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2012年2月

2012年2月29日 (水)

ゴメリへ

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ミンスクからゴメリ州にあるベトカに向かった。
美しい雪景色が続く。

約400キロのドライブの途中、佐藤健太君は空間線量計を握り締めながら寝てしまった。
ハードスケジュールで神経を使い、疲れていると思う。

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空間線量を測定すると、毎時0.18マイクロシーベルト。
雪が積もっていることも関係していると思うが、以前に比べるとかなり低くなっている。

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ミンスクの街の様子

ミンスクの青物市場に行った。
20年前にもこの市場を訪ねたが、商品の数が圧倒的に変わった。
かつては共産主義だったが、資本主義になることによって、こんなにたくさんのものがあふれるようになった。

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ガイガーカウンターを売っている場所を聞いて行ってみたが、時計型のガイガーカウンターが日本円で6万円くらい。
高かったので、買うのはやめた。

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ミンスクのレストランに入り、佐藤健太君の誕生日を祝い、キノコスープを頼んだ。
ジャガイモとキノコがマッチして、とてもおいしかった。

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ぼくたちが質素に誕生祝をしていると、隣は結婚式の披露宴でえらく盛り上がっていた。放射能に負けない明るい国民性だ。

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チェルノブイリ情報センター

ミンスクにあるチェルノブイリ情報センターを訪ねた。
子どもの絵や作文を集めて、子どもたちの心の問題を解決しようと取り組んでいるという。
ベラルーシとロシアの学校19校に、空間線量計や食品の放射線量計を置き、測定できるようにしている。
ベラルーシ全体では、一時1000箇所で現在800箇所の地域で、食品の放射線量が測定できる。

ミンスクの中央市場にも出かけたが、その市場で売る場合、1ドル以下で放射線量が測れる。
1ドルは87円くらいだから、とても安い。
家庭菜園で作ったものを自分で食べる場合は、測定料は無料。
そんなふうに放射線量を調べる場所がいくつもある。

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ベラルーシでは1986~1999年まで5回、食品の規制値を変えた。
体外被曝量と体内被曝量を足して、自然放射線量をさし引いた被曝量が1ミリシーベルトを超えないように、食品の組み合わせを考えて決められているという。

日本でも早く、福島原発情報センターのようなものをつくって、食品の規制値や食べ方などの注意点など、市民にわかりやすくパンフレットやビデオで広めていくことでができるといいと思う。

キノコなども、全てが放射線量が高いわけではないといわれた。
種類によって、放射能を吸収しやすいものとそうでないものがあるようだ。
それをまとめた一覧表をみせてくれた。
食品を食べるには、洗ったり、むいたり、酢漬けにしたりする。
肉や魚は塩漬けにして、食べるときに塩抜きして食べる、などの具体的な情報をわかりやすく説明していた。

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このチェルノブイリ情報センターには、放射線の専門家や経済の専門家のほか、コミュニケーションの専門家がいるという。この視点は大事である。
日本でも、コミュニケーションの専門家が福島原発事故後の処理をする委員に入っていれば、もうちょっと国民にわかりやすい説明ができたはずだ。

ぼくは以前『言葉で治療する』(朝日新聞社)という本で、患者さんに納得できる形の医療を展開するには、コミュニケーション技術が必要であり、医療にとって言葉というのはとても大事だと書いた。
見えない放射能に関しても、言葉の力はとても大きい。

なのに、政府の言葉も、福島県の言葉も、それを支えている学者たちの言葉も、国民に不信感をもって伝わってしまう。
福島県でも、専門家が県民の心を捉えらていない。
いくら県民に説明しても、県民からは痛烈な質問や批判意見が出て、おだやかな形で説明ができなくなってしまったことは、たいへん不幸なことである。
国民の信頼を得るためにも、コミュニケーションの専門家の役割は大きい。
チェルノブイリ情報センターに学ぶべきことは多いと思う。

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2012年2月28日 (火)

チェルノブイリ省の大臣と

ベラルーシのチェルノブイリ省の大臣にお会いした。

飯館村の佐藤健太君が飯舘村の放射線量の状況を説明をした。
佐藤君が、今後、飯舘村に住めるか聞くと、大臣はこう答えた。

大臣「内部被曝に注意すれば、今の放射線量なら何とか住むことができるが、森の状況が厳しいならば、住めるかどうかは微妙だ」

住むのは無理でも、通うのはどうか?
大臣「通うのならば、できるだけ生活圏を狭くして、その生活圏を除染して放射線量を減らすことができれば、少しの時間、村で仕事をすることには問題ないと思う」

056 チェルノブイリ省が入るビル

大臣は、「住民が納得できる法律をつくることが第一段階の仕事」だという。
二番目は、情報が一つのメッセージになるように、チェルノブイリ省のようなものを福島にもつくったほうがいい。
できるだけ国民が迷走しないように、内部で徹底的に議論してメッセージを一つにしたほうがいいいということだ。
そして、三番目は、「教育」が大事だという。
子どもたちがいちばん変わりやすいので、小中高の学校で放射線についての教育を徹底する。
実際に子どもたちが食品の放射線量の測定などを実習することで、子どもたち自身が自分の健康を守るようになっていく。
その子どもたちを通して、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんたちに、放射線に対してどう注意すべきか広めていくという。

非常に有意義な話をうかがった。

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2012年2月27日 (月)

ミンスクで甲状腺がんの権威と面談

深夜2時くらいに、ミンスクのホテルに着いた。

一休みして、飯舘村の青年、佐藤健太くんと、3人の子どものお母さんである南相馬市の高村美春さん、日本テレビの山口ディレクターと合流した。
若い人たちの目で実際にチェルノブイリを見てもらい、福島で生きていく手がかりを持ち帰ってもらいたいと思っている。

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小児甲状腺がんの世界の権威となったユーリ・ジェミチェク教授と、ミンスク医科大学のオリガ小児科教授とディスカッションした。

小児甲状腺がんを防ぐためには、事故後の半年間が最も大事だ。
放射性ヨウ素I-131がほとんどなくなる半年後からは、30~40歳の甲状腺がんが少し多くなる可能性が十分にあるので、チェルノブイリ原発事故があった25年前に子どもだった青年から壮年になりかかけている年代層の人たちをフォローしていく必要があるという。

福島でも、子どもの甲状腺がんのピークは終わった。
これから何よりも大事なのは一年に一回の健診であると、ジェミチェク教授は言われた。

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ジェミチェク教授は、JCFの招待で日本に来たことがある。
JCFのことを、もっとも早くベラルーシに入って支援をしたNPOの一つだと覚えていてくれた。
今後も、できるだけ詳しい情報をJCFに届けてくれると約束してくれた。

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2012年2月26日 (日)

ナナカリ病院で

イラクのナナカリ病院の白血病外来を訪ねた。
急性リンパ性白血病で肺炎を起している子どもや、治療が非常に難しい急性骨髄性白血病の子どもたちが診察を受けていた。
お母さんたちはとても心配そうだ。

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病棟にはアルコール消毒が配備され、JIM-NETが力を入れている感染症予防対策の一つが実行されていた。

ナナカリ病院の様子や、建設中の新病棟を見て、慌しく飛行機に乗った。
無事、イラクの日程を終えた。

                                ◇

おまけ。
昼食は、シシカバブの串焼きのお店で。

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羊のシシカバブと、オリーブ。

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鎌田實の一日一冊(126)

「あいをよる おもいをつむぐ」(さとううさぶろう著、地湧社、1575円)

うさぶろうブランド、「うさとの服」をぼくはよく家で着ている。
手つむきの糸を天然の染料で染め、織り上げていく。
なんとも心地よい服。
「宇宙の法則によってつくった」と本人がいう服は、命の塊のような服だ。

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タイのチェンマイに住み、いつも魂のことを考えているデザイナーである。
会っていても、やさしくて、これ以上のおだやかな人はいないんじゃないかと思わせる。
ぼくと同い年。
「ミノくん」とぼくのことを呼ぶ。
ぼくは「ウーさん」と呼ぶ。
自然のエネルギーをいつも大事にしているうさぶろうさんは、魂のデザイナーだと思っている。

着心地がいいうさぶろうの服を一度、着てみてほしい。
本も、おもしろいです。

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原発事故397

放射能汚染地域のガレキの処理に多くの自治体が困っている。
ガレキの仮置き場をつくろうにも、住民の納得が得られない。
しかし、とりあえず、仮の仮置き場のようなものを確保して、ガレキを撤去しなければ、福島県の復旧作業は始まらない。
宮城や岩手に比べると出遅れてしまった。

出遅れた分、人件費も高騰。それだけ人を集めるのが難しくなっている。
放射能のなかで仕事をしてくれる土木作業の経験者を集めるのは、とても大変ではないかと心配する。

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2012年2月25日 (土)

