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2012年1月15日 (日)

鎌田實の一日一冊(117)

「窓際OL 親と上司は選べない」(斎藤由香著、新潮文庫、500円)

無理難題を押し付ける上司をこてんぱんにやっつける。
なかなかおもしろい。
できると思っているダメ上司だとか、パワハラ部長とか、男おばちゃんだとか、ジキルとハイドだとか、上司をちゃかしたりしても、マカという男性精力剤の売り上げを伸ばしているので、会社でうまくやっていけていると思われる。
この会社がそういう雰囲気なのか。
社長のこともちょっとちゃかしているが、社長もまああいいかと見ているところが、この会社のおもしろいところという感じがしてしまう。

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著者は北杜夫の娘。
ある雑誌から鎌田が選ぶ10冊というのを頼まれたが、その一冊に北杜夫の『どくとるマンボウ航海記』を載せようと思った。
マンボウ氏は人生の途中でうつ病になり、ほとんど本らしい本を出していない。
娘さんの著作を読めば、北杜夫のことが書かれているだろうと思い、この本を手にしたが、父・北杜夫のことは書いてはいるが、どうも影が薄い。

うつ病のせいで、奥さんがどんなに手の込んだ料理を作っても、おいしいとも、まずいとも言わない。奥さんがキレる。
以前、北杜夫は奥さんのことを「作家の妻として失格、出て行け」と豪語したというが、晩年は夫婦のの関係は完全に逆転してしまう。

昔は、北杜夫がニューカレドニアに取材に行くと、妻は心細くて泣いていたらしい。
「いまや小鳥が変じて、鷲になった感じがある。ああ、ここまで女は強くなるものか」
娘は、そんなふうに父と母のことを書くが、どうも父の面影は薄く、母の姿が巨大化していく。

北杜夫が躁状態のときには、「タンタンタヌキの金の手は」などと変な歌をうたったらしい。
遠藤周作が、娘に向かって、「由香ちゃん、あんなに変な人がご自分のお父様だなんて恥ずかしくない」と質問したそうだ。
その遠藤先生も、モンキーダンスという猿のもの真似をしたり、髪が薄くなるのでヘアムースをつけたつもりが、お手伝いさんの脱毛ムースだったという話をしてくれたり。
かつてどくとるマンボウと狐狸庵先生はハチャメチャな時代があったようで、かつての話は出てくるが、晩年の北杜夫の姿が見えなくてやっぱり残念だった。

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