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2012年1月

2012年1月31日 (火)

殺気をまとう男

麿赤兒に会った。
舞踏集団「大駱駝艦」を主宰する舞踏家であり、俳優。
唐十郎の特権的肉体論を具現化する役者として、紅テントで活躍した。
ぼくは大学時代、夢中になって見にいった。

唐十郎の台詞がどんどん長くなり、文学的になり、わけがわからなくなり、なんとなく自分とは合わないのではないかと思うようになり、状況劇場の役者をやめ、象牙を売ったり、米を売ったり、人の言うとおりにやってえらい目にあったと聞いた。
お金がないときに暗黒舞踏の土方巽の家に数ヶ月居候したことがあり、目をかけてもらった。
特別、弟子になり教わったというわけでないが、言葉を超える表現者になりたくて、言葉を使わない舞踏家になったという。

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ロングコートにマフラー、それに帽子を目深にかぶった麿赤兒は、まとっている空気が尋常ではない。
しゃべりだすとやさしいおっさんみたいだが、歩く姿は美しく、殺気を漂わせていて、とても声をかけられそうもない完璧なムードをもっている。
一流の舞踏家というのはこんな歩き方をし、こんな空気をもっているのかと思わせてくれた。

40年程前、あこがれていた麿赤兒に会えて幸せ。
朝日新聞社から出ている『怪男児麿赤字がゆく 憂き世戯れて候ふ』という本を読んだ。
麿赤兒のおもしろさがよくわかった。
芝居や舞踏が好きな人はぜひ、ご覧ください。

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原発事故392

原子力災害対策本部の議事録が作成されていなかった。
それだけではない。
ほかの9組織の議事録もつくられていなかったという。
実に、実に、おそまつ。許されないことだと思う。

電力改革および東京電力に関する閣僚会合とか、電力受給に関する検討会合とか、大事な会合の議事録がないというのは、意識的としか思えない。
この政権の隠蔽体質がみえる。

節電の夏となった昨年夏は、2010年並みの猛暑になった場合、電力が9.2%不足するといわれたが、一方で電力が6%余るという考えがあることは公表されなかった。
火力発電所の定期点検をわざと8月にしたり、揚水発電の発電量を低めに見積もったり、再生可能エネルギーが750万キロワットあることをゼロにしたり・・・国民に大事なことを知らせていない。
そして、節電、節電の大合唱で、むしろ経済を停滞させている。
大問題である。

原子力委員会の近藤委員長が、昨年3/25に、最悪シナリオを描き、大変なことが起こる可能性があると発表しているのに、それを封印した。
SPEEDIのデータも封印した。
なんでも封印してしまう政府は、国民から信頼されなくなってしまう。
できるだけすべてオープンにすべきだ。
今からでも遅くない。
徹底的に情報公開すべきだと思う。

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2012年1月30日 (月)

安心して暮らせる町は?

「週刊現代」では、安心して暮らせる町はどこかという特集を組んでいる。
日本人初の宇宙飛行士になった秋山さんは、福島県田村市で無農薬農業に従事していたが、いま京都造形芸術大学の教授に着任予定。
福島から京都へと移るが、京都も若狭湾にある原発から60キロしか離れておらず、ちょっと心配という話が載っていた。

1201162__ 諏訪中央病院のイルミネーション。ボランティアが飾りつけてくれ、患者さんや家族の心を和ませている

『原発列島を行く』(集英社新書)というノンフィクションを書いている鎌田慧さんは、岡山県の倉敷市をあげる。
原発を拒否する市民運動が盛んで、市長も比較的理解があるので、倉敷市に住んでみたいと言っている。

鎌田實は、茅野市を選んだ。
人間が生きていくうえで、健康に生きられること、ゆるやかで、締まりすぎない絆があること、仕事があること、長野県は原発がないことが理由だ。
長野県は、農業も観光も精密機械工業もある。
たしかに不景気で昔ほど仕事を選べないが、ぜいたくをいわなければ仕事を得られる土地だと思う。
自分の住む土地がいちばんというバイアスがかかっているかもしれないが、それでも茅野市はいい町である。

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2012年1月29日 (日)

鎌田實の一日一冊(123)

「天才バカボン誕生40周年記念 天才バカボンTHE BEST講談社版」(赤塚不二夫著、講談社)

「赤塚不二夫名作選 レッツラゴン」(赤塚不二夫著、小学館文庫、630円)

「バカボンのパパよりバカなパパ」(赤塚りえ子著、徳間書店、1680円)

このごろ赤塚不二夫をおもしろがっている。
娘の赤塚りえ子さんに「鎌田實 いのちの対話」にゲストで出ていただいたのがきっかけ。
「これでいいのだ」という決め台詞や「水割りほしいのこころ」など、一世を風靡する言葉をいっぱいつくった。

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漫画だけでなく、実生活も破天荒だった。
うけるためなら死んでもいいという。
30年も前に、一晩で100万円も飲み代に使っていたという。
自分は最低だ、みんなより劣っていると思っていればいいんだというのが赤塚哲学。
とんなひどいことをやっても、オレ(赤塚)がやると、下品にならないと思っていたようである。
井上揚水は「傘がない」、赤塚不二夫は「意味がない」とも言っていた。

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作品を読み返してみた。
機関銃のように激しいギャグが続く。
最後までギャグが走り回りながら、それでいて、なんだか悲しみにあふれている。
「オレは笑われながら死にたい」という赤塚は、命がけで笑わせようとしている。

もともとお酒に弱い人だったようだ。
アルコール代謝能力が少ない人が、自分の恥ずかしさを隠すためにアルコールに走った場合、アルコール依存症になりやすいといわれている。
まさに、赤塚不二夫は、赤塚不二夫の世界を演じるために、酒を武器にした。
赤塚不二夫の漫画に悲しみがあふれているのは、そのためだと思う。

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「天才バカボン」は子どもにも大人にも、団塊の世代の初老の人にも、だれにでもうけてしまう。
「レッツラ☆ゴン」は激しい。シュールである。
簡潔で、はちゃめちゃ。哲学的で、文学的。
漫画はあまり好きではないが、赤塚不二夫はおもしろい。

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2012年1月28日 (土)

鎌田實の一日一冊(122)

「窓際OLトホホな朝ウフフの夜」(斎藤由香、新潮文庫、500円)

著者は、父・北杜夫をしのぐおもしろさがありそうだ。
独身女性の著者が、中年男性の中折れについて述べたり、彼女が売っている精力剤を男性作家がほしいといったという話を載せたり。
はじめのうちはF先生と名前を伏せているのに、だれだかわかるようなヒントを出し、最後には作家の名前をぽろっと出してしまう。
北杜夫のことも、斎藤茂吉のことも、斎藤茂太のことも、あけすけでおもしろいのであるが、いちばん知りたかった北杜夫の影はとても薄い。

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北杜夫の躁病はひどかったらしい。
株で破産。
ベートーベンを凄まじい音量で聞きながら、NHKの中国語講座を聞き、短波放送で株価の動きをみる。
なんともけたたましい時期があったようだ。
株をやって破産したら、今度は競馬をやりたいと言い出し、資金がなくなると自分の生原稿まで売ったという。
太宰治、坂口安吾、芥川龍之介のように無頼派や破滅派とは違うと思っていたが、北杜夫もなかなかの破滅傾向があり、なんとなく魅力を感じた。
娘である著者が父の株売買やギャンブルをやめさせたら、「ぼくはもう死ぬから、最後に女にもてたい」といい始め、娘と銀座のバーに行ったりする。
なかなかかわいらしい。

それにしても、娘のつっこみはすごい。
「父はさんざんやって、何の仕事もせず、原稿は一枚も書かずに、結局はうつ病になってしまった」

阿川佐和子が「ご本も出したし、私の父との対談集も出していただきましたし」
ととりなすが、それに対しても手厳しい。
「どれも駄作で、そのうえ二番煎じでひどいです」
そのやりとりを聞いた北杜夫は「さんざん妻に叱られ続けてきましたので、もう慣れとります」
大笑いである。

北杜夫は死んだら、通夜も葬式もしないといった。
しかし、どうしても何かを出したいという人には、「花は食べられないので不可。香典は可。多ければうれしい。ただし香典返しなし。貢物あればなおよし」と娘が言い出して、娘の言うとおりにしたという。

