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2011年11月23日 (水)

ピック病を知っていますか

11/11の介護の日、記念講演をした。
その会場に、中村成信さん夫妻が来てくれた。

中村さんは、若年性認知症で多いピック病を発症。
5年前に、症状からスーパーで「万引き」をして現行犯逮捕。市役所を懲戒免職になった。
「万引きは、認知症によるもの」として、処分の撤回を市公平委員会に訴えてきた。

ぼくは、4年ほど前に、中村さんとお会いしている。
「ぼくのこと、覚えている?」と中村さんに聞くと、もちろんです、とにこやかに答えてくれた。
そう、アルツハイマー病とは違い、ピック病は初期では記憶が比較的保たれやすい。
それだけに周囲から気付かれにくいのだ。

中村さんは「サザンビーチちがさき」の命名に尽力し、2000年夏のサザンオールスターズ茅ヶ崎ライブの開催に奔走した行政マンだった。
その彼を、ピック病が襲った。
ピック病と診断された混乱と苦悩。
「万引き事件」によって失った社会的信用や経済的基盤。
そのどん底から、家族や仲間、地域の人たちとともに再生していく過程を、『ぼくが前を向いて歩く理由(わけ)』(中央法規出版)という一冊にまとめた。
認知症の人自身が、自分自身のことをこれだけ語れるというのも驚きだ。

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普段はにこやかで、会話のやりとりもまったく普通の中村さんだが、ストレスがたまってくると、ちょっとしたことを引き金に、奥さんを怒鳴り散らしたりすることがあるという。
そのときのことを本人は覚えていないこともあり、戸惑っていることがよくわかった。
認知症は、自分自身がわからなくなるという人がいるが、そんなことはない。
マダラ状になっている自分を不安に思っている自分がいるのである。

ピック病というものがどんなものか皆さんに伝えてもいいということで、ご本人にも奥さんにも了解していただき、急遽、ぼくの講演の舞台に上がっていただいた。

この日、ぼくは「相手の身になる」というキーワードで、介護や震災の被災者救援のことを話した。
いま介護している人も、していない人も、相手の身になってみること。
夫が妻の身になったり、妻が夫の身になったり、子どもの身になったりすることで、お互いを支え合うようになることができるのではないか。

中村さんはピック病を発症したけれど、まだまだできることはたくさんある。
趣味はカメラ。地域のデイサービスにボランティアにも行っている。
そして、これまで多くの人に支えられてきた恩返しとして、自分の体験を語り、社会に役立てたいと思っている。

多くの人たちがピック病という認知症があることを知り、ピック病の人の身になって考えることができたら、もっと暮らしやすい社会になるのではないか。

『ぼくが前を向いて歩く理由』(中村成信著、中央法規出版)
ピック病の人と家族の思いがよくわかる。
感動的な本です。
ぜひ、お読みください。

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