成果があった会議

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アルビルでのカンファランスでは、今後も感染症対策を本格的に取り組んでいくことが決議された。
イラクの医療従事者を日本に招き、感染症対策の研修をしてもらおうという話も出ている。

イラクの各病院からは成果が上がっているという報告を受けたが、これから一年間、どのような支援をしてほしいか、各病院の代表とミーティングをし、おおねむ行動目標が決まった。

信州大学に研修に来ているリカア先生の遺伝子解析もかなり順調に進んでいる。
急性骨髄性白血病は二つの遺伝子が傷つくか、転座していることが原因とわかり、劣化ウラン弾とは断定できないまでも環境因子が病気の起因に関係しているのではないかと推測できるくらいのところまでやってきた。
今後もイラクの5つの病院に協力してもらい、血液の標本を集めて遺伝子解析をすることによって、イラクの急性リンパ性白血病や急性骨髄性白血病がどういうメカニズムで起きているか、解明していくことになる。

会議の最終日、みんなで記念写真を撮った=上の写真。
実りのあるJIM-NET会議だった。

             ◇

これからアルビルからウイーン経由で、ベラルーシの首都ミンスクに入る。
ミンスクでは、チェルノブイリ省の大臣らと面談が始まる。
さらに忙しいスケジュールになりそう。

Img_5760 アルビルの夕焼け

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アルビルの治安

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新しいJIM-NETの事務所を紹介しよう。
アルビルの住宅街の一角のアパートメントにある。
引越し後、はじめて訪ねたが、なかなかいい。
ここには、阪口さんが常駐している。

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Img_5756_2 JIM-NETのアルビル事務所。明るくて広々している。キッチンもあり、子どもたちの絵が貼られていた。

アルビルは、イラクのなかで最も治安がいい。
外務省では「渡航の是非を検討してください」という危険情報が出ているが、実際、ぼくが夜歩いても、危険を感じることはまったくなかった。
しかし、日本人はほとんどおらず、JIM-NETかJICAのスタッフくらいだという。

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アルビルには日本の企業やお店が進出しているが、日本人ではなくクルド人が働いている。
治安がよくなったこともあり、市内はとても活況を呈してきた。
まだまだ危険なバグダッドなどに対して、アルビルがイラクの窓口になりはじめているようだ。

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アルビルに到着した日、クルド友好協会の会長に会い、福島の郷土玩具・赤べこをプレゼントした。
クルド友好協会の会長は、日本人が来ないのを寂しがっていた。

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2012年2月24日 (金)

動画:NHK復興カレッジin福島 vol.4

2011年11月上旬、福島大学キャンパスにて行われた福島会議に連動して開催された「NHK復興カレッジ」。(8回にわけて掲載。今回は第4回)

内部被ばくを防ぐために関心が集まっている、食品に含まれる放射性物質の量。
鎌田は、ベラルーシにくらべて、日本の放射線検査の体制が整っていないことを懸念している・・・。

食物の放射線検査をサンプルではなく全品していくべき。
自分の庭で作ったトマト、釣ってきた魚、山で採れたきのこ。
今までの習慣で食べてきたもののを食べていいのかどうか。

誰もが自分で自分の体を守ることができるように、食品の放射線量を簡単に測定できるシステムを早急につくるべき。

日本の食品に対する規制値は、ベラルーシに比べて甘すぎる。
ゆるい暫定規制値をいつまでも続けるのではなく、世界一厳しい規制値をつくったほうがいい。
放射能を「見える化」して、その食品をたべるかどうか、自分の人生観で、自己決定できるようにするべきである。

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お知らせ

明日25日、毎日新聞朝刊にぼくの連載「さあ、これからだ」が掲載される。
石巻の仮設住宅を、園まりさんと一緒に訪ねたときのことを書いた。
2/5まで諏訪中央病院の若い医師たちが雄勝診療所を支援し続けてきたが、若い医師たちにとっても長い医師人生のなかでもつらい状況に陥った被災者たちに接し、いい勉強になったと思う。
石巻では在宅ケアが広がっているが、中高年の男性など孤立しやすい人を孤立させないでどう支えるかが課題になっている。
園まりさんには、仮設住宅の男性たちに出てきてもらうよう、往年のヒット曲を披露してもらった。
ぜひ、お読みください。

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原発事故396

南相馬を中心にして、内部被曝の調査が行われた。
南相馬市立総合病院で内部被曝1ミリシーベルトを超える人は4745人中1人だった。
不検出だが、微量に内部被曝をした人は2802人いたという。

福島県の平田村にあるひらた中央病院では、キャンベラ社のホールボディカウンタを整えている。
この財団の名誉理事長になったので、今度、ホールボディカウンタの結果も教えてもらおうと思っている。

1202185__ 雪の佐久平

飯舘村では、家族別居が5割。
絆を結んできた村がばらばらになりはじめている。
集団で仮設にいる人たちと、個人でアパートを借りた人たちの間にすれ違いが生じはじめているとか。

放射能に、体も、心も、蝕ばまれてはならない。

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3/24出産を考える映画会

諏訪中央病院の産婦人科では、「赤ちゃんにやさしい病院」取得に向けて取り組んでいる。
出産直後、お母さんと赤ちゃんを引き離さずに、へその緒がついた状態でお母さんに抱かせてあげること。そうすることで、赤ちゃんも安心し、お母さんも赤ちゃんへの愛情が増していく。
幸せな出産は、子育てや家族のきずなに大きく影響する。
しかし、現実の出産では、医療の過剰な介入によって、出産がつらい思い出になっていることも少なくない。

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↑クリックすると拡大します

そんな命の出発点である出産を考えようと、産婦人科医や看護師、助産婦、看護学生らが「命の架け橋」を結成。
3月24日、茅野市民館で映画の上映と、お話会を開催する。

映画は、自然分娩に取り組んでいる吉村医院の様子を追った、河瀬直美監督のドキュメンタリー「玄牝(げんぴん)」。
映画にも登場する助産婦さんと、5月に出産を控えたパフォーマーがトークやパフォーマンスを展開する。

興味のある方は、ぜひご参加ください。
詳しくは下記のとおり。

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映画「玄牝」上映会in茅野 + 『命』のお話し会
平成24年3月24日(土) 13時-映画上映会、15-16時お話し会
場所:茅野市民館 2階コンサートホール
主催:『命の架け橋』

■入場料: 大人1000円、前売り800円 学生500円(前売りも同値段) 未就学児入場不可
+『ありがとう代』
→→当日、来場者の感動した分、気持ちの分の募金です。それで上映や準備に必要となった費用を充足します。黒字分は、次回の活動の資本金に当てさせていただいたり、なんらかの募金に使わせていただきます。
(当日会場にアンケート実施予定)
■入場人数:300名まで。
先着順の入場。300名を超える場合、入場を制限させていただく可能性があります。パネル展示はご覧いただけます。
★託児:託児 有料 1000円 (13-161時一律) 事前申し込みが必ず必要になります。(定員15名) 申込みは 「託児希望」と明記し,保護者名、TEL、お子さんのお名前、生年月日、性別、アレルギーの有無を記載してください。おもちゃ、 おやつ、飲み物、オムツを持参してください。持ち物には名前を記載してください。
申し込み先 inochi.kakehashi2012@gmail.com
申込みは3月16日まで

★★チケット販売場所  2月下旬販売開始予定!
諏訪中央病院 売店 0266-72-1000
茅野市民館 0266-82-8222
平安堂 茅野店0266-82-7777
野村ウィメンズクリニック 0266-24-1103
みぶ母乳育児相談室 0266-79-3245
平岡産婦人科 0266-72-6133
レストランかえでの樹 0266-73-7703
レストラン大麦小麦 0266-73-7539
ナチュラルケアハウス・シンシアリー0266-82-0128

お問い合わせ先 実行委員会『命の架け橋』

専用ブログ スタッフが会実行に向けての日々をつづる・・・
 HP http://blog.livedoor.jp/inochi2012/  

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2012年2月23日 (木)

3/4蓼科で健美塾

「鎌田實×吉川敏一 講演会~美しい人生、健やかな暮らしについて考える~」が3/4に開催される。

京都府立医科大学の吉川学長は、フリーラジカルの専門家で、アンチエイジングに詳しい。
2人で、健やかで美しく生きるための講演をする。

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_dsc0819 健康について講演する鎌田

食事は、鎌田と吉川教授が戦略を立てた、体にいい、おいしいフルコース。
手に入りにくい信州のワインも用意されている。
音楽もいい。
温泉もいい。

Dsc_7979 いい景色を眺めなから、温泉に入る鎌田と吉川先生

最終回の3/4、参加したい人は、まだ間に合います。
会員制でふだん泊まれないホテルに泊まるチャンスです。
ぜひ、ご参加ください。

詳しい内容や問い合わせはこちら↓

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-3e19.html

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野菜たっぷり

白熱したアルビルでのカンファランス。
ランチには、たくさんの種類の野菜サラダが並んだ。

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こちらでは、羊の肉のシシカバブやチキンが多いが、野菜がいっぱいでうれしい。
10種類くらいの野菜をおなかいっぱい食べた。
豆スープもおいしかった。