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新雪を滑る

今週初め、信州にも大雪が降った。
どうしても新雪を滑りたいと思い、緩和ケア病棟の回診の前に一本だけ滑りにいった。

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空が晴れ渡り、きりっとした八ヶ岳が迫ってくる。
絶景だ。

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林の中で、鹿の親子に出会った。

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2012年1月27日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(102)

「医(いや)す者として」

若月俊一先生の存在は、ぼくを八ヶ岳山麓へ導いた一つの理由になっている。

若月先生が全国地域医療研究会の会長で、茅野市で研究大会を開催したとき、若月先生と岩手県沢内村の増田進先生、京都の早川一光先生をお招きして、第一世代の地域医療の旗手たちの話を聴くことができた。
そのとき、ぼくは司会をしていた。

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若月先生と対談をするために、佐久市までうかがったことがある。
その内容は、若月俊一対談集の第一巻に載っていて、実におもしろい。
住民のなかへ、ヴ・ナロードという思想を、80歳をすぎてまで持ち続けていたことが対談から読み取れる。

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このドキュメンタリー映画は、30万フィートもあるフイルムのなかから、取り出した。
今の時代にとっても、なんとも大切なことを語っているのである。
ヴ・ナロードの思想が、実践されていた記録である。

長野県の会合などで時々お会いすると、若月先生はいつもぼくの横に座り、「カマタ君はいいな、元気そうで、ぼくはこのごろ元気がなくてね」と自分の下半身を指差すのである。
80歳を過ぎて、なんともおちゃめ。
このフイルムに映っている若月先生とは違う、オモロイ元気のいいおっちゃんみたいな若月先生が忘れられない。
素のままを出せる若月俊一の人間性は、農村に入っていくとき受け入れられやすかったのだと思う。

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意外な(?)年齢差

徳島へ行く飛行機で、偶然、日野原重明先生と一緒になった。
「鎌田先生とほくは何歳違いなんだろう」と日野原先生に聞かれてしまった。
「実は想像以上に離れているんです」とぼく。
「先生とぼくは37歳離れています。先生は非常に若々しいです。37歳離れているとは思えません。ちょっとぼくがふけすぎているかもしれません」
ぼくは笑いながら答えた。

日野原先生は、そうだろ、そうだろ、そうだろというような顔をして、満足そうだった。
4年程前「鎌田實 いのちの対話」に出ていただいたときは、一人で重い鞄を持って会場にやってきたが、今は2人のサポーターがついていた。
万が一を考えてのことだろう。

昨年の秋に、日野原先生100歳記念のシンポジウムに、パネリストとして出させてもらった。
この模様は、以前このブログ(http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-ad01.html)でも紹介したが、2月11日午後2時~3時、NHK教育(NHK長野局では、2月13日<12日深夜>午前0時~)で、放送されることになった。
ぜひ、ご覧いただきたい。

日野原先生はその後も、100歳記念の講演が、3ヶ月も続いているらしい。
歌舞伎役者のお披露目みたいなものかなと思った。

とにかく、お元気。
圧倒的に鎌田の負け。
若々しい100歳にエールを送ります。

続きを読む "意外な(?)年齢差"

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2012年1月26日 (木)

NHK復興カレッジin福島 vol.1

福島第一原発の事故がもたらした放射線リスクの中で、どう身を守り生きていくのか・・・。

2011年11月上旬、福島大学キャンパスにて行われた福島会議に連動して開催。

この会議のためにベラルーシから来日したが、ジミナ・ナジェージダ医師(ナージャ先生)。チェルノブイリ原子力発電所事故の汚染地ベトカで、地域病院の院長として住民の安­全を第一線でまもってきた。ナ

ージャ先生と20年にわたりチェルノブイリ原子力発電所事故の被爆者の治療にあたってきた鎌田實が、チェルノブイリの経験を福島のこれからの­対策にどういかしていけるのか語る。

(8回にわけて掲載します)

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鎌田實の一日一冊(121)

「樋口可南子のいいものを、すこし。」(清野恵理子著、集英社、1890円)

樋口可南子は好きな女優の一人。
今から15年ほど前、ひょっこり岩次郎小屋にやってきた。
カメラ屋さんの社長、茅野弘さんが連れてきた。
茅野さんとどんな関係なのか、わからなかった。
茅野さんはぼくの患者さんだったが、「本物をたまに見たほうがいいよ」と言って、年に1、2回、絵を見せに連れて行ってくれたりした。
「本物のおいしいものを食べにいこう」と言って、ぼくが東京で会議があるときに合わせ、わざわざ食事に誘ってくれてたりもした。
それまで医者仲間の付き合いだけだったぼくに、違う世界を見せてくれた人である。

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「樋口可南子のいいものを、すこし。」は、とてもいい本である。
ほとんどぼくには縁のない世界だが、一つだけ、あった。
ムッシュ・ヒラタのオート・モードが出ている。
あの平田暁夫さんだ。
ぼくは帽子がもともと大好き。
NHKの村上信夫さんに案内してもらい、平田さんのお店に行ったことがある。
なんと奥さんがぼくのファンだということで、気に入られ、帽子の木型をつくってもらった。
いつでもぼくの帽子をつくってくれるという。

夏の帽子を2つ買った。
しばらくするとプレゼントだといって、平田さんじきじきに編んだパナマ帽が贈られてきた。
麦わらを丁寧に編んだ、豪華なパナマ帽だ。
ぼくは夏中、ずっと平田さんの帽子をかぶっていた。

秋になって、お店にうかがいたかったが、時間がなかった。
冬の帽子がほしい、一つつくってほしいと手紙を書いた。

すると、なんと黒とグレーと茶の、3つの帽子が贈られてきた。
茶色の帽子はちょっとぼくには小さかったので、ぼくの代わりに奥さんがかぶっている。

ムッシュ平田の帽子を、樋口さんがかぶると、なんとも絵になる。
それにもして、いいものを少し、という考え方は、とても大事なことだ。
哲学がある、この本はいい。
いいものを少し、と時々自分に言い聞かせようと思う。

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吉野川市で講演

徳島県の吉野川市に行ってきた。
『アハメドくんのいのちのリレー』(集英社)を、小学5年生が読んで、感想文を書いてくれた。
作文コンクールに出したところ、なんと綾華さんの作文が第一席の特選に選ばれた。
それが文集に掲載され、全校児童に配られたという。
ぼくも読ませてもらったが、小学5年の女の子にこんなに深く読んでもらえるのかとうれしくなった。
この絵本をつくってよかったと思う。

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綾華さんは、作文の最後にこんなことを書いている。

「根深い問題を抱えている国同士の戦いは、すぐには解決できないかもしれません。
でも、一人ひとりが自分信念を強くもち、力を合わせていけば、「平和な世界」の実現はそう遠くはないと思います。
お互いが、少しの思いやりの心をもち、助け合える世界になるよう、私も今を大切に自分の信じる道を一歩一歩進んでいきたいと思います」

こんな子がいると思うだけで、日本はすごいなと思ってしまう。

徳島ではうれしい再会もあった。
昨年の4月初め、人手が足りない石巻支援のために、徳島から飛んできてくれたさくら診療所の吉田先生ともお会いすることができた。
7年間、イラク支援をしてきた井下先生ともお会いすることができた。

講演では、ぼくの登場の前に、なんと諏訪中央病院看護専門学校の校歌「愛のたまご」がピアノで演奏された。
そして、講演が終わったあとは、ピアノに合わせて、みんなで「愛のたまご」を歌ってくれたのである。
まさか、徳島で「愛のたまご」を聞けるとは思わなかった。
あたたかな歓迎を受けた。
徳島、大好き。

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2012年1月25日 (水)

原発事故391

原子力安全委員会がいまだに責任をとらないのはおかしいことだと思っている。
委員と審査委員併せて89人のうち、3割近くの委員が5年間で8500万円の寄付を業界団体や企業から受けていた。

