鎌田實の一日一冊(153)
「菊池先生の『ことばシャワー』の奇跡」(菊池省三、関原美和子著、講談社、1260円)
いじめ、学級崩壊など、荒れた教室を次々と立て直すカリスマ教師の菊池先生が、6年生のクラスを受け持ち、立て直していく。
感動的な本である。
クラスの一人の女の子が卒業するとき、こんな文を書いている。
「今、私は幸せな教室にいる
教室では、一人が悪い色の空気をつくり出すと、それが大きくなり、全体に広がる
以前は、黒一色が教室を支配していた
今は、オレンジ色でいっぱいだ
それも、一人ひとりが違う輝きを出している」
クラスが崩壊し、グループ化する。
そのなかで自分の居場所をつくるために、人の顔色をうかがい、空気を読み、自分の個性を殺していく。
それが暗いクラスの原因だった。
しかし、コミュニケーションの大切さを理解した子どもたちは、変わっていく。
隣の人の意見をきちんと聞くことや、自分との違いを明確にしながら、一方的な批判にならないようにする。
その過程で、子どもたちそれぞれが自分にあった成長をとげていった。
生きる力、生活する力を身につけていった。
この本を読んで感じたのは、コミュニケーションの大切さだ。
ぼくも子ども時代、東京の和田小学校、和田中学校で、「熟議」という手法を教わったように思う。
この手法でつちかったコミュニケーション能力は、今まで、ぼくが生き抜いてきた武器になっていると思う。
とてもわかりやすいいい本である。
子どもだけでなく、大人も生きていくうえでとても役に立つように出来上がっている。
毎週、日曜、文化放送で「日曜はがんばらない」という番組を放送しているが、ぜひ、菊池先生に昼休みなどに電話出演してくれたらいいなと思った。
今のところは、ぼくだけの思いつきだが、うまくすると実現するかもしれない。
「日曜はがんばらない」を注目していてください。
◇
ちなみに、明日11日の「日曜はがんばらない」は、旅のお話をする。
カサプランカに行ったときの話や、岩手県の遠野でイセぱあちゃんから座敷わらしの話を聞いたこと、「昔あったずもな」で始まり「どんと晴れ」で終わる遠野物語、すい臓がんの末期の人が湯布院に行く話など、旅にまつわるステキな話をする。
ぜひ、聞いてください。
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