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2012年2月22日 (水)

アルビルでカンファランス

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アルビルで、カンファランスが始まった。
バグダッドやバスラのドクターたちが参加し、イラクの白血病の子どもたちの治療成績などについて、ディスカッションした。
2年ぶりにモスルの病院からも、3人のドクターが参加した。

Img_5735 モスルから参加した3人のドクターと

モスルのドクターの発表では、5年前に比べて悪性リンパ腫が16例から32例に倍増しているという。
モスルも劣化ウラン弾がたくさん落とされたといわれている。
劣化ウラン弾と悪性リンパ腫との関連は今のところ確証はない。

劣化ウラン弾がいちばん落されているバスラでは、治りにくい急性骨髄性白血病が増えているのではとの懸念が広がっている。
急性骨髄性白血病も劣化ウラン弾との関連は証明されいないが、何か影響しているのではないかと心配している。

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JIM-NETが拠点としているアルビルにあるナナカリ病院では、寛解導入率が85%から91%にあがった。
イラクの小児白血病の権威といわれるサルマ医師がいるバグダッドの病院よりも治療成績がよくなった。
サルマ先生の病院でも、寛解導入時に9人が亡くなっている。
なんとか感染予防を徹底しなければいけないという声があがった。
ナナカリ病院ではまだ十分とはいえないが、JIM-NETが指導しながら感染対策を行ってきた。
今後は赤尾看護師が時々アルビルに入り、感染対策の充実をはかることになった。

どこの病院にも治療拒否の事例があり、貧困と無知のために助けられる命が犠牲になっている。
どうしたらイラクの子どもたちの命を救えるのか、熱い議論が交わされた。

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イブラヒムと再会

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アルビルに着いた。
JIM-NET現地スタッフのイブラヒムからプレゼントをもらった。
アラブの男が着る長い服に、頭にかぶるスカーフ(ターバンにもなる)。
さっそく身につけたら、みんな大笑い。
イラクに来ると、いい仲間がいっぱいだ。

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2012年2月21日 (火)

ウイーンにて

ウイーンに着くと、小学校の同級生の菊池くん夫妻が迎えに来てくれた。

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シュテファン寺院などをまわったりした。
珍しく写真撮影の許可がでていて、ウイーンではもっとも有名な寺院だ。

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17世紀の貴族の館の地下で食事をした。
ワインもたくさん飲んで、一人900円くらいでたいへん安い。

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1203024__ ウイーンカツレツ。
ウクライナにも同じようなウクライナカツレツがあり、牛肉を薄くたたいて伸ばし、味のついた衣で揚げている。ソースはかけない。カツレツは、イタリアが発祥のようで、ヨーロッパではよく見かける。
でも、日本のソースカツレツがぼくは一番好き。

ウイーンはずっとマイナス12~13度という寒さだったが、ぼくが到着する前日あたりからあたたかくなったということで、雪ではなく、雨が降っていた。

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4/15さだまさし・鎌田實トーク&ライブ開催

昨年、さだまさしさんと南相馬市に支援に入ったとき、被災地の傷の深さを実感し、息長く支援し続けようと約束した。
今回のトーク&ライブは、経費をのぞいたお金を福島の子どもを救うために使おうと考えている。
まさしさんのコンサートと鎌田の講演で、二人のトークセッションもある。

東日本大震災復興支援 いのちのメッセージ
鎌田實・さだまさし トーク&ライブ

日時 4月15日(日)15時開場 16時開演
場所 スカイホール豊田
Ⅰ部 トークショー Ⅱ部さだまさしライブ

全席指定S席6300円、A席5800円
一般発売2月25日10時から

問い合わせは、「いのちのメッセージ」実行委員会事務局(豊田スタジアム内)0565-87-5200

今後、どんな支援をしていこうか、まさしさんと二人で相談している。
たとえば、震災で親を亡くした子どもたちの大学までの奨学金の一部を応援しようとか、飯舘村の若者たちがこれから村を守っていく活動を応援しようとか・・・まだ具体化はしていないが、福島の子どもや若者たちがいきいきと生きていけるように、有効でかつタイムリーな支援をしていきたい。

ぜひ、トーク&ライブにご来場いただき、ご支援をお願いします。
特に関西、中部地方にお住まいの方、よろしくお願いいたします。

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2012年2月20日 (月)

鎌田實の一日一冊(125)

「がれきの中の天使たち 心に傷を負った子どもたちの明日」
(椎名篤子著、集英社、1260円)

親しい編集者を通じて、ノンフィクション作家の椎名篤子さんがこの作品に取り組んでいることを知り、昨年の暮れ、原稿を読ませてもらった。
読んだ後、「大変だったね。もうだいじょうぶだよ」と子どもたちに言ってあげたくなった。

いい本である。
傷ついている子どもたちに、心の専門家たちが寄り添い、すばらしい活動をしている。
ぼくは、「報道では見えなかった子どもたちの苦しみを思うと、涙が止まらない。心の専門家たちの活動がすごい」と帯に書いた。

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東日本大震災で、余震の続く中、いち早く被災地に入り、子どもたちとその家族の心のケアにあたった児童精神科医チーム。
保健師や心理士も加わった彼らの献身的な活動は意外に知られていないと思う。
現在も続いているその「子どもの心のケア活動」の現場を取材し、実際に心に傷を負った子どもたちの実例をまじえてリポートした、貴重なノンフィクションだ。
災害時の子どもの心のケア活動の「原点」となった、阪神・淡路大震災についても取材している。

今回のような大災害が起こったとき、いちばんつらい思いをするのは、子どもたちだ。
子どもたちを救おうと必死に力を尽くす児童精神科医たちに、ぼくは救いと希望を感じた。

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2012年2月19日 (日)

行ってきます!

今日からイラク、チェルノブイリというメチャクチャな旅が始まる。
イラク・アルビルに入る前に、中継地のウイーンに飛ぶ。
11時間以上のフライトで、現地時間の午後4時半ごろ到着する予定だ。

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ウイーンでは、小、中学校の同級生で野球でバッテリーを組んでいた菊池良生君と会うことになっている。
菊池君は、ハプスブルク家の研究をしている大学教授。
いまウイーンに滞在中なのだ。
旧交をあたためたいと思う。

旅の様子は、事情が許せば随時紹介していきます。
お楽しみに!

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こんにゃくづくし

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昨日、雪の長野県の佐久平を通り、群馬県昭和村で講演をした。
人口7000人の昭和村は、こんにゃくが特産。
道の駅で食べられる定食も、こんにゃくづくしだ。

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こんにゃくが特産の昭和村だけあり、こんにゃく入りのごはん、こんにゃくのステーキ、こんにゃくのサラダ、こんにゃくの漬物、こんにゃくの煮物。
何から何までこんにゃくで楽しい。
おなかはいっぱいになったが、でも、ちょっと飽きるかなあ。

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続々・チョコ募金に寄せられたメッセージ

チョコ募金に寄せられたメッセージを読むと、本当にあたたかい気持ちになります。
今回も、その気持ちをみなさんにもおすそ分けします。

新潟の方からはこんなメッセージ。
「今日、チョコが届きました。かわいらしいイラストに家族みんなが癒されています。メッセージも感激しました。今日届いた分は家族で分けてしまいましたので、追加注文させていただきます」
こんな方々によって、思いのほか早く売り切れたわけです。感謝です。

鎌田は岐阜経済大学の客員教授をしています。
そこの先生方がお声を掛け合っていただき、注文していただいたようです。
ありがたいことです。

「希望を与えてくださる鎌田さんに、全国の方々も心穏やかになられていると思います」なんてメッセージもありました。

千葉の方からは--。
「去年病気になり、何かためになる方法はないかと思い探したところ、鎌田さんの本を見つけ、何冊も読みました。どんな方かもっと知りたくなりネット検索をし、命をつなぐチョコレートというステキな活動を目にました。母もあたたかな鎌田さんのファンで、ラジオをよく聞いています」
うれしいですね。

「アルファクラブでチョコレート募金を知りました」という東京の方のメッセージも。
アルファクラブとは、胃がんの手術をした患者さんの会。
ありがたいですね。ご自分が病気なのに。

北海道の方は、お父さんが白血病になり、お母さんが募金のことを見つけてくれました。
お父さんが白血病を克服できそうなので、「イラクの子どもたちや福島の未来に願いをこめて、チョコを買います」というお便りもいただきました。

病気でつらい思いをした方々から、ありがたいことです。
健康や命の大切さをあらためて実感し、それをイラクや福島の子どもたちにしっかりつなげていこうと思います。
本当にありがとうございました。

