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2012年4月

2012年4月30日 (月)

哲学の授業

諏訪中央病院看護専門学校の3年生の哲学の授業がはじまった。
「勇気とは」「生きるとは」「自由」などをテーマに哲学するという習慣を身につけてもらい、将来、「哲学のある看護師」になってもらいたいと思い、授業をしている。

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授業では毎年、脳性まひの風(ふう)ちゃんに来てもらい、授業してもらっている。
風ちゃんは両手が使えない。
しかし、人生をあきらめていない。
以前、「不幸にして障害をもった風ちゃんは・・・」と紹介されたとき、「不幸か幸かは、人が決めるのではなく、自分で決める」と思ったという。
「私は体は不自由だけれど、心は自由」
風ちゃんはかっこいいのである。

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風ちゃんが今年、ぼくにプレゼントしてくれた一畳半ほどの大きな「絵足紙」は迫力満点。
看護学生たちも度胆を抜かれた。

「今年こそは足手紙をプレゼントしたいと思っていたら、右足を痛めた。
それでも描きたくて、左足で描いてみた。
なあんだ描けるんじゃん。
鎌田先生が右足を痛めたとブログで知った。
なあんだ同じじゃん。
ちょっと「同じ」がうれしくて、くすっと笑った春。風子」

風ちゃんの手紙には、相手を思いやる気持ちやユーモアがあふれている。
風ちゃんにとって右足は、携帯をしたり、筆をもったり、スパゲティーを食べたりする大事な“利き手”。
その右足を痛めてギプスの生活をしているが、それでも負けない風ちゃん。
それでも左足で描いてみたら、「なあんだ描けるじゃん」
本当に風ちゃんは自由に生きている。
文字が遊んでいる。
絵は大胆。
心の遊びがあらわれている。
何よりのお見舞いをもらったと、感謝している。
そして、看護学生たちにとっても、一生忘れられない授業になった。

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授業では、学生に課題を出した。
10年後の自分に、「自由とは何か」
提出はしなくていい。
必ず10年後、自由について書いたこの課題を読み返してもらいたいと伝えた。

授業の後、20人ほどの予約外来の患者さんを診ると、足がパンパンに腫れた。
それでも、とてもうれしい一日だった。

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2012年4月29日 (日)

がんばらない経済学④

~内需と雇用

世界の政治とお金は密接に関わっている。
日本はアメリカからTPPの参加を突きつけられているが、オバマ政権は大統領選でいい結果を得るために、TPPをまとめあげたいのである。
日本はアメリカと仲良くしながら、アメリカの言いなりにならない土俵際の技が必要である。

アメリカは一次産業の大型農業とソフトウェアなどの三次産業だけが巨大化した。
これでは一般の庶民が働く場が生まれてこないのである。
当然、不満は募っていく。
ウォール街で大きなデモが長く続いたのも、ごく限られた資本家が大金を儲けるために二次産業を空洞化させたことが原因だ。

日本は、一次産業、二次産業、三次産業のバランスをよく、雇用を拡大することによって、内需が広がる。
ぼくたちはいかにも貿易立国と思い込んでいるが、GDPの輸出による黒字額は10%前後。
実際には日本の経済は内需で成り立っているのである。
内需を拡大し、雇用を大きくするような国にしていくことが大事である。

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2012年4月28日 (土)

経済の新刊発売

集英社の読書情報誌「青春と読書」(90円)に、「強くて、あたたかくて、やさしい会社」というエッセーを書いた。

日本は不況が20年ほど続いているなかで、東日本大震災が起こり、二重の困難を突きつけられている。

現在の生活保護受給者は過去最高の205万人、支給総額は3兆4000億円。
経済学者フリードマンが言うような新自由主義、あるいは市場経済をとことん追及していくと、合理化に合理化を重ね、日本本来の終身雇用が壊れ、派遣社員が広がり、パート社員が増え、工場は外国へ移り、産業の空洞化が起こる。
背に腹は変えられず、そうしてきたのであるが、結局のところ、働きたくても働けない人たちが生活保護に陥ることとなった。

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さらに、その人たちの生活を支えるために、国も自治体も非常に厳しい状態になっている。
仕事がなくなった本人も不幸である。

働きたいと思っているすべての世代の人たちに雇用を広げるためには、どうしたらいいか。
被災地でも仕事がみつかった人たちはいち早く希望がもてるようになってきている。
雇用をよくするために経済をどうしたらいいか、鎌田流に考えてきたことが、一冊にまとまった。
『あってよかった!応援したい ニッポンを幸せにする会社』(集英社)は、まもなく発売である。
ぜひ、お読みください。

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明日29日は、「日曜はがんばらない」(午前10時00分~、文化放送)で、童心について語る。
ぜひ、お聴きください。

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2012年4月27日 (金)

原発事故417

野田首相は、必死に原発を再稼動しようとしているが、その前に少なくとも電力の需給状況くらい、明らかにする必要がある。
原発推進の専門家、原発に対して懐疑的に思っている専門家の両方を委員会に入れて、電力が本当に足りなくなるのか、明確にしてほしい。
専門家でもない政治家が関連閣僚ということで集まって密談しても、国民は納得できない。
最後の最後は政治決断であったとしても、そこにいたるプロセスは、ある傾向をもった専門家だけを集めて国民を納得させるような原子力村的議論ではなく、透明性の高い委員会構成のもとに議論をし、国民に示さなければ、その後、どんな議論も意味をなさなくなっていく。
国民の納得がいくようなリスクコミュニケーションをしたいと思うならば、原発に対して厳しい考えをもっている研究者も入れた委員会で議論をはじめるべきだ。

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2012年4月26日 (木)

鎌田實の一日一冊(135)

『NHK「100分でde名著」ブックス アラン 幸福論』(合田正人著、NHK出版、1050円)

NHKテレビで、フランスの哲学者アランの「幸福論」を取り上げた。
その最終回で、合田正人さんと「幸福は目標ではなく意思だ」ということを語り合った。
幸福は義務であり、誓うものということ、生活のなかで哲学することを語り合った。

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二十世紀フランスの哲学者アランの言葉が、解りやすくなる本だ。

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2012年4月25日 (水)

お知らせ

明日26日は、加藤登紀子さんの『命を結ぶ』刊行記念トーク&ライブの日。
紀伊国屋サザンシアターで、19時から開演。
19時30分からは、鎌田も駆けつけ、加藤登紀子さんの曲に合わせて、鎌田の詩「海よ大地よ」を朗読する。

ぜひ、聞きにきてください。

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/426-3c16.html

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原発事故416

4号機の上階にある使用済み核燃料が心配である。
昨年3月15日、4号機は建屋の屋根だけでなく、使用済み核燃料プールの下も吹き飛んでいる。
そのためアメリカは4号機のプールには、水がないのではないかと推測したが、奇跡的にプールの底は壊れないですんだようだ。

そもそも使用済み核燃料が、1~3号機にあることじたいが不自然で、危険である。
使用済み核燃料の再処理を行うために、このような不自然なことがおきている。
ほかの国と同じように核燃料を直接処分しても、再処理するよりはリスクか少なく、コスト安というのは明らかなのに、日本はこの計画をやめようとしない。
青森県六ヶ所村の再処理施設は、高レベル放射線廃液を固化するところでトラブルが頻発して、97年に完成するはずがいまだに完成していない。
建設費は当初の3倍の2.2兆円になった。
今年1月にも、トラブルが発生した。

政権が交代するということは、こういう状態を正し、検証し直すことに意味があるはずだが、旧政権の尻拭いをしているにすきぎない。
なんともやりきれない。

ただし、内閣府原子力委員会の小委員会の委員に、原子力資料情報室の共同代表を選んでいるというのは、以前に比べれば一歩前進である。
政府の委員会にも、原子力に反対の考えをもつ専門家を加え、熾烈な議論をすべきである。
そして、それをオープンにし、国民が考える判断材料にすべきだと思う。