原子力安全委員会が国民の安全を守っているとはとてもいえない。
福島の人たちの生活はめちゃくちゃになってしまった。

電力会社は原発を推進するためにお金を使い、それを電気料に上乗せしてきた。
原発のコストは1キロワット当たり5~6円といってきたが、政府のエネルギー環境会議でコストを計算し直してみると、10円近くになるという。
原発の事故費用を1キロワット当たり0.5円とし、原発立地促進の補助金などを加えると、原発のコストはほとんど火力発電に近い。

これまで何度も言ってきたが、まず原発廃止を決めるべき。
そして、ドイツが目指す2022年よりも早く、廃止する。
それまでは、天然ガスで発電を行い、できるだけ経済に支障を来たさないようにしながら、再生エネルギーの開発に力を入れ、それを輸出の目玉にしていくのはどうか。

国民の考えは、二分している。
それを一つにするには、たとえば2020年までに原発をすべて止めるという明確な目標をかかげたうえで、ストレステストなどを厳重に行いながら、原発全廃の先にある新しいこの国のあり方を議論していくのがいちばんわかりやいすように思う。

経済界も原子力にこだわっているわけではなく、より安全で安く、そして安定的な電力がほしいと考えている。
それにこたえるべき開発を2020年まで行うようにすれば、ニッポンの考え方を一つにまとめることができるのではないかと思う。
野田首相は、この国の物語をきとんと語るべきだと思う。

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チョコ募金のお礼

JIM-NETのチョコ募金が終了となりました。
みなさんのあたたかな、想像を超えるお力添えのおかげです。

毎年楽しみにしていてくれるリピーターも多いのですが、口コミでこの募金のことを広げ、応援してださる方もいて、次から次へと支援の輪が広がりました。

パルシステムの生協活動をしている方々からも、昨年以上にたいへんな量のご注文をいただきました。
本当に頭が下がる思いです。
いくつか間違いもありました。
注文以上の数のチョコレートを発送するという間違いをしたにもかかわらず、大きな心で受け止めていただいて、「いいわよ、その分、応援してあげるわ」といって、さらなる応援をしていただいたこともありました。
スタッフ一同、感謝しています。

チョコレートをすごいでスピードで発送してくれた、授産施設ハナミズキの方々にも感謝をしたいと思います。
草加市の缶を作ってくれた工場のおじさんたち、14万個もの缶を作ってくれて本当にありがとうございました。

心から感謝です。
チョコ募金はまた来年も行いますのでぜひ、ぜひ、お力添えをお願いいたします。
JIM-NETでは、フェアトレードのチョコレートも数年中に扱えるよう、検討をはじめています。

みなさんのあたたかなお気持ちにこたえられるよう、福島の子どもを支え、イラクの子どもを支えたいと思っています。
今週、ぼくは福島に入ります。
来月には、イラクにも、チェルノブイリに行きます。
みなさまのお気持ちを忘れないように、役に立つ活動をしていきたいと思っています。
ありがとうございました。

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2012年1月24日 (火)

鎌田写真館~香港の日の出

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年末年始、飛鳥に乗って、香港を訪ねた。
香港のビル群に、朝日が映える--。

こちらは、香港の夜景。

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暮れの12月30日、朝日新聞の天声人語に鎌田の言葉が載った。
忘れがたき2011年を納める言葉として、「長期戦に入り、みんな疲れている……人生はマラソン。がんばらない時間を作り、エネルギーを蓄えた人が勝つんです」という鎌田の言葉や、作家のあさのあつこさん、脚本家の倉本聰さんらの言葉が紹介されている。

多くの人から、「見ましたよ」と言われた。
天声人語の力はすごい。

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2012年1月23日 (月)

鎌田實の一日一冊(120)

「おれたちの青空」(佐川光晴著、集英社、1260円)

「おれのおばさん」の続編。
高校進学へ向けて、旅立ちのときが来る。
内なる自立を問いかけてくるような本である。

「一流の人間というのは、どんな不幸でも糧に変えて成長していく。
二流、三流の人間というのは不幸から逃げようとして、しかも、逃げ方が中途半端だから結局は不幸につかまっちゃう。
もちろん、不幸を糧に変えるなんて思いも寄らない。
自分の覚悟のなさを棚に上げて、世を恨み、不運を嘆き、他人のせいにするだけ。
つまり、進歩がないってこと。
それどころか、現状維持もできなくなって、年々気力も品性も失って、加速度的にだらしなくなっていく」
小説のなかで語られる言葉である。
なるほどなと思う。

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ぼくの高校時代のことをふと考えた。
都立西高時代には、頭の切れがまるで違う人間が何人もいた。
とてもかなわないと思った。
だけど、うらやましいとも思わなかった。
ぼくは、英語は学年でいつもビリのほうだった。
でも、数学だけはいつもトップクラスだった。
なにか一つできるものがあったので、負い目を感じずにすんだかもしれない。
あとはなんとかなるさと思い込んでいた。
トップクラスに入りたいなんて、あまり思わなかった。
入りたいと思う大学に入れれば、ビリで入ってもかまない。
大学に入れたら、卒業すればいいんだくらいにしか思わなかった。
生意気な高校生だったと思う。

「おれのおばさん」と「おれたちの青空」を読みながら、中学時代や高校時代の自分を思い出した。
今の中学生たちともっと話しこんでみたいと思った。
佐川光晴の本どちらか一冊というなら、「おれのおばさん」。
二冊読んでもおもしろい。

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あたたかな資本主義

鎌倉投信という投資信託の会社は、抜群のパフォーマンスをみせている。
しかも、鎌田のあたたかな資本主義、ウエットな資本主義の考えに似ている。

小さな会社でも、投資のお金が集まらなければ、新しい事業を展開できない。
新しい事業を展開できなけば雇用は広がらない。
雇用が広がらなければ、若者たちに夢も希望ももたせてあげられない。

この会社は、どんなに時代の流れが変わっても、つぶれないような魅力的な新しい技術や人を大事にする企業を探し出して投資をしている。
ほかの投資信託が元本割れをして非常に厳しいなか、とてもおもしろい投資をしている。
鎌倉投信を取材したもようは、月刊日経マネーに掲載される予定だ。

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帰りに鎌倉八幡宮の参道を歩いた。
手を合わせ、自分や家族のことよりも、日本の安寧を祈った。
最近のぼくは、よくばらないように、一番大事なことを一つ祈るようにしている。

日本は、幸せを実感しにくいといわれている。
その国民が、少しでも多くの幸せを感じる国にしたいと思う。

手を合わせて祈るだけでなく、お金とあたたかさが回転し、元気でやさしく、あたたかなニッポンになってほしい。
そのためにも、経済は大事である。

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2012年1月22日 (日)

鎌田實の一日一冊(119)

「おれのおばさん」(佐川光晴著、集英社、1260円)

児童養護施設に暮らす中学生たちのまっこう勝負の人生。
体をはって受け止める養護施設のおばさんの話である。

ぼくが2011年に読んだ本のなかでいちばんおもしろい本だった。
14歳の中学生が主人公。
父親が浮気をし、浮気相手のために会社のお金を横領する。
父親は逮捕され、刑務所に入る。
母親は夫の借金を返すために家を処分し、老人病院で付添婦として住み込みながら働きはじめる。

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主人公は、児童養護施設に入るが、いろんな事情で親と暮らせない中学生が集まっていた。
実の親はわからない、育ての父親が交通事故で亡くなり、母親は育てることができなくなり、虐待を繰り返すようになる、そんな行き場のない中学生が集まっている。

せっかく医学部に入ったにもかかわらず、芝居に狂い、大学を中退したおばさんが、人生に負けず生き生きと生きている姿を見せてくれる。
勇敢でおろおろしない、決断力のある人生をまっしぐらに生きるおばさんの姿がまぶしい。
「おれのおばさん」、おすすめである。

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2012年1月21日 (土)

チャリティーコンサート響命

東日本応援チャリティーコンサート響命~君にとどけ~が2月11日午後2時~、茅野市民館コンサートホールで開かれる。

主催は、東日本大震災復興を考える会。
「レディス4」という番組で司会を20年務めた小林節子さんは現在、原村に住み、地域活動に取り組んでいる。
その小林さんらが中心になり、3.11を忘れてはいけないと、昨年4月から毎月11日に、かんてんぐらでコンサートや文化講演会を開いてきた。
その講演会のとき、偶然、石巻で被災した人が来ていて、いたく感動してくれ、お互いが交流し、被災者をさらに助けるための大きなコンサートを開こうと盛り上がったという。