                  ◇

先日、聖隷クリストファー大学同窓会に講演に行きました。
そこで募金を集めていただき、日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)に13万円の寄付をいただきました。
ぼくたちの活動をちゃんと評価し、そのうえで応援していただけることは、とても励みになります。
心から感謝です。

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2012年2月18日 (土)

原発事故395

核燃料の2004年の直接処分コストが隠蔽されていたことがわかった。
六ヶ所村の再処理工場を動かすために19兆円を国民が負担するという制度がとりまとめられたが、直接処分したときの費用のほうが安いという意見があったのにもかかわらず、そして経産省は試算していたにもかかわらず、いかにも試算がないように国民に隠してしまったのである。

1202081__ 明るくライトアップされる東京タワー

結局、使用済みMOX燃料はさらに再処理が難しくなり、コストがかさむことがわかっていながら、MOX燃料を使うプルサーマル計画が開始される。なんとひどいことか。
しかも、プルサーマルが動き出しても、もんじゅが動かなければ核燃料サイクルは完成しないのだが、肝心のもんじゅは動く可能性すらまったくない。
原子炉でウランを燃やして出来たプルトニウムは消費できないのに、それに対して批判がでないように、国民の目を欺いて、その場しのぎでやり過ごしてきたのである。
民主主義の根幹にかかわることだ。

また、電力は地域独占で、総括原価方式という必ず電力会社がもうける方法を作り出し、国民には高い電気料を払わせている。
資本主義の大原則である「競争」が行われない世界をつくってしまったのである。
どこの国でも当たり前に行っている発電と送電の分離をせず、自由な競争をさせず、ただ「原子力が安い」といいながら、原子力を推進してきたのである。

日本の原子力行政は、民主主義の根幹にかかわるし、資本主義の根幹にもかかわる。

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明日からイラク、チェルノブイリへ

明日19日から、長い旅に出る。

成田を出発し、ウィーン経由でイラクのアルビルに飛ぶ。
アルビルは、JIM-NETの事務局があり、イラクのなかでは最も治安がいいところといわれている。
ここで、バグダッドやバスラのドクターを集め、21、22の両日、カンファランスを行う予定だ。
イラクの白血病の子どもたちの治療成績などについて、ディスカッションしてくる。

信州大学で遺伝子の解析研究をしているリカア先生も同行。
リカア先生も久しぶりにイラクに帰り、研究成果を発表する。
イラクの急性リンパ性白血病や急性骨髄性白血病の子どもの数百例のデータを解析した論文が英文で認められた。
大変高い評価を得ている。
今後のイラクでの白血病治療に大きな貢献をすることになると思う。

002 ベラルーシの子どもの絵

アルビルでのカンファランスの後は、再びウイーンに出て、そこからベラルーシのミンスクへ渡る。
チェルノブイリ原発事故の担当大臣らに、除染活動や食品の放射線測定を行政がどう取り組んできたか聞いてくるつもりだ。

イラクから直接チェルノブイリに入るという離れ業で、メチャクチャ大変なスケジュールだが、必ずいまの日本にとって役立つ渡航になると思う。

インターネット状況がよければ、このブログで随時、情報を紹介していきたい。
おそらくイラクからは送れると思う。
チェルノブイリからの通信は難しいかもしれないが、事情が許すかぎりチェルノブイリの今をお伝えしていきたい。
お楽しみに!

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2012年2月17日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(104)

「汽車はふたたび故郷へ」

オタール・イオセリアール監督作品の傑作。
さらわれた。
映画に心を奪われた。
なんだかわからないけど、心地がいいのである。

Photo

映画を撮影する自由のないグルジアを出て、主人公ニコが旅をする。
しかし、自由の街パリにも本当の自由はなかった。
たくさんの人に見てもらってお金儲けができる映画ではないので、なかなか映画をつくらせてもらえない。

監督自身の体験を投影している。
故郷グルジアへのオマージュであるが、同時に、映画という芸術に対するオマージュでもある。
希望はどこにもないが、心のなかにいつもある。
そんなことを感じさせてくれる素敵な映画である。

ぼくがさらわれたように、映画の最後で主人公は人魚にさらわれていった。
いくつもの時代と、リアルな世界と幻想の世界が斑状に交錯する。
これぞ映画、と思う。

悪がきだった頃、親友の男の子と女の子と貨車にしがみつく光景は美しい。
人間が生きるとき、心のふるさとの大切さをひしひしと感じる。

2/18から岩波ホールでロードショーが始まる。
いい映画、ぜひご覧ください。

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2012年2月16日 (木)

お茶っこくらぶ

石巻の河北地区で在宅ケアをしているJIM-NETの川添看護師とともにずっと活動してきた重岡看護師が休養に入った。
本当に長い間、休みなく働き続けて疲れたと思う。
しばらく休養してもらいたい。

川添看護師は、7箇所近くの仮設住宅のサロン「お茶っこくらぶ」を頼まれている。
JIM-NETはほかのNPOに比べると財政状態が厳しいので、あまりおいしいお茶請けは用意できないが、現地ではとても人気だという。
自由な空気があるのだろう。

フォトボランティアジャパン基金が、秋山庄太郎さんら超一流のカメラマンがチャリティー写真展を行い、その売り上げ80万円をJIM-NETに寄付してくれた。
ありがたいことだ。
なんだかわからないけれど、あたたかなつながりができていく。心からから感謝です。

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続・チョコ募金に寄せられたメッセージ

チョコ募金とともに全国からあたたかいメッセージが寄せられました。
今日は、その続き。

「母が退職する際、職場の人に贈りたいといいました。イラクの現実、福島のことを気にして生きていきたいし、そういうメッセージがチョコを贈る人たちに届けばいいと思います」

「チョコ募金のことを新聞で知りました。職場の女性職員の全員の賛同を得て、バレンタインに全男性職員に贈ることが決まりました」
うれしいです。
こんなふうにして広がったんですね。

大阪の方からはこんなメッセージ。
「結婚式に招待する方のお礼の品を探していました。
式は3月10日。3.11からちょうど一年。阪神大震災のことも祈り、こちらの商品を売れたらと思っています」
結婚式に来てくださった方々に、このチョコが渡るなんて、思いもしませんでした。
いい結婚式になると思います。

1202012__ 雪の岩次郎小屋

「鎌田先生の講演会でお話を聞き、衝撃を受けました。著作を泣きながら読みました。行動変容しました。働いたお金の一部です」と、たくさんのチョコを買ってくれた方もいました。

そして、福島からも。
「去年はイラクの子どもを助けるつもりで注文しました。今年は、福島も助けられることになるなんて思ってもいませんでした。外からの支援がどんなにありがたいか。
隣人に手をさしのべられることで救われるのは、隣人だけでなく、すぐそばにいて何もできない自分の気持ちも、です。避難所に行ってくださり、ありがとうございます」

「JIM-NETの方々の震災の援助に勇気づけられました。福島の病院への多大な医薬品供給もされたと聞いております。
みなさまがたの献身に心からの感謝と敬意を表します」

JIM-NETの活動に気がついていただき、ありがとうございます。

                    ◇

福島の幼稚園や保育園では、放射線量の高い地域の子どもを低い地域に移動させ、草や落ち葉や雪に体ごとふれさせてあげたいという移動保育プロジェクトが立ち上がりました。
JIM-NETもこのプロジェクトを応援することになりました。
福島の子どもをしっかり支えていこうと思っています。
これからも応援をお願いいたします。

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2012年2月15日 (水)

長期的支援ひと段落

諏訪中央病院の医師たちが一ヶ月交代で石巻に入り、長期的支援をしてきたが、この2月上旬で一区切りがついた。
若手医師を中心にして吉沢先生や高木先生も、何度も現地に入ってくれた。

一区切りがつくということで、雄勝診療所の小倉先生とお会いして、あいさつをしてきた。
小倉先生にはたいへん感謝された。

東松島町の石垣クリニックにも週一回だが若手医師が外来を応援してきたが、先日、園まりさんと石巻に入ったとき、打ち上げ会で石垣先生も来てくださったので、石垣先生にもお礼を言うことができた。
石垣クリニックには多いときには一日150人前後の患者さんが来るので、諏訪中央病院の応援は助かったという。
津波で床上浸水をしたが、いろいろな方の支援と医師の応援で立ち直ることができたとも感謝された。

医師たちの定期的な派遣は終わったが、今後も何かあれば支援できるようにお互いに交流していきたい。

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2012年2月14日 (火)

チョコ募金に寄せられたメッセージ

たくさんの方に協力していだき、14万個が完売したチョコ募金。
募金とともに、やさしい言葉をいただいている。

群馬県のTさんは、10セットを釜石の仮設住宅に住む女性に送ったという。
その女性の息子さんは、津波のトラウマに悩まされながら、受験を控えているという。

横浜市のKさんは24歳の息子さんを7年前に亡くした。
その息子さんはぼくのファンだったという。
何もお力になれなかったのに、応援していただいた。
ありがたいことだ。

