏内に入ったことがあるので、建設関係の人たちがどれほど苦労して仕事をしているかよく知っている。

政府は、日本原子力研究開発機構を焼け太りさせてはいけない。
できるだけ被災地、福島県に直接お金が渡されるようにしてもらいたいものだ。
大企業が危険な仕事をしないにもかかわらず、莫大な利益をあげるというのは、やはり納得できない。
除染作業1.2兆円を、新たな利権にすべきではないと思う。

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2011年11月24日 (木)

原発事故367

イノシシのことをずっと気にしている。
福島県だけではなく、茨城県でもイノシシの肉から1キロ当たり670~1040ベクレルの放射性セシウムが検出された。
イノシシが生息する16市町のうち、日立、高萩、土浦、水戸の4つの町で捕獲されたイノシシの肉からである。

1111091__ 雲をまとう八ヶ岳

森の汚れが想像以上であることと、イノシシやシカには県境がないことなどから、汚染の広がりには注意しなければならない。
チェルノブイリから遠く離れたフィンランドのトナカイが汚染され、何年にもわたりラップ人たちが生活に困ったときがあった。

耕作の自粛が進んだり、避難して不在にしていると田畑が荒れていく。
シカやイノシシがそれらを荒らし、ますます繁殖していく可能性が高い。
クマなどもハンティングした後、知り合いにおすそ分けという形で出回ってしまうのは心配だ。
イノシシ、シカ、クマなど野生の食肉は、必ず食物線量計での測定を義務付けないといけないと思う。

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2011年11月23日 (水)

ピック病を知っていますか

11/11の介護の日、記念講演をした。
その会場に、中村成信さん夫妻が来てくれた。

中村さんは、若年性認知症で多いピック病を発症。
5年前に、症状からスーパーで「万引き」をして現行犯逮捕。市役所を懲戒免職になった。
「万引きは、認知症によるもの」として、処分の撤回を市公平委員会に訴えてきた。

ぼくは、4年ほど前に、中村さんとお会いしている。
「ぼくのこと、覚えている?」と中村さんに聞くと、もちろんです、とにこやかに答えてくれた。
そう、アルツハイマー病とは違い、ピック病は初期では記憶が比較的保たれやすい。
それだけに周囲から気付かれにくいのだ。

中村さんは「サザンビーチちがさき」の命名に尽力し、2000年夏のサザンオールスターズ茅ヶ崎ライブの開催に奔走した行政マンだった。
その彼を、ピック病が襲った。
ピック病と診断された混乱と苦悩。
「万引き事件」によって失った社会的信用や経済的基盤。
そのどん底から、家族や仲間、地域の人たちとともに再生していく過程を、『ぼくが前を向いて歩く理由(わけ)』(中央法規出版)という一冊にまとめた。
認知症の人自身が、自分自身のことをこれだけ語れるというのも驚きだ。

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普段はにこやかで、会話のやりとりもまったく普通の中村さんだが、ストレスがたまってくると、ちょっとしたことを引き金に、奥さんを怒鳴り散らしたりすることがあるという。
そのときのことを本人は覚えていないこともあり、戸惑っていることがよくわかった。
認知症は、自分自身がわからなくなるという人がいるが、そんなことはない。
マダラ状になっている自分を不安に思っている自分がいるのである。

ピック病というものがどんなものか皆さんに伝えてもいいということで、ご本人にも奥さんにも了解していただき、急遽、ぼくの講演の舞台に上がっていただいた。

この日、ぼくは「相手の身になる」というキーワードで、介護や震災の被災者救援のことを話した。
いま介護している人も、していない人も、相手の身になってみること。
夫が妻の身になったり、妻が夫の身になったり、子どもの身になったりすることで、お互いを支え合うようになることができるのではないか。

中村さんはピック病を発症したけれど、まだまだできることはたくさんある。
趣味はカメラ。地域のデイサービスにボランティアにも行っている。
そして、これまで多くの人に支えられてきた恩返しとして、自分の体験を語り、社会に役立てたいと思っている。

多くの人たちがピック病という認知症があることを知り、ピック病の人の身になって考えることができたら、もっと暮らしやすい社会になるのではないか。

『ぼくが前を向いて歩く理由』(中村成信著、中央法規出版)
ピック病の人と家族の思いがよくわかる。
感動的な本です。
ぜひ、お読みください。

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2011年11月22日 (火)

鎌田實の一日一冊(114)

「がん患者」(鳥越俊太郎著、講談社)

大腸がんで左肺と肝臓に転移が広がり手術。Photo_9
今も右肺に2年間で2ミリから4ミリへと変化している小さな影を経過観察している。
終わりなき戦いをしている鳥越俊太郎。
自分自身をまな板の上の鯉にして、きちんと料理している。
ジャーナリスト鳥越俊太郎が、がん患者鳥越俊太郎を取材した記録。

「三陸物語」(萩尾信也著、毎日新聞社、1575円)

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サブタイトルは、「被災地で生きる人びとの記録」。

毎日新聞連載されたルポを大幅に加筆して一冊にした。
どんなに凄まじい地震と津波に遭ったのか、実によく伝わってくる。

著者の目がやさしい。
被災した視覚障害者や聴覚障害者らにも、あたたかな目が注がれている。

「残酷平和論-人間は、何をしでかすかわからぬ動物である」(鴨志田恵一著、三五館、1470円)

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戦争が始まる原因と背景、平和のもろさ、国境とは何か、異文化、異文明との出会い、平和に関係するもろもろのことがわかりやすく展開されていく。
共生とか絆などが見えてくる本である。