Photo ←クリックすると拡大します

出演は、バリトン歌手の崔宗宝さん、ソプラノ歌手の三井ひかりさん、ピアノの今井和香さん、ネイティブアメリカンフルートのマーク・アキクサさん、筝の日吉章吾さん、舞の倭瑠七さん。
東日本大震災の被災者を支援する活動をしている原小学校からも合唱団が出演する。
司会は、小林節子さん。
チャリティー募金は、諏訪中央病院の石巻支援チームを通じて、石巻に寄付される。

入場料は前売り2200円、当日2500円。
問い合わせ、チケットの申し込みは、リングリンクホール0266-75-3727、茅野市民館0266-82-8222へ。

茅野市民館のHP↓

http://www.chinoshiminkan.jp/schedule/2012/2.htm#0211

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2012年1月20日 (金)

チョコ募金あとわずか

チョコレートの売れ行きが落ちず、お陰さまでずっと売れ続けている。
なんと、残りあと4600個。

先日、「大沢悠里のゆうゆうワイド」に出演した折、チョコ募金の話をするつもりだったが、昨年、1秒で3700件のアクセスがあり、電話回線がパンクした。
大沢悠里さんの番組は反響が大きく、こういうボランティアの活動を呼びかけるとたくさんの人があたたかく協力してくれる。
インターネットの申し込みだけ告知していただこうとも思ったが、インターネットもパンクすることがわかり、今回はチョコ募金については触れないことにした。

毎日新聞、読売新聞、共同通信が取り上げてくれた。
大竹まことさんや永六輔さん、菅原文太さん、ニッポン放送の高嶋ひでたけさんなど、たくさんの方々のお力添えで、チョコレートは売れ続け、いよいよ最終段階に差し掛かった。

母校の和田中学でも、子どもたちが募金活動やチャリティーコンサート、バザーを開いてくれた。
チェルノブイリの子どもの医療支援に充てている、鎌田がプロデュースしたCDや「ドクターかまちゃんの寒天ゼリー」、そして、今回のチョコ募金には14万円も協力してくれた。

こうしたたくさんの方々のお陰で、チョコレートは大好評。
感謝、感謝である。
そして、ご希望の方はぜひ、お急ぎください。

ウェブサイトでの申し込みは本日午後5時まで。
右の「チョコ募金受付中」のバナーをクリックしてください。

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髪の毛のなぞ

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「婦人公論」1/22号の「僕な好きな女性」では、陣内貴美子さんについて書いた。
陣内さんとは、ニュースエブリィで一緒に出演している。
陣内さんから頭皮マッサージ器をプレゼントされた。
これが効いたのか、唐十郎さんから「髪の毛が増えたんじゃない」。
原田泰治さんからも「おい、カマちゃん、増えてるよ」と言われた。
鎌田の髪が増えたという人は3割。
7割の人は変わらないという。
事実は、よくわからない。

陣内さんのお話、ぜひ、お読みください。

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1/28ホスピタルコンサート

28日午後1時30分~2時30分、諏訪中央病院1階売店横ラウンジで、ホスピタルコンサートが開かれる。
出演は、なんとジャズの大御所、中本マリさん。
世界から認められている、おそらく日本トップのジャズシンガーだ。
ジャズギタリストの太田雄二さんとともに、ジャズを披露してれる。

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中本さんは小淵沢に家がある。
諏訪中央病院の産婦人科の若いドクターが病院に就職に来るとき、ホテルを予約していなくて困っていたところ、「うちに泊まりなさい」と言ってくれた。
そのドクターは中本マリさんとまったく気付らず、親切な方ということで、その親切に甘えて泊まりに行ってしまった。
そのままつきあいを続けているというから果報者である。

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畑中良輔先生のグループが毎年、ボランティアでホスピタルコンサートを開催してくださっていたが、昨年夏、20回を節目に閉会となった。
その後、若いドクターが病院でのコンサートを持続させようと努力してくれている。
小室等さん、坂田明さんを看護専門学校の文化祭に呼んで、コンサートをしていただいたり、ほろ酔い勉強会の50回、100回記念でさだまさしさんにコンサートをしていただいたことがある。

今回、中本マリさんと太田雄二さんのジャズということで、とても楽しみである。
もちろん、無料。
お近くの方は、ぜひ、お出かけください。

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写真は、諏訪中央病院の今年のカレンダーの写真。
雪の風景や初夏の緑、冬の夜のイルミネーションの光景だ。
ちょうど、今もイルミネーションが飾られている。
ボランティアがつくってくれたもので、小児科やホスピスの患者さんたちが、その庭の光景を楽しんだり、ほっと心和ませている。
今年のカレンダー、大好評です。

カレンダーといえば、年末、伊那のパン屋さん野良屋のカレンダーを紹介したところ、ブログを見ていただいている方のお陰で、パンが売れ、うれしいという年賀状をいただいた。
200部作成したカレンダーも完売となり、たいへん感謝された(来年は、250部!作成すると張り切っているようです)。
ぼくからも、みなさんにお礼を言います。

山の中で丁寧に暮らし、おいしいパンをつくっている野良屋
パンに興味のある方は、一度、注文してみてください。

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2012年1月19日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(101)

「哀しき獣」

いくつものの映画祭で賞をとっている。
ナ・ホンジン監督の新作。

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次から次へ、すさまじい暴力が溢れ、わからないことが徐々に解明されていく。
サスペンスのテイストもあり、ぐいぐいと観客を引き込ませる。
一歩間違えると、人間はこんなふうに崩れていくんだということがわかる。
映画だからこそ表現できる世界である。

好きな人は好きなんだろうな。
と、思いながら、映画の迫力の打ちのめされそうになった。
ノワール・スリラーの傑作と表現する人もいる。

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お知らせ

1/20午後8時~、NHK長野放送の「知るしん。信州を知るテレビ」に鎌田のインタビューが放送される。
「2012年 私はこう生きる~3人からのメッセージ」
鎌田のほか、星野リゾートの星野佳路さん、人形作家の高橋まゆみさんが出演する。
長野の方はぜひ、ご覧ください。

1/25午後3時30分~、「まけない!」講演会~みんなでつながって~で講演する。
会場は、福島市音楽堂小ホール(開場午後3時~)
出演は、放送作家の永六輔さん、フォーク歌手の小林啓子さん、在宅ホスピス医の内藤いづみさん。
入場整理券500円で、事前購入が必要(当日券はありません)。
問い合わせは、医療法人社団 鈴木医院 担当者(渡邉さん)電話090-6225-4582

1/26は、「ニュースエブリィ」をお休みし、石巻に巡回診療に入る。
雄勝診療所の小倉先生にごあいさつし、諏訪中央病院の若い医師を激励。
夜6時~は、園まりさんのミニコンサートと鎌田の講演会
会場は、河北総合センター ビッグバン
18.0~18.30 園まりさんのコンサート
18.30~19.50 鎌田の講演「困難な時をどう生きるか~体と心の守り方教えます」
19.50~20.05 園まりさんと鎌田の対談

参加は無料。
申し込みは、キャンナス石巻事務所 電話0225-25-4802
詳しくはこちら↓

http://www.nurse.gr.jp/bora/20120126ishinomaki.pdf

1/28、京都で開催される「Message from 3.11 母乳でつなぐ命」の参加枠に、若干余裕があるようだ。
鎌田は、「いのちのバトン」というテーマで、母乳と放射線の影響などを話す。
詳しくは、こちらまで↓

http://www.wacoal.jp/c/nyubou-bunka/upcoming/20.html

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2012年1月18日 (水)

入試問題に

本年度の和歌山大学医学部の推薦入学試験に、鎌田の『雪とパイナップル』(集英社)が使われた。
総合問題Bで、たいへん長く取り上げられたようだ。
本文からあなた自身がもっとも強く感じた主題が何であるかをあげ、それについてあなたが日ごろから考えていることを800字以内で説明しなさいという小論文が出されたという。