楽しくなるようなメッセージもいただいている。
東京都のKさんは、昨年までは「家族内義理チョコ」だったが、今年からは「いてくれてありがとうチョコ」に名称を変更したという。
「ステキなチョコを送る機会をあたえてくださったJIM-NETさんありがとう」とも書かれていた。

ぼくはよく「哲学のあるチョコ」といってきたが、「いてくれてありがとうチョコ」というのはとてもいい。
今日はバレンタインデー。
職場でも、家庭でも、被災地でも、「いてくれてありがとう」という気持ちをこめて、このチョコを手渡すことができたら、心があたたかくなる。
ステキな名称だなあ。

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経済講演会

バークレイズ・キャピタル証券株式会社の新春経済講演会で講演をした。
鎌田の持論「あたたかな資本主義」を展開してきた。
帝国ホテルで350人が集まった。
何百億円もの投資をする人たちに、あたたかな資本主義の必要性を話した。

東日本大震災では、日赤や赤い羽根募金を中心にして4000億円近くの浄財が集まったが、集まりすぎてタイムリーに被災者に届けられなかった。
被災地では、当初はお金がほしいという人はいなかったが、2ヶ月くらい過ぎたころからお金がほしいという人がではじめたように思う。
このときに寄付金の一部が被災者の手に渡っていれば、被災者も救われただろうし、地域の経済も一気に立ち上がりはじめたと思う。

1202015__

お金は回転することが大事である。
つねに雇用が生まれるようにお金が動かすこと。
単に寄付金をばらまけばいいというわけではない。
社会保障で生活を守るよりも、少しお金がかかったとしても、雇用を拡大して仕事についてもらうことで、将来の人生計画もできてくる。
子どもを育てようとか、家を建てようとか、仕事を拡大しようとか思うことで金融が動き出す。
家を建てることで、設計士や大工さん、建築資材会社が潤う。

一つのNPOに1000億円というような大きなお金が集まらないように、どこかにストップをかけないとお金はタイムリーに使えないのではないかと思う。
仮設住宅に巡回診療に行くと、テレビや洗濯機にぜんぶ赤十字社のマークが貼ってある。
国民が寄付したお金であるが、まるで日赤が寄付してくれていると被災者たちは思いこんでしまう。
社会をあたたかく動かすためには、企業やNPOが勉強して、自分たちの資本主義をギスギスさせず、一人でも多くの人が幸せになる方法を考えなければいけないと思っている。

講演会では、2012年の日本経済見通しと金融市場という話も聞いた。
2012年は、米国よりもおそらく日本のほうがGDP成長率はいいと予測しているようだ。
残念だが当然、円高は続くということである。
秋からは復興予算が使われ始める。
失業率も低下し、GDPを押し上げていく。
震災のためにどこの国よりも財政はよくないが、復興予算として公共投資が行われるので、この使い方さえ間違えなければ、東北を元気にしながら日本は元気になれる可能性があるということである。

4月末に発売する鎌田の経済の第二弾の本づくりは着々と進んでいる。
お楽しみに。

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2012年2月13日 (月)

原発事故394

青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場で、溶融炉に再び不具合が生じて作業が中断しているという。
すでに内閣府原子力委員会は核サイクル政策の見直しをしているはずなのに、相次ぐトラブルを起している。
もんじゅも停まったまま、運用の目処はたっていない。
国民の税金を使って危険なことをやり続けながら、世界が難しいと撤退したことをいまだに日本はやって無駄なお金を使っている。
このお金を、再生可能エネルギーの開発に費やせば、ドイツに負けないようなエネルギー問題の解決ができたはずである。
政権が変わったのだから、発想ぐらいは変えてほしいと思うが、まったくこれでは政権交代した意味がない。
国民の税金をこれからもドブに捨てようとしているのだろうか。
はやく核サイクル政策の見直しを徹底すべきだと思う。

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動画:NHK復興カレッジin福島 vol.3

2011年11月上旬、福島大学キャンパスにて行われた福島会議に連動して開催された「NHK復興カレッジ」。(8回にわけて掲載。今回は第3回)

見えない放射能をできるだけ見える形にしながら、後手にまわらないようにするために、フィルムバッチ(積算線量計)を妊婦さんを中心に50代貸しだした。前月1か月分の被ばく量がわかる。そのデータをもとに、一か月の生活を見直すことで、原因となるものを調査し、できるかぎり放射線量を下げてることが大事。答えはすぐに明らかにはならないけれど、悩みながら、できるかぎり子供や妊婦さんを守っていくことが、皆の義務なのではないか。

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2012年2月12日 (日)

鎌田写真館~日本一下手なドラマー

001

岩次郎小屋の屋根裏には、ドラムがおいてある。
ぼくは、日本一下手なドラマー。

手前には、医師で革命家のチェ・ゲバラの写真集。
壁のポスターは、ベルリン映画祭で入手したもの。

お気に入りのものたちに囲まれたぼくの隠れ家。

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2012年2月11日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(103)

「ポエトリー アグネスの詩(うた)」

イ・チャンドン監督の傑作である。
もの忘れがひどくなった初老の女性が、言葉を思い出せないなかで、詩を書こうとする。
生涯に一つだけの詩である。

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孫息子の通う学校の女の子が投身自殺をする。
孫息子を含めた6人が、その女の子に性的暴行をしていたことが判明する。
人間のなかにある光と影、美しさと醜さ、善良さと邪悪さ、賢さと愚かさ。
おばあさん自身が一編の詩を書くために、自分の人生を振り返る。
自殺した女の子の思いによりそっていく。
一人の人間の魂の旅路である。
お金で解決しようとするところで、どんでん返し。

罪の意識をもち、罪を受け止めて生きることの大切が見えてくる。
文学が好きな人、詩が好きな人、映画が好きな人。
とてもいい。
見てください。

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2012年2月10日 (金)

鎌田實の一日一冊(124)

「リハビリの心と力 かかわりが自分を変える、地域を変える」(稲川利光著、学研メディカル秀潤社、1680円)

著者は現在、NHKの福祉ネットワーク「にっぽんリハビリ応援団」に出演中。
もともと優れた感性があるリハビリ医であった。

何回か、我が家に遊びに来たことがあり、筆文字をちょこっと教えた。
もしかしたら一本目の筆は、ぼくがプレゼントしたものではないかと思っている。
その後、ときどき筆で書いた手紙をもらった。
いつも下手だなと思っていた(笑)。
なんと、その下手な文字で、本のタイトルを書いてしまった。
こんな下手な文字はめずらしいくらい。
書の師(ぼくのこと)がよくなかったのか。
ぼくも同じくらいヘタだから。
でも、自分の字のほうがもうちょっといいと思ってしまうのが、人間の弱いところである。
稲川利光も、自分ではけっこういいと思っているんだろうな。

Photo

出色は、清志郎さんががんの末期で入院中、リハビリを受けるという話。
あのRCサクセションの忌野清志郎のことだ。
稲川のことを「親方」と呼んでいる。
稲川利光という人間のやさしさが、短い文章にあふれている。
清志郎さんの魅力も、やっぱりそうだったかと思わせるほど、やさしい。
このところを読むだけでも、この本の価値は十分にある。

本全体では、リハビリって何かよくわかる。
一般の人にもわかりやすいように書かれていて、もっとも大切な「情」にあふれている。
いいエッセイを読んだ。

それにしても、ページのところどころに、彼のヘタな文字が出てくる。
ちょっとめまいがしそう。
もうちょっとしっかりと教えなくちゃいけなかったなと反省。

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2/11「いのちの対話」放送

2月11日、「鎌田實 いのちの対話」(9.05~11.50、NHKラジオ第一)が奈良から放送される。

http://www.nhk.or.jp/radiosp/inochi.html

建国記念の日のこの日、ゲストに評論家の佐高信さん、政治学者の姜尚中さん、染色史家の吉岡幸雄さんをお呼びして、たっぷり語り合う。
今回のテーマは、「日本を考える」。
司会は、もちろん村上信夫アナウンサー。

日本という国について、じっくり考えてみようと思っている。
ぜひ、聞いてください。

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2012年2月 9日 (木)

JIM-NETがNPO法人に

JIM-NETが、東京都より特定非営利活動法人として認証された。
うれしい知らせだ。
これから設立登記をし、税務署へ事業開始の申告をして、約1ヶ月後にはNPO法人として正式に認められることになる。

たくさんの方々の応援のおかげです。
特定非営利活動法人の名に恥じないように、きちんと情報公開しながら、今まで以上に実のある活動をしていきたいと思います。
ますますのご支援をお願いいたします。

                    ◇

たくさんの方にご協力していただき、14万個のチョコ募金が売り切れた。
高田馬場にある「大都会」の地下では、いま「イラクと福島のバレンタインデー」という、イラクと福島の子どもの写真と絵画展を開いている。
そこでは、オーナーがチョコレートを確保してくださったので、まだ手に入れることができる。
ぜひ、お立ち寄りください。

