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2012年6月

2012年6月30日 (土)

「アハメドくん」の旅⑪~ポリティカル

ジェリコの保健所を再訪した。
ドクターに施設内を案内してもらった後、絵本を読んでくれた人たちに感想をきくことができた。

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厳しい現実を生きていくために、ポリティカルな問題意識が高い。
感想はどうしてもポリティカルになる。
絵本を評価しつつも、ここは納得できないと、自分の意見を述べてくれた。

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その後、エルサレムで絵本を読んだ方にお会いした。
「むしろイスラエル側から批判が大きいのではないか」と言われた。
その箇所は、ラマーラでの討論会のときに指摘があった、銃をもっている兵士の影が悪魔のようにかかれているところだ。
日本語のぼくの文章には「人間の心には獣がいる」というくだりがある。
イスラエル兵が獣だとか、悪魔だとか、そんなことはいっさいかいていないし、翻訳のほうもよく読めば、そんなことはかかれていないが、イラストを表面的にみて、批判する人がいるのではないかと心配しているようだ。

Dsc_0297 写真はいずれもジェリコの保健所。医師、看護師、検査技師らから絵本の感想を聞いた

この人は「しばらく平和がやってくるのはむずかしいのではないか。第三次インティファーダのようなことがおきてしまう可能性がある」と話した。
かつてパレスチナの青年が2回、イスラエルに戦いを挑んだが、むしろ、イスラエル側にパレスチナを弾圧する口実をつくってしまった。
じわじわと真綿で首を絞められるように、パレスチナ人は自由をうばわれていく。
その現状を打開する方法がない、と語っていた。

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お知らせ

季刊誌「コトバ」夏号は、「新世代が撃つ! ニッポンを変える若手論客たち」と題し、若い論客たちがみずみずしい発想を展開している。
とても、おもしろい。

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この雑誌はぜいたくなつくり。
創刊からまる2年が過ぎようとしているが、創刊号からスタートしたぼくの連載「我々はどこから来て、どこへ行くのか」も2年続いているということだ。
今回は、「天国はいらない、故郷がほしい」というタイトルで、福島とチェルノブイリのことを書いた。
ぜひ、お読みください。

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「アハメドくん」の旅⑩~どこかでみたような

おもしろい看板を見つけた。

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よくみると、「&」が入っている。
「スターズ&バックス」
パレスチナには6店舗あるという。

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店内はちょっとアラビックな雰囲気だが、マグカップやタンブラーなどもそっくり。

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Img_6707Img_6709 Img_6710

ちょっと笑ってしまった。

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2012年6月29日 (金)

「アハメドくん」の旅⑨~アラブ料理

アラブ料理は、けっこう日本人の口に合う。

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ヒヨコ豆などをペーストにしたフンムスという食べ物は、パンにぬって食べる。

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奥にあるのは、緑の野菜を細かく切ったサラダ。

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レバーをザクロの実で煮たもの。

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メンチカツみたいなひき肉の料理。

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野菜を煮たものと、ごはん。スープがカレーのような雰囲気。

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「アハメドくん」の旅⑧~白熱討論会

メンタルヘルス研究の後、ラマーラでの夜は、大きな書店の会議室で開かれた「作家を囲む討論会」に出席した。
詩人や作家、ジャーナリスト、大学でメディア論を研究している人などが集まった。
パレスチナを旅行中、情報を聞いてやってきたという韓国の若者もいた。
合計約40人、次々に質問の手が上がり、まるで「白熱教室」と化した。

Dsc_0171本屋さんでの討論会。UNRWAエルサレムの総責任者のドクター、ウマイヤさんは人望があつく、この人が声をかけたことで多くの人が集まった

ヒューマニズムの本としてこの絵本は肯定できるが、占領されている事実の書き込みが足りないという意見があった。
「いのちの大切さ」を訴えた絵本であることはわかっているが、イスラエル側に政治的に利用されないようにしたいのだろうなと思える発言も目だった。

この絵本では最後にイスラエルの若者と、殺されたパレスチナ人の少年の父親が同じ船で旅をする。
これに対しても、「パレスチナ人はノーマライゼーション、みんな一緒という考え方に否定的である。まず、イスラエル人が占領をやめて、1948年にパレスチナの70万人の人々の家を奪ったことを自己批判しないといけない」というのである。
次第に政治集会みたいな趣きになっていく。

ぼくは、こう述べた。
「この本は平和をつくりだすための本なので、ぼくはパレスチナの人たちの大変さにシンパサイズしながら、イスラエルの人たちにも拒絶反応がおきないように、ニュートラルな立場で書いた」

Dsc_0173 討論会に集まった方々

しかし--。
絵本には、「人間の心のなかには獣がいる」という文章が出てくるが、このセンテンスのところの絵が、まるで「イスラエル兵のなかに獣がいる」というようにかかれている。
もちろん、日本語のほうには「イスラエル兵」などという言葉は一回も書いていないのであるが、イスラエル側からかなり強い批判が出るのではないかという人も出てきた。

「戦いが続く地で本を出すのはむずかしいですね」
思わず、ぼくが後ろ向きな発言をすると、今度は会場から「ネバー・ギブ・アップ」「絵本を出してほしい」と声をかけられた。

Dsc_0194 ジャーナリストから取材を受けるなぜパレスチナことを知ったのか、パレスチナことは日本できちんと報道されているか、質問された

学校の先生をしている人はこんな意見をいってくれた。
「あまり書き換えたりする必要はない。この本は十分に貴重な存在である。このまま本を出すべきである」
そして、「私は子どもたちにこの本を授業のなかで読ませてみたいと思う。命がどんなに大切か、平和に向かうためにどうしたらいいのか、日本人の一作家の考え方をパレスチナの子どもたちに学ばせてみたい」と話した。

みんな平和に向けて手詰まりなのである。
白熱したディスカッションが終わると、何人もの人がサインをしてほしいと行列をつくった。
こんなに真剣に、本を隅々まで読み、いろいろな意見を言ってくれる読者がいるというのは、実にうれしいことである。

Dsc_0213 詩人という女性に、サインをしているカマタ

ラマーラでの討論会は夜遅くまで行われ、エルサレムのホテルに戻ったときには足はパンパンに腫れていた。
ちょっと時間があると、あちこち動き回るぼくだが、今回は世界遺産も見物していない。

明日は、ジェリコの保健所を再訪。
医療関係者が、絵本の感想を話してくれるという。
その後、ベツレヘムで一般の市民が40人以上集まってくれるというので、絵本について語り合ってこようと思う。

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2012年6月28日 (木)

「アハメドくん」の旅⑦~メンタルヘルス研究会で

UNRWA主催の、パレスチナの子どもと女性のメンタルヘルスの研究会があり、会場を訪ねた。
専門家が研究発表をしたり、シンポジウムを行っていた。
子どもや女性が男性の暴力の被害に遭う背景には、生活苦や失業などがあるという。
傷ついた子どもや女性をどう支えていくか、親を殺された子どもをどう支えるか、行政や医療のシステム、ケアの技術ついて討論されていた。

Dsc_0129 メンタルヘルス研究会の会場

Dsc_0152 突然、指名されメッセージを述べる鎌田

突然、ぼくが指名され、メッセージを述べることになった。
すると、エジプト系ヨルダン人のマハ・エル・シエクさんという女性が興奮ぎみにぼくのところへやってきた。
ぼくの絵本を読んで感激したという。
「この絵本を世界に広げたほうがいい」
アメリカで勉強し、パレスチナを応援したくて精神保健の活動をしているという。

Dsc_0124 マハ・エル・シエクさんと。絵本には「夢」とサインした

アラビア語に翻訳してくれたドクターで作家のアブダラ・シャラーラ先生ともお会いすることができた。
「パレスチナ人はいろいろなことを言う習慣があるから、本の何箇所かについて批判的に言うだろうが、大方のパレスチナ人はこの本の存在を肯定するだろう」

Dsc_0115 アブダラ・シャラーラ先生と

ユニセフからこの研究会に参加していた女性も絵本がほしいといってやってきた。
「本来、ユニセフがこういう活動に興味をもっている」
絵本を読んでから連絡をしてくれるという。

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お知らせ

今発売中の週刊朝日で、「フクシマ母子の真実」と題して、南相馬市立総合病院の坪倉先生と鎌田が対談をしている。
また、南相馬市立総合病院と、ひらた中央病院がもつ財団・震災復興支援放射能安全研究所の両方あわせて3万例の体内被曝の調査結果をオープンにした。