毎年、ぼくの文章は高校入試や大学入試などに使われることが多い。
先日、センター試験があったが、これから本格的な試験シーズンがはじまる。
若い人にも、ぼくの本を読んでおいてもらえるとうれしいな。

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2012年1月17日 (火)

鎌田實の一日一冊(118)

「身の上話」(佐藤正午著、光文社文庫、780円)

人間の秘密を守ることは難しい。
自分の周りに起きたことが徐々に明らかになっていく。
変な人物が、普通の仮面をかぶっている。
いかにも、ありそうな話であるが、最後の最後、身の上話の大仕掛けがあり、ぐいぐいと引き込ませてくれる。

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ダ・カーポ最高の本や、NHK週刊ブックレビュー今年のベスト1などに選ばれている。
鎌田の選ぶ10冊のなかに入れようか迷った作品である。

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うれしい感想

『アハメドくんのいのちのリレー』(集英社)を読んだ方から、さくさんの感想をいただいた。

「吸い込まれるように3回読みました、毎日読んでも飽きません」
「考える時間を与えてくれます」
「涙なしに読めない、美しい美しい本でした」
「とてもとても深い感動を覚えました」
「鎌田先生がこうして絵本にされたことで、世界中に広くメッセージが発信されたと思います。
人の心のなかの獣があばれないようになったら、本当にいいなと思っています」

「泣きながら読みました。
感動し、友人に回し読みをしています。戻ってきたら孫たちにプレゼントします」
「よい本をありがとうございます。
地域の友人たちと紙芝居風に読みきかせをしました」

この本を、いろんな方法で利用してくれてうれしいです。

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「わかやすい言葉で、やさしい気持ちが文面にあらわれていて、とても大好きです。
人間的にも大好きです」
「にもかかわらずと言う言葉がどれぼとすごい言葉か知りました。
もうそろそろ人類も心のなかの獣をコントロールしないと」

こんなふうに読んでくれることを、感謝します。

「一人で朗読し、息子たちにも聞かせました。
みんなにやさしい心になってほしい。
お互いさまの精神で全世界が助け合う世の中にしていきたいです」

ぼくも、この絵本が平和のために役立ってくれることを願います。

「忘れてはならないことを忘れそうになったとき、ページをめくり、心にきざんていきます。
すばらしい本をありがとうございました」

アハメド君の父親イスマイルさん家族と、アハメド君から命をもらったサマハさん家族が来日することは決定していますが、なかなか日程の調整がうくまいきせん。
イスマイルさんやサマハさんから直接、日本のみなさんに語りかけてもらう、その日が来ることを願っています。

まだお読みでない方は、『アハメドくんのいのちのリレー』をぜひ、お読みください。

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2012年1月16日 (月)

早朝のコーヒーと音楽

朝4時半に起きる。
一人前のコーヒーを淹れ、父・岩次郎と分け合って飲む。
音楽を聴く。
今はよく聴いているのはTSUKEMENというアンサンブルユニット。
なかなかのイケメン。
「KIYARI」というアルバムには、「KIYARI」「ひまわり」「エリスの恋」「風の記憶」など、何曲かたまらなく好きな曲がある。
その音楽を聴きながら、夜明け前、遠くにかすかに見える八ヶ岳のすそのを眺めなら物思いにふける。
至福のときである。

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哲学的なことを考えることもあるが、突然、この人のお願いすれば、バレンタインのチョコレートが売れるかもしない、などと思いついたりする。
来月2月、チェルノブイリに行く。
どんな人と会おうかと思いついたりするのも、この時間だ。

音楽のほうに頭が向かっているときもあるが、突然の思いつきに思いめぐすことも多い。
TSUKEMENの音楽は、それを助けてくれる。
心を休ませてくれるだけでなく、聞いているうちに元気もでてくる。

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2012年1月15日 (日)

鎌田實の一日一冊(117)

「窓際OL 親と上司は選べない」(斎藤由香著、新潮文庫、500円)

無理難題を押し付ける上司をこてんぱんにやっつける。
なかなかおもしろい。
できると思っているダメ上司だとか、パワハラ部長とか、男おばちゃんだとか、ジキルとハイドだとか、上司をちゃかしたりしても、マカという男性精力剤の売り上げを伸ばしているので、会社でうまくやっていけていると思われる。
この会社がそういう雰囲気なのか。
社長のこともちょっとちゃかしているが、社長もまああいいかと見ているところが、この会社のおもしろいところという感じがしてしまう。

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著者は北杜夫の娘。
ある雑誌から鎌田が選ぶ10冊というのを頼まれたが、その一冊に北杜夫の『どくとるマンボウ航海記』を載せようと思った。
マンボウ氏は人生の途中でうつ病になり、ほとんど本らしい本を出していない。
娘さんの著作を読めば、北杜夫のことが書かれているだろうと思い、この本を手にしたが、父・北杜夫のことは書いてはいるが、どうも影が薄い。

うつ病のせいで、奥さんがどんなに手の込んだ料理を作っても、おいしいとも、まずいとも言わない。奥さんがキレる。
以前、北杜夫は奥さんのことを「作家の妻として失格、出て行け」と豪語したというが、晩年は夫婦のの関係は完全に逆転してしまう。

昔は、北杜夫がニューカレドニアに取材に行くと、妻は心細くて泣いていたらしい。
「いまや小鳥が変じて、鷲になった感じがある。ああ、ここまで女は強くなるものか」
娘は、そんなふうに父と母のことを書くが、どうも父の面影は薄く、母の姿が巨大化していく。

北杜夫が躁状態のときには、「タンタンタヌキの金の手は」などと変な歌をうたったらしい。
遠藤周作が、娘に向かって、「由香ちゃん、あんなに変な人がご自分のお父様だなんて恥ずかしくない」と質問したそうだ。
その遠藤先生も、モンキーダンスという猿のもの真似をしたり、髪が薄くなるのでヘアムースをつけたつもりが、お手伝いさんの脱毛ムースだったという話をしてくれたり。
かつてどくとるマンボウと狐狸庵先生はハチャメチャな時代があったようで、かつての話は出てくるが、晩年の北杜夫の姿が見えなくてやっぱり残念だった。

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2012年1月14日 (土)

お知らせ

朝日 健康・医療フォーラム2012が2月4日、開催される。
基調講演では、鎌田が「がんばらない健康法」について語る。

日時 2月4日午前11時から午後4時15分(午前10時30分開場)
会場 TFTホール 東京都江東区有明3-4-10
    ゆりかもめ「国際展示場正門」駅徒歩1分
    りんかい線「国際展示場」駅徒歩5分

申し込みは1/24まで。

ぜひ、ご参加ください。

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鎌田劇場へようこそ!(100)

「永遠の僕たち」

好き嫌いがはっきりすると思うが、とてもいい映画。
監督は、ガス・ヴァン・サント。
美しい映画である。
死がつきまとっているような若者たちの映画であるが、死を通して、生きるということの切なさが見えてくる。

両親を交通事故で失い、自分も死にかけ、好きになった女の子ががんの末期。
その主人公の少年の後ろに、日本の特攻隊で死んでいった若者の幽霊がつきまとう。
加瀬亮がいい役をしている。
詩情あふれる名作である。

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ドラマチックな盛り上がりがあるわけではないので、人によっては退屈してしまうかもしれない。
映画好きなら、引き込まれる人が多いのではないか。

特攻少年の加瀬亮もいいが、死んでいく少女ミア・ワシコウスカがなんとも初々しく素敵。
最後は彼女が自分自信でお別れの会をプロデュースする。
愛する人がいるということはとても大切なことなんだ。
どんな絶望も乗り越えることができる。

今年は、大切な人を丁寧にしっかりと愛し続けることが大事と自分にいいきかせながら、まじめに生きようかなと映画を見ながら思ったけれど、本当は自信がない。
本当はグラグラ。
不良少年の鎌田で、きっと一年を過ごすことになると思う。

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2012年1月13日 (金)

お知らせ

明日14日早朝、ラジオ「ON THE WAY ジャーナル WEEKEND」(JFN38局、午前5時~5時30分)に出演する。

内舘牧子さん、東京大学名誉教授の安岡善文さん、慶応大学環境情報学部教授で、時速380キロの電気自動車の開発をしている清水浩さんとともに、チェルノブイリと福島、震災と原発について語り合った。
東京FMでは、1/15午前7.30~放送される。