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健美塾

テラス蓼科リゾート&スパで「健美塾」の第一回目が先月末、行われた。
京都府立医大の吉川敏一学長と鎌田が、美しい生き方、健やかな人生について話をした。

ディナーも楽しいでもらえるが、それがなかなかおもしろい。
シェフが健康にいい食材を選び料理してくれている。

たとえば、スイーツに、なんと唐辛子の辛味成分であるカプサイシン!
テリーヌにイワシを使ったり、ネバネバがいいということでモロヘイヤも使われた。
ごはん、めん、パンは「白い」ものよりも色がついたものがいいということで、そば粉でパスタが作られた。
贅沢な時間だった。

2月14日、3月4日も行われる。
格安でテラス蓼科にお泊りもでき、温泉も楽しめる。
雪の蓼科はとても美しいので、ぜひ、ご参加ください。

詳しくはこちら↓

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-3e19.html

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2012年2月 8日 (水)

原発事故393

第二次世界大戦後、ぼくは生まれた。
焦土と化した日本は多くのものを失ったが、顔を上げ、青空を見ながら、いい国をつくろうと思った。
何もないけれど、もうB29はやって来ない。
多くの人が前を向いて歩み始めた。

3.11の災厄から11ヶ月。
日本をもう一度一つにして、立ち上がろうという気運にならない。
復興計画も復興予算も空回りしている。
人々の心をすくいあげることができないからである。
なぜだろう。
見えない放射能が国民の心を引き下げているのではないか。
空を見上げても、放射能のことが心配になり、うつむいてしまう。

1202011__ 雪が積もる岩次郎小屋のウッドデッキ

復興に向けて日本が立ち上がるためには、原発に対する方針を明確にすることが大事なのではないかと思う。
国民の半分は、経済を良くするためには原発が必要と思っている。
その人たちをどうしたら納得させることができるか、ずっと考えている。
経済のために原発が必要と思っている人たちは、原発による電力が必要と思っているわけではない。
安定した安い電力さえあればいいのである。

本当に電力が足りないのか、という大きな問題がある。
2010年は猛暑だったが、またそのときのような猛暑が来ても、すべての原発が停止しても電力は需給できるのではないかという意見もある。
枝野さんは最近、そんなニュアンスで語っている。
電力が足りているのか足りないのかは大きな問題だ。
足りるならば、経済優先オヤジたちを納得させて、定期検査の後、原発をこのまま再開しないという手もある。
電力が足りないならば、原発を2022年までに止めると決めたドイツと張り合って、2020年までにすべての原発を止めると明確に示し、そこにコンセンサスを求めるのがいちばん妥当だと思う。

40年で原発を廃炉にするとか、さらに20年使用できる特例を設けるとか、わけのわからないことを言っているので、国民の心が一つにまとまりにくいのである。
これだけ福島県の人たちを痛めつけておいて、日本に54基の原発があるというのは、やはり納得できない。これでは、国民の心は一つにならない。
国民の心を一つにするためには、何年までに原発を止めるということをはっきり示し、それまでに、再生可能エネルギーや、ほとんど原子力とコストが変わらない天然ガスを使った火力発電、洋上の風力発電などに変えていくことで、経済優先オヤジたちも納得させることができるのではないか。

すでに2010年、世界では30カ国437基の原発があるが、そのエネルギーよりも、再生可能エネルギーのほうが多くなった。
世界全体をみても、古い原子炉が多い。世界でも原発を止めながら再生可能エネルギーに舵を切るはずである。その先頭を日本が走り、技術開発し、貿易の武器にしていくことが日本の生きる道だと思う。

まず、やらなければいけないことは、日本の経済を冷やさないように電力が足りているか足りていないのか、透明性の高い舞台で議論すること。
そして、国民のコンセンサスを得る必要があると思う。

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2012年2月 7日 (火)

「社会的包摂」とは?

厚生労働省の社会的包摂ワンストップ相談支援事業という新しい事業が始まろうとしている。
その事業の選定・評価委員になった。

「社会的包摂(ほうせつ)」とは聞きなれない言葉であるが、簡単に言うといろいろな生活困難を抱えた人間を社会的に排除しないで、社会的に包み込もうというものだ。

たとえば、学習機会が不足するなどして、不安定な仕事しか就けない、病気などで仕事が続けられない、住むところも不安など、現代の生活困難は多様で深刻化している。
そのとき、その人を地域社会から切り離されないように、社会的に包み込むように支援していく運動である。

1202014__

生活困難といっても、背景は複雑だ。
仕事を失っただけでなく、DVを受けていたり、心の病気になっている場合もある。
自殺の危険がある場合もある。
そのとき、電話をかけさえすれば、ワンストップでその人の問題に応えられる専門家や専門のNPOに電話がつながり、最適なサポートやアドバイスを受けられるだけでなく、同行するところまで支援しようという試みである
JCFもその一つになっていて、食品の放射性物質の問題などで相談があったときに、電話を受け入れる。

まず「社会的包摂」という言葉を多くの人たちに理解してもらい、概念を実現させていく一つの気運をつくるために役立ちたいと、納得して引き受けた。

近々、社会的包摂サポートセンターがオープンする。
東日本3県で先行事業が行われ、被災者たちを救済していく。
来年からは全国に展開していく。

問題に直面していても、どこに相談していいかわからないというのが現状だ。
その結果、問題を一人で抱え、孤立してしまうことも多い。
多くの優れた機能をもった組織にうまくつなげることで、最善の解決方法を見つけられるような仕組みが求められている。
その実現のために一生懸命、お手伝いをしたいと思っている。

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2012年2月 6日 (月)

お知らせ

明日7日の「大竹まこと ゴールデンラジオ」(文化放送)に出ることになった。
ぼくの出演は、14時25分ごろからの約25分間。

大竹さんとは同い年で、なんとなく考え方が似ている。
毎回、熱を帯びた議論になる。
熱くなった大竹さんがしゃべりまくる。
今回はどうなるのか。
ぜひ、お聞きください。

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ヴラダン・コチ希望の調べ

チェコのチェリスト、ヴラダン・コチが、震災から1年の3月、震災被災地支援コンサートを開くことになった。

昨年4月にアムネスティ・インターナショナル日本の招きで来日し、コンサートを行った。
そのとき、被災地の実情を知り、被災地の人たちに音楽を届けたいという思いを強くし、今回のコンサートにつながったという。
娘でバイオリニストのルツィエ・コチさん、ピアニストの有吉英奈さんとともに、宮城県仙台市、七ケ浜町、石巻市など5箇所ででコンサートを行う。

この東北をめぐる演奏会に先立ち、逗子や武蔵野など3箇所でコンサートを開催。
その収益は、東北での演奏会の経費に充てられる。

ヴラダン・コチのCD「ふるさと~プラハの春~」は、ぼくがプラハに行き、ヴラダン・コチの家族の協力を得て、録音してきたもの。
この収益は、JCFのチェルノブイリの子どもを支援する資金になっている。
現在、JCFは福島の子どもを救う活動をしているので、このCDの利益は、福島の子どものために活用させていただいている。

Dsc01307 ヴラダン・コチとプラハで

ヴラダン・コチは1988年、政府に抵抗して自由を訴えたため投獄された経験をもつ。
人の痛みがわかる男だ。
東北の方々にも、やわらかな希望の音楽を届けてくれると思う。
ぜひ、お声を掛け合ってお出かけください。

ヴラダン・コチ
震災被災地支援コンサート
~震災から1年 プラハより希望の調べ~

3月24日14時開演(13時30分開場)
日本キリスト教団逗子教会(京浜急行新逗子駅南口より徒歩1分、JR横須賀線逗子駅より徒歩6分)
全席自由2000円

3月25日16時開演(15時30分開場)
日本キリスト教団清水ケ丘教会(京浜急行南太田駅より徒歩3分、横浜市営地下鉄吉野町駅より徒歩10分)
全席自由2000円

3月27日
 昼15時開演(14時30分開場)全席自由2500円
 夜19時開演(18時30分開場)全席自由2500円
武蔵野公会堂パープルホール(JR中央線・地下鉄東西線・京王井の頭線 吉祥寺駅公園口より徒歩2分、武蔵野文化会館とお間違えのないようご注意ください)
賛助出演 レガーロ東京

チケットのお求め・お問い合わせ
 平田いよ子さん Tel/Fax 03-3314-7546
 e-mail h-iyoko★jcom.home.ne.jp(★→@)