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2012年4月24日 (火)

動画:NHK復興カレッジin福島 vol.6

2011年11月上旬、福島大学キャンパスにて行われた福島会議に連動して開催された「NHK復興カレッジ」。(8回にわけて掲載。今回は第6回)

1986年チェルノブイリ原子力発電所事故から約25年、その間に何が起き、どのような対策がとられたのか。

ホットスポットとなったベラルーシ共和国ゴメリ州ベトカ地区。現在も高汚染がつづく中、1万人が暮らしている。

鎌田實らの支援をうけながら、地域の病院で人々の健康を守ってきたナージャ院長の講演。

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鎌田實の一日一冊(134)

「かすてぃら~僕と親父の一番長い日」(さだまさし著、小学館、1575円)

オヤジさんのことを書いている「初の自伝的実名小説」。

ぼくはさだまさしさんのオヤジさんに、何度も実際にお会いしている。
おもしろい人だなというのはわかっていた。
けれど、これほどおもしろいとは思わなかった。
怪物である。

長崎にいる頃、若いお嬢さんが奥さんのところに遊びにくると必ずこんなことを言う。
「あんたたち暗いところを歩いたらいかんよ。
できるだけ明るいところを歩きなさい。
ちゃんとこういう顔ですと、自分の顔をはっきり見せて帰らないと、間違えて襲われるからね」
なんともひどいことを言うのである。
こんな憎まれ口を利いても、人気があった。

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このオヤジさんが亡くなるとき、柴田先生は懇々と泣き続けた。
ぼくも、宮崎で何度もお会いしたことがあるドクターである。
誠実で、生一本の人。
そして、さだまさしの名曲「風に立つライオン」のモデルである。
本当は、あの曲ほどカッコよくないのであるが、とにかくライオンだからすごい。
ぼくは、まさしさんの友人かと思っていたら、オヤジさん友人だったのだ。

まさしさんがバイオリンを始めたのは、オヤジさんの人生で3年ほど恵まれた時期だった。
材木問屋だったが、失敗。つらい状況が続く。
まさしさんも東京へ出て、お金持ちの息子たちとバイオリンの競争をしなければいけなかったのはつらかったはず。
それでも負けないのは、この怪物のオヤジさんの血を引いているからだろう。
まさしさんはお金がなくても食べさせてくれるところを上手く見つける。
それはぼくも一緒。
親友の保夫君のお父さんが死んだ時、保夫君のお母さんが「めそめそ泣いているんじゃない、笑いなさい、歌いなさい」と言った。
まさしさんの周囲には、こういうタイプが多い。
笑い、歌い、その後に涙があふれてくる。
貧乏のなか、たくさんの人に支えられて、さだまさしが生きてこられたのは、やっぱりこのオヤジさんのせいだと思っていたら、もう一人すごい人がいた。
オヤジさんのお母さん、つまり、まさしさんのおばあさんだ。
シベリアで薬を売っているうちに、砂金を集めて、料亭を経営する。
大変なお金持ちになるが、一銭も持たずに日本に戻ってきた。
それでもまったくめげなかった。
本当の怪物は、このおばあちゃんかもしれない。

このおばあちゃん、作家さだまさしの自伝的実名小説第二弾になりそうな予感。
映画にもなりそうだ。

注意深く読むと、怪物で困ったオヤジさんを、たくましく知的な奥さんがコントロールしているのにも気付く。
めちゃくちゃおもしろい、困難のなかを生き抜いた家族の物語である。

タイトルの「かすてぃら」は、要所要所に出てくる。
さだまさしが苦労した28億円の借金も、オヤジさんが原因だったことがわかった。
なんだ、そうだったのか。
すべて合点した。

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2012年4月23日 (月)

鎌田實の一日一冊(133)

「検証 福島原発事故・記者会見--東電・政府は何を隠したのか」(日隅一雄、木野龍逸著、岩波書店、1890円)

弁護士の日隅一雄さんとは6月にボランティアで福島県須賀川に講演に行く予定になっている。
その日隅さんの労作である。

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2011年6月10日の記者会見でのこと。
東電の作業員が678ミリシーベルトと643ミリシーベルトときわめて高い被曝をした。
特に内部被曝が大きかった。
全社では590ミリシーベルトが内部被曝というえらい事態になっている。
そのときに、ヨウ素剤が服用されたかどうかという質問に、東電側は3月13日に2錠服用しただけで、翌日からは飲んでいないと説明した。
マニュアルではヨウ素剤は14日間服用してもいいことになっている。
しかし、この答弁は間違っていることが後でわかった。
ヨウ素剤は中央制御室に配布されていなかったため、適切なタイミングで服用されていなかったのだ。

記者会見では、こんなお粗末なやり取りが繰り返されていた。

日隅さんは自分の病気をおして記者会見を聞き続けている。
できるだけ事実を明らかにしたいと、彼は命がけでやっているのだと思う。

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懐かしい名前

4/7付けの朝日新聞「失敗の本質」の記事中に、今井澄さんの名前が出てきた。

「年金は国家百年の計。対立をあおり、不信感をあおって制度崩壊に追いやるような愚は避けたい」
民主党参議院議員だった今井澄はこう述べている、と記事にはある。

120312__ 3月中旬の岩次郎小屋の雪景色

今井澄さんは左翼であったが、非常に民主的な議論の進め方を常に行っていた。
彼の希望でチェルノブイリに案内したこともある。
がんで死なず、国会議員をしていれば、厚生労働大臣をしているのではないかと思う。
今井澄さんなら、「1マイクロシーベルトでも被曝すれば危ない」とあおるようなこともせず、「100ミリシーベルトまでは安全」などとのんきなことも言わず、優れたリーダーシップでリアルな対応をしたと思う。
年金問題も、医療制度改革も、放射線から子どもたちの命を守ることも、もう少しまともにできたのではないか。

今井澄さんと鎌田が似ているところがあるとすれば、リスクコミュニケーションの視点があるという点だ。
リスクコミュニケーターは、専門家の言葉を国民にわかりやすく伝えながら、何が大切なのか、どのへんに落としどころがあるのか、などを伝える役割を認識している。

亡くなって久しい今井澄さんの名前が出てきて、忘れられていないと思い、うれしくなった。

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2012年4月22日 (日)

鎌田實の一日一冊(132)

「奇縁まんだら 終り」(瀬戸内寂聴著、画・横尾忠則、日本経済新聞出版社、2000円)

「鎌田實 いのちの対話」最終回では、瀬戸内寂聴さんと久しぶりに電話でお話をした。
お元気そうであった。

この本は、日経新聞で5年にわたり連載したもので、4冊目の最終回である。
ボーヴォワールや司馬遼太郎、寺山修司、大岡昇平が出てきたりする。
文学界や文化を支えてきた人たちとの交流が語られている。

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若い寂聴さんが新潮社同人雑誌賞を受賞したとき、大岡昇平が「こんなくだらない小説はない」と批判した。
そのことをうかつにも読まず、知らなかったことが幸いして、仲良くなってしまった。
大岡さんの晩年、小説「武蔵野夫人」で、寂聴さんは訊ねた。
「(主人公の)富子が不倫をした翌朝、さっさと起きて足袋を履きますね。あれは男とのセックスが期待はずれで満足していなかったんですね。女が満足していたらあんなに早く足袋を履きませんでしょう」
それに対して、大岡昇平はこう答えた。
「そこまで深く読んでくれたのは瀬戸内さんだけだよ。その通り」
それから間もなく、大岡昇平は亡くなった。

寂聴さんならではの瞬間的な出会いは、なんともあたたかかく、おもしろく、さすが瀬戸内寂聴とうならせる。
ぜひ、お読みください。

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2012年4月21日 (土)

