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2012年4月22日 (日)

鎌田實の一日一冊(132)

「奇縁まんだら 終り」(瀬戸内寂聴著、画・横尾忠則、日本経済新聞出版社、2000円)

「鎌田實 いのちの対話」最終回では、瀬戸内寂聴さんと久しぶりに電話でお話をした。
お元気そうであった。

この本は、日経新聞で5年にわたり連載したもので、4冊目の最終回である。
ボーヴォワールや司馬遼太郎、寺山修司、大岡昇平が出てきたりする。
文学界や文化を支えてきた人たちとの交流が語られている。

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若い寂聴さんが新潮社同人雑誌賞を受賞したとき、大岡昇平が「こんなくだらない小説はない」と批判した。
そのことをうかつにも読まず、知らなかったことが幸いして、仲良くなってしまった。
大岡さんの晩年、小説「武蔵野夫人」で、寂聴さんは訊ねた。
「(主人公の)富子が不倫をした翌朝、さっさと起きて足袋を履きますね。あれは男とのセックスが期待はずれで満足していなかったんですね。女が満足していたらあんなに早く足袋を履きませんでしょう」
それに対して、大岡昇平はこう答えた。
「そこまで深く読んでくれたのは瀬戸内さんだけだよ。その通り」
それから間もなく、大岡昇平は亡くなった。

寂聴さんならではの瞬間的な出会いは、なんともあたたかかく、おもしろく、さすが瀬戸内寂聴とうならせる。
ぜひ、お読みください。

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