主催 ヴラダン・コチ震災被災地支援コンサート実行委員会  

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東北でのコンサートは以下の通り。

3月30日16時開演(15時30分開場)
宮城県仙台市・尚絅学院高等学校礼拝堂
お問い合わせ 尚絅学院高等学校022-264-5881

3月31日15時開演(14時30分開場)
宮城県七ヶ浜町・七ヶ浜国際村 国際村ホール
お問い合わせ 七ヶ浜町ボランティアセンター090-6853-4490

4月1日14時開演(13時30分開場)
宮城県石巻市・石巻山城町教会
お問い合わせ 石巻山城町教会0225-22-1267

4月2日14時開演(13時30分開場)
宮城県登米市・錦織バプテスト教会
お問い合わせ 錦織バプテスト教会藤岡荘一さん080-3768-4062 0220-44-3776

4月3日18時30分開演(18時開場)
福島県三春町・三春交流館「まほら」ホール
お問い合わせ 三春アンサンブル支援会井上礼子さん080-6016-0218

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2012年2月 5日 (日)

石巻での出会い

1/26の夜、石巻のビッグバンで、園まりさんのミニコンサートと鎌田の講演会があった。
主催は、藤沢に本部がある訪問看護ステーションのキャンナス。
キャンナスは、全国の看護職らに呼びかけ、延べ7000人近くを東日本の支援のために送り出してきた。
ぼくは昨年5月、岩手県の特養と老健を訪ねたとき、キャンナスからたくさんの看護師が派遣されていて、すごいなと感心したものだった。

会場であるビッグバンは、この地域の最大の避難所だった。
重症の障害者もここに避難していた。
いろんなつらい光景が思い出される。

イベントには、たくさんの地域の人や在宅ケアの専門家たちが集まってくれた。
石巻で精神科を開業している宮城先生にもおいでいただいた。
はじめて石巻に入ったとき、宮城先生からいろいろなオリエンテーションをしていただき、キーパーソンにつなげていただいた。

諏訪中央病院の医師が週一回支援に入っている石垣先生にもおいでいただいた。たいへん面倒見のいい先生である。
震災後、外来が増えたのに加え、在宅ケアも一生懸命やっているので、諏訪中央病院からの医師の派遣にはたいへん助けられているとお礼を言っていただいた。
諏訪中央病院の若い医師たちも栄養補給を時々、していただいたようだ。

雄勝診療の小倉先生も、かけつけてくれた。
やはり諏訪中央病院の若い医師たちが2/5まで雄勝診療所を交代で助けていく。
やっと軌道に乗ってきたということだ。
今後も、小倉先生が何かのときは、応援ができるといいなと思っている。

Photo 石巻で在宅医療の支援をする武藤先生(左)

訪問医療専門の祐ホームクリニック石巻の武藤先生もかけつけてくれた。
武藤先生の往診に同行し、その様子を見せてもらった。
武藤先生は週3日、石巻で訪問医療をし、あとは東京の祐ホームクリニックや亀田総合業病院の医師らが交代で石巻の在宅ケアを支えている。
行政や医師会ともネットワークができはじめているようだ。
祐ホームクリニックだけでなく、もっともっと在宅ケアが広がるといいなと思う。

打ち上げ会には市会議員や薬剤師、PT、OT、訪問看護師、東松島でグループホームや社団法人を運営している方々など、地域ケアをしている多くの方々が集まった。
こういうことを繰り返しながら、地域のなかにネットワークが張られていく。
なんと、仙台のほうからも医師が参加してくれた。
褥瘡(じょくそう)のサランラップ療法の鳥谷部先生も突然の参加。久しぶりにお会いすることができた。
このネットワークを大事にしていきたい。

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2012年2月 4日 (土)

動画:NHK復興カレッジin福島 vol.2

2011年11月上旬、福島大学キャンパスにて行われた福島会議に連動して開催された「NHK復興カレッジ」。(8回にわけて掲載。今回は第2回)

3月下旬、鎌田は原発から30キロ圏内の南相馬市に入った。南相馬市は、津波による死者、行方不明者が600名を超える大きな被害を受けた。しかし原発事故による屋内退避­勧告が出されたため支援物資が届かない。原発から23キロの南相馬市立総合病院も陸の孤島となった。

鎌田は諏訪中央病院の医師やスタッフとともに、医療品や物資を持ち込み、避難所の巡回診療を行った。30キロ圏内に入った初めての医療チームである。温かい食べ物を2週間­も食べていなかった人たちに、おでんとビールも差し入れた。

避難区域の中で人々はそれぞれの事情をかかえ、苦渋の選択していた。

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仮設に響いた歌声

1/26の午後、園まりさんと石巻市三反走の仮設住宅を訪ねた。
3年程前、「田舎に泊まろう」というテレビ番組で、園まりさんは石巻の外崎という地区を訪ねたという。

園まりさんは震災前の外崎の写真と、震災後の写真を見て、涙を浮かべていた。
外崎は山を抱えているため、家の形は残っているが、ライフラインが完全に途絶え、生活できない状態になった。
その周りの地域は7~8メートルも海に沈んだ。町が消えてしまっている。
こんなに地盤沈下が起きたのかと、びっくりだ。

Img_7959

泊めるのを断ったおばさんや、魚をくれたおばさんが集まり、わいわい大騒ぎ。
泊めてくれた方もやってきた。抱き合って、再会を喜んでいた。

仮設住宅では「逢いたくて逢いたくて」をしっとりと歌ってくれた。
みんなほろっときたようだ。もちろん、ぼくも。
「ふるさと」をみんなで歌った。
石巻ビッグバンでもミニコンサートがあり、ぼくとトークショーをした。
ありがたいことだ。

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だが、園まりさんは、もともと東日本でボランティアをしたいと思っていたので、今回、声をかけてもらってうれしかったと逆にお礼を言われてしまった。
乳がんになってから、いろんなことを考えるようになったのだという。
乳がんの手術のときも、手術台に乗った後、外科医の先生から「あなたの歌のファンでした」と言われ、ミリオンセラーの「何も云わないで」を歌ってあげようかしら、それとも「夢は夜ひらく」がいいかしら、と思ったという。
おちゃめな人だ。
三人娘のコンサートツアーがすぐに始まるということで、通し稽古が待っているという大変忙しいときにボランティアに誘ってしまったが、一度も嫌な顔をせず、被災者と触れ合ってくれた。
園まりさん、心から感謝です。

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カキご飯に感謝

石巻では、仮設住宅で暮らす人たちの孤立を防ぐために、JIM-NETの川添看護師、重岡看護師が中心になり、お茶っこクラブを運営している。

先日、訪ねたとき、ぼくは迷惑をかけないように、コンピニでサンドイッチとおにぎりを買って、自分のお昼を用意していったのだが、被災した人があたたかいカキご飯を作り、おしんこと一緒に持ってきたくれた。
あたたかい人たちだ。

1201281__ 石巻の人たちのあたたかさを実感したカキご飯

しばらくの間、川添看護師が7つの仮設のお茶っこクラブを一人で運営することになった。
それを心配したみんなが、どうしたら川添看護師の負担を減らせるか、話し合いをしてくれたという。

お茶っこクラブは、和気藹々としてる。
両看護師はとても信頼され、人が集まってくる。
外は雪だが、東北の人たちのあたたかさを訪ねる度に肌で感じる。

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2012年2月 3日 (金)

鎌田写真館~玉川温泉

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秋田県の玉川温泉で、雪崩に巻き込まれ3人が亡くなった。
心よりご冥福をお祈りしたい。

ぼくは6年ほど前、この玉川温泉を取材したことがある。
高度医療の病院から「やることがない」と言われたがんの患者さんや、治療は良好だけれど念のために来たという人たちが集まっていた。
このことは、「がんに負けない、がんばらないコツ」(朝日新聞社刊、2/7に文庫化)に書いている。

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A040909036 撮影はいずれも板橋雄一氏

取材当時の写真をあらためて見てみると、山がすぐ近くに迫っている。
すり鉢状の地形になっていて、雪崩が起こればひとたまりもない。

今回、お亡くなりなった人がどんな思いで岩盤浴に来ていたかはわからないが、さぞや無念だったと思う。
ご遺族もつらいと思う。

心からお悔やみを申し上げます。

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健康が心配な季節

石巻の三反走の仮設住宅で巡回診療をした。
奥さんから、夫をみてほしいと言われ、部屋を訪ねた。

大工をしているという男性は、金槌が持ちづらいと訴えた。
片足立ちをすると、右足がうまくできない。
右側の軽い半身まひがあるようだ。
ふだんは血圧はあまり高くないというが、178の98.
小さな脳梗塞が起きた可能性が高い。
いつもかかっている開業医の先生に手紙を書き、病院を紹介していただき、CTを撮るように頼んだ。