16日は、「大沢悠里のゆうゆうワイド」(TBSラジオ、午前8時半~)に出演する。
『「がんばらない」を生きる』や『アハメドくんのいのちのリレー』について紹介してもらう。

ぜひ、聴いてください。

チョコ募金はおかげさまで11万5000個を売り上げ、残り2万5000個になりました。
ご協力ありがとうございます。
ご希望の方はお急ぎください。

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鎌田劇場へようこそ!(99)

「ニューイヤーズ・イブ」

鎌田のいちおし新春映画としておした作品。
大晦日のカウントダウンのとき、タイムズスクエアの屋上から23メートルのところにぶらげられたボールが、1分間かけておりてくる。
そのボール・ドロップの途中で、ボールが止まってしまった。

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そのとき、ヒラリー・スワンクがこんな演説をする。
タイムズスクエアガーデンに集まった何万人もの人に向けて。
「これはメッセージではないでしょうか。シャンパンをあけ、新年を祝う前に一度立ち止まって過ぎた年をふりかえれと思い出しましょう。成功も失敗もそして、守れた誓いと破った誓い、殻を破って冒険したこと、傷つくのが怖くて閉じこもったこと。新しい年はあなたにチャンスをくれます」

この演説の後、ボールは修理がされ、カウントダウンが行われた。
大事なことはこうやってきちんと物語を語ること。
たとえボールが動かなかったとしても、一生忘れられないような大晦日になっていく。

この国の不幸はこの十年、物語を語れる政治家が出てきていないことである。
ドジョウ首相の野田さんも、この国をどういう国にするのか、物語を語っていない。
96兆円の予算案がつくられたが、ほぼ半分は国債に頼らざるを得ない。
こんなそろばん勘定で、国も会社も生きているいけるわけがない。
きちんと自分の口で、どういう国づくりをするために予算を組むのか、物語を語らなければらない。
野田さんに物語を語ってもらいたい。

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美しい人生、健康を考える講演会

「鎌田實×吉川敏一 講演会~美しい人生、健やかな暮らしについて考える~」を開催する。

吉川先生は、アンチエイジングや予防医学の専門家。
話題の抗酸化食品などを取り上げ、美と健康について語り合う。

001 クリックすると拡大します

開催日 1月31日、2月14日、3月4日(ともに午後6時~9時)
会 場 テラス蓼科リゾート&スパ 〒391-0301 長野県茅野市北山4035 
参加費 1回 1万5000円(ディナー、ドリンク、講演参加費用込)
宿泊費 7000円(1泊朝食込み、2名1室利用/シングルユースは5000円プラス)
ご予約&お問い合わせ テラス蓼科リゾート&スパ 電話0266-67-0100

興味のある方は、ぜひご参加ください。

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2012年1月12日 (木)

原発事故390

厚生労働省が4月から新しい規制値を使うことになり、野菜や果物、肉、魚などは100以下となった。
ぼくはウクライナ基準の40ベクレルを使うべきと主張してきた。

たとえば南相馬の玄米を測定してみると、ほとんどは不検出(このデータでは、10ベクレル以下が不検出)。
13、34、43ベクレルなど4箇所で検出されているが、40ベクレル以内という基準にすれば、南相馬市のなかで出荷制限がかかるのは1箇所だけ。
カボチャ、キャベツ、サツマ芋も不検出。
ジャガイモが26、11ベクレルと2箇所から出ている。
大根が1箇所だけ10.5ベクレル。
タマネギ、ニンジンも不検出。
ネギは二箇所から、15.4、12ベクレルが出ている。
白菜は5箇所から出ているが、一番高いところで49ベクレルだ。
ホウレン草は不検出。

井戸水も基本的に不検出。
リンゴ、卵も不検出。
こうやってみると40ベクレルを超えるのは、南相馬市では玄米1箇所、白米が3箇所、白菜が一箇所くらいか。

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前回、干し柿や梅干、ブルーベリー、ミカン、クルミが要注意と書いたが、それ以外はほとんど不検出ということだ。
福島県全体をみてもおそらくそれほどこの傾向は変わらないと思う。

40ベクレルという厳しい基準に設定しても、出荷制限をかかるのは数パーセントだ。
福島の農家を守るのは、むしろ厳しい基準なのではないか。
発想の転換をしたほうがいい。

国は徹底的に食品の放射線測定器を増やし、県は露地物まで測れるようなバックアップ体制をつくって、世界一厳しい基準をパスした食品に関しては、国民みんなが差別せずにとるようにする。
それでも、小さな子どもをもつ母親には選択できるように、数字の「見える化」をすることで、信頼できるシステムができると思う。
国はできるだけ早く安心、信頼できるシステムをつくるべきだと思う。

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原発事故389

南相馬市の放射生物質の測定結果が公開されている。
とてもいいことである。
そのデータをみると、干し柿が心配。
南相馬市は空間占領は比較的低い。
最初の3/12のメルトダウンのとき、放射性物質が風にのって広がったが、福島全体からすると南相馬市は低いほうだ。
そのなかで、干し柿はほとんどが50ベクレル以上。
305ベクレルという地域もある。

梅干も191ベクレルというものがあり、要注意だ。
クルミは151ベクレル。

特に注意したいのは、キウイ。
多くは50~300ベクレルくらいで、3箇所から500ベクレル以上が測定されている。
ブルーベリーも、151ベクレルと83ベクレルが見つかっている。
ミカンも、81ベクレル。

多くの野菜や果物はND(不検出)や微量だが、やはり注意すべきものはある。
放射線量を測定し、きちんと公開して、その数字を見ながら食べたほうがいい。

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2012年1月11日 (水)

中学生とチョコ募金

たくさんのJIM-NETファンや鎌田ファンにより、チョコ募金にご協力をいただいている。
ありがたいことだ。

地元の茅野市立東部中学では、職員がチョコ募金に協力してくれたそうだ。
7月には、鎌田が「命の授業」をする予定。
竹前校長の熱意にほだされ、お受けすることにした。
子どもたちの心を育てるお手伝いができるなら、うれしいことだ。
できれば、毎年「命の授業」をフォローしていきたいと思っている。

母校の杉並区立和田中学でも12月8日、鎌田が授業をした。
そのときの模様がホームページで紹介されている。
子どもたちがたいへんすばらしい感想文を書いてくれた。
こんなに一生懸命聞いてくれるのははじめての経験だった。
よのなか科があるためか、子どもたちに「聞く耳」が育っていると感じた。

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教育は熱意でもあるが、技術でもある。
志が高く人の役に立ち、学力があり、運動もできる子が育つなら、こんなにすばらしいことはない。
できるだけ、子どもたちにいいきっかけをつくってあげたいと思っている。

和田中では、バザーをしてくれ、JIM-NETに全額寄付をしてくれるということだ。
先輩として、しっかりと和田中を見守っていこうと思っている。

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お知らせ

朝日新聞「アスパラクラブ」に、鎌田のインタビュー記事が載っている。
「アスパラクラブ」は、会員向けのウェブ上の読み物サイト。
「わたしのセカンドライフ」というコーナーで、鎌田が10年早く定年退職をした意味や、セカンドライフで何をしようとしているのかがまとめられている。
朝日新聞にも紹介されたが、長いバージョンで紹介されている。

https://aspara.asahi.com/community/community/Top

毎日新聞英字ウェブに、JIM-NETのチョコ募金の記事が紹介された。
ぜひ、ご覧ください。

http://mdn.mainichi.jp/mdnnews/national/news/20120106p2g00m0dm011000c.html

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「ゆうゆう」2月号で、笑いの効用、涙の効用について語った。
交感神経から副交感神経に脳がリセットすることが大事。
自分の思いを閉じ込めておかないこと。
笑ったり、泣いたりすることで心が楽になる。
心と体はつかながっているので、意識して体を動かすと、心も動き出す。