この研究所は今月、公益財団の認可が下りた。
福島の子どもたちの体内被曝の無料検査が評価されたようだ。
ぼくはこの財団の名誉理事長になると同時に、月に1回、坪倉先生がセシウムの検出された子の母さんに、事後指導をお願いするようになった。
しっかりと検査をし、なおかつ、不安に陥らないように生活の注意点や、注意すれば改善することを丁寧に説明することが大事なことである。
ちなみに、体内被曝の検査は南相馬市立総合病院は南相馬の人が中心だが、ひらた中央病院のほうは福島県のみならず希望があれば順番に受けられる。

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坪倉先生はまだ30代前半と若い医師だが、体内被曝の測定をした後の説明がとても丁寧である。
今まで福島県がやっている甲状腺健診などは、「のう胞があるが異常なし」などと簡単な説明をするだけだ。
これだけでは一般の人にはわかりにくいし、「のう胞がある」というだけで心配になる。
コールセンターに質問しても、紋切り型の説明しかないという。
これでは、せっかく検査を受けても、かえって不安をあおってしまうのである。
そこへいくと、坪倉先生の仕事はリスクコミュニケーターとしても、医師としても、評価すべきだ。

坪倉先生は6/14に開かれた、環境省の原子力被災者等の健康についてのコミュニケーションにかかる有識者懇談会のメンバーにもなった。
福島の一般市民・当事者や、原子力に対して厳しい考えをもっている専門家も選ばれているようだ。
会議はオープンにされ、動画でも見れるようになっている。
とてもいいことだ。
こういう会議で議論して決めたことならば、国民も納得しやすいのではないか。

週刊朝日、ぜひ、お読みください。

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「アハメドくん」の旅⑥~ジェリコの保健所へ

UNRWAには138の保健所があるが、その一つ、ジェリコの保健所に絵本をプレゼントしてきた。

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Dsc_0064 UNRWAジェリコ保健所を訪問

この保健所では、医師一人で一日約80人を診察するという。
小児科や産科、高血圧などの慢性疾患も診ている。
訪問診療も行っている。
病院や難民キャンプの公民館のようなところで講演会も行っているという。
なんとなく取り組みが諏訪中央病院に似ている。
後日、プレゼントした絵本の感想を聞きかせてもらいに、この診療所を訪ねることになった。

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Dsc_0078 UNRWAジェリコ保健所のDr.アハメドさんに絵本を渡す

このジェリコのまちには、日本の寄付で病院が建てられていた。
大都市から離れているため、専門能力が高い医師は敬遠してやってこない。
病院の評価はいまは下がっているという。
日本のODAで、病院を立てて立派な機器を入れても、それを活用する人材が乏しく、機器や機能が十分に働いていないことが多い。
ジェリコのドクターは、言いにくそうに説明してくれた。

この旅では、「アハメドくんのいのちのリレー」をパレスチナ人にも、イスラエル人にも配っている。
彼らとこの絵本の感想を語り合うことで、平和への糸口をみつけたい。

Dsc_0155 遠藤由美さんにつくってもらったアハメドくんのイラストをパッチワークしたトートバッグ。これに絵本を入れて、配っている

すでにエルサレムの町の小さなしゃれた本屋さんに置いてもらい、本屋さんや本の好きな人に読んでもらい、意見を聞かせてもらうことになっている。

ラマーラという都市で、20人ほどとディスカッションする機会も得た。
パレスチナ人たちのおさまらない怒りをゆっくりと聞く必要があると思う。

キリスト生誕の地とされているベツレヘムでも絵本を配り、話し合いをする。
イスラエルのハイファやテルアビブに行き、イスラエル側の人たちにも絵本を配る予定である。

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2012年6月27日 (水)

「アハメドくん」の旅⑤~悲しい応酬

ガザ地区に入っている日本人スタッフによると、ガザの攻撃はだいぶ下火になってきたという。
イスラエル空軍の爆撃機により、5人死亡。
その後、パレスチナから150発のロケット弾がイスラエルに向けて発射された。
なかにはパレスチナの地域内で爆発してしまったものもあるとか。
完全に把握された数字ではないが、今回、パレスチナ人13人が命を奪われ、イスラエル人1人がけがをしたようだ。
本来は25日にガザに入る予定だったが、まだ危険ということで予定を延期した。
28日、偶然にもぼくの誕生日だが、この日にガザに入る予定だ。

Dsc_0098 アメリカンコロニーホテルの本屋さんに絵本をプレゼント

ガザ地区は、毎週のようにロケット弾が1、2発は飛ぶというが、ほとんどはイスラエル側の畑に着弾することが多く、最近は被害はほとんどなかった。
イスラエル側も一歩もひかず、パレスチナ側の人のいない広場などに銃弾を落とす。
まさに、やられたらやりかえす、のくりかえし。
ふだんは、本気で殺しあわない程度に攻撃しあっているが、今回のように、ちょっとした理由で突然、本気の殺し合いに発展してしまうこともある。

Dsc_0103 アメリカンコロニーホテルに宿泊する子ども用の本棚に並べてもらった

Img_6689 アメリカンコロニーホテル

9000キロ離れた日本人からみると、なんとも悲しく、やりきれない、やりあいが続いている。
このやりあいに終止符をうつために、「アハメドくんのいのちのリレー」が役に立って欲しいと思う。
絵本を読んだ人の半分でも、もう戦争はやめたいと思う人が増えてくれることを願うばかりである。

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「アハメドくん」の旅④~厚い壁

絵本「アハメドくんのいのちのリレー」を読んでくれた方からは、感動したという感想をよく聞く。
しかし、イスラエルとパレスチナにとって、感動以上に複雑な問題がある。

Dsc_0024 アラビア語、ヘブライ語、英語の3カ国語に翻訳された「アハメドくんのいのちのリレー」

イスラエル人にしてみれば、パレスチナ人が住む地域へとじわじわ広がる「分離壁」などに関しての記述は、おもしろくないだろう。
一方、ホロコーストで600~800万人のユダヤ人が殺されたということを認めたくないパレスチナ人もいる。
ある公衆衛生学のパレスチナ人の教授は、ホロコーストがあったことは認めるが、「憎しみは簡単には横におけない。憎しみつづけることが生きる証である」と言った。

憎しみの重さに愕然とした。

62年間続いてきた闘いが、簡単に終わるとは思えない。
しかし、それでも、平和に向けた一歩を踏み出すきっかけをつくりたい。

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「アハメドくん」の旅③~生活をみる医療

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早朝、東エルサレルのオリーブ山からの光景だ。

今回の旅でいちぱんエネルギッシュに協力してくれている清田先生は、WHOのスタッフで、UNRWAに出向している。
彼のもとには、500人のドクター(ほとんどがパレスチナ人)と、3000人のスタッフがいて、医療、保健の部門を統括している。
ヨルダンやシリアにいるパレスチナ難民のケアを行い、パレスチナ自治区にいるパレスチナ難民の保健活動も行っている。
保健所が138箇所あり、500人のドクターが高血圧や糖尿病、母子保健など、生活指導、検査や治療を行っているという。

Img_6682 清田先生と

清田先生は、彼らに家庭医のトレーニングを習得させ、「生活をみる医療」を展開したいと夢を語った。
諏訪中央病院で行っている医療がまさにそれである。
ある時期には「地域医療」と言い、現在は「総合医療」と言っているが、同じ方向性を清田先生ももっていることがわかり、徐々にUNRWAの目指しているものもわかってきた。

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2012年6月26日 (火)

「アハメドくん」の旅②~3つの言語

夜はエルサレムで夕食会。
大使館の関係者やJVC(日本ボランティアセンター)のスタッフ2人、UNRWAエルサレムのスタッフたちが集まった。

Dsc_0038 会食のもよう

ピースボートスタッフのラミーさんとも久しぶりに再会した。
ラミーはこのエルサレムに住んでいて、今回、絵本を配る際のコーディネートをしてくれている。

「アハメドくんのいのちのリレー」は当初、英語、ヘブライ語、アラビア語の3つ言語であらわした1冊の本にしようと思っていたが、別々にしたほうがいいというラミーの提案で、英語、ヘブライ語、アラビア語の三つのバージョンの絵本にすることになった。
絵本の出来はとてもよかった。

Img_6675 レストランからの夜景

ヘブライ語に翻訳してくれたのは、ロシア系ユダヤ人のエレナさんだ。
エレナさんは、この絵本に感動してくれ、深く読んでくれたようだ。
ロシア語とヘブライ語、アラビア語、日本語が話せる。

Dsc_0034 エレナさんにサイン本をプレゼント

ぼくの一冊目の絵本「雪とパイナップル」(集英社)もロシア語にしようと、食事しながら盛り上がった。

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「アハメドくん」の旅①~新しい予感?