ミドルマン

社会学者ポール・ラザースフェルドは、無数のメディア情報を受け取って要約し、わかりやすく説明したり、イメージ化できる人を「ミドルマン」と言っている。

昨年3月の原発事故の報道で、「だいじょうぶ」と言い続けていた人たちは言葉の力を失った。
ミドルマンやリスクコミュニケーターとしての基盤がなくなり、みんな自分の殻に閉じこもってしまった。
専門家が、国民の視点や福島県の人たちの立場に立って発言し続けるか、問われているように思う。
それは、「だいじょうぶ」と言い続けることでもないし、「1マイクロシーベルトでも危険だ」とあおることでもない。
起きてしまった現実のなかで、国民や福島県民がどうしたらその人らしく最後まで生き抜けるか。
絶対的な正解がないなかで、丸に近い三角を、勇気もって提言しつづけることがミドルマンの役割のように思う。

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原発事故のブログは、もう400回以上になった。
常にぼくは「ミドルマン」でありたいと思ってきた。
よきリスクコミュニケーターとして存在していこうと思っている。
国民や福島県の人の立場に立ちながら、体制を批判するだけでなく、体制を動かせるようなポジションにいたい。
あおったり、批判したりするだけならば、簡単で気持ちがいい。
どうしても譲れないことに関しては批判しながら、福島県の人たちが少しでも安心のなかで生活でき、小さい子どもをもつ親たちがわずかでも不安を軽減できるように、何をどうしたらいいか、できるだけ具体的に考え、具体的な行動を起していこうと思っている。

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2012年4月20日 (金)

鎌田實の一日一冊(131)

「低線量被曝のモラル」(河出書房新社、3360円)

東京大学の医学や哲学、宗教学、音楽家で情報学の学者、言語メディア論、教育学などの学者らが、低線量の被曝をどう理解したらいいか多面的に分析をしている。
きちんと相手を批判しながら、低線被曝の問題をわかりやすくしようとしているのはかえる。
しかし、徹底的に相手を論破しないで終わってしまっているところにこの本の弱さがある。

そもそも体制をつくり、体制を守ってきた東大の研究者6人が、低線量被曝のモラルについて語ろうとしているのが、人を集めるところからモラルの欠如があるように思えてならない。

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リスクコミュニケーションという言葉がよく使われる。
専門家が一般に人にわかりやすく納得いくように伝える技術は、世の中が進歩すればするほど必要になってくる。
医学や臓器移植、放射線の問題などはいい例だ。

ポール・ラザースフェルドという社会学者が「ミドルマン」というキーパーソンを提唱した。
無数のメディア情報を受け取って要約し、わかりやすく説明したり、イメージ化できる人を「ミドルマン」といっている。
体制側に立つのではなく、国民の立場に立ってリスクコミュニケーションしたりする専門的課題の仲介者にならなければいけない。
問題は、どこに立っているかというポジショニングの問題である。

一人の医師がこう述べている。
「100ミリシーベルト以上の被曝量になると、発がんのリスクが上がります。といっても、100ミリシーベルトを被曝してもがんの危険性は0.5%高くなるだけです。
そもそも日本は世界一のがん大国です。2人に1人はがんになります。
つまりもともとある50%の危険性が100ミリシーベルトの被曝によって、50.5%になるということです。たばこを吸う人のほうがよほど危険といえます」

この医師の言葉を、情報メディア論の専門家が認識論的すり替えがあると批判している。
時間軸上の視点の混同があり、比較に不適切なものの比較をしているという。
たばこの問題はたしかに危険だが、たばこを吸わない人たちにとってみれば、たばこを吸う人のほうが危険というすり替えにはまったく至らないのである。
難しい言葉で分析しているが、なぜ、もっとわかりやすく説明しないのかなと思う。

「0.5%高くなるだけ」というが、ぼく住む町は約5万人にたとえると、0.5%は250人。
その250人が突然、見えない放射能のためにがんになるとすれば、地域医療をしてきたぼくたちはそれを必死に食い止めるだろう。
そもそも「日本は世界一のがん大国」だから、小さな町で250人くらいがん患者が増えてしまっても大した問題ではないといってしまう科学者の存在が問題なのだ。
100ミリシーベルトを知らないで浴びてしまった人がぼくの外来に来たら、「200人のうち199人はがんにならない確率なので、心配しすぎるのはやめましょう。注意しながら見ていきましょう」と説明すると思う。
しかし、まだ100ミリシーベルトを浴びていない人がいるならば、極力放射能を浴びない努力を呼びかけるのは当然だ。

だが、リスクコミュニケーターやミドルマンの存在になる学者の言い方一つで、「100ミリシーベルト以下なら安全」というふうにとらえられ、体制に利用されてしまう。
そして、その結果、被害を受けるのは、国民なのだ。

この6人のなかで、専門的なことをわかりやすく伝えられ、国民にも信頼されるミドルマンになりえるのは2人だと思った。
高くて分厚い本だが、低線被曝のことをどう考えたらいいか、それぞれが自分の考えをまとめていくうえできっかけになる本だと思う。

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2012年4月19日 (木)

車椅子でのトーク&ライブ

スカイホール豊田での「鎌田實・さだまさし 命のメッセージトーク&ライブ」が無事終わった。
会場は6000人弱のお客さんが入り、熱気に包まれた。

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「困難な時代をどう生きるか」
足を折って、困難な状況になったカマタが車椅子にのって話をした。
まさしさんは28億円の借金を抱えて困難な状況になった。
生きるということはみんな困難を抱えている。
その困難をいかに生きるかというのが大事なのだ。
後半は、まさしさんと大笑い対談になった。

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その後、2時間近くのまさしさんのコンサート。
最後はアンコールで「風にたつライオン」。
会場は感動、感動、感動。

車椅子は、まさしさんとぼくの兄貴分の原田泰治さんが貸してくれた。
まさしさんは原田泰治美術館の館長をしているが、こういう車椅子が6台あるのだ。
座面のクッションがまるで違い、長時間座っていても疲れにくい。
操作もとても楽だ。
まだ車椅子に慣れていないぼくでも、舞台の上で自由に方向転換できた。
「障害者だって、軽くて、きれいな車椅子にのりたいもんだよ」と原田泰治さん。
なるほどなと思った。

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まさしさんもぼくも、原田泰治さんから書を教わった。
筆をプレゼントされて、2人は泰治さんの弟子になった。
家を建てるときも、人とのつきあい方も、大切なことは泰治さんに教えてもらった。
「カマちゃん、不自由な人の気持ちがわかるようになるよ」
アンちゃんの言葉はなかなか重い。

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2012年4月18日 (水)

鎌田流・健康レシピ④~不育症

妊娠をしても、2度以上流産や死産が続いた場合を、不育症という。
全妊娠の10~20%で流産が起きるといわれている。
妊娠の2回流産は4%、数万人の患者さんがいるといわれている。

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不育症とは知らずに一人で悩んでいる女性も多い。
問題点が三つある。
一つは不育症を知らないこと。
二つは専門医が少ないこと。
神奈川県で開業している杉先生と話したが、予約は5ヶ月待ちのようである。
三つめは経済的な負担が大きい。
しかし、ようやく保険が効くようになり、負担は3分の1ですむようになった。
日本全体では約20市町村で不育症に対する助成金を出している。
さらに24年度、国の新しい事業として不育症の相談員をおくとき、国が半額の補助をすることが決まりつつある。

不育症の原因は血液凝固異常、子宮の形態異常、甲状腺機能異常などいろいろあるが、いちばん多いのは偶発例である。
偶発例の場合には、母親に問題がなく、多くの場合は子どもの側に問題があることが多い。
この偶発例に関しては、不育症教室など心のカウンセリングにより、81%が妊娠継続ができ、出産に成功している。
不育症の人は専門医で治療を受けると、80%が出産に成功するといわれている。
まず、不育症というものがあることを知ってもらいたい。