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お知らせ

明日11/23の「鎌田實 いのちの対話」(NHKラジオ第一、午前9.05~)は、沖縄から生放送する。
これまでお母さんをテーマにすることが多かったが、今回はお父さんについて。
ゲストは、藤本敏夫さんと歌手・加藤登紀子さんの娘yaeさん。
赤塚不二夫さんの娘、赤塚りえ子さん。バカボンのパパを「これでいいのだ」と語る。
「さとうきび畑」の作者・寺島尚彦さんの娘、寺島夕紗子さん。戦争を否定し、平和を祈る歌がどんなふうにできたのか。
鎌田は2人の父について語る。
ぜひ、お聞きください。

Img_4679 岩次郎小屋の秋の庭

23日午前10時5分~、NHK総合で「シリーズ原子力③チェルノブイリの教訓」が放送される。
1986年のチェルノブイリ原発事故。当時ソ連が情報を隠すなか、徹底した調査報道を行ったNHK特集「調査報告 チェルノブイリ原発事故」(53分・モンテカルロ国際テレビ祭ゴールデンニンフ賞)を視聴。
ヨーロッパの全域に放射能汚染が広がった深刻な事故を検証する。
また、福島の市民との交流のため来日したチェルノブイリのナージャ医師をゲストに招き、除染・子どもの健康・食の安全など25年の教訓を学ぶ。ふくしま会議が開かれた福島大学で収録。
コメンテーターは、小出五郎さん。

23日の「100分de名著 アラン“幸福論”」(Eテレ、午後10時~)に、ゲストとして出演する。
哲学者アランの、幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せなのだという言葉は、ぼくのエッセイにも何度か書いた。
今こそアラン。
アランは、わかりやすい言葉で、現代の生き方を指し示してくれる。
生きるヒントになると思う。

24日は「ニュースエブリィ」(日本テレビ系、午後4時53分~)に出演。
木曜の午後5時5分くらいから「がんばらないコーナー」を受け持っている。

ぜひ、ご覧ください。

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2011年11月21日 (月)

鎌田實の一日一冊(113)

「福島の原発事故をめぐって」(山本義隆著、みすず書房、1050円)

原発への熱い怒りを抑えて、物理学者が原子力について静かに考察している。
その視点は鋭い。
山本はこう述べる。

「日本人は広島と長崎で被曝しただけではない。今後、日本は福島の事故でもってアメリカとフランスに次いで、太平洋を放射性物質で汚染した三番目の国として世界から語られることになるであろう。
この国はまた大気圏で原爆実験をやったアメリカやかつてのソ連と並んで、大気中に放射性物質を大量に放出した国の仲間入りもしてしまったのである。
こうなった以上は世界中が福島の教訓を共有するべく、事故の経過と責任を包み隠さず明らかにし、そのうえで率先して脱原発社会、脱原爆社会を宣言し、そのモデルを世界に示すべきであろう」

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諏訪中央病院前院長の今井澄さんの葬儀のとき、司会のぼくは市民会館のいちばん後ろで、弔辞を読むはずの山本義隆さんの名前を呼んだ。
しばらく反応がなく、来てないのかと思った矢先、山本さんは静かにゆっくりと歩きながら舞台に上がり、しみじみと弔辞を読んだ。
いつも静かでいながら、熱い気持ちをたぎらせている。

そんな山本義隆の原発を考察した一冊。

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原発事故366

福島会議の一環で、ナージャ先生と福島大学で「復興カレッジinフクシマ」という講演と対談を行った。
放射能汚染地域であるベトカの森の近くに住んでいる人たちは、無許可でハンティングをして、放射線で汚染されたシカやイノシシを食べている。
密猟になるため、放射線量を測定するところに持っていくことができない。
結局、それを食べて体内被曝するという。

Img_1680 毎時10.5マイクロシーベルト。

福島で、イノシシ12頭からセシウムの汚染が確認されている。
いちばん高い数値では、3221ベクレルだった。
水戸でつかまったイノシシ1頭にも、セシウムが確認された。

イノシシやシカなどはある程度の範囲を動き回る。ときには県境も越える。
野生の動物に関しては、今後、かなり注意しなければならない。
いわき市の沿岸のプランクトンから669ベクレルが検出された。
相馬市のなめこからは4600ベクレル。
森の動物や魚、きのこなど。厳重に注意していく必要がある。

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2011年11月20日 (日)

原発事故365

チェルノブイリの放射能汚染地域、ベトカ地区病院のナージャ院長がこのほど来日した。
JCFとNHKが協力して招聘。いろいろと興味深い話をうかがうことができた。

ベトカでは、人口21000人という地域にホールボティカウンタが2台あり、一日1000件の食物放射線量を測定できるシステムができあがっているという。
市場に出ない、自分の家でとれた露地ものの野菜や果物なども持っていけば測定してもらえるという。

Img_4704 放射線測定をするベトカ地区病院ナージャ院長(中央)

原発事故から25年たった今でも50~60人の新規の体内被曝者がみつかるが、多くはお年寄りだ。
食物に対する注意をきかず、森のベリーやきのこを食べてしまう人がいるという。

JCFのスタッフナースが10月にチェルノブイリに入り、聞き取り調査をしてきたが、子どもをもつお母さんにも差があることがわかった。
食事を徹底して注意しているお母さんがいる一方で、コルホーズで働いている人などは食物をあまり意識せず、放射線量も測定せず、なんとなく大丈夫だろうと信じて畑の作物や森のきのこなどを食べているという実態がわかった。
放射線に対する教育が徹底されていないのだ。
ナージャ先生も同じことを言っている。