成田から10時間かけてドバイへ。
ドバイの空港で5時間待って、さらに4時間飛行機に乗り、アンマンに着いた。

さっそく、アンマンのUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の事務所を訪ね、国際医療部長の清田(せいた)さんと、ナンバー2のパレスチナ人のドクター、栄養士さんとディスカッションした。

Img_6666_2 UNRWAのみなさんと

パレスチナ人のドクターは、「アハメドくんのいのちのリレー」のアラビア語訳を読んで、心が揺さぶられたと話してくれた。
「もしかしたら、パレスチナに和平をもたらす大きな力になるかもしれない」

ドクターのお兄さんは、イスラエルに銃撃され、下肢のマヒをおこした。
そのうえ、イスラエル警察につかまり、15年間捕らえられた。
それでもお兄さんは、イスラエルにもいろいろな人がいて、多くのイスラエルの人とは共感できると語っているという。
ぼくの絵本と共通するところがあるというのである。

お姉さんは24歳のときに、三人の子どもを抱え、夫を殺された。
その後、ずっと困難のなかで生活しているが、それでもイスラエルのことを全否定していないという。
そういう経験をしているので、「アハメドくんのいのちのリレー」に共感できたそうだ。

ユダヤ人は第二次世界大戦のときに600万人殺されたといわれている。
それに対して、パレスチナ人は30万人殺され、非常に長い間、難民となり、難民の数は500万人を数える。
栄養士さんは、「自分たちパレスチナ人はイスラエル以上の苦しみを長期間与えつづけられているが、このまま憎しみ合っていていいとは思わない」という。
この絵本が何か新しい状況を切りひらくのを期待していると話してくれた。

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2012年6月25日 (月)

「福島子どもプロジェクト2012・夏」第二弾

国際交流NGOピースボートが、今年も「福島子どもプロジェクト」を実施する。

昨年はたくさんの方に応援していただき、南相馬市の中学生約50人が、ピースボー トの船旅を通じてアジア各国での国際交流を体験した。
参加した中学生は自分たちだけでなく、ほかの子どもたちにもチャンスを、ということで募金活動をした。
また、元気に帰国した子どもたちを迎え、家族も元気になったという。

Img_1515 岩次郎小屋のニセアカシア

今年は、言語の壁を越えて音楽で交流しようと、福島と南米ベネズエラの高校生や若者らが一緒に船旅をする。
米国ロサンゼルスにも支部を持つベネズエラの青少年オーケストラ「エル・システマ」は、貧困や犯罪から子どもたちを救う取り組みもあり、創設者が今年のノーベル平和賞にもノミネートされるほど、国際的に注目を集めている楽団。
1999年に、3万人とも言われる犠牲を払った中南米 最大の大洪水を生き抜いてきた地域の子たちが参加予定だ。

ぼくは、子どもの健康を守るには「健診」「放射能の見える化」「保養」が大事といってきた。
万が一、被曝していたとしても、2~3週間その地を離れることは科学的に意味がある。

この旅は、保養だけでなく、高校生たちが音楽を通じて世界とつながり、未来への具体的なヒントを持ち帰れるようなプログラム内容を計画している。
プロジェクトの概要はこちら↓

http://www.peaceboat.org/info/news/2012/120613.shtml

募金にご協力ください

実施に当たり、一人ひとりの寄付・ 賛同金がプロジェクト資金となります。
ぜひ、たくさんの方に、ご協力をお願いいたします。

郵便振替口座:00180-3-177458
加入者名:ピースボート
 ※通信欄に「フクシマ」と記入してください。

ゆうちょ銀行:〇一九店 当座0177458
名義:ピースボート
 ※振込依頼人名の前に「フクシマ」と追記してください。

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2012年6月24日 (日)

東エルサレムへ

成田を発ち、ドバイ、ヨルダンのアンマンを経て、本日中には東エルサレムに入る。

明日は、ガザ地区に入る予定。
すでに許可は下りているが、状況がよくない。
イスラエル軍がガザの中部と北部をミサイル攻撃し、武力勢力2人が死亡、4人が負傷したと報じられている。
子ども1人が死亡し、20人が負傷したという情報もある。
ガザに入れない可能性もでてきた。

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2012年6月23日 (土)

本日、出発

イスラエル・パレスチナへの旅の準備は着々と進み、ガザ地区に入る許可も取れた。
状況は悪化しているようで、イスラエル側はガザ入りを規制しているようだ。
ぼくの訪問を受け入れてくれるパレスチナ地域やイスラエル地域の準備も進んでいる。

「アハメドくんのいのちのリレー」(集英社)を作ったとき、自分のお金をいくら使ってでもイスラエルとパレスチナのお母さんと子どもに読んでもらおうと、夢のようなことを思っていた。
UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の方々の支援で、その夢がかなおうとしている。
とてもうれしいことだが、まだ、ぼく個人の夢でしかない。
しかし、この絵本をきっかけに、平和へと前進すれば、世界が待っていた奇跡になる。
何代にもわたるアメリカ大統領や力をもった人たちが、この地域に奇跡をもたらそうとしてきたが、うまくいかなかった。

一冊の絵本のもつ力は微力だが、もしかしたら、お母さんや子どもたちに長く読み継がれていくことで、何かが変わるかもしれない。
絵本を読んだ子どもが大人になり、「もう戦争はしたくない」と言いはじめる可能性だってある。
すぐには答えは出ないが、10年くらい経ったとき、あのときの絵本が平和へと流れを変える一石になったといわれるようになれば、こんなにうれしいことはない。

そんな大きな夢を抱えながら、イスラエル・パレスチナへ行ってくる。

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プロフェッショナル

京都府大の吉川敏一学長と共著で「生きる力を磨く66の処方箋」(PHP研究所)を出している。
京都で50人ほどの集まりがあるので、この本のPRするために京都を訪ねた。
しかし、折り悪く、台風。
50人の集まりはなくなってしまった。

一澤帆布の一澤さんが、南座で玉三郎さんの歌舞伎を見ませんかと誘ってくれた。
ぼくは芝居は好きだが、歌舞伎は詳しくない。
好奇心のカタマリのぼくは、二つ返事で南座へ。

玉三郎さんの芝居と踊りはすばらしかった。
小児麻痺にかかったため、足の長さの差が4センチほどあるらしい。
足運びをスムーズにするため、小さいときから踊りを習った。
踊りの素質が認められ、歌舞伎界に迎えられたという。
人生というのは不思議なものである。
妖艶な踊りと、命をかけているような芝居は、心に迫るものがあった。

Img_6659 紗貴子さんと

祇園のいちりきにも、連れていってもらった。
好奇心のカマタは、芸子さんや舞妓さんに囲まれて、その場の空気をつくるプロの技に感心して帰ってきた。
紗貴子さんという名の芸子さんは、やわらかな空気をもった人だった。

どの世界にもプロフェッショナルはいる。
2人のプロフェッショナルのすごさを実感した京都だった。

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2012年6月22日 (金)

おすすめ映画

以前、このブログでおすすめした「キリマンジャロの雪」が大ヒットしている。
まだ見ていない方は、ぜひ、どうぞ。

6/30からは、やはり以前紹介した「プレイ--獲物」がロードショーされる。
パンフレットにはカマタの言葉が載っている。

「とび抜けている。こんなおもしろいサスペンス・アクションは久しぶり。ハラハラ、ワクワク、ドキドキ。これぞ映画」

Play1_2

Play2

フランスのサスペンス映画らしい映画だ。
最後がいい。

こちらもおすすめの一本。
ぜひ、どうぞ。

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2012年6月21日 (木)

好評「ふくしま・うた語り」

CD『ふくしま・うた語り』(がんばらないレーベル)の発売がはじまったが、おかげさまで売れ行きは好調だ。

すでに買い求め、「一日何回も聞いています」と声をかけてくれる人が何人もいる。
なんだか、とってもほっとする。

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南相馬の横山さんには何度も注文をいただき、100枚を突破した。
方々で売りあるいてくれているようだ。
横山さん夫妻は、双葉食堂の再建に尽力したり、南相馬の仮設住宅に絆診療所をつくる会のリーダーになったりしている。
ご夫妻は自宅を流された。
そのうえ、自宅は20キロ圏内にあり、自由に戻ることもできない。
悲しい体験を抱えながらも、ほかの人たちのために力を尽くすご夫妻の姿をみていると、心が洗われる思いがする。頭が下がる。