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2012年4月17日 (火)

原発事故415

いろいろなところから、メッセージや緊急提言の呼びかけになってほしいと要請があるが、お断りしてきている。
しかし、「災害医療と原発事故危機管理体制への緊急提言」に関しては、呼びかけ人の一人になった。

厚生労働省の防災業務計画、防災医療に関する検討会の報告書(平成13年2月14日)を見るかぎり、D-mat(災害派遣医療チーム)は、救急医療を専門とする医師や看護師で構成されるだろうと思う。
しかし、今回の震災では、弱者の人たちが搬送時にたくさん亡なられている。
この経験を踏まえるならば、D-matのなかに1~2割は、在宅医療の経験がある医師や看護師、介護の専門家などを加え、救命のためのゴールデンタイムである48時間以降には、寝たきり老人やがん末期の患者、精神障害者らをきちんとサポートする、大きな防災体制を組むべきだと思う。

緊急提言の内容は以下のとおり

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『災害医療と原発事故危機管理体制への緊急提言』
2012年4月11日(水)19時半~20時 衆議院第一議員会館B1F第三会議室

「災害医療と原発事故危機管理体制へ緊急提言する医師の会」呼びかけ

福島原発事故により、日本の災害医療の課題が明らかになった。常時介護を必要とする災害弱者の死亡である。寝たきり、精神病や認知症などの患者たちの避難体制が確立していなかったため適切な搬送ができず、餓死者や凍死といった「防ぎえた死」を多く招いてしまった。
 非常時の連絡体制や指揮系統の不備は、事態の混乱に拍車をかけた。災害対応に失敗する原因のなかで最も多いのは情報伝達の不備である。具体的には情報の欠損、情報確認の不履行、協力体制の不在をさす。残念なことにこうした不備が改善された様子が見えない。
 もし今、日本のどこかの原発で福島と同じような事故が起こった場合、災害弱者たちは安全に避難できるだろうか?
 原発の半径30km以内のどこに何人の自力で動けない寝たきり老人、精神病患者や認知症患者、障害者がいるか、行政は把握しているだろうか?その方々を移送する手段は確保されているだろうか?
 例えば寝たきりの田中一郎さんを、近所に住む佐藤二郎さんと鈴木三郎さんが担架で佐藤さんのワゴン車にのせ50km先の○○公民館に連れて行くというような具体的な体制があらかじめ備えられているのだろうか?その指令は誰がどの時点で出すのだろうか?停電で携帯電話もつながらない状態でその情報が確実に伝わる手段は担保されているのだろうか?
 道路が寸断されている状況や渋滞対策も考えなければいけない。避難先には食料、水、火力、非常用の電源、毛布、トイレといった生活に必要な資材と十分な医薬品や医療インフラの確保も必要だ。福島原発事故での透析患者の大掛かりな輸送は記憶に新しい。
 こうした体制がとられて初めて「防ぎえた死」が回避される。現段階では、原発事故の風向きを考えた様々な想定下のシュミレーションをきちんと行うことが必要だ。福島のように
放射線の強さに関係ない同心円上の避難区域の設定は意味を成さない。災害規模と風向きにより事故対応パターン1、パターン2、パターン3、というように避難パターンを分けておくことも必要である。
 そう考えると今のままでは安全対策はまったく不十分である。現時点での原発再稼動は、国民を今以上の危険に晒す。原発再稼動にはストレステスト以上に災害医療の確保が必要である。残念ながら現在、日本の災害医療は大災害には有効に機能できない。災害医療を支える緊急医療すら崩壊が叫ばれて久しいからだ。災害医療の目的は「防ぎえた死の回避」である。現時点で「防ぎえた死を回避すること」ができない以上、原発事故のリスクを高める再稼動をしてはならない。

満岡聰(佐賀 満岡内科消化器科医院) / 鎌田實(長野 諏訪中央病院名誉院長)/色平哲郎(長野 佐久総合病院内科医)/ 阿部知子(元千葉徳洲会病院長・衆議院議員)/古川俊治(医学博士・弁護士・慶応大学教授・参議院議員)/鐘ヶ江寿美子(佐賀 ひらまつレディースクリニック在宅支援診療所)/坂口志朗(東京 柳原リハビリテーション病院/ 長尾和宏(兵庫 長尾クリニック)/ 中野一司(鹿児島 中野在宅医療クリニック院長)/二ノ坂保喜(福岡 にのさかクリニック)/太田俊介(大阪 太田医院)/外山博一(宮崎 外山内科神経内科医院)/矢津剛(福岡 矢津内科消化器科クリニック)/猪口寛(佐賀 いのくち医院)/宮田信之(茨城 宮田医院)/熊川みどり(福岡 福岡大学病院輸血部長)/豊田健二(徳島 豊田内科)/田島和周(熊本 田島医院)/野田芳隆(佐賀 野田内科)/藤戸好典(佐賀 藤戸医院)/山口宏和(佐賀 山口クリニック) /太田紀代子(佐賀 元佐賀中部保健所長)/太田善郎(佐賀 尊厳死協会さが会長)/佐賀宗彦(千葉 生活クラブ風の村 園生診療所長)/平井みどり(神戸大学医学部附属病院教授・薬剤部長)/城谷昌彦(兵庫 城谷医院)/ 大和浩(産業医科大学 産業生態科学研究所教授)/永井康徳(愛媛 医療法人ゆうの森理事長)/今村一郎(佐賀 今村病院理事長)/神津仁(東京 神津内科クリニック院長)以上30名
(2012年4月10日16:00 時点の呼びかけ人、到着順)

【 4項目の緊急提言 : 災害医療と原発事故危機管理体制のために】
避難地域の医療・介護・福祉インフラの中でしか生活できない災害弱者の「防ぎえた死を回避する」ため、地域のネットワーク計画策定の初期段階に、災害医療の専門家、医師が参加することが不可欠であり、具体的には以下の項目を含む。

1 原子力災害に対する地域防災計画において自治体主体の地域医療ネットワークを確立する。
 地方公共団体が国の指示を待たずに迅速に住民に対して適切な指示ができるように、医療施設、老健施設、障害者施設、精神病院と地方自治体の首長、消防、警察、自衛隊を横断する確実かつ迅速な情報伝達の仕組みを確保し、地域の医療・介護・福祉のネットワークを確立する。避難命令と避難区域の基準をあらかじめ決めておく。

 コミュニケーション系統を二重に確保する。
 停電や、携帯電話が不通な状況でもトランシーバーなどを使い、住民のすべてに情報伝達できる方法を確保する。また予想していた系統が不全の事態にも対応できるよう二次系統を用意しておく。誰が発信し、誰が受け伝えるかを明記した連絡網も用意しておく。

3 避難の経路と手段を確保する。
 自力で動けない寝たきり、障害者、病人、精神障害者の具体的な移動責任者と移動手段を確保しておく。自衛隊と消防と行政、警察の連携計画を立て訓練しておく。避難経路には渋滞対策をする。避難の優先順位をつける。避難には災害弱者と子ども若年女性を優先する。

 避難先の生活と医療インフラを確保する。
 食料、水、火力、毛布、トイレ、医薬品(救急医薬品だけでは足りない)、透析施設の確
保、医師、看護師、介護職を確保する(降圧剤、糖尿病薬、抗凝固薬等切らすと重大な影響がある薬も備蓄する)。