鎌田の生きる力がわく毎日の習慣は、なんでもおもしろがること。
みんなから「笑うセールスマン」と言われるくらい、いつも笑うことを心がけている。

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「理念と経営」1月号で、鎌田がどんな病院づくりを目指したかを書いた。
この病院なら安心できると思えることが何よりと思った。
地域貢献のためにはじめ医療ボランティア、健康づくり運動、在宅ケア、日本で初めての試験的なデイケアの取り組みや哲学を書いている。
ぜひ、ご覧ください。

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2012年1月10日 (火)

原発事故388

2010年にチェルノブイリに行ったとき、30キロゾーンで働いている人たちで最も多かった職種は、消防士であった。
自然発火で森が燃えると、放射能が大気中に放出され、まき散らされることを懸念しているのだ。
消防隊の大きな組織が、30キロゾーン各地に待機されていた。

福島の森も汚れている。
20キロゾーンで出火したときに、「想定外だ」などといわずに、どうやって消防がかけつけるか想定しておくべきだ。
火災を予防し、もし出火したら迅速な消防活動ができるよう、消防隊と警察、自衛隊、地区の消防団が訓練しておく必要があると思う。

現政権はすべてが後手後手にまわっているので、おそらく20キロ圏内の消防活動になど頭がまわっていないと思うが、できるだけ準備万端にしておく必要がある。
政府の担当者をチェルノブイリに派遣し、消防活動を見に行かせたほうがいいのではないか。

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女性の貧困

国立社会保障人口問題研究所の分析によると、単身女性の3割が貧困であるという。
勤労世代で32%、65歳以上では52%の女性が貧困だという。
たいへんな国づくりをしてしまったということだ。

相対的貧困率とは、世帯所得をもとに、国民一人当たりの可処分所得を算出して、それを順番に並べて、真ん中の人の所得の半分に満たない人の割合をいう。
2007年では、114万円以下がそれに当たる。

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2009年の日本全体の貧困率は19%。
19歳以下の子どもがいる母子世帯では、57%が貧困であることがわかった。
派遣など非正規で働く女性は約1218万人で、男性の539万人に比べて多い。
男性も厳しい状況にあるが、女性はさらに厳しい状況である実態がわかってきた。

25歳の単身女性が生活保護を受給した場合、生涯支給額は約1億円に上る。
いろいろな困難な状況に陥っても、働く場があることと愛する人がいれば乗り越えることができる。
だが、その働く場がない。
できるだけ雇用を広げることが大事。
社会が支えていくことになるならば、本人の自立を支えるほうが、本人にも喜びが大きいし、負担もそんなに変わらないはず。
非正規雇用を広げる法律をつくったのは大きな間違いだったように思う。

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2012年1月 9日 (月)

原発事故387

東電は、企業向け電力を2割アップするという。
その後、家庭向けの電力もアップを検討するという。
どうしようもない企業だと思う。

一貫して批判してきたが、総括原価方式といういかがわしい方式により、電力会社は絶対に損をしないようになっている。
利益が必ず出るように、電力料金を決めるようになっているのである。
かかったお金は、原発を推進するために湯水のごとくコマーシャルに使ったり、原発立地町村に見えない形での寄付行為を行っている。
福井県だけでも匿名の寄付が500億円。
それ以外に1974~2009年まで電源三法交付金として3245億円が福井県に入っている。

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今回の事故で、最も長い間権力をもっている勝俣会長はいっさい責任をとっていない。
東電に天下りする官僚も反省することなく、電力料金を上げて国民に負担を押し付けている。
電力を地域独占させているから、いけないのである。
発電と送電の分離をもっと早くすべきだった。

経済産業省のエリート官僚だった古賀茂明さんと対談をした。
古賀さんはなんと1997年にOECDから発送電分離案をすべきというしかけをしている。
日本の今日を予想している。
あのとき、古賀さんがしかけたような発送電分離が行われていれば、エネルギー業界全体の自由化により厳しい競争がなされれば、世界と戦えるような技術革新も生まれていたかもしれない。
14年間が無駄にになってしまった。

ぼくは1991年からチェルノブイリにかかわりながら、一貫して日本の電力業界のおかしさを訴えてきたが、時遅し、という感じがしている。反省している。
経産省も、東電も、原子力安全委員会も、電力料金の値上げを検討するのは、まず徹底して血を流した後でなければならない。
まず、やることをやるべきだ。

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「この国が好き」朗読講演

演劇ユニットLa.ラタカルタが3月9、10日、語り継ぐ言葉第5回講演として、ぼくの絵本『この国が好き』(マガジンハウス)朗読をするという。
3/9午後7時、10日午後2時、5時の3ステージ。
会場は、杉並区の西荻窪駅から徒歩8分のアトリエ・カノンである。

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ぼくも時間が合えば、舞台あいさつをしようと思っている。
だが、3月10、11日は石巻と福島をボランティアでまわる予定なので、本当に行けるかわからない。
『この国が好き』はモチーフがおもしろいので、たくさんの方に観にいっていただきたい。

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2012年1月 8日 (日)

増える高齢者の虐待

2010年の高齢者の虐待が16000件と、過去最高になった。
特に息子からの虐待が4割を占めている。
介護の現場が介護地獄にならないようにしなければいけない。
公的サービスが入るなど、介護の現場がオープンになることが大事だ。
たくさんの人の目が届くようになることで、虐待にブレーキをかけることができる。

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男の介護はやさしい。しかし、一人で抱え込みやすい。
できるだけプロの世話になったり、地域の人に応援してもらうことが大事なのだ。
介護している男性を孤立させないで、介護教室に誘って仲間をつくるのも大事である。
1週間ほどショートステイを利用して、ときどきリフレッシュするのもいい。
一人で抱え込まないように、介護者本人も、周囲も、心がけよう。

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2012年1月 7日 (土)

野菜がかくれんぼ?

昨年末、諏訪中央病院で、ロビー展が行われた。
市川大一郎さんのパステルがおもしろい。
よく見ないと気がつかないかもしれないが、野菜が隠れている。

カバが大きな口を開けている絵は、口がカラーピーマンだし、月夜のなぎさのロマンチックな絵は、よく見ると月がパナナだったりする。

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写真の絵は、動物たちが猛烈な勢いで走っているが、そのなかにトウモロコシやナスやおイモさんが走っている。

ちょっとほっとする絵である。

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原発事故386

新しいセシウムの規制値が4月から適応されるという。
世界一厳しい基準にすることが、福島の農家を守ることになるし、国民の命と健康を守ることにも、世界からの不信感を取り除くことになると強調していたが、やはり体内被曝5ミリシーベルトを1ミリシーベルトに目標設定を変えることを根拠に、野菜や肉、魚の規制値を500ベクレルから100ベクレルに変更することにとどまった。
ナンセンスである。

再三述べるが、ウクライナでは野菜の規制値は40ベクレルである。
ベラルーシでも70ベクレル。
果物は、ベラルーシでは40ベクレル。
世界一厳しい基準として、40ベクレルあたりを使えば、国民も安心、世界もなるほどと思うのではないか。
今回、乳児用の食品を50ベクレルとしたが、乳児用の食品でたとえば49ベクレルというものを、お母さんたちは使うだろうか。
使わないと思う。
ウクライナの一般の野菜の基準よりも、日本の乳児用の食品の基準のほうが高いということ自体が納得がいかないし、はずかしいことだと思う。
野菜の規制値が100ベクレルになったことを、ある新聞で農家の人はたいへん厳しいと言っているが、ぼくが福島の農家に聞くと、反応はむしろ逆である。
ほとんどND(不検出)にもかかわらず、福島産というだけで色眼鏡でみられてしまう。
もっと厳しい基準をもうけてもらったほうが、福島の野菜は以前のような値段で買ってもらえるはずというのだ。
いまは買い叩かれ、あるいは買ってさえもらえないという。
福島のお米は、0.6%しか100ベクレルを超えていない。
ぼくが提案する40ベクレルという基準にしたとしても、1%に届かないのではないかと思う。
申し訳ないがこの1%の農家のお米は市場にでないようにし、世界でいちばん厳しい基準を設けたほうがみんなの不安をとりのぞくことができる。
信頼と安心を呼び起こすためにも、1年以内できるだけ早く、再度、規制値を厳格化すべきだと思う。