1201282__ 石巻市三反走の仮設住宅。厳しい寒さで被災者の健康が心配だ

寒い季節は、血管が収縮するため、脳梗塞が起こりやすい。
ストレスも加わり、血圧が上がっている人も多い。
大工さんを診られてよかったと思う。

ぼくが訪ねた日、一日のうち何回も雪が舞った。
厳しい冬だ。
一人でも倒れる人を減らさなければならない。
まだまだ支援は必要だ。

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「まけない」

先週、永六輔さんとフォーク歌手の小林啓子さん、在宅ホスピス医の内藤いづみ先生と一緒に、福島市にボランディアに行ってきた。
退院したばかりの永さんは車椅子で参加だったが、めちゃくちゃに人を笑わせた。
イベントのタイトルは「まけない!」。
永さんは、「まけない」と書いた短いタオルをみんなに見せて、「首にもまけない、どこにもまけないタオルです」。
みんな大笑い。
こんなところでダジャレを言うとは思わなかった。

このイベントは、内藤いづみ先生が福島医大卒のため、福島市を応援してほしいと声をあげたのがはじまりだった。
ぼくは、放射能と健康について語った。
イベントが終わると、ほかの3人は東京へ。

ぼくは小高病院の元院長の遠藤先生と管理栄養士の鶴島さんと会い、福島駅前でトンカツを食べた。

遠藤先生は、今、猪苗代にいるそうだが、4月に南相馬市の鹿島区の仮設住宅の一角に診療所を開設する準備をしている。
比較的小高地区の人の多いので、鹿島・小高きずな診療所と名前をつける予定だそう。
診療所の看板を、ぼくが書くように頼まれた。

遠藤先生は、甲状腺を専門とする医師。
甲状腺を専門とする医師は福島県全体をみても少ないので、遠藤先生が南相馬で診療できるようになるのは、住民たちにとってうれしいことだと思う。
ぼくも、できるだけの応援をしたいと思う。

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2012年2月 2日 (木)

クロネコヤマトを訪問

経済の新しい本を4月末に集英社から出す。
そのために、おもしろい会社の社長にインタビューをしてあるいている。

先日、クロネコヤマトの山内社長に会いにいった。
なんと140億円もの被災地への支援を決めた。

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もともとこの会社は、障害者の雇用を広げることに貢献している。
全国に何店舗もスワンというベーカリーをつくり、そこでは障害のある人がきらきらした目で働いていた。

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今年はハワイへ

「鎌田實といくドリームフェスティバルinハワイ」の日程が決まった。
5月13日~18日である。

ドリームフェスティバルは今回で15回目。
延べ1700人の高齢者や障害者、病気の人たちが参加してれた。

海外へは、このところグアムに2回、昨年は台湾だったが、4年ぶりにハワイに行くことになった。
ハワイはもっともバリアフリーが進んでいるので、障害があっても安心して旅ができる。

2月2日発売の「旅行読売」では、バリアフリーの旅が紹介される。
障害や病気があるから、高齢だから・・・と旅をあきらず、ぜひ、鎌田と一緒に旅に行きませんか。
お問い合わせはクラブツーリズム バリアフリー旅行センターまで↓

http://www.club-t.com/theme/barrierfree/dream-festival.htm

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2012年2月 1日 (水)

イラクと福島のバレンタインデー

本日2月1日から15日まで、東京・高田馬場で「イラクと福島のバレンタインデー」写真と絵画で見るイラクと福島のきずなを開催している。

イラクと福島の写真展、チョコ缶のイラストを描いたハウラの絵画、イラクからのメッセージなどを展示。2、7、11、12日はトーク・イベントを行う。

この会場でのみ、チョコ募金を続けているので、バレンタインにどうしても哲学のあるチョコをあげたいと思う方はぜひ、ぜひおいでください。

場所:鉄板焼「大都会本館」地下展示室
   高田馬場徒歩3分 東京都新宿区高田馬場 4-11-8
http://www.jim-net.net/event/120201photo/map_daitokai.png
飲食店ですが、地下展示室は自由に出入りできます。

時間:
[ 昼 ] 11:30~15:00   [ 夜 ] 17:00~22:00

1)展示内容
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●写真展示
イラクと福島の写真
戦渦の爪あとを必死に生きる子ども達、
放射能禍を生きる福島の人々の写真を展示します。

●イラクの少女が描いた赤い花
今年のチョコレートの絵は全てハウラの絵が使われています。
ハウラは、イラクのサマーワというところで生まれました。
10歳の時白血病になりました。
米軍が使用した劣化ウラン弾の放射能が原因かもしれません。
サマーワには病院がなく300kmほど離れたバスラの病院に通いました。
日本の支援で治療が終了。闘病中に書き続けた絵は、日本中を魅了しました。

「ハウラの赤い花」という絵本も出版され、
映画「瞬き」(北川景子、岡田将生出演)にも使われました。
そんな彼女が今度は震災で苦しむ日本を元気にしたいと一生懸命かいた絵を展
示します。

●イラクから寄せられたメッセージを展示

●ジェフリードさんと福島の子ども達
ジェフ・リードさんは今年夏まで福島県奥会津に暮らしてましたが、
現在はご家族と一緒に京都府に避難されています。
彼はもともと、ホームレスの人たちの肖像画を描くことをライフワークにして
きましたが、
震災以後、福島の子どもたちの状況を世界に伝えるため、
福島の子どもたちとの共同制作絵画プロジェクトを進めており、
すでに100人近くの子どもたちと絵を描いてきました。
構図や色などは子どもたち自身が決めて、ジェフさんが子どもの顔を描き、
子どもがまわりの絵やメッセージを描くという手法です。
絵画制作を通して、震災以降、子どもたちが感じている怒りや悲しみ、
無力感、将来への夢といったさまざまな感情を自己表現できるようにすること
もめざしています。

2)トーク・イベント 19:00(18:30開場)
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※トークは要予約です。詳細は下部をご覧下さい。

【2月2日 福島の声を聞こう】
・富塚千秋(福島 避難母子の会 in 関東)
・小玉直也(JIM-NET福島プロジェクトコーディネーター)
・聞き手 佐藤真紀(JIM-NET事務局長)

福島県郡山市から避難してきた冨塚さんを中心に、
JIM-NETの小玉と佐藤がどういった支援が必要なのかを考えます。
また、先程行われた脱原発世界会議を振り返り、これからの福島を語ります。

【2月7日 カカオ豆をフェアトレードする】
・吉澤真満子(APLA事務局長)

チョコレートといえばカカオ豆。
カカオ豆をめぐり児童労働や、農民の搾取が問題になっています。
フェアトレードのチョコレートが問題を解決できるのでしょうか?
チョコがどんなふうに作られるのか興味津々の内容です。

【2月11・12日バレンタイン・ガーデン】
今回協力団体の皆さんから、イラクや福島にまつわるもの、
フェアトレード商品などをお持ちいただき販売していただく2日間。
写真や絵画を見ながら、マーケットをお楽しみください。

出店予定:二本松のまるごとニンジンジュース(セシウムは、未検出)フェア
トレード・コーヒーなど。

-----予約・問い合わせ-------
電話:03-3209-8177
(チョコ募金/絵画展専用番号 平日10時~)
メール:info-jim★jim-net.net (★を@に変えて送信してください。)
※2日・7日のトークイベントは予約をお願いします!
※先着順で受け付けます。
※予約がない方は立ち見、もしくはお断りする場合がありますのでご了承くだ
さい。
※メールで予約の方は、件名を下記のように送信してください。
『福島の声を聞こう申し込み』
『カカオ豆をフェアトレードする申し込み』

協力団体:
特定非営利活動法人APLA
特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい
NPO東北あしたの森
福島 避難母子の会 in 関東
パレスチナオリーブ
わ田や
鉄板焼「大都会本館」

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鎌田實の一日一冊(124)

「最高の一日 最良の最期--やっぱり病院!それとも在宅?」(柏木哲夫、内藤いづみ著、佼成出版、1470円)

内藤いづみ先生は親友。日本の在宅ホスピスケアの第一人者である。
柏木哲夫先生は、病院の緩和ケアをつくりあげ、なおかつ緩和ケアを学問的にまとめた、緩和ケア学会の重鎮である。
その二人が病院や在宅のそれぞれいいところを話し合っている。

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柏木先生はがんの末期の患者さんと時々、川柳のやりとりをするという。
毎回、回診に行くまでに、川柳を考えてかなければいけないので、回診前はとてもたいへんだとか。
患者さんも川柳を用意していて、医師と患者がお互いに川柳で火花を散らしているというのはおもしろい光景だ。

患者さんがどんな句ですかというので、「今日のはパンチがありますよ」と柏木先生。
「腹割って 話して解った 腹黒さ」
それに対して患者さんは「なかなかいいですね。私のは自信がないですけれど」と前置きして、
「寝て見れば 看護師さんは みな美人」

一緒にいた看護師さんが、「じゃ、座ったらだめなの」とつっこむ。
「いやそんなことはないです」と患者さん。

思わずほほえんでしまう光景だが、著者の2人は、医師と患者、看護師がユーモアの力で平等になっていると理論的な展開をしていく。
なかなかおもしろい本である。

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