参考例:CSCATTT 
災害医療には「体系的な複数傷病者対応:CSCATTT : シーエスシーエーティティティ」と
呼ばれるシステムがある(現在は自ら希望したごく一部の医療関係者や消防関係者しか受講していない)。 このCSCA TTTシステムは、災害医療のガバナンス部分(CSCA)と医療分野(TTT)に分けられる。このシステムが地域で有機的に共有されネットワークとして活用されることで防ぎえた死の回避に有効となる。
C: Command & Control コマンド・アンド・コントロール
S: Safety セイフティ
  危険情報の収集と評価
  的確な危険(Hazard)の認知・予知
  体制の確保:関係機関との連携、
  防護のための適切な対策
   ゾーニング(区域分け、入り口、出口)
   個人防護服
C: Communication コミュニケーション
A: Assessment アセスメント
ここまでが「初動」続く以下は「医療」
T: Triage トリアージ:分類
T: Treatment  トリートメント:手当
T: Transport トランスポート:搬送
注)CSCATTTの緊急優先度順は、上から下に向かって下がる。

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2012年4月16日 (月)

感謝

001

美智子さんから絵手紙をいただきました。
「にぼしで早い快復を」

ご自身も障害をもつ美智子さん。
カルシウムで骨を少しでも強くし、快復してくださいという願いが伝わってきて、とてもうれしくなりました。

美智子さんとは、ドリームフェスティバルで一緒にハワイやグアムを旅しました。
ぼくもいま車椅子生活、障害をもつ人の気持ちが少しだけ理解できます。
あたたかい絵手紙で、元気になりそうです。

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原発事故414

2006年にインタビューを受けた。
それが「看護の挑戦 フロントランナーに聞く」という本になるらしい。
桐書房から出版されるそうだ。

インタビュー原稿を校正して驚いた。
今から6年ほど前に、ぼくは医療や看護の話をしながら、1400億兆円の国民の貯金を動かすには、医療や看護、介護を充実させることが大事と述べている。
国民がお金を貯めこんで使わないのは、病気になったときや老後に不安があるからだ。
だから、国民に安心を与えることができれば、国民は安心して貯金を使いだす。

では、国民に安心を与えるための医療や介護のお金をどうするか。
6年前のぼくは、2兆円あれば医療や介護の問題はかなり解決できると言っている。
2兆円というと大きな額のように思われるが、たとえば六ヶ所村の燃料再処理施設では当時19兆円使われていた。
核燃料サイクル事業は、あまりにお金がかかりすぎ、危険である。
ほかの先進国はすべて手を引いている。
それをやめる政治的判断をすればいいだけだとぼくは述べていた。

6年前、核燃料の再処理の問題と原発の問題を、もっと真剣に多くの国民が考えていれば、今回の福島第一原発の事故は起きなかったかしもしれない。
政治家が、鋭い感性で、大事なときに大事な決定をしていない。
これが日本の不幸のはじまりである。

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2012年4月15日 (日)

原発事故413

原発再稼動の安全基準を国が示した。
再稼動閣僚会合で示した基準もちんけな基準である。
発電所内の電源設備対策、冷却注水設備対策、格納容器破損対策、管理設備対策・・・基準はあまりにも漠然としている。

ぼくの領域で言わせてもらえれば、再稼動する前に原発事故危機管理医療体制をきちんと整えてほしい。
シビアアクシデントが起きたときの災害医療の管理体制も十分とはいえない。
今回の政府は、3キロ、10キロ、20キロの避難指示と、30キロの屋内退避というめまぐるしく変わる避難指示を出したが、高齢者や老人病院に入院していた人たち、精神・身体障害者への配慮はされていたのか。
災害関連死も起きている。
30キロ圏内に動けない人たちがいるにもかからず、医療用酸素も医薬品も医療スタッフも足りない状態になっていた。

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原発再稼動基準として、30キロ圏内に緊急災害医療体制がきちんと組まれているのか、たとえば30キロ圏内にいる寝たきり老人や精神・身体障害者などを圏外のどこに、どれだけ早く移動できるか、シミュレーションしていおく必要があると思う。

この考え方は、決して再稼動させないための口実にしようとしているのではない。
今回の大震災直後からD-matという緊急災害医療が活躍し、緊急医療や高度医療は充実していたが、それでも、がんの末期や高齢者、障害者に対する目配りは十分であったとは思えない。
そういう意味で、災害医療のシステムを考え直しておかなけりればいけないと思っている。
まして、原発事故の危機管理体制のなかでも、障害者や寝たきり老人、がんの末期患者、子どもなどをう守り抜くか、構想しておく必要がある。

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2012年4月14日 (土)

忘れない

福島の人たちからたくさんのあたたかなお見舞いの言葉をいただきました。
粉砕骨折でプレートとボルトが入り、ズキズキと痛むなかで、すぐにでも福島に飛んでいきたい気持ちです。
福島のことを思って、「忘れない」という詩を書きました。

                 ◇

年老いた漁師がつぶやいた
オレなあ、家も船も流された
家族を失った
海が憎い
でも誰か船を貸してくれたら、海に出る
海はおそろしいけど、命の源だ
2011年、3月の海は、忘れられない海になりました

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若いお父さんが津波で行方不明の小さな息子を
命がけで捜している
朝早くから夜遅くまで、1年が過ぎた
心の切りかえなんてできないよ
オレは、どうして、子どもを救えなかったのかと、
いつまでも、いつまでも思い続けるだろう
20113月の悲しみは、忘れられない悲しみになりました

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2011
3月、何度も、何度も雪が降りました
放射能を含んだ雪が、草や森や街を汚した
いつものようにみえる真白い雪に
ガイガーカウンターの音が不気味に響き続ける
美しい里山が悲鳴をあげているようだ
汚れてしまった悲しみに立ちつくす
20113月の福島の雪は、忘れられない雪になりました


1986チェルノブイリ
チェルノブイリの汚染地、
埋葬の村で老人から聞きました
天国はいらない、ふるさとが欲しい
ふるさとを壊してはいけない
ふるさとは大切
20113月、ふるさとを忘れないと心にきめました

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15
歳の女の子がぼくにきいてきた
私、大人になって結婚して
赤ちゃんを産むことができるでしょうか
見えない放射能におびえている
返事に困った。私たち大人の責任
必ず君のふるさとをきれいにするよ
20113月、忘れられない重い約束をしました

おなかがペコペコそうな子に
バナナをあげた。
避難所の少年は、
「ありがとう
みんなで分けていただきます」
みんな自分を失わなかった
20113月、忘れてはいけない大切なものがあることに気がつきました

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一人の人がいたら、声をかけよう
朝は必ず来ます。負けないで
あと3時間で太陽があがる
弱い人に手をかしてあげてください
あと1時間で日が昇ります
寒い、寒い。肩を寄せ合いましょう
2011年、3月、一緒にいることの大切さを忘れません


津波は
家や車や街や、命を奪っていった
それでも、翌日、太陽はあがった
東北の人はあったかい
よく来たな。一杯飲むか。泊まる所あるか
残酷な3月は絆の3月になりました

2011、つらいつらい3月を忘れません。忘れません

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2012年4月13日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(107)

「オレンジと太陽」

ジム・ローチ監督作品。ケン・ローチの息子である。

英国とオーストラリアを揺るがした実話である。
英国の13万人の子どもたちが、児童移民として、母と引き離された。
海をわたった子どもたちは成長したあとも心の傷が深い。
自分はどんな生まれだったか。
せめて母親に会いたいと、中年になっても心を悩ませる。

2

移民となった子どもたちは、虐待や性暴力、苛酷な児童労働を強いられる。
教会が子どもたちを引き取り、山のなかで石積みの労働をさせ、大きな教会をつくる。
宗教者がこんなことをするのかと思うようなことが行われている。