ナージャ先生からは、食物によってはゆでる、むく、洗う、酢漬けにするなどの工夫をする必要があるという話も聞いた。
利尿効果のあるハープを飲んだり、リンゴ、クランベリー、スモモ、カシスなどペクチンの豊富な食べ物を住民にすすめているという。

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鎌田劇場へようこそ!(93)

「風にそよぐ草」

待ちに待ったアラン・レネ監督の映画。
才気あふれるレネも89歳。
しかし、あいかわらずナイーブで新鮮だ。

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幸せな家庭をもつ紳士が、ある日、一人の女性に心とらわれていく。
人間は人を好きになる。
いくつになっても心が狂うほど人を好きになることがある。
ベストセラー小説の映画化であるが、アラン・レネならではシーンのなかに、人間の心模様が見事に描きだされている。
美しいショットは、まさに映画芸術である。

映画の醍醐味があふれる、すぐれた映画だと思う。

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2011年11月19日 (土)

鎌田写真館~秋の終わり

岩次郎小屋の庭の木々も、鮮やかに色づいています。
秋の終わりの輝きです。

Img_4681_2 Img_4678_2

ニセアカシアの葉はほとんど落ちました。

1111086__

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2011年11月18日 (金)

鎌田實の一日一冊(112)

「救命-東日本大震災、医師たちの奮闘」(海堂尊監修、新潮社)

善意の寄付金にふれていることがおもしろい。
「日本医師会は震災後一ヶ月の時点で義援金から、自ら被災したにもかかわらず避難所で医療行為に携わる医師に一律で月額30万円を給与として配分した」
この分配金の出し方は見事だと海堂尊さんは言っている。
なるほど、その通りだと思う。
自分の診療所が津波で流され、体育館で避難生活をしながら、救急医療を展開した医師たちがたくさんいた。
この人たちの行動は見事だし、その人たちを支えた医師会もなかなかなものである。

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海道さんはその一方で怒っている。
日本赤十字社に寄せられた義援金は数ヶ月以上塩漬けにされているらしい。
6月はじめに2523億円が集まったのに、配布したのは823億円。
被災者に届いたのはたった370億円というひどいものである。
「日本赤十字社は医療代表のように目されるが、寄付金対応に関しては医療現場の人間の行為とは思えない」と激しく怒っている。

なるほどと思うことが多い本。
海堂尊さんのテレビ番組に出演した際、サイン入りでいただいた。

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鎌田實の一日一冊(111)

「こども大図鑑 人体」(リチャード・ウォーカー著、河出書房新社、1995円)

聖路加国際病院の小児総合医療センター長の細谷亮太先生が序文を書き、ぼくが推薦をした。
大人がみてもおもしろい。

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体のしくみや働きがよくわかる。
最先端のテーマも扱われていて、わかりやすい。
驚きと感動に満ちた人体の世界をビジュアルで解説してくれる。
魅力的な本だ。

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2011年11月17日 (木)

微生物の力

カリウムとよく似た性質のセシウムを取り込む光合成細菌を利用することで、泥の中のセシウムを9割除去できると、広島国際学院大の佐々木教授が発表している。
セシウムを「食べてくれる」細菌については、このブログでも触れてきた。
実際にはセシウムは細菌に移行するだけで消えるわけではないが、乾燥して焼却すると75分の1になるという。
焼却も500度以下ならばセシウムがガス化しないということで、微生物を使ってセシウムの汚染土の容積を減らすというのも一つの作戦である。

Img_4673 南相馬の柿の木。今年は、念のため、だれも柿をとらない。たわわに実る柿がどこかさびしそうだ。

田中優さんの情報によると、赤城山の溶岩の粉末と銀を混ぜ合わせ、セシウムを減らす研究があるとか。
科学的な説明は必要だろうが、とりあえずいろんなところで魅力的な実験が行われている。

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2011年11月16日 (水)

お知らせ

明日17日夜10時~「海堂ラボ」に鎌田が出演する。
医師・作家の海堂尊さんの医療ジャーナリズム番組。

「放射能汚染とどう向き合うのか 困難な時代を生き抜くために」をテーマに、福島原発事故の今後の対策や医療支援のあり方、これまで取り組んできた地域医療などについて語る。

ぜひ、ご覧ください。

番組内容、初回放送、再放送の時間はこちら↓

http://asahi-newstar.com/web/44_kaidou/?cat=18

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自由に意見交換

環境活動家の田中優さんと11/11、東京のザ・ルーム・代官山というしゃれたホールで講演会を行った。
1800円という会費にもかかわらず、たくさんの若者が集まった。

1111121__ 田中優さんと鎌田

講演の後、30~40分ではあるが、車座になって若者たちと意見交換をした。
証券会社のサラリーマンだったが、会社を辞めたという青年は、自然エネルギーを普及させるためには資本が必要で、そのためのファンドをつくる新しいビジネスを展開しようとして、いまエコの勉強をしているという。
子どもたちに教えるために放射線の勉強をしているという養護教諭もいた。
中年の人たちも参加してくれていて、若者たちと意見交換をしていた。

1111122__ 講演の後、自由に意見交換をする若者たち

一方的な講演スタイルだけでなく、それぞれが質問したり、意見交換したり、自由な発想で情報交換できるのはとてもおもしろいスタイルだ。
俳優のいしだ壱成さんも参加。
みんなが一生懸命自分たちの命をどう守るか考えている。

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2011年11月15日 (火)

早く厳しい規制値を

NHKの「あさイチ」に出演した。
偶然、福島市のあずま果樹園からの生放送だった。
この果樹園は、9月下旬「鎌田實と東北へ行こう」と松島のツアーの帰り、バス5台で訪ねたことところだった。

