「アハメドくん」の旅⑱~アンフェアな法律
ドクター・リモンを訪ねた。
イスラエルに住むアラブ系イスラエル人で、ICU(集中治療室)で働く医師だ。
アハメド君はドクター・リモンのICUに運ばれた。
そこで彼は、お父さんに脳死の判定と、臓器移植の提案をした。
「アハメドくんのいのちのリレー」の物語がはじまるきっかけになったドクターである。
リモン氏のお宅を訪ねるのは二回目。今回も大歓迎してくれた。
地区の代表の方や親戚、お兄さんが集まっての大歓迎である。
アラブ系の人たちはほんとうにあたたかい。
アラブ系イスラエル人のリモン先生は、イスラエルの事情も、アラブの悲しみもわかる。
ぼくは、「私たちはこれからも殺されて、イスラエルの人たちに臓器提供しろということですか」というベツレヘムの若者の怒りを伝えた。
ぼくがこの物語を絵本にしたのは、こんな悲しい物語は最後にしたいと思ったからだった。
殺されて臓器提供するなんていう悲劇は、二度と繰り返したくない。
と同時に、こんな悲劇のなかで許そうとした人がいたことを風化させたくなかった。
「ベツレヘムの若者たちは非常に怒っています。非常に悲しんでいます。イスラエル人から、パレスチナ人へと臓器提供が行われるようになればフェアになります。公正とか、平等というのはいい関係をつくるのに大事です」
と、ぼくはリモン先生に言った。
すると、リモン先生は、
「イスラエルに住むアラブ系イスラエル人の臓器はパレスチナの人に提供されてもかまわない。しかし、イスラエルのユダヤ人が臓器をパレスチナ人に提供することは、今のところ法律は禁じている」
「その法律は変えないと、パレスチナ人は納得できないでしょうね」とぼく。
「その通りです」とリモン先生。
そして、こう続けた。
「しかし、パレスチナ側に突然、臓器提供を受諾した臓器があらわれても、パレスチナ側ではほとんど臓器を受けとる準備がされていません。そのためにイスラエル側に臓器がわたってしまうことが多いのです。自分としても残念に思います。パレスチナ側の準備ももっとすすめるべきだと思います」
リモン先生が住んでいる地域の長老があいさつにやってきた。
「イスマイルさんの行いはとても尊いものです。彼の行いがきっかけになって平和がくることを祈っています。日本からたくさんの人が来て、イスラエルとパレスチナの平和に向けて努力してくれていることに感謝します。お互いがもっと寛大になることが大事だと思います」
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