この事実を明らかにしたのは実在の人物。
ソーシャルワーカーとして英国で働いていた女性だ。
その役をエミリー・ワトソンが演じ、いい味を出している。

感動の映画である。
14日から岩波ホールでロードショー。

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廃止法案が白紙に

民主党は、後期高齢者医療制度廃止法案を今国会に提出するはずであったが、白紙にもどすという。
この問題は、大きな問題だ。
税をあげるための社会保障と税の一体改革に、後期高齢者医療制度廃止のこともうたっていたはずである。
社会保障と税の一体改革という美名のなかには、医療費の抑制など、国民に苦しみを与えるものがかなり含まれているのは問題である。

白紙にするのは、この制度は赤字が大きく、これを都道府県に運営させるようとする改革案が、都道府県知事から賛成を得られなかったためだ。
今の政治パワーでは、知事たちを納得させるのは難しいだろう。
弱体化した民主党ではやれないテーマになってしまったのかもしれない。

後期高齢者医療制度の問題については、ぼくも厚労省の委員になり、ずいぶん発言してきたので、これの廃止法案が白紙になってしまうのは残念であるが、突破力のない今の民主党では難しいだろうと思う。
残念だけれど、しかたない。

政治に力がなくては、よい改革を矢継ぎ早に実行することはできない。
民主主義の悪い面ばかりが出ているような気がする。
民主主義の苦しみの時代である。早く脱却したいものだ。

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2012年4月12日 (木)

好調スタート

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「日曜はがんばらない」(文化放送)が、好調にスタートした。
第1回放送は8日、茅野から車で、東京・浜松町の文化放送のスタジオに入り、生放送でお送りした。
番組パートナーは、もちろん村上信夫さん。

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骨折にもめげないカマタと、フリーになってもダジャレ全開の村上信夫さんが「変化」をキーワードに語りあった30分。

聞き逃した方は、こちらのHPから↓

http://www.joqr.co.jp/kamata/

15日午前10時からの2回目は、「利他」をテーマにお送りする。
ぜひ、お聞きください。
番組へのメッセージもお待ちしています。

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4/27「復興サポート」シンポ

NHK復興サポートシンポジウム「福島発 エネルギーシフト」が4月27日、福島市で開催され、参加者を募集している。
「復興サポート」は、昨年、鎌田が講演(「チェルノブイリからフクシマへ」)した「復興カレッジ」の名前を変えたもの。

今回は、新しいエネルギーについて考える。
福島県では、原発に代わって、風、太陽、地熱、水などの再生可能エネルギーによる新たな産業を育てようという動きが始まっている。福島沖に「海に浮かぶ風車」を並べる洋上風力発電や、沿岸の農地を活用したソーラー発電、土湯温泉の豊富な湯を利用した地熱発電など注目のプロジェクトが続々登場。漁業や農業とも連携した新しいビジネスモデルを生み出そうとしている。
”原発後”の未来をどう作っていくのか?
最新の事例を紹介しながら、第一線でとりくむ専門家や地域の人々と語り合う。

日時:4月27日(金)15:00~17:30 (開場14:30)
場所:JR福島駅ビル「エスパル」5階 ネクストホール 

パネリスト:飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所所長)
               石原孟さん(東大教授 福島沖洋上風力発電テクニカルアドバイザー)
               中村勉さん(建築家 南相馬市復興有識者会議委員、浪江町復興有識者会議員)他

ゲスト:照英さん(タレント)
司会: 柘植恵水アナウンサー

お申し込み:「復興サポート」HP 参加者募集ページ (締切 4/24

http://www.nhk.or.jp/ashita/support/college/201205_fukushima/

お問い合わせ:復興サポート事務局 fukkousupport@nhk-g.co.jp

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2012年4月11日 (水)

準備着々

南相馬の仮設商店街にできる絆診療所が、5月1日のオープンを目指して準備が始まった。
20キロ圏内の小高町の人たちによる熱い呼びかけで、会津若松のほうで診療活動をしていた遠藤先生を、南相馬に引き戻し、開設にこぎつけた。

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ぼくが南相馬に支援に入るきっかけになったのは遠藤先生だった。
鎌田は、絆診療所の「名誉診療所長」ということらしい。
笑ってしまったのだが、鎌田のイラストののぼり旗もできた。
ぼくが絆診療所に行って、放射線と健康の話をするときなどには、この旗が立つようだ。

4月30日には絆診療所のオープン祝いをするとのこと。
早く足を治し、できるだけ駆けつけたいと思っている。

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4/26「命を結ぶ」刊行記念トーク&ライブ

加藤登紀子さんの新しい本『命を結ぶ 加藤登紀子・対談』(中央法規出版)が出版された。
その刊行を記念し、4月26日、紀伊国屋サザンシアターでトーク&ライブを開催する。
テーマは、「フクシマとチェルノブイリから考える 原発 命 土 未来」
鎌田は、友情出演する。

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日時 4月26日(木)19時開演(18時30分開場)
会場 紀伊国屋サザンシアター(紀伊国屋書店新宿南店7階)
入場料 1000円(全席指定/税込)
予約・お問い合わせ 紀伊国屋サザンシアター(10時~18時30分)
          電話03-5361-3321

鎌田がプロデュースした加藤登紀子さんの新しいCDは、利益を福島の子どもを救う活動に充てる。
当日は、登紀子さんの歌はもちろん、場合によっては鎌田の詩の朗読もあるかもしれない。
サイン会もあるので、お楽しみに。
ぜひ、会場にお越しください。

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2012年4月10日 (火)

人生を変える一冊

著者インタビュー配信ラジオ(ポッドキャスト)「人生を変える一冊」で、鎌田のインタビューの第一回が先週土曜から配信されている。
インタビュアーは、早川洋平さん。

配信は、毎週土曜。
第2回 4/14(土)
第3回 4/21(土)
第4回 4/28(土)

「無料会員登録はこちら」という青いボタンをクリックし、必要事項を記入するとログインIDとパスワードが通知される。
会員専用ページで、これまでのインタビューが、すべて無料でダウンロードできる仕組みになっている。

ぜひ、聞いてください。

▼著者インタビュー配信サイト「人生を変える一冊」はこちら↓

http://kiqtas.jp/book/

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原発事故412

先月26日に2号機の原子炉格納容器内部に内視鏡を入れたところ、水位が60センチと想像以上に低いことがわかった。
毎時9トンの水を原子炉へ注入しているが、その水は格納容器の底に穴が開いて、地中に漏れ、さらに海に流れている可能性がある。
地中にもれている放射線量は測定できず、もちろん発表されていない。
しかし、かなりの放射能が地中を汚している可能性が高い。
当然、石棺で覆わなければならないと思うが、その前に、プールに入っている使用済み燃料棒を安全に取り出すだけで数年かかってしまう。
同時に、じゃじゃ漏れになっている水をせきとめるために、地中にダムをつくり、浄化しなければならない。
セシウムだけでなく、ストロンチウムなどのほかの核物質も浄化できるものも必要である。
やらなければならないことは山のようにある。

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2012年4月 9日 (月)

鎌田實の一日一冊(130)

「道化師が動いた! テントサーカスのはじまり、はじまり。」(大棟耕介著、安楽雅志イラスト、生産性出版、1470円)

世界大会で金メダルの道化師(クラウン)が、被災地で延べ1カ月テントサーカスを展開。
みんなに笑いを届けた。
もともとボランティア精神の旺盛の大棟くん。
毎年、チェルノブイリの汚染地域の小児病棟をまわって、子どもたちに笑いを届けてきた。
今年8月にも、テントを担いで東北に赴き、夏祭りのお手伝いをするという。

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クラウンって何をする人という問いに、彼は「場の空気を適温に変える仕事です」と答える。
いい言葉だなと思った。
なにも、無理やり元気付けて、ハイテンションにする必要はない。
元気づけようとか、希望をもってもらおうとか、がんばってもらおうとか、しすぎるのではなくて、寒いなと思ったら少しあたため、暑いなと思ったら少し涼しくする。
「適温に変える」
これは、ぼく自身が被災地に足を踏み入れるとき、自分自身に言い聞かたい言葉だ。