福島の野菜や果樹をつくっている農家はたいへん厳しい状況にある。
そんな福島の農家を応援したいと思って、新聞や雑誌に書いたり、方々で話したりすると、いろいろな反応が返って来る。
多くは、自分も福島の農家を応援したい、自分も野菜や果物を買って応援したいというもの。
だが、一方で、「放射能汚染しているのにプロパガンダをしている」という批判の声があるのも事実だ。
なるほど、そういう見方もあっていいと思う。

001 「あさイチ」のテレビ画面から

厳しい考えを持つ背景には、食品の暫定規制値や放射線測定値のあいまいさがあると思う。
何度も述べてきているが、日本の食品の暫定規制値はウクライナやベラルーシに比べると緩い。
果物は特に定めはなく、野菜の1キロ当たり500ベクレルを流用している。
ちなみにウクライナでは70ベクレル、ベラルーシでは40ベクレルである。
日本の規制値も40ベクレル以下にすると安心が広がるのではないかと思う。

また、食物の放射線測定器には、たとえば15ベクレル以下は測れないもの、50ベクレル以下では測れないものなど、精度に違いがある。
「不検出」というのはゼロではなく、測定した機械の精度によって、15ベクレル未満の場合もあれば50ベクレル未満の場合もあるということなのだ。
「不検出」というなら、あわせて○ベクレル以下は不検出という情報も提示しなければいけない。
果物の規制値を40ベクレル以下にするなら、機械の精度も求められる。

野菜はウクライナでは40ベクレル、ベラルーシでは100ベクレルだが、日本でも最も厳しい40ベクレルを採用すれば、同様に納得してくれる人が増えるのではないかと思う。

早く厳しい規制値を決めてほしい。

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2011年11月14日 (月)

世界から感動の声

NHKラジオ短波で11/2、「アハメドくんのいのちのリレー」(集英社)のことが17カ国で世界中に配信された。

エジプトの人からは、こんなコメント。
「この絵本を知って、大きな感銘を受けた。
この出来事が持つ人道的意義は大きな共鳴を呼びます。
平和の機会を求め続ける人は、このメッセージをリレーし続けなければいけません」

「アラビア語班のみなさん、鎌田さん、このような感動的な経験をありがとうございました」というのは、30代の男性リスナー。
ありがたいことである。

1111085__ 赤く色づいた岩次郎小屋の庭

スペイン語で聞いてくれたウルグアイの58歳の男性。
「紛争によって引き起こされた憎しみの感情を乗り越え、人間同士の連帯感を示す貴重な手本を私たちに残してくれました。
絵本にこめられたメッセージもしっかりと伝わったと思います。
簡潔な状況説明のほかに、著者のインタビューもあり、まとまりあるリポートでした。
中立性と客観性を維持した国際放送にふさわしい内容だったと思います」

ケニアやタンザニアのリスナーからは、何通か「絵本が読みたい」という声が寄せられたという。

ロシア語のリスナーからは、
「著者である日本人医師のインタビューも興味深かった。
絵本をつくるのに全力をつくしているのがわかり、それはパレスチナへの精神的な支援になると思います」

ホームページで絵本のイラストも見てくれているのがわかるメッセージもあった。

国内の読者からも、熱いいお手紙をいただいている。
2年後に教科書にしたいという話もきている。

殺された少年の父親イスマイルさんと、少年の心臓の提供をうけたサマハさんが来年、来日すると、もっと世界に大きなニュースを伝えることができる。
2人を日本に招待するために、いま全力で動いているところだ。
朗報を楽しみにしていてください。

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2011年11月13日 (日)

鎌田實の一日一冊(110)

「知りたくないけれど、知っておかねばならない原発の真実」(小出裕章著、幻冬舎、1000円)

京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんが、MBSラジオで原発事故について語ったことをまとめている。
どんなに早くから彼が的確な指摘をしていたかがわかる。
しかも、最も厳しく原発を批判をしていた彼が、ひとたび原発事故が起こると自分にも責任があると言い、子どもの命を守るためには大人がそれぞれ責任を分担し、自分もその責任から福島の野菜を食べると言っている。
すごい人だなと思う。

Photo

「日本人のすべての大人には、原子力をここまで許してきた責任があると思います。
それは政府や電力会社が原子力発電は絶対安全だと言い続けてきたわけですし、多くの日本人はだまされてきたわけですが、だまされた人にはだまされた責任があると私は思うのです。
ただ子どもには少なくとも今の原子力発電を許したという責任はありません。
放射線に対して大人よりはるかに敏感です。
ですから子どもをいかに守るかというシステムをつくらなくていけないと思います」

ぼくは、何度か小出先生にお電話をして、わらかないことを聞いた。
彼はいつもジェントルマンで、丁寧に答えてくれる。
留守電にメッセージを入れたら、わざわざJCFに電話してくれ、ぼくを探してくれたりした。
原発事故が起きて、「ほら、言ったとおりじゃないか」というようなことも、ひとことも言わない。
科学者として正確な分析をしようと努力している。
そして、子どもたちを守るためにどうしたらしいいか発言し続けている。

人間的に魅力的な人だと思う。

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2011年11月12日 (土)

あの連載が一冊に

『「がんばらない」を生きる』(中央公論新社)が発売された。
この本は、昨年、読売新聞で連載された「時代の証言者」に加筆し、まとめたもの。

この「時代の証言者」はとても好評で、いろんな人から「切り抜いて大事に持っています」とよく言われた。
東北に救援に入ったときにも言われた。
気仙沼から大島に渡ろうとしたときの船長さんもその一人だ。