「ふくしま・うた語り」の利益はすべて福島の子どもたちを支えるために使われる。
ツイッター、ブログ、口コミで、このCDのことを広めていただけるとうれしい。
ぜひ、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ、ご購入はこちら↓

http://jcf.ne.jp/home.html

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原発事故447

見えない放射能を「見える化」することが大事である。
福島県でもっとも先進的に「見える化」に取り組んできた南相馬でも、内部被曝のデータがではじめたのは昨年9月からだ。
ひらた中央病院の経営母体がもつ財団「震災復興支援放射能安全研究所」では10月から。

セシウムの検出率は、当初、南相馬では大人68%、子どもは57.3%だったが、今年3月には大人は9.9%、子ども5.8%と極端に下がっている。
放射能の「見える化」の成果だと思う。

Img_1566 岩次郎小屋の庭

体の影響は内部被曝+外部被曝の両方を考えていかなければならない。
外部被曝については、JCFが昨年5月からいちはやく、先頭を切って調査をはじめた。
福島県の子どもや妊婦50人の希望者にガラスバッジをもってもらい、生活指導をしながら、被曝量の低減化をはかってきた。
20キロ圏内に置いていた車を取りに行き、その車に乗るようになってから急に外部被曝量が高くなった妊婦さんがいた。
ガラスバッチをつけていたからこそ、車から被曝していたことに気づくことができ、以後、改善している。
庭や屋根の除染をして、被曝量が下がった人、コンクリートの家に引っ越してから被曝量が減った人もいた。
コントロールのために同じガラスバッジを松本でつけていた人は年間で1ミリシーベルト、福島の50人の年間平均は2ミリシーベルトであった。
もっとも高い人は飯舘村に仕事にでていた人で、年間4.7ミリシーベルトだった。

内部被曝と外部被曝の被曝量をどうしたら減らせるか、今後も丁寧にみていこうと思っている。

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2012年6月20日 (水)

毎日小学生新聞で紹介されました

がんばらないレーベル第4弾「ふくしま・うた語り」

歌:加藤登紀子
語り:鎌田實
(2012/5/31売)
価格¥1,500(税込)

2012年6月12日火曜日、毎日小学生新聞で、
「福島原発の被害に苦しむ子どもたちを元気にしようと、医師で作家の鎌田實さんと、シンガー・ソングライターの加藤登紀子さんらによる支援CD「ふくしま・うた語り」が完成しました」
と紹介されました。

Syogakuseishinbun

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原発事故446

ひらた中央病院の経営母体がもつ財団「震災復興支援放射能安全研究所」のデータをみると、体内被曝をしている人たちは減っている。

ただし、数は少ないが、体内被曝をしている人の生活習慣をみると、汚染された可能性のあるものを常用している可能性が高い。
たとえば、山でとったイノシシの肉をよく食べている、山菜をよく食べている、などは要注意だ。
売れなくなったリンゴを毎日食べ続けたリンゴ農家の人もいた。

Img_1557 岩次郎小屋の庭

毎日、同じものをくりかえし食べないかぎり、300ベクレル/ボディの最低検出限界を超えることはまずない。
食べ方としては、1回や2回、食べたことを気にしすぎることはないが、常用しないことが大事である。

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2012年6月19日 (火)

着うた配信中!

がんばらないレーベル第4弾
「ふくしま・うた語り」

歌:加藤登紀子
語り:鎌田實
(2012/5/31売)
価格¥1,500(税込)

着うた・着うたフル、iTunesで配信中です!

http://p.music.jp/j-search/web/ArtistKoBetu.aspx?at=99937 Tlc

http://itunes.apple.com/jp/album/fukushima-uta-yuri-ep/id530095722 Itunes_2

※CDの売り上げの利益はすべて福島の子どものために使われます。

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原発事故445

大飯原発の再稼動について、納得できないことがいくつかある。

1、副大臣と現地に置くというが、専門家でもない副大臣を現地に常駐させることは意味があるのだろうか。
むしろ、専門家集団はかえってやりづらくなるのではないか。

2、大飯原発の直下には、断層がある可能性があると指摘している地震学者もいる。

3、オフサイトセンターを含めて免震棟がない。

4、原発にまつわる卑怯なシステムが改められていない。
原子力委員会では、推進派だけを集めて打ち合わせ会議をおこなったり、原子力委員会の事務局スタッフが関連企業から出向されていたり、原子力委員会の3人が原発関連の組織から400万~800万の寄付をもらっていたりする。
原子力安全委員会の斑目委員長や原子力委員会の近藤委員長といった原子力ムラの人間を、政府は更迭したほうがいい。

とにもかくにも、透明性を高める必要があると思う。

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2012年6月18日 (月)

アハメドくんのトートバッグ

いつもすてきなパッチワークをつくってくれている遠藤由美さんが、すばらしいトートバッグをつくってくれた。

Img_1379 遠藤由美さんと

「アハメドくんのいのちのリレー」の絵をプリントして、パッチワークしている。
カマちゃんのアンパンマンも空を飛んでいる。
石巻で被災した子どもが書いた書道の「希望」という文字もパッチワークになっている。
たいへんな労作だ。

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Img_1381

今月23日から、パレスチナとイスラエルのお母さんと子どもたちに会いに行くが、このアハメドくんのバッグに絵本をつめて、子どもたちにプレゼントしてくるつもりだ。

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原発事故444

1973年までに生まれた広島の被曝二世のうち、95年までに白血病と診断された94人を詳しく調べると、片親だけが被曝している人よりも、両親とも被曝している人のほうが発症率が高いことがわかった。

被曝後10年以内に生まれた6万3000人のなかで、35歳までに発症した人は49人。
そのうち両親とも被曝した人は約1万4000人で、26人が発症した。
この数字は、決してものすごくリスクが高いというわけではない。
だが、両親が被曝していると少しだけ白血病の子どもが増える可能性があるということに注意しながら、ほとんどの子は白血病にならないということも理解し、心配しすぎないことが大事である。

大事なことは、できるだけ被曝をしないですむ世の中をつくることだ。

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2012年6月17日 (日)

イスラエル・パレスチナへ出国準備中

Ahmadsrelayoflifeenglish1_26月23日から7月3日まで、イスラエル・パレスチナへ行く。

Ahmadsrelayoflifeenglish3_4

それに向けて、国際連合パレスチナ難民救済事業機関の現地スタッフ、ドクター清田のグループが、

「アハメドくんのいのちのリレー」(集英社)

を、英語、アラビア語、ヘブライ語に翻訳してくれている。

今回平和のため、集英社のご好意で、プレゼント用に限定特別印刷させてもらった。

この本がいつか、世界中で本格的に出版できたらいいと思っている。あらゆる国の人々に読んでもらいたいと願っている。

Ahmadsrelayoflifeenglish3_3Ahmadsrelayoflifeenglish2_2

鎌田は、エルサレムを起点に、ガザ地区に入り、西岸のジェニの難民キャンプへも入る。ヨルダンのアンマンで講演もする予定だ。

現地からリアルタイムで、イスラエルのおかあさんや、パレスチナのこどもたちと語る姿を、ブログでお伝えしたと思っています。

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2012年6月16日 (土)

2ヶ月半ぶりの福島

骨折後、2ヶ月半ぶりに福島に入った。
福島県立小名浜高校といわき秀英高校の生徒たちに、「教科書にない一度だけの命の授業」をしてきた。
震災に負けないように、勇気や元気がでる話をしたつもりだ。
「命の授業」は、ぼくのライフワーク。
来年は岩手や宮城の高校を訪ねようと思っている。

Img_1498 高校生に向けた命の授業

須賀川市で講演をした。
須賀川市は54%の家が倒壊したが、放射線があまり高くないため、被害の大きさを外の人から忘れ去られている。
市の公民館長から、市民を元気づけてもらえないかと講演会を頼まれていたのだ。
ぼくは、ボランティアで行くことに決めた。
講演会では、弁護士の日隅一雄さんとご一緒した。

Img_1460 講演後、談笑する日隅さんとカマタ

日隅さんは進行した胆のうがんで手術はできない。抗がん剤の治療を受けている。
「自分の体のことは、つらい情報でもちゃんと知っておきたい」という日隅さんは、原発事故の記者会見で、政府や東電がどんなに情報隠しをしてきたかを話してくれた。

検証 福島原発事故・記者会見-東電・政府は何を隠したのか』(日隅一雄、木野龍逸共著、岩波書店)という本を書き、なぜメルトダウンが隠されたのか、なぜSPEEDIのデータがオープンにならなかったのか、なぜ汚染水が隠されるように海に捨てられたのか、解き明かそうとしている。
命がけの仕事である。
講演でも、鬼気迫るものがあった。