大棟耕介くんは、鎌田を慕ってくれている。
夏のテントサーカス、鎌田も応援したいと思う。

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原発事故411

今までの原発立地地域は小さな町村が多かった。
一つの町村に巨額なお金が投下され、お金で生き方を変えさせられたのである。
しかし、今回の事故で思い知らされたとおり、原発事故はひとたび起きれば、広範囲に被害をもたらす。
新しい原発防災計画のなかで、緊急防災措置区域を30キロ圏に拡大するのはいいことであるが、この30キロ圏に当たる県市町村すべてに、再稼動の了解が必要だと思う。
今までも、防災計画の強化をしようとすると、電気事業連合会や経済産業省原子力安全保安院が反対してきた。
原発の不安が広かるから、寝た子を起さないほうがいいというのが彼らの考え方である。

1202082__ 夜の東京タワー

もう、こういう考え方から脱しないといけない。
原発が置かれている町の隣の町や、その隣の町が、原発の稼動に本当に賛成してるか、やはり広い範囲の了解が必要だと思う。
そういう議論をしていくなかで、日本がどういう方向に進むべきかが見えてくる。
原発にできるだけ頼らずに、エネルギーをどう確保していくか。
まったなしで前を向いて検討していく必要があると思う。

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2012年4月 8日 (日)

感謝

「つながろう南相馬」の若者たちから、立派なお見舞いの花をいただきました。
ありがとうございます。

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「つながろう南相馬」は、みんながしゅんとしているときに、元気を出そうよと立ち上がった市民組織。
その第一回イベントには、さださましさんとともに駆けつけました。
その後も応援してきましたが、今度はこんなふうにお見舞いをいただくと、申し訳なく思います。
そして、もっともっと福島を応援したいという気持ちになりました。

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下諏訪のイクさんから、かわいい花束をいただきました。
つるしまファミリー、双葉食堂、横山夫妻、遠藤先生からも大きな胡蝶蘭をいただきました。
本当に感謝です。

福島の人たちが、まるで親戚のようになりました。
福島に行くと、「うちに泊まっていって」と声をかけてくれる人が多く、本当にありがたいと思っています。

先日、5月1日に南相馬の仮設商店街にオープンする絆診療所の看板を書きました。
いつまでも骨折で萎縮しているわけにはいきません。
自分にできること、頼まれていたことを一つひとつ、始めていきたいと思っています。

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原発事故410

原発の防災指針にSPEEDI(急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)は必要ないと内閣府の原子力安全委員会が話している。
100億円もかけて、「お遊び」をするのだろうか。
原子力安全委員会の斑目委員長は2月の国会の事故調でも、計算に一時間かかるSPEEDIがあったら、うまく避難できたというのは誤解だと言っている。
とんでもないことである。

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事故直後、正確な実測ができないという限界はあったが、わずかに測れたところの数値、風によって、ある程度の予測はできたはずである。
そして、SPEEDIのデータがもっと有効に活用されていれば、浪江村や飯舘村の人たちをもう少し早く、外に出してあげることはできたはずである。
結果論として、現在の汚染地図とぴったり合っていることことから、SPEEDIを無視する理由がよくわからない。

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2012年4月 7日 (土)

みんなでハワイに!

5月13~18日の「ドリームフェスティバルinハワイ」の参加者が100人近くになった。
鎌田も骨折した足を治して、必ず参加する予定だ。
思わしくない場合は、トラベルサポーターに車椅子を押してもらうことも考えている。
骨折というハプニングを体験して、障害をもつ人や歳をとった人たちの気持ちがわかるようになった。
生きているといろんなことが起こる。
どんなことが起きても、なんとかなる。
ケセラセラ! と生きていこうと思っている。

120402__ 手術後のカマタの足。元気にリハビリ中

本日7日の毎日新聞朝刊「さあ、これからだ」では、100歳でグアムを旅行した権四郎さんのことを書いている。
いくつになっても好奇心を輝かせ、旅を満喫した権四郎さん。
それから行きつけの喫茶店でコーヒーを飲んだり、ドライブしたり、権四郎さんなりの人生を楽しみ、人生を終えた。
もうすぐ102歳という長い人生も、旅だったのだと思う。
毎日新聞をお読みください。
そして、旅に行きたいなと思ったら、ぜひ、ご一考ください。
鎌田と一緒にハワイに行きましょう!

詳しくはこちら↓

http://www.club-t.com/theme/barrierfree/dream-festival.htm

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2012年4月 6日 (金)

仕事はじめ

カマタの骨折後の仕事はじめは、明後日の8日。
朝5時に車で茅野を出て、文化放送に向かう。
午前10時から「日曜はがんばらない」の第一回の放送があり、スタジオから生放送でお送りする。

ずっと「鎌田實いのちの対話」でコンビを組んできた村上信夫さんがフリーになっての初仕事でもある。
番組では、「変化」というキーワードで30分、楽しく、役に立つお話をする予定だ。

文化放送が聞ける関東圏の方はぜひ聞いてください。

番組HPはこちら↓

http://www.joqr.co.jp/kamata/

続きを読む "仕事はじめ"

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原発事故409

放射線教育の現場で混乱が起きているという。
放射線教育の副読本では、放射線が医療や工業、学術研究に役立っていることが強調されている。
それを強調するならば、同じくらいの強さで、今回の事故でどんなにたくさんの人たちが生活の被害を受けているかをきちんと記すべきである。
被害に対する賠償もおそらく2兆円を超えるだろう。
取り返しのつかない被害を出すことも、子どもたちにきちんと伝えないといけない。

なぜ、避難させたのか。
なぜ、移住しなければならないのか。
なぜ、除染が必要なのか。
なぜ、食品の測定をしなければいけないのか。
正直に子どもたちに教えなければいけない。
二度とこのような悲劇を起さないようするにはどうしたらいいか、子どもたち自身に考えさせるような教育が必要なんだと思う。

原発の是非に触れるな、などの指示はおかしいと思う。
原発推進派の思いはどこにあるのか。
原発反対派の思いは何か。そして、原発に代わるエネルギーはないのか、子どもたちが自分で調べて、自分の意見をもつような子どもに育てることが大事である。
教育の現場も、もう少し透明度を高めないといけないと思う。
事実を包み隠さず子どもたちに伝えたうえで、自分たちが大人になったとき、どういう日本にしたらいいか考えさせるようなきっかけになる教育をしてもらいたいものだ。

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がんばらない経済学③

~アラブの春と経済

リーマンショック以降、景気の建て直しのために金融緩和をしてきたお金が、世界でじゃぶじゃぶとあふれている。
その行き場のないお金が、金や穀物相場に移行して、そのためにコモディティと呼ばれるものの値段が上がっている。

Img_0197 色とりどりのモロッコのマーケット

一昨年、北アフリカに行ったとき、雨が少なく不作の小麦の値段が上がるといわれていたが、その翌年、やはり小麦の値段は上がり、貧しい人たちに食べ物が行きわたらなくなった。
その直後にアラブの春がおきている。
長期間の横暴な政権に対する民主化運動だけでなく、世界の経済と政治が密接に関係していることがこれをみてもわかる。
世の中がまっとうであるために、まっとうな経済が必要だ。

アラブの春から一年の4月6日、若者たちがカイロに集まる計画があり、ぼくは現地に飛んでその声を聞いてくる予定であったが、骨折のために行けなくなった。
残念である。

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2012年4月 5日 (木)

4/7ホスピタルコンサート

7日午後1時30分~、諏訪中央病院のラウンジで「森のひびきコンサート」が開かれる。
演奏は、アイリッシュハープの小川由美子さんと、横笛、カリンバ、ギターの福井幹さん。
京都を拠点として、全国、海外でもコンサート活動をしている。
どなたでも無料で参加できる。