「家も流された。全部失ってしまった。鎌田先生の記事が津波で流されてしまったのが悔しい」

みんな大切にとっておいてくれたんだなと思った。

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読売新聞の鈴木記者がさらに、ぼくが育った杉並区や医学の師、同級生、かつての同僚、父岩次郎のふるとさ青森などを丁寧に訪ねあるき、聞き取りをしてくれた。
かつてのぼくにも見えていなかった「絆の哲学」が見えてきた。
なんだ、がんばらなければよかったのか、と結局「がんばらない」に行き着いていったのである。

「がんばらない」の誕生とその深化
ポスト・フクシマの葛藤
田舎医者が探求し続けた思索の集大成
だれかがもたれてきたら支え、楽になる

「がんばらない」という不思議な思想を時代の背景とともに克明に分析している。
おもしろい本ができたと思う。
ぜひ、読んでほしい。

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若手医師の支援日誌

諏訪中央病院の若手医師が、石巻市の雄勝地区を中心に支援に入っている。
雄勝診療所の小倉先生が、診療所開設間際ということで取材に追われたり、薬剤師が常駐していないため、薬の院内処方をするときの二重チェックなど、まだあまり慣れていない職員体制のなかで、助っ人の医師が一人いることで、だいぶお役に立っているようである。

1111081__ 先月のハロウィーンには、かわいいジャック・オー・ランタンが諏訪中央病院の庭に飾られた

この若手医師たちの支援活動の様子は、「Suwa家 いしの巻」で見ることができる。
若いドクターたちが、生き生きしたとてもいい顔で支援にあたっている。
熱い思いで支援に取り組んでいる姿が、すがすがしい。

ぜひ、のぞいてみてください。

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2011年11月11日 (金)

和合さんと対談 

婦人公論11/22号で、詩人の和合亮一さんと鎌田が「ポスト・フクシマを生き抜くために」という対談をしている。
詩人の和合さんは震災後、ツイッターで次々と詩を発表していった。

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2ヶ月ほど前、ある映画をみて、それぞれの感想を述べ、語り合ったことがある。
和合さんの心の深さや教養の深さが感じられ、とてもおもしろい時間だった。
今回も、刺激的な対談になった。

婦人公論の連載、「僕の好きな女性」は、歌手のクミコさんがゲスト。
鎌田が見つけたクミコの魅力をぜひ、ご覧ください。

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2011年11月10日 (木)

すてきな英訳

明日11/11は介護の日。
東京・イイノホールで開かれる「介護の日」セミナーで講演する。

夕方は、ピーター・バラカンさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組「Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM」(東京FM、18.30~)に出演する。

ピーター・バラカンさんには「アハメドくんのいのちのリレー」(集英社)に、英訳をつけていただいた。
とてもすてきな贅肉のない英文だ。
中学生、高校生は英文のほうも読んでいただくと勉強になると思う。

この絵本をオバマ米大統領に送ろうとか、ヨーロッパやアメリカで出版できないかなどと、2人で夢のような話をしている。
ポッドキャストでも聞けるので、ぜひ、お聞きください。

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「アハメドくんのいのちのリレー」は、たくさんの雑誌やラジオなどで紹介され、読んでくださった方からとにかく泣けた、泣けたと感想をいただいている。
命のいとおしさとつながりを実感していただけると思う。

臓器提供をしたパレスチナの少年アハメド君の父親、そして、臓器提供を受けたイスラエルのサマハさんとそのご両親を来年、日本に招待しようと思っている。
イスラエルとパレスチナの家族が一緒に旅をするなかで、さらに何かが変わればと期待している。

関西と東京で小さな講演会を行う準備をしている。
世界中にあたたかな連鎖を起こしたいと思う。

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2011年11月 9日 (水)

復興ラーメン

南相馬の仮設住宅の一角に仮設商店街ができた。
そのなかに、小高地区でラーメンがおいしいと有名だった双葉食堂が開店した。
32キロ地点にある仮設住宅のみんなから「お店を再開してほしい」という声におされて、オープンにこぎつけたのだ。

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一時期、新潟の三条市に避難していた双葉食堂のご家族と、何度か電話で話し、応援の声を届けたことがある。
いつか必ずぼくに双葉食堂のラーメンを食べさせたいと言ってくれていた。

待ちに待った開店の日、ラーメンは450食完売。
その後も長蛇の列ができ、毎日270~280食のラーメンが売れる。

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お店の人は、寝たきりのおばあちゃんを支えながら、店の切り盛りをしている。
従業員は、みんな家を流れされた人たち。
避難しているだけよりも、忙しいけれど働けることはありがたいと、ニコニコ働いている。
フロイトの言葉がここでも思い出される。
生きることに困難な状況になっても、働く場と愛する人がいると、人は困難を生き抜けるという言葉だ。

双葉食堂はみんなが元気であることを確認する場になっていた。
地域の情報交換場にもなった。
毎日やってくるというおじいちゃんもいる。毎日食べても飽きないという。おいしいのだ。
この味は、今では寝たきりになったおばあちゃんが作り出した味だ。

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今度、新潟の三条市の人たちが30人ほどで、わざわざバスを仕立ててお祝いに来てくれるそうだ。
新潟の人たちは本当にあたたかい。
被災を通して、人間と人間の新しい絆ができはじめている。

南相馬に行ったら、ぜひ、双葉食堂でラーメンを食べてほしい。
間違いなくおいしい。

明日10日(木)、「ニュースエブリィ」(日本テレビ系、16.54~)でこのお店の復活物語を紹介する。
ぜひ、ご覧ください。

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2011年11月 8日 (火)