Img_1468 財団にはキャンベラ社のホールボディカウンタとゲルマニウム食品測定器があり、子どもたちの健康を守る活動をしている

ひらた中央病院にも行った。
財団の名誉理事長として、ときどきアドバイスをしていこうと思っている。

2日間、福島を訪ねて、うっ血で足はぱんぱんに腫れたが、みんなに歓迎され、ありがたいことだと思った。

                   ◇

日隅一雄さんが6月12日、亡くなられました。

状態は大変厳しかった。講演の前の日も電話をして無理をしないように話したが、福島へ一度ボランティアでいきたいと強く訴えた。それぞれが講演したあと、二人で対談をした。

「日本の民主主義のピンチである」
と日隅弁護士は強く述べた。

「自分は大変重い病気がある、にもかかわらず、今日は福島に来たかった。この国のあやふやさや、不透明さや、国民を大事にしないことを、正したかった」

いい笑顔だった。ぼくはひらた中央病院と講演へ行くため、握手をして別れた。それが最後だった。しばらくして、訃報をきいた。大学病院で亡くなられたという。言葉が軽くなってしまった時代に、彼の言葉は重かった。この日本を変えるために、彼に永く生きてもらいたかった。悲しいです。残念です。彼の想いをうけついでいこうと思います。

心からご冥福をお祈りいたします。

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2012年6月15日 (金)

医療と言葉

ひげの殿下こと寛仁さまの斂葬(れんそう)の儀が行われた。
がんとの壮絶な闘いがあったようだ。

大熊由紀子さんから聞いた話だが、皇族は健康保険に入れない。
ほかの患者が窓口負担で3割に対して、10割負担になる。
だから、治療の内容にも説明を求めた。
「これは何の注射か」とか、「これは本当に必要ですか」と聞くようになったという。
質問しながら、医療者とのコミュニケーションを大事にしていたのだと思う。

ぼくは『言葉で治療する』(朝日新聞社)という本を出している。
言葉は医療においてとても大事だと思っている。

「名医の言葉はわかりにくい」という殿下の言葉は、とてもするどい。

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原発事故443

東京電力というのは、なんとリスクコミュニケーションができない企業なのだろか。
本来ならば東電はつぶされてもしかたがない。
会社更生法にのっとって処遇すべきというのがぼくの考えである。

何兆円ものの支援が入り、生き延び、電気料金の値上げを利用者に訴えている。
にもかかわらず13年度から社員一人当たり平均46万円ふやすという。
大企業よりもさらに28万円高くなるという。
とんでもないことだ。

あれだけの事故を起こし、福島県民を中心につらい思いをさせ、日本全体の経済を悪くしておいて、どこ吹く風である。
幹部はのううのと下請け会社に天下りして、自分はらくらくと生活している。
こんな会社があっていいのか。

JALが再生したように、会社更生法を適用したほうがいい。
東電に投資している人たちにはたいへんな迷惑になるが、原発のある東電に投資するということはそういうリスクを伴うということだ。

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2012年6月14日 (木)

野球がつなぐ

反米で有名なベネズエラのチャベスが、キューバのカストロやアメリカのオバマに野球とソフトボールをオリンピックに復活させようと共闘に呼びかけた。
珍しいことである。
チャベスはアメリカ嫌いだが、野球とソフトボールは大好き。
できたら日本も手をあげるといい。
野球好きの国には、アメリカ、キューバ、ベネズエラ、中米のいくつかの国がある。
もちろん、日本も韓国も好き。
野球を介して、チャベスとオバマが握手をしたら、世界の平和は一歩前進する。
ぜひ、日本や韓国も仲間に入ろう。

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7/22講演会のお知らせ

鎌田實講演会「困難な時代をどう生きるか‐チェルノブイリ、フクシマをみつめて‐」

日 時 : 2012年7月22日(日)13:00-14:30
会 場 : ちひろ美術館・東京 展示室4(多目的展示ホール)
参加費 : 1000円+入館料800円(高校生以下は入館料無料)
申 込 : ※往復はがきのみで受付中
定 員 : 80名

<お申し込み方法>
・こちらのイベントは、往復はがきのみで受付しております。
・参加ご希望の方は、「ちひろ美術館・東京 イベント係」宛てに、
①参加者氏名 ②住所 ③電話番号を明記の上、往復はがきにてお申し込みください。
1枚のはがきで同伴者1名まで応募可能。応募者多数の場合は、抽選となります。
2012年6月20日(水)申し込み締め切り、当日消印有効

ぜひ、ご参加ください。

詳しくはこちら↓
http://www.chihiro.jp/tokyo/event/2012/0515_1248.html

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2012年6月13日 (水)

「はやく、家にかえりたい。」

Hayaku001「はやく、家にかえりたい。」
福島の子どもたちが思う いのち・かぞく・みらい

鎌田實 監修
ふくしま子どもの未来プロジェクト 編

2012.5.30 発売
税抜 1,300円

福島原発から半径20キロ圏内に住んでいた子どもたちが語る、家族・ふるさと・仲間。

「はやく、家にかえりたい」と願う子どもたち。
しかし今後10年ちかく、家に帰ることは難しいかもしれない。

ふくしま子どもの未来プロジェクト:
2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災者支援を目的として、同年5月に「三陸の牡蠣復興支援チャリティイベント」を企画立案し、牡蠣産地の復興支援活動を実施。
同年7月に福島県内の子どもたちを支援することを趣旨とした本プロジェクトを編集・出版株式会社ユーイーピー内に設立。本書の企画立案ならびに取材・製作・編集を行う。

西田敏行さん推薦 (俳優・福島県出身)
未曾有の天災と人災を体験した福島の子供達!!
最悪の状況におかれた子供達の視線の先は、
敢然と立ち上がり復興への道筋を力強く進む
自分達の姿であることが、
この作文集から伺える。
子供達は強い!!
君達はこの国の宝です。

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原発事故442

東電は燃料費高騰のために6000億円の値上げが必要といっているが、そのなかには汚染水の処理費用など安定化維持費用や、原子力損害賠償支援機構への負担金なども入っている。
原発の修繕費や維持費も入っている。

1206082__ 白い花をつけたニセアカシア

燃料費の高騰というが、天然ガスなどは2倍近く高いお金で買っている。
東電の11年度のLNG購入費は1兆5000億円。
安定供給という名のもとに、コスト削減が甘いのは、実は総括原価方式のせいである。
実際にコストがいくらかかっても、利益を上乗せすることができる方式だからだ。
LNG100万BTUあたり、韓国では10ドル、アメリカでは1.8ドル、日本では18ドル。

この数字をみても、もっと安く買う努力をすべきとわかる。
ヨーロッパの経済が冷えており、ロシアの天然ガスは消費増加が見込めない。
アメリカではシェールガスが採取されるようになりつつあり、天然ガスの値段が値崩れてしている。
にもかかわにず日本だけが天然ガスを高値で手に入れて、火力発電をしている。

東電の利益は9割が家庭から。
結局、今回の値上げも、もともと高い電力料金をさらに高くして家庭に買わせることになる。
東電は事故を起しても、高い燃料を購入しても、総括原価方式に守られて、自分たちは利益があがるように仕組まれている。
家庭の電気料金の値上げはもっと圧縮できるはずである。

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鎌田劇場へようこそ!(114)

「プレイ 獲物」

フランス映画。
サスペンスでアクションでスリラー。
これでもか、これでもか、とハラハラドキドキさせられる。

主人公は穏やかな顔をした性犯罪者から、娘を守るために命がけの脱獄をはかる。
目が離せない。傑作である。
最後の最後で息がつまりそう。

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フレンチサスペンスはもともといいものが多かったが、最近はパッとしたものがなかった。
これは大傑作。
ハラハラドキドキ我を忘れたい方はぜひ。

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2012年6月12日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(113)

「オロ」

6歳のとき一人でヒマラヤを越えて、チベットから亡命した少年オロの物語。
一回は亡命に失敗。
半年ほど食堂の皿洗いなどをして、生きつなぐ。

漢民族を中心にした中国の政策で、チベットは漢民族によって支配され、チベットの言語や文化、宗教が圧迫されている。
だが、そういう話はほとんど出てこない。

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6歳の少年が生き生きと生きている様子をあたたかく描いている。
悲しい民族の歴史のなかで、少年は負けていない。
母親はなぜ息子を旅立たせたのか。
それは、息子への期待であり、息子を守ることであり、チベットを守ろうする、思いだったのではないか。
つねに感じるのはふるさとへの熱い思いである。