夜は、レストラン「かえでの樹」で大人の方向けコンサートもある。
6時30分から。
「かえでの樹」は、原村でカナディアンファームを経営しているハセヤンの娘さん夫婦がやっている、居心地のいいレストラン。
こちらは2500円。
お問い合わせは、0266-73-7703(かえでの樹)

http://www.suwachuo.jp/temp_page/news/0407_concert.pdf

ぜひ、ご参加ください。

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鎌田劇場へようこそ!(106)

「アーティスト」

感動、感動、感動。
もしかしたら、アカデミー賞をとるかもしれないと思っていたら、本当に受賞した。

サイレント映画。
心をゆったり構えていないと、ハリウッドのスペクタクル映画に慣れている人にとっては隙間だらけで飽きてしまうかもしれないが、キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」や「カサブランカ」「「モロッコ」「雨に唄えば」などを思わせる映像が出てきたり、チャップリン、小津安二郎の音楽が流れたりする。

頭の老化が進んでいるぼくは、すぐには思い出せないが、あのシーンは見たことがあるな、この音楽はなんだっけと思いながら、往年の名女優グレタ・ガルポをイメージしていると思われるストーリーに酔わされていく。

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しゃべらないということがこんなに大事なのか。
言葉を超えている。
大好きな詩人・田村隆一の詩に「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」というのがあるが、言葉がなくても、こんなにたくさんのことを語れるのだとわかるステキな映画である。

「愛している」と言い続けないと、愛が冷めてしまうせせこましい現代に生きているぼくたちにとって、何が大切なのかわかるような映画である。
犬のアギーが名演技をしているのも笑ってしまう。
ふわっとしたあたたかな空気につつまれる。

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2012年4月 4日 (水)

クミコの再生ピアノコンサート

東日本大震災で被災したクミコさんのコンサートが4月25日、開催される。
「クミコ きっとツナガルプロジェクト~再生ピアノできっとツ・ナ・ガ・レ コンサート~」である。

再生ピアノとは、石巻の楽器屋さんが津波で流されたピアノを必死に修復、再生させたもの。
西田敏行さんや南こうせつさんらと一緒に、鎌田實もちょっと出演する。

日時 4月25日午後6時30分開演
場所 渋谷・bunkamuraオーチャードホール
全席指定6300円
問い合わせは、0570-00-3337

本日4日、「徹子の部屋」(テレビ朝日、午後1時20分~)にクミコさんが出演するそう。
こちらもぜひ、ご覧ください。

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がんばらない経済学②

~内需の拡大を

ぼくの経済への関心の根幹には、いつも若者の雇用をどう増やすかという問題が常にある。
失業者300万人。なかでも、若年者の失業率は高く、9%である。
ワーキングプアという、ふつうに働いているのに年収が200万以下の労働者が1100万人もいる。

資本主義が行き詰っている。
少しでも利益を上げようと、外国に出て行く会社もある。
国内の空洞化である。
すると、国内の労働者は収入が減るため、内需が低下していく。
外国で生産するほうが労働力も安く、円高の被害を減らすことができると、みんなが外国へ外国へと出ようとしている。
グローバル化という言葉にだまされているのではないかと危惧している。

1203216__

もともと日本の輸出の比率はGDP比で10~17%。韓国やドイツに比べて圧倒的に低い。
実は、日本は内需の国なのである。
みんながお金を使いながら、自分の生活をよくてしていく。そうすることで日本の景気をよくなり、また自分の生活が豊かになる。
その間に、たくさんの雇用が生まれる可能性がある。
いい会社は国内にとどまって、世界と闘いながら、内需を拡大していくことが大事だ。

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2012年4月 3日 (火)

がんばらない経済学①

~価格ではなく技術で競争

エルピーダメモリが2月に、会社更生法の適応を申請した。
負債総額は4480億円。
半導体のメーカーで、世界3位。DRAM製造でも世界3位。
しかし、パソコンに使うDRAMは価格競争が激しく、1つ60円くらいの納入価になり、にっちもさっちもいかなくなった。
それなりに優れたメーカーであったはずが、時代を読み違えてしまった。

120309__

宇都宮にあるマニーという会社の会長にお会いした。
手術用縫合針は、国内シェア90%、世界でも120カ国で使われ、欧州では手術針のロールスロイスと呼ばれている。
歯科用リーマといって、骨髄の化膿を防ぐために細いこよりのようなドリルで炎症性物質を外に抽出させる針などもつくっている。
つねに世界一を意識した開発を行っていると聞いた。
小さな会社であるが、計上利益率は35~40%近くととてつもない利益を出している。
製品は小さいものなので材料費はあまりかからない。
知恵と優れた技術が勝負の分かれ目である。

エルピーダメモリは価格競争のなかで競合する会社に打ち勝てなかったが、マニーはほかの会社に作れないものをじっくりと作り続けているという大きな違いがある。

日本にはおもしろくて、いい会社がいっぱいある。
優れた技術だけでなく、職員にあたたかい会社、地域に貢献している会社。
もちろん、長期間、増収増益している。
ぼくは今月末に出る経済の本「日本を幸せにするあたたかな会社」(集英社)の取材で、そんなおもしろくて、あたたかい会社を十数社見つめてきた。
鎌田の経済の本、お楽しみに。

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2012年4月 2日 (月)

動画:NHK復興カレッジin福島 vol.5

2011年11月上旬、福島大学キャンパスにて行われた福島会議に連動して開催された「NHK復興カレッジ」。(8回にわけて掲載。今回は第5回)

ホールボディカウンターについて。

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許せない不正受給

医療法人豊岡会が、愛知県や静岡県で診療報酬50億円を超える不正受給をしていたことがわかった。
基準に必要な看護婦がいない状態だったが、いることにして請求していたという。
国民皆保険制度を支えている医療制度は、国民の社会的共通財産である。
それを食い物にしてしまうのは許せない。
不正が見つかったから返せばいいというのでは甘い。
詐欺罪として立件し、罰するべきだと思う。
診療報酬請求はルールが難しいため、考え方によって請求の仕方が変わることがままある。
しかし、今回の事件はそういう類のミスとはまったく違う。悪辣である。

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原発事故408

福島の子どもたちは、6000人が県外に出ているという。
みんな不安のなかにいるのだ。

4月1日から新しい食品のセシウム規制値が実施される。
野菜や魚、肉が1キロ当たり100ベクレルとなる。
検査体制の充実を望むのはいうまでもないが、はじめのうちはチェックに漏れが出てくることも予想される。
いくつものチェックのすりぬけが重なると、食品そのものへの信頼を失うことになりかねない。
4月から完璧に実施するというのは難しいと思うが、一年以内には、規制値を超える食品は市場には絶対出さないという実践力を国民にみせることが、風評被害を減らし、国民の健康や命を守るうえでとても大事だと思う。
完璧な検査体制を期待しつつも、それを実現するまでには時間も必要だと思う。

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2012年4月 1日 (日)

4/8から新番組スタート

とんとん拍子に話が決まった。
NHKラジオ第一で9年間続いた「鎌田實 いのちの対話」が先月、総集編を放送し、最終回となった。たくさんの方から「やめないでほしい」「さびしい」という声をいただいた。

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急な話だが、文化放送で「日曜はがんばらない」という番組がスタートすることになった。
午前10時からの30分番組である。
どんな内容になるか、まったくわからないが、「いのちの対話」でずっとバッテリーを組んできた村上信夫さんと二人で、リスナーの皆さんの声を頼りしながら、命の話を語り続けていこうと思っている。

いちばん大事なところは、インターネットでも聞けるようにしようと話しているところだ。
スタートは8日。
お楽しみに。

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