新潟の心

中越沖地震の被災者の「心の復興プロジェクト」のみなさんが、今年も無農薬米を作って、諏訪中央病院にもって来てくれた。
ありがたいことだ。
被災をしながら、日本の未来を考えようとする人たちのグループだ。
ボランティアで米百俵を作り、東日本大震災の被災者や東南アジアの恵まれない方々、諏訪中央病院の患者さんたちに毎年心配りをしていただいている。

今回は、被災者から被災者へと、お金も集めていただいた。
諏訪中央病院の医師が現在、石巻の雄勝診療所をお手伝いに行っている。
この寄付のお金は、その活動に使わせていただくことになった。
感謝です。

1111011__ 諏訪中央病院の庭

中越沖地震のとき、諏訪中央病院はすぐに救援にかけつけたが、今回は新潟の方に千人風呂プロジェクトで大きな力をお借りした。
世の中は助けたり、助けられたりだ。

新潟の人は被災の大変さが身にしみているので、やさしい。
先週、新潟の新発田に行ったが、福島の人たちをたくさん受け入れていた。
避難している福島の人たちからも、新潟の人はやさしいという声を口々に聞いた。
日本中がこうやって、みんなが1%だれかのためにやさしい行為をしていけば、日本はとても住みやすい国になると思う。

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2011年11月 7日 (月)

お知らせ

11/11の18.30~、東京・ザ・ルーム代官山で「ポスト・フクシマをどう生きるか特別編」がある。
ベトカ地区病院のナージャ先生をお招きする。
はじめは、鎌田と田中優さんの二人でポスト・フクシマを語ろうと考えていたが、いしだ壱成さんも出演することになった。
鎌田はボランティアで出演する。
ぜひ、ご参加ください。

詳しくはこちら↓

http://www.earth-garden.jp/community/15827/

11/13は、NHKの「復興カレッジin福島 チェルノブイリからフクシマへ」がある。
まだ席に余裕があるようなので、ぜひ申し込みください。
チェルノブイリ原発事故による健康被害に取り組んできたベトカ地区病院ナージャ先生の話が聞けるいいチャンスだ。

「in.pdf」をダウンロード

11/2、NHK海外向けラジオで「アハメドくんのいのちのリレー」が17言語で放送された。
英語の放送は、明日までインターネットで聞くことができる。
こちら↓を開き、スピーカーマークをクリックしてください。

http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/radio/program/index.html

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原発事故364

チェルノブイリでは6800人の小児甲状腺がんが発生したが、多くの場合、汚染された牛乳が原因しているといわれている。
日本はそれは学んで、早々に原乳の出荷停止を行った。
そのため、チェルノブイリのような甲状腺がんは発生しないといわれているが、完全に原乳の出荷停止がされたのは3/21である。
3/12には大量の放射性物質が放出された。3/15にも放射性物質が放出された。
このときは県全域の出荷停止はされていなかった。

放射性物質が多く流れていったと思われる地域、浪江町や飯舘村、伊達市、福島市、郡山市などの子どもたちは、血液検査も含めた甲状腺のエコー健診をしたほうがいいと思う。

111104___2 早朝、曇り空。都心のホテルから

福島県内ではなかなか内部被曝の測定ができない。
二本松市が獨協大学と提携して、内部被曝検査ができるホールボディカウンタを設置するという。
とてもいいことである。
福島県の全市は、ホールボディカウンタを置くように努力したほうがいい。
そして、さらに町や村では、食品の放射性物質の測定機器を設置し、住民が庭でできた野菜や果物も測定できるようなシステムをつくれば、もっと安心できるように思う。

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2011年11月 6日 (日)

原発事故363

食品から受ける放射線料を生涯100ミリシーベルトを限度とすると、食品安全委員会が厚生労働省に答申した。
厚生労働省はこれを受け、審議会を設けて、魚や肉、野菜などの食品の規制値を作ることになる。
なんともスピード感がない。
事故発生から7ヶ月半、もうすぐ8ヶ月である。

1110237___2 諏訪中央病院の秋の庭

7月の中間報告にあった外部被曝を外してしまったことは納得がいかない。
被曝を考えるならば、外部被曝も内部被曝も考えなければならない。
特に福島では、空間線量が高いところもあり、そこで生活する子どもの健康を考えるなら、内部被曝を少なくするための食品の規制だけでなく、外部被曝を減らすための除染などが重要になる。
生涯100ミリシーベルト以下にするには、年間約0.3マイクロシーベルトにしなければ目標を達成することはむずかしい。

南相馬市で行われた新しい検査機器によるホールボディカウンタ検査では、527人のうち268人から微量のセシウム137が検出されている。
南相馬という、福島県内では比較的空間線量の低い地域でも、微量ながら内部被曝をしているということである。

食品の規制値は世界一厳しいほうが、むしろ風評被害を防ぐことになる。
福島の野菜や果物は、多くがND(不検出)であったり、20~30ベクレルと少ない場合が多い。
みんなが安心、納得できるような厳しい規制値に設定し、それをクリアしたものだけが市場に出るようになれば、風評被害を減らすことができるように思う。
早く、厳しい規制値をつくって、発表してもらいたい。

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2011年11月 5日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(92)

「がんばっぺフラガール! ~フクシマに生きる。彼女たちのいま」

ドキュメンタリーである。
東日本大震災で、いわき市にあるスパリゾートハワイアンズは被災した。
自らが被災したにもかかわらず、被災者を受け入れ避難所となった。
避難所として被災者を支えながら半年間、自分たちの復興を信じて、再建にのりだす。

昭和40年、石炭の時代から石油の時代になり、常磐炭鉱は規模縮小に追い込まれた。
そのとき、町おこしとして常磐ハワイアンセンターができる。
炭鉱夫の娘たちがフラの特訓を始め、ショーを成功させる。
フラガールが奇跡を起こしたのだ。