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原発事故441

東電は家庭向け電気料金を平均10.28%値上げすると、政府に申請した。
火力発電が多くなり、東電の利益が減ってきているということで、いかにも原発の再稼動が認められないために電力が高くなっているとにおわせている。
しかし、原発事故はもともと東電のコントロールミスから大きくなった。
東電の利益は、9割がた家庭用電力の売り上げである。
家庭は高い電気を買わされ、さらに東電のミスのしわよせをくらい、もっと高い電気料を払わされる。
それでは国民は納得しない。
国は東電のいいなりにならないようにすることが大事である。

雇用の拡大を支えるために、産業は元気でなければならず、そのためにエネルギーの安定供給は必要なことである。
電気がないために外国に工場が流れれば、国内の雇用はますます減る。
十分にわかっている。
だからこそ、電気料金の値上げに関しても透明性の高い議論をして、国民の納得ができるようにしなけれはいけない。

東電は人件費は25%カットしてきているが、本来は会社更生法を適用して、もっと人件費を圧縮させることができるはず。
それをしなかったのならば、それに近い形でリストラをしなければいけない。

なんでも消費者に負担をおしつけるのではなく、まず東電の責任を明確にし、高い電気料にならないように、東電の下請け会社との関係を切るべきだ。
原発事故を防ぐことができなかった幹部が、下請けの会社に天下りしているなんていうのは許すべきではない。
その天下りした会社から高い製品を買い、買ったことで電気料金が高くなるなんていう、今までの構造を許すべきではないのだ。
政府がしっかりすれば、ここのところをもう少しコントロールできるばす。
値上げの議論はそのあとにすべきことだと思う。

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2012年6月11日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(112)

「ぼくたちのムッシュ・ラザール」

今年度アカデミー賞外国賞ノミネート。
担任教師が教室で首を吊って死んだ。
小学校の子どもたちが傷つき、く大人たちも傷ついた。
触れないように隠そうとする大人たち。
きちんと話をしておきたい子どももいた。

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代用教員のラザール先生がやってくる。
アルジェリアのテロリストに脅され、奥さんと子どもを殺されるという過去をもつ。
自分も傷つき、もがきながら必死で代用教員を務める。
教室は絶望をぶつけ合う場所ではない。
勇気を示しあい、友情をつくる場である。

ラザール先生が最後に教室を去るとき、寓話を読み上げる。
子どもたちは生き返っていく。
ラザール先生は教科書に載っていない大切なことを教え、去っていった。

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原発事故440

政府の基本問題委員会で将来のエネルギーのなかに示す原発の割合が議論されている。
脱原発といいながら、2030年ですら原発から35%のエネルギーを得る、などという考え方も議論されているというから驚きである。
しかし、原子力資料情報室の伴さんなどがこういう委員会の委員になっていることは大きい。
国の委員会にできるだけいろんな考え方の人が入ることによって、国民が知らないうちにものが決まるということも少なくなっていくと思う。

1206081__ 葉がしげってきたニセアカシアの大木

ぼくの案である2020年までに原発ゼロというのにくらべれば、2030年にゼロとか15%とか議論されていること自体が甘いように思うが、それでも透明性の高い議論が行われはじめていることはいいことである。
せっかくよくなりだしているのに、原子力ムラの連中だけで集まって巧妙に方針転換をするような悪辣な手法は許すべきではない。
これは政府がしっかり見張っていなければいけない。

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2012年6月10日 (日)

原発事故439

経産省は14年度以降に発電と送電の分離を導入するという。
とてもいいことである。
スピード感はないが、政府をほめないといけない。
これでいろいろな電力をつくっている企業が元気づく。
かならずコストダウンも起きてくる。
自由な競争というのはとても大事なシステムである。
再生可能エネルギーも当然、コストダウンを目指しながら広がってくる。
地域独占が崩れていくことは、資本主義社会にとって大事な「競争」が行われるようになる第一歩である。
今までのシステムが独占という社会主義的な手法だった。
これからは当たり前の資本主義の手法になるということである。

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鎌田写真館~らっせらー

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先日、青森で見た、ねぶたのだし。
すごい迫力。

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2012年6月 9日 (土)

お知らせ

明日10日の「日曜はがんばらない」(午前10時~、文化放送)は加藤登紀子さんをゲストにお迎えする。

登紀子さんと鎌田は、放射能に苦しんでいる福島の子どもたちへ熱い思いとメッセージをこめ、「ふくしま・うた語り」を製作した。
朗読と歌のミニアルバムだ。

Photo

番組中では、このアルバムに収録されている「海よ、大地よ」(作詞・朗読 鎌田實 作曲・歌 加藤登紀子)を流す予定。
ぜひ、ぜひ、聞いてください。

「ふくしま・うた語り」は、BARKSというインターネット音楽ニュースで紹介されている。
ご覧ください↓

http://www.barks.jp/news/?id=1000080229&ref=rss

「ふくしま・うた語り」のお問い合わせ、ご購入はこちらへ↓

http://jcf.ne.jp/label4_cd

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原発事故438

福島県田村市の保健師さんからうれしい便りが届いた。
昨年夏、田村市でピーコさんと講演&トークライブをしたときに、お世話になった保健師さんだ。
そのとき、あいさつにきてくれた市長さんに、「ホールボディカウンタがあると子どもたちのいのちを守るためにいいですね」と話した。
そのいきさつを紹介したブログはこちら↓

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-3662.html

http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/294-3446.html

その後、保健師さんの便りでは、市長はホールボディカウンタを買い、子どもたちの健康を守ろうと議会に理解を求めたという。
ぼくは思わず、えらい、と叫んでしまった。

Img_1124 原村の「カナディアンファーム」ハセヤンからもらった新鮮野菜

原発事故後、ぼくは福島県には20台ほどホールボディカウンタが必要と話してきた。
南相馬市がすぐに反応した。
昨年暮れからぼくが名誉理事長をしているひらた中央病院の財団では、ホールボディカウンタを2台導入した。
その一台は1歳以上の子どもも測定できる、日本でははじめての機械で、6月から稼動ししている。

子どもの健康を守るには放射能の「見える化」と、情報をオープンにすることが大事だと思う。
南相馬市立総合病院でホールボディカウンタの担当をしている坪倉先生に、月に一度、ひらた中央病院に来てもらい、データの管理や指導をお願いしている。
多くのデータが統合され、分析されることによって、子どもたちを守る有効な手段が見えてくるはずだ。

田村市で、ホールボディカウンタが近々動き出す。
朗報である。

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2012年6月 8日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(111)

「幸せの太鼓を響かせて~INCLUSION」

製作総指揮は、細川佳代子さん。
細川元首相の奥さんである。
自分にできるルール「ぼくのルール」を決めて、恵まれない子どもにワクチンを送る活動をしている。
ぼくも少しだけだが、協力している。

映画は、知的障害者が地域のなかでゆうゆうと生きている姿を描いている。
知的障害者によるプロの太鼓グループ“瑞宝太鼓”が、国際的な大会で2位になる。
障害者だからというのではない。
障害があるけれど、プロフェッショナルなのだ。

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みんないい顔をしている。
太鼓がなかったらこの人たちは、もしかしたらつらい人生を歩んでいたのではないか。
団長の岩本君は、知的障害がある奥さんと結婚し、子どもがいる。
太鼓のプロとしてもらう給料は18万円。
働く場があることと、愛する奥さんと子どもがいる。
フロイトが言うように、この二つがあるとどんな困難も乗り越えられるという、そのことをこの映画が示している。

副団長の高倉君がいい。
まだ30代くらいだが、ときどき50代くらいのいい雰囲気をかもしだす。
太鼓をたたいているときはさすがに30歳と思わせかっこいい。
落語に出てくる大工のオヤジみたいな顔をしながら、太鼓をたたく姿はうきうきしている。
こんなうきうきした感じは、簡単には表現できない。
この男のもっている才能だと思った。

「幸せの太鼓を響かせて」は、当たり前の日常のなかに、希望を見出すヒントをくれる映画である。

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杖からストックに

車椅子から松葉杖、松葉杖からT字杖。
今は、ノルディックウォーキングのストックを使い、リュックを背負って移動している。

ハイキングみたいなカッコで、東京のまちなかでは、みんなに振り返られる(笑)

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足はだいぶよくなってきた。
ニュースエブリでも立ってあいさつができた。

ただ、うっ血をおこして足がパンパンに腫れている。
まだまだ完治には時間がかかりそうだ。

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2012年6月 7日 (木)

