殺気をまとう男
麿赤兒に会った。
舞踏集団「大駱駝艦」を主宰する舞踏家であり、俳優。
唐十郎の特権的肉体論を具現化する役者として、紅テントで活躍した。
ぼくは大学時代、夢中になって見にいった。
唐十郎の台詞がどんどん長くなり、文学的になり、わけがわからなくなり、なんとなく自分とは合わないのではないかと思うようになり、状況劇場の役者をやめ、象牙を売ったり、米を売ったり、人の言うとおりにやってえらい目にあったと聞いた。
お金がないときに暗黒舞踏の土方巽の家に数ヶ月居候したことがあり、目をかけてもらった。
特別、弟子になり教わったというわけでないが、言葉を超える表現者になりたくて、言葉を使わない舞踏家になったという。
ロングコートにマフラー、それに帽子を目深にかぶった麿赤兒は、まとっている空気が尋常ではない。
しゃべりだすとやさしいおっさんみたいだが、歩く姿は美しく、殺気を漂わせていて、とても声をかけられそうもない完璧なムードをもっている。
一流の舞踏家というのはこんな歩き方をし、こんな空気をもっているのかと思わせてくれた。
40年程前、あこがれていた麿赤兒に会えて幸せ。
朝日新聞社から出ている『怪男児麿赤字がゆく 憂き世戯れて候ふ』という本を読んだ。
麿赤兒のおもしろさがよくわかった。
芝居や舞踏が好きな人はぜひ、ご覧ください。
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