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今回もまた、フラガールたちが奇跡を起こそうと集まってくる。
「きずなキャンペーン」と銘打って、全国を回る。
しかし、放射能の風評被害に遭い、なかなかホテルのお客さんは戻ってこない。
来年1月1日が完全復活の日である。
それまで、フラガールたちは必死に福島の復興を信じて踊る。
感動的なドキュメンタリーである。
ちょっと涙が出てくる。

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被災の縮図

「日経ビジネス」10/31号「次代を創る100人」で、南相馬市の桜井勝延市長が紹介されている。

南相馬市は東日本大震災のすべての要素をもっている。
地震、津波、放射線障害。死者や行方不明者も多い。
放射線量も全体的には非常に低いが、飯舘村との境界地域など非常に高いところもある。
原発から20キロ圏内も含まれている。

Photo_2

被害状況はモザイク状に複雑に入り組んでいて、東日本大震災の被害の縮図のようでもある。
怖いもの知らずのユニークなキャラクターがいい。
この地域がどう復興していくか、東北の復興のカギを握っている。

今週、来週と福島に入る。
そのときくは、南相馬にも行くつもりだ。
仮設の商店街の中に、双葉食堂が開店したという。
鎌田のファンといってくれているおばさんがやっている。
ラーメンがおいしいと評判だったお店である。
巡回診療をしながら、ラーメンを食べてこよう。

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2011年11月 4日 (金)

旅の間に・・・

忙しく飛び回っている。
北海道、新潟、九州、四国、また九州。
各地を歩きながら、少しずつ秋の深まりを感じている。

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旅先では、B級グルメを食べることが多い。
小倉では、焼きうどんを食べた。
四国では、地域医療学会の記念講演をボランティアでして、再び博多に戻り、そこで一口ぎょうざを食べた。
野菜と魚が足りないことに気がつき、和食屋さんに入ってイカ刺しを食べた。

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高知龍馬空港で不意に「鎌田さんじゃないかい」と声をかけられた。
なんと、菅原文太さんであった。
久しぶり再会し、旧交をあたためていたら、飛行機に乗り遅れそうになった。

東京にもどってきて、樹木希林さんと食事をした。
感性が豊かで、奥の深い方だ。
会っていて飽きない。とても勉強になる。
話がおもしろく、大笑いしてしまうが、なんだか不思議な哀愁があって、魅力的なのだ。
つかみどころがなくて、魅入られてしまう。

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「希望」紹介

河北新報の書評欄に、『希望~命のメッセージ』(東京書籍、1400円)が取り上げられた。

Photo

こんなふうに紹介されている。

http://blog.livedoor.jp/jim_net/archives/52190673.html

被災地の方を元気にできれば、とてもうれしいことだと思う。

この本は、印税も含めてすべてJIM-NETの東北支援に使われる。
ぜひ、ぜひ、『希望~命のメッセージ』を読んでください。

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2011年11月 3日 (木)

原発事故362

茨城県東海村の村上達也村長は、実に明快である。
日本は原発を持つ資格に欠ける国だと言っている。
原子力村の総括も必要と述べながら、地震列島の日本に原発はふさわしいのか、あらためて考える必要があるだろうという。

東海村にある東海第二原発の30キロ圏内には、100万人規模の暮らしがある。
今回の大地震で、東海第二原発もあと70センチに津波が高ければ、全電源喪失に陥った可能性があると述べ、100万人もの人口密集地帯で原発を続けていていいのかと村長は述べている。
えらい人だ。

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原発をやめるという前提のうえで、今ある原発の安全を確保しながら、どう廃棄できるか、東海村を研究開発の拠点にしようという。
電源交付金や固定資産税は入らなくてもいいという。
したたかな政治家である。
村人の命や健康を守りながら、村の次なる活性化を考えているのである。
すごい発想である。

ぼくはたびたび、ドイツが11年かけて原発をやめるなら、日本は7年でとめてみせるべきと言ってきた。
これから、どうやってすべての原発をやめることができるか、国全体で議論していく必要がある。
多くの原発のある市町村にとっても、新しい市町村の運営の仕方を見えてくるのではないかと思う。
原発で働いてきた人たちが、新しい仕事に転換できるように配慮しながら、この国の新しい形をつくっていく必要があるだろう。
おそらく20年くらいかかるだろうが、新しいエネルギーに転換し、安定した経済のために電力を供給できるようにし、日本人がやりがいのある仕事ができる社会をつくりながら、一人ひとりが生き生きと生きていける社会を実現できると思っている。

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鎌田劇場へようこそ!(91)

「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~」

ゲーテの傑作「若きウェルテルの悩み」を映画化した。
いまさらゲーテと思うかもしれないが、ゲーテはいい。
いままさにゲーテである。

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恩師・三木成夫先生は発生学の授業で、よくゲーテを引き出していた。
詩人で小説家、法律家、哲学者であるゲーテは自然科学者でもあった。
ゲーテは、モルフォロジー(形態学)という概念を身につけていた。

事実を直視する力があるから、事実の向こう側にある見えない真実を見つける力がゲーテにはあったのだと、三木先生はおっしゃていた。
精神医学者のフロイトは、死ぬほどの困難にであっても、働く場があることと、愛するものがいることで、生き抜くことができると言っている。
愛する人、恋する人がいることは大事である。

時代が苦しんでいる。
こんな時代だからこそ、いままさにゲーテなのだと思う。
ぜひ、ご覧ください。

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2011年11月 2日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(90)