鯵ヶ沢で

今年の日本の医療を考える会は、青森県の鯵ヶ沢で行われた。
男性は全国3位の短命という行政区。
どう健康づくりをおこなうか、鎌田の講演とシンポジウムに参加した。
シンポジウムでは、元北大教授の前沢先生や、地域医療の神様といわれている岩手県沢内村の増田先生らと、具体的な地域医療の再生について語り合った。

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話題になった「わさお」という映画の、わさおにも会ってきた。
5歳の犬である。
捨て犬だったが、5ヶ月くらいのときに焼きいか屋さんをやっているおかあさんが拾って育てた。
ブスだけどかわいい、と評判になったらしい。

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軽トラの荷台の縁に足をかけて、行く車をみつめる。
なんとなく車もとまって、焼きいかを買いたくなってしまうという。
多い日は3000人もわさお君に会いにやってくるという、超人気スターになってしまった。
たしかに、なんともいえない、いい顔をしている。

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映画の舞台になった菜の花畑は、岩木山のふもとが一面まっ黄色になる。
息をのむような美しさだった。
ほとんど観光化されていないところがいい。
菜の花は、連作障害をふせぐためにまいたという。
それだけだけど、とにかく美しい。

グランメール山海荘というホテルのオーナーにお世話になった。
このホテルは、7年ほど前に泊まったことがある。
高橋竹山のマネジャーをしていた佐藤貞樹さんとおちあって、高橋竹山の弟子に会ったり、ストーブ列車に乗って、金木の三味線ひきの演奏を聞きに行ったりした。
思い出の深いホテルだったのだ。

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鯵ヶ沢は日本海側に面している。
夕日がきれいだった。

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原発事故437

原発依存の考え方を変えることを政府は明言している。
エネルギーの安定的な確保を考えなければならない。
CO2の排出のことを考えれば、液化天然ガスが今のところこの数年の大事なエネルギー源になるだろう。
余分に300億立方メートルの天然ガスが必要になる。

再生可能エネルギーでの電力を確保するにはまだ時間がかかるだろう。
その間、天然ガスや石炭による火力発電を考えていく必要がある。

日本は、石炭を燃やして火力発電する効率は世界屈指の力をもっているが、天然ガスの供給が厳しくなることも予想される。
世界で石油や天然ガスの値段が、どう変化していくかが問題になっていく。
JIM-NETではイラクの医療支援を続けてきた。
イラクは世界で2番目の石油埋蔵量がある。
日本の民間の支援が、大きな力になればいいなと思う。

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2012年6月 6日 (水)

「ふくしま・うた語り」発売

歌手・加藤登紀子と医師・鎌田實が、放射能に苦しんでいる福島の子どもたちへのふたりの熱い思いとメッセージをこめ発表した、今までにない朗読と歌の珠玉のミニアルバムです。

このCDの収益金は全額、福島の子どもたちのために使われます。
多くの方々にぜひ、聴いていただきたいCD です。

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発売日:6月6日
価格:¥1,500

【トラックリスト】
1. 貝殻のうた   
2. 神隠しされた街   
3. スマイル・レボリューション   
4. 海よ、大地よ  
5. 貝殻のうた インスト

お問い合わせ、ご購入は
JCF NPO法人 日本チェルノブイリ連帯基金(http://jcf.ne.jp/

●music.jp
着うた
http://tlc.mopita.com/tlc/landing?yp=s1205306GZH
着うたフル
http://tlc.mopita.com/tlc/landing?yp=s120530tLPN

20120530_qr

●iTunes
アルバムアーティスト:  加藤登紀子 (Primary)
アルバム: タイトル:  ふくしま・うた語り - EP
http://itunes.apple.com/jp/album/fukushima-uta-yuri-ep/id530095722

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原発事故436

核兵器に転用可能なプルトニウムが日本ではすでに45トン貯蔵されている。
大量保存は国際的な疑念を招く。
結果として、プルトニウムを消費せざるをえない。
そこで、核燃サイクルという「絵にかいた餅」を考え出した。
しかし、結果はうまくいっていない。もんじゅも動いていない。

「使用済み核燃料を直接埋蔵をしない核燃サイクル」というまちがった選択をしたため、やむにやまれずプールにつけておいている。
どのプールもいっぱいだ。
危険極まりないのである。
4号機のプールにたまっている使用済み核燃料を早くとりだし、乾式の処理へと方針転換したほうがコストも安く、安全も確保されやすい。
方針を早く変えるべきである。

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2012年6月 5日 (火)

鎌田實の一日一冊(136)

少し前、動くと足がうっ血をおこすため、横になりなから、よく短編を読んでいた。

「田中慎弥の掌劇場」(田中慎弥著、毎日新聞社、1260円)

芥川賞作家の田中慎弥さんのショートストーリー。
おそろしい小説。
想像豊かで、しかも美しい。

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「オー・ヘンリー傑作選」(オー・ヘンリー著、大津栄一郎訳、岩波文庫、693円)

ぼくが短編でうまくできているなと思うのは、O・ヘンリーの作品だ。
O・ヘンリーは40代で亡くなっているが、おもしろい短編小説をたくさん残している。
日本でいうと中学を出て、仕事に出ている。銀行に勤め、お金を流用して5年の刑に処せらた。
アルコール性肝硬変で亡くなった後、世界中で彼の作品は読まれた。

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「賢者の贈り物」は、貧しい夫婦がお互いの宝物を失っても、相手のためにプレゼントをするという話。
現代の功利的な考え方では、ドジな夫婦ともとれるのだが、100年前に書かれた短編小説がなんとも味わいがある。
いつか、ぼくもO・ヘンリーのような短編小説を書きたいと思っている。
これまでの仕事人間をみなおし、もう少しゆっくり生きようと思った。

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原発事故435

政府と東京電力は福島第一原発4号機の建屋内部や使用済み核燃料プールを5/26、事故後はじめて報道陣に公開した。
世界が4号機の使用済み核燃料プールを心配しているからだ。
「もう一度地震がおきて、このプールがひび割れて水が抜けると、チェルノブイリの10倍の放射線が放出され、東京も人が住めなくなる可能性が高い」とインターネット上ではいわれている。
この不安感をなんとか払拭したいと考えているようだ。

1205181__ ハワイの白い雲

水素爆発をおこした3号機の水素が、4号機の建屋に流れて水素爆発をおこした。
4号機の使用済みプールの水が少なくなりだしたところで、奇跡がおきた。
原子炉の上にある原子炉ウェルにたまっている水とDSピットという部分にたまっている水の仕切りが地震と爆発でずれて隙間ができ、1000トンの水がプールに流れ込んだ。
その結果、使用済み核燃料の崩壊をふせぐことができた。
たまたま震災前に工事をしていて、原子炉ウェルの水をぬいていなかったことが幸いしたのである。

原子力を推進してきた人たちはいつも「科学的にだいじょうぶだ」と議論をうちきってきたが、科学的に安全だったはずのものが、大地震で崩壊し、安全装置もはたらかず、偶然によって難をかろうじて逃れた。
この人たちの「科学的」ということばはとてもあやしい。

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2012年6月 4日 (月)

原発事故434

2030年までに国内の原発の割合をどうするか、経済産業省の審議会でいろんな案がでている。
原発を新設し、現在くらいの原発の電力量を維持するという原発35%案があるという。
とんでもないことである。
まず、原発はもうつくらないということは、明確にしなければいけない。
残りの3つの案は、2030年までに原発0にする、15%にする、20~25%にするという案である。

1205295__ 諏訪中央病院の庭

ぼくの考えは、このブログで繰り返してきたが、2020年までに原発を0にするというもの。
それまでは電力の需給バランスを電力会社のデータだけではなく広いデータで議論し、できるだけ安全の確保をはかりながら、原発廃止を目指していく。
それがこの国の技術力を呼び起こすことになる、ちょうどいい8年間だと思う。

エネルギーをつくるときにでる、余熱や廃熱を再利用したりすることで、効率よくエネルギーをつくることができるのではないか。
地熱、風、太陽、かなりのものでもコスト削減ができるはず。
日本の省エネは世界最先端をいっていると思っているが、まだまだ徹底させることはできる。
その省エネを拡大するときに、内需を拡大すればいい。
電気自動車、電気製品などはできるだけ省エネのものがつくられ、つかわれるように、政策誘導していけばいいのである。

新エネルギー基本政策が今年の夏にできる。
政府は勇気をもって、明確でわかりやすい目標設定を国民に示し、国民にむけたメッセージを発表する必要がある。
この国が8年後にどんな形の国になるか、経済やそれを支えているエネルギー問題、そこにどう雇用を生み出すかを明確にしていく、国民が元気がでるような熱いメッセージを出すべきだと思う。