いまの政府は非常に鈍感な政府である。
国民の感情をまったく読めていない。
日本を、安心、信頼の行き届いた国にしようという物語がない。

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2012年1月 6日 (金)

鎌田實の一日一冊(116)

「生きる覚悟」(上田紀行著、角川ssc新書、798円)

同情は圧力に負ける、自分で考え行動すること、なんてことが書かれている。
2年ほど前、ぼくは「空気は読まない」(集英社)という本を出した。
空気を読むことをよしとする風潮のなかで、空気に染まらないことの大事さを、あえて断固とした言い切りのタイトルをつけて、伝えようと思った。

著者も同じようなことを言っている。
おもしろい表現だと思ったのは、「いつの間にか絆が得を目指すものになっていた」というもの。
著者は「徳のある絆をめざすべきだ」と言う。
たしかにそうだと思った。

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文化人類学者の著者は、「向こう側からの呼びかけを感じることは人生の自由、人生の開放につながる」と述べている。
江戸時代の人は、お天道様に恥ずかしくない人生を送っているかという、見えない他者のまなざしで自分の生き方を正していた。
「見えない他者」とか「向こう側からの呼びかけ」が大事なのだと言う。

ぼくと同じように彼も、「がんばろう東北」「がんばれ」という言葉があふれている今の日本を心配している。
彼は、「がんばれ東北」と言ったときに、当事者性がないという。
「がんばれ東北」は、言いっぱなしで、言う側の免罪符にすぎない。
言う側が楽になるだけで、言われる側は少しも楽になっていないという。

頭の整理ができるおもしろい本である。

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2012年1月 5日 (木)

正月休みの健康アドバイス

心をあたためて副交感神経を刺激すると、血管が拡張して、血液の循環がよくなる。
血圧が安定してくる。
動脈硬化を予防することができる。
全身の代謝がアップする。
リンパ球も増大して免疫力が上がる。

副交感神経を刺激するには、おだやかな気持ちになって、ニコニコしているといい。
お風呂に入るのもいい。
熱い湯ではなく、39度くらいの少しぬるめの湯にゆっくり浸かる。
いい景色を見るのもいい。

1112235__ 春の気配?

8人に1人がうつ傾向だというデータがある。
うつ病の薬には、セロトニンという脳内物質に働きかけるものがある。
普段からセロトニンという「幸せホルモン」を分泌する訓練をしよう。
まず、セロトニンをつくる食べ物を食べること。
トリプトファンという必須アミノ酸がセロトニンの原料になる。
トリプトファンは肉類や乳製品、赤身の魚に多い。

太陽の光を浴びることも大事だ。
鎌田の速遅歩きやがんばらないスクワットなどで体を動かすこと。
おいしいものを食べて、幸せを実感すること。
それらが、セロトニンを分泌してくれる。

副交感神経を刺激することと、セロトニンの分泌をよくすることが、現代人の健康には大事である。

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2012年1月 4日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(98)

「ヒミズ」

2001年、漫画で登場、評判になった。
2007年、小説化される。
2011年1月、園子温が監督し、撮影開始直前に東日本大震災が発生したため、シナリオを大幅に書き直し、被災地・石巻で撮影する。
リアルな今日の日本を描こうとしている。

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主人公の中学三年生に扮した、二階堂ふみと染谷将太が抜群の演技をしている。
イタリアの最優秀新人俳優賞であるマルチェロ・マストロヤンニ賞を2人がW受賞している。
特に二階堂がいい。いい味を出している。いい役者になると思う。

少女の家は壊れ、少年の家もむちゃくちゃ。それでも必死に生きようとする中学生が痛々しくて悲しいが、なんともたくましい。
だめなのは大人たちで、若者たちは必死に生きていると思わせてくれる。
怖い場面もあるが、何か生きる勇気を与えてくれる、メチャクチャおもしろい映画である。

映画らしい映画を見事につくったと思う。
園子温監督、今後も注目したい。

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2012年1月 3日 (火)

平和への風

国連パレスチナ難民事業救済機関(UNRWA)の保健局長という方からメールをいただいた。
『アハメドくんのいのちのリレー』(集英社)を読んでくれたという。
ヨルダンの日本人補習校の父兄の間で読まれ、感動の輪が広がっているという。

1月にお会いすることになるかもしれない。
一つの絵本が世界平和につながっていくといいなと思っている。

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イランがおかしな行動をしている。
イスラエルには原爆がある。
イラクもシリアも混乱を抑えるのがやっとである。
この地域に本格的な平和が来ることは、世界にとってとても大事なことである。
ぼくの絵本が、世界の平和を推進するお手伝いができれば光栄である。

ヘブライ語やアラビア語に翻訳しないといけないかもしれない。
身銭を切ってでもやらなければいけないときが来るかもしれない。

絵をかいてくれた安藤俊彦さんと、英訳をつけてくれたピーター・バラカンさんと、この絵本を世界に広げるための作戦会議をするつもりだ。
なんとなく、平和へのいい風が吹きはじめているようだ。

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2012年1月 2日 (月)

問われる外交能力

昨年は世界的にみると、アラブの春が吹き荒れた。
今年も、シリアを中心に春の嵐が吹くと思う。
独裁が壊れていくことは正しい。
ミャンマーでは、スー・チーさんの自由が少しずつ広がってきた。
ミャンマーが変わることも大事である。
今年、北朝鮮が何かのきっかけで変ってくれれば、世界の安全は前進すると思う。

イランとイスラエルの関係も微妙である。
イランが核開発を急ぎ、イスラエルがカッとして、持っている原爆を落とそうとすれば、世界はもう一度大きな戦争になる。
繰り返し戦争があったヨーロッパでは、EUができたことで戦争の回避はできた。
しかし、通貨が統合したため、ギリシャやスペイン、イタリアなどがどんなに失敗し、ワガママをやっても、何となく、何とかなると思ったり、だれかが助けてくれると思ってしまう。
ユーロは今年も危険な状況が続くと思う。
そうなれば、ドルも力も弱く、円のほうがまだマシということで円が買われる。
本来、力のない円が円高になってしまう。
日本は今年も苦しむことになると思う。

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しかし、愚痴を言っていてもしかたない。
野田首相はTPPの交渉をすると名言している。
1990年ごろ行われた日米構造協議では、アメリカが言いたいことを言って、日本の借金が多くなっていくきっかけをつくった。
外交能力がないなかで、野田首相がTPPに参画していくと、アメリカの言いなりになり、医療や農業、金融の崩壊が起きる可能性がある。
自由貿易をすすめることは間違いなく正しい方向だが、外交能力が問われているのである。
野田政権にその力があるか、たいへん心配である。
アメリカの言いなりにならない交渉をし、円高をどう生き延びるか考えなければいけない。

綱渡りのような厳しい一年が始まると思う。
いちばん心配なのは政治の弱体化。
今年こそ、しっかりリーダーシップを取ってもらいたい。

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2012年1月 1日 (日)

新年に思う

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新年を迎えました。
昨年はとても大変な年でした。
まだまだ絶望的な状況にいる人もたくさんいるでしょう。
昨年3月、女川で会った3歳の坊やを亡くしたお母さんは、深い悲しみのなかにいます。
お父さんやお母さん、夫や妻、子どもやきょうだい、大切な人を亡くした人。
みんな苦しいなかで、なんとか息をしています。

絶望のなかにいる、にもかかわらす。
一日一日のなかに、小さな光が差し込むことを願っています。
そして、いつかその光が束になって、希望につながっていくことを願っています。

今年も、ぼくは福島や石巻へ通い続けようと思います。
さっそく25日には3時半から福島市の音楽堂で放射線と健康についてボランティアの講演をします。
そのまま石巻に入って巡回診療をし、雄勝診療所を応援している諏訪中央病院の若い医師たちの労をねぎらい、夜はキャンナスから依頼されたボランティアの講演をする予定です。
園まりさんも一緒にボランティアで入ります。

2月には、イラクとチェルノブイリに行く予定です。
4月には、エジプトに行き、アラブの春を自分の目で見てこようと思っています。

前を向いて、明るく、しっかりと、丁寧に。
1%だれかのために生きていこうと思っています。
今年も応援をよろしくお願いいたします。

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新年のごあいさつ

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