「エンディングノート」

ドキュメンタリー。
主人公は、砂田知昭さん67歳。
定年退職後、末期の胃がんが見つかる。
熱血サラリーマンだった男が、死ぬことがわかった後、自分の死の準備をはじめる。
エンディングノートづくりをはじめるのである。
とてもいいキャラクターだ。

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亡くなる数日前、奥さんに語りかける言葉は涙を誘う。
娘が映画監督。
娘がカメラを構えているので、ときどき娘にしゃべりかける。
これがなんとも肩肘はらないでいいのである。
いやに素直で、落ち込むときもあれば、異常に明るくなるときもある。
孫が来ると、子どものようにはしゃいでいる。
死ぬことを承知しているのかと思うと、本人はずいぶん先まで生きれると思い込んでいる。
死に近づいたとき、人はこんな反応をするのだということがわかって勉強になった。
じわっと、なかなかいい映画である。

ただし、お金を出してまで劇場に見にいくかどうかは微妙なところである。
テレビだったら、傑作といえるだろう。

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原発事故361

原子力国家というのは幻想である。
原爆を落とされたぼくらは原子力に対して嫌悪感をもってきたが、原子力の善的な利用という甘い言葉にいつのまにか洗脳されていた。
原子力は、日本というシステムに巣くう怪物になってしまった。
原子力は、不潔なシステムを作り上げる。

東電には官僚が50人、電力会社がお金を出している公益法人には、官僚OB121人が天下りをしている。
佐賀県知事が九州電力にやらせを指示していたり、北海道庁の北海道電力への関与も第三者委員会で指摘されている。

原発を新規に立地するための膨大な交付金。
お金がないといっている国が、731億円ものお金を隠し持っているのである。
プルサーマルを受け入れた自治体には、国から60億円が交付される。
ぼくたちの電気料金に上乗せされているのである。

1110232__ 諏訪中央病院の庭

中立を守らなければいけなかった原子力安全・保安院も原子力安全委員会も、原子力推進のためにむしろムチを当てる行動をしてきた。
民主主義を冒涜している。
選挙になれば、電力会社の社員たちが必死に原発推進者を応援していく。
票とお金、地位。
原子力に巣くったモンスターである。
不潔なモンスターと、はやく縁を切ったほうがいい。
これだけの膿をみせられた以上、原発をこれからも作り続けていくことは考えるべきでない。
問題は、原発をどうやめていくか。
そのことに関して、きちんと議論をはじめていくべきだと思う。

ドイツが11年かけて原発をすべて廃止すると言明している。
日本はそのドイツと競争し、日本の技術力でたとえば7年ですべてやめられるように、今から電力の供給システムの開発、改善にとりくむべきだ。
7年あれば、やりないことはないのではないか。
ここに政治のリーダーシップを発揮すべきである。
日本がメルトダウンをおこさないためにも、与党と野党が協力し合って、エネルギー問題に関してはきちんと議論しながら、それぞれが妥協しながら、経済をシュリンクさせず、ほかのエネルギーに分散させていけるか検討していくべきだと思う。

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2011年11月 1日 (火)

Ahmed's Heart

『アハメドくんのいのちのリレー』(集英社)を翻訳出版したいと韓国の出版社3社から声がかかった。

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明日11月2日、NHKワールドの海外向けラジオでも紹介される。
「The Relay of Ahmed's Heart」
インターネットで、17言語で世界中に発信される。
この絵本が、世界で読まれるようになれば、とてもうれしい。

多くの方から「泣きながら読んだ」という感想をいただいている。
まだご覧でない方は、ぜひ、秋の夜長の一冊に。

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お知らせ

明日2日は、NHKの「あさイチ」(午前8時15分~9時45分)に出演する。
「放射能に負けない!」をテーマに、風評被害と闘う農家の取り組みや放射能検査の最新事情を紹介し、食の安全・安心について考える。

福島からの生放送。
これから、福島に行ってきます!

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11/11は介護の日

11月11日は、いい日いい日の介護の日。
今年も「がんばらない介護生活を考える会」が、「介護の日」セミナーを開きます。

日時 : 2011年11月11日(金) 13:00~15:45(開場12:00)
場所 : 東京 イイノホール(千代田区内幸町2-1-1飯野ビル)
対象 : 一般の方、介護のプロの方、介護のプロを目指す学生、高齢者施設業界関係者、メディア

主催 : がんばらない介護生活を考える会
特別協賛 : 大王製紙エリエールアテント
協賛 : 株式会社明治、株式会社ヤマシタコーポレーション、日本介護食品協議会、株式会社プロトメディカルケア、サンスター株式会社
後援 : 後援:厚生労働省、社会福祉法人全国社会福祉協議会、全国地域包括・在宅介護支援センター協議会、日本医師会、日本看護協会、日本栄養士会、日本コンチネンス協会、高齢社会をよくする女性の会、シルバーサービス振興会

Img_4653紅葉が鮮やかな岩次郎小屋のドウダンツツジ

鎌田は、「助けあいで、未来へ希望の持てる日本へ」と題して、講演。
よし田美知子さんによる「おむつの上手な選び方、使い方」、有江泰彦さんによる乳酸菌の話、岡本祐三さんによる「自立支援への挑戦-デンマーク・モデルが問うもの」という講演など、盛りだくさんの内容です。

参加は、無料。
定員は500人、こちらで申し込み方法をご確認のうえ、お申し込み、ご参加ください。

お問合せ : がんばらない介護生活を考える会
〒104-0045 東京都中央区築地2-7-12 15山京ビル605
TEL:03-3541-6262(土日祝を除く10:00~17:00)
FAX:03-3549-1685
eメール:info@gambaranaikaigo.com

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