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鎌田劇場へようこそ!(110)

「それでも、愛してる」

ジョディ・フォスター久々の監督作品である。
壊れそうな家族のきずなを描いている。
メル・ギブソン演じるうつ病の夫と、アカデミー賞を2度もらったジョディ・フォスターが演じる妻。

映画をみていると、うつ病は本人が苦しいだけでなく、家族も苦しいことがよくわかる。
息子は自分も父親のようにうつ病になるのではないかとおそれ、父親のような行動をしないこと、父親のような性格にならないことを自分に言い聞かせ、父親を避ける。

Photo_3

日本では今、100万人以上がうつ病といわれている。
病院にかかっていない人もいれると、さらに多いと思われる。
うつ病というほどではないが、うつうつとした気分の人は8人に1人という学者もいる。
つらい病気である。

壊れかかった家族に、ぬいぐるみが奇跡をおこす。
だが、このぬいぐるみが本当の関係を築くのに足をひっぱる。
人間のなかにある心の不思議さがうまく描けている映画である。

壊れそうな夫婦が最後、壊れなくてよかったと思える、ちょっとしゃれた映画である。

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2012年6月 3日 (日)

おめでとう。

先日、若い医師と看護師の結婚式に出た。

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仲のいいふたりが白衣姿で登場し、注射器のような形のボールペンをプレゼントしてくれた。
久しぶりに結婚式にでたが、感動的で、趣向がこらされているのに驚いた。

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原発事故433

原子力委員会の秘密会議が明るみにでた。
委員長の近藤駿介さん(元東京大学大学院工学系研究科教授)は昨年12月、て核燃サイクル推進側と秘密会議をもった。
委員長代理の鈴木達治郎さん(元財団法人電力中央研究所研究参事)は、4月の秘密会議にも出ていた。
本人たちは勉強会といっている。

これだけ原子力ムラの批判が高まっているのにもかかわらず、事故後も平然と20回近く秘密会議がもたれたと毎日新聞にある。
たとえ、ほんとうに「勉強会」だとしても、李下に冠を正さず。
透明性を高めなければ、国民は信用しない。

1205294__ 岩次郎小屋の花

最近は、原発に厳しい意見をいう委員が少数だが選ばれ、原子力ムラ一色ではなくなってきた。
それなりに政権の努力がみえてきた矢先である。
これではリスクコミュニケーターとしての役割は担えない。
国民が原子力委員会を信用しないのである。
政権はまず、委員長と委員長代理を更迭すべきである。
事故後ほとんど無力だった原子力安全委員会の委員長斑目さんの責任も問うべきだ。
原子力規制庁の発足をまたず、機敏に人事を一新すべきだと思う。

素人の政治家があつまって政治決断するよりも、政治家は人事権をフルにつかって、国民がなっとくできるような専門家や市民や当事者を議論の輪に加え、その議論の結果をもとに政治決断をすべきである。
原子力委員会をはやく刷新してほしい。

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2012年6月 2日 (土)

イラク戦争×シリア騒乱=難民支援

2011年2月ごろから悪化し始めたシリア情勢は、現在混乱を極め、9000人以上が死亡、JIM-NETが活動を行なっているイラクやヨルダンにも難民が流出しています。私たちは1日も早く、騒乱が収まり、これ以上の犠牲者が出ないことを切に願っています。

P107001_2その一方で、2003年のイラク戦争後迫害を受け、難民となった人たちは、シリアに100万人いるといわれ、安否が気遣われます。

また、イラク戦争時に、イラクにいて既に難民だったパレスチナ人や、イラン難民たちは国境を越えてシリアやヨルダンに逃げることもできず、砂漠の真中に設営されたアルワリードと名づけられたキャンプでテント暮らしを強いられています。

JIM-NETは、このアルワリード難民キャンプの支援を行っていましたが、UNHCRやNGOが活動していたので、2009年度をもって支援を終了しました。しかし、UNHCRとNGOは、今年4月15日に、撤退を強いられ、300名ほどの難民を残したまま活動を停止しました。現在、キャンプでは電気はなく、水はイラク政府が飲料水だけを提供しています。キャンプ内のクリニックは、閉鎖され、病人は200km離れたルトバか、さらに検査が必要な場合は、500km離れたバグダッドまで行かなければなりません。彼らは、第三国への定住を要求していますが、シリアの混乱も影響して、益々門戸は閉ざされています。

P112_img_3014001私たちJIM-NETは、シリアの現状に注視しながらも、今まで関わってきたアルワリードの人たちが医療を受けられるようにわずかながら支援活動を再開したいと思います。

  1. イラク戦争が原因で、安心して暮らせる場所を喪失したアルワリードキャンプに居住する難民たちが、医療にアクセスできるよう、交通費の支援と医薬品購入費や、病院滞在中の食費などの支援を行います。

2. 日本でシリア難民を支援している他団体とも協力し、JIM-NETの活動地域(イラク、ヨルダン)で、関係する地元のコミュニティや、カウンターパートのNPOなどが、支援を行う際の協力。

3. 日本で一般の人々に中東の難民問題を理解してもらい、政府には、シリア難民へ向けた必要な人道支援を行うと供に、イラク戦争を支持した責任として、イラクで発生した難民に関しては、責任を持った支援を行い、日本への第三国定住も視野に入れて取り組むことを求めます。


L1070940001JIM-NETは、以上の活動に関し、「難民支援基金」を立ち上げます。御支援をお願いします。

郵便振替口座     00540-2-94945  口座名:日本イラク医療ネット
通信欄に    「難民支援」とお書きください

予算の内訳 
       1.アルワリードからの患者移送費+医療費、病院滞在中の食費
                    12回×4万円=48万円
       2.フードパッケージなど必要に応じて  30万円
       3. 諸経費               22万円
                       合計:100万円
お問い合わせは、事務局長 佐藤真紀(メールアドレス maki_sato@jim-net.net)までメールでお願いします。

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原発事故432

WHOは今回の事故で、30キロ圏に4ヶ月24時間屋外にいて、汚染食品を食べたという前提で、浪江村や飯舘村では10~50ミリシーベルトの全身被曝をした可能性があると推定値を出した。

一歳児の甲状腺の被曝にかんしては、SPEEDIでは、一歳児が24時間外にいたと仮定して、100ミリシーベルトを超える範囲を示し、浪江町では100~200ミリシーベルトと推定している。
これとくらべると、WHOの推定値は大きくかけ離れているとは思えない。
WHOの推計値は高めに出ている可能性はあるが、この数値も放っておかず、科学的に議論をしたほうがいい。

1205293__ 緑が濃くなった、岩次郎小屋の風景

一歳の子が24時間外にいる可能性はあまり考えられないので、実際にはこれより低い被曝量である可能性が高いとは思うが、飯舘村や浪江町の避難が遅れたことはやはり残念である。
せめて子どもだけでも、数ヶ月、放射能疎開をさせればよかったと悔やまれる。
50ミリシーベルトを超えた場合は、安定ヨウド剤を投与する基準にもなっている。

日本政府は事故を過小評価しようとし、WHOは健康被害の予防原則にのっとって最悪の視点で考えようとする。
きちんと科学的に議論するには、透明性を高めなければ何もはじまらない。

おきるはずがないという事故がおきた以上は、今後も事故がおきないとはいえない。
事故の総括がなされないまま、そして、十分な対策がとられないまま、再稼動にふみきるべきではない。

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2012年6月 1日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(109)

「キリマンジャロの雪」

ヘミングウェイの小説「キリマンジャロの雪」ではなく、1966年フランスで大ヒットしたパスカル・ダネルのシャンソンである。
この歌が映画のなかで随所に流れてくる。いい歌だ。

海と太陽のマルセイユで一人の初老の男が解雇される。
労働組合の委員長をしている男だ。
20人の同僚と一緒に、自分は解雇を避けることもできたのに、自らの身はきちんと処した。

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その男が友人のしゃれた計らいで、妻とのキリマンジャロの旅のチケットをもらう。
しかし強盗に入られ、チケットも、貯金も、すべて奪われる。
文豪ヴィクトル・ユーゴーの長編詩「哀れな人々」から着想したという。
それでも、恨まない、憎まない、許すということができるのだろうか。
たとえ貧しくても、やさしい心さえあれば世界はあたたかいことを証明している。
なんだかじーんとくるステキな映画。
6/9から岩波ホールでロードショー。

期待はずれはない。
ぜひ、見てほしい。

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