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2012年12月

2012年12月31日 (月)

一年間の感謝

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大晦日。
孫たちを連れてスキーに行った。
ぼくは一本だけ滑って、孫のお守りをしたり、本を読んだり。
主治医から絶対に転んではいけない、スピードを出してはいけない、無理をしてはいけないという条件つきで、スキーを許可してもらった。

みんなで早めにスキーを引き上げて、温泉に入る。
年越しは、家族が久しぶりに勢ぞろいする。
年越しそばは、毎年、小林一茶さんが丹精込めてつくったものと決めている。

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今年は青森県鰺ヶ沢に健康づくりの講演に行ったが、町長から金鮎といわれる、白神山地のミネラル豊富の清流で育った臭味の少ない鮎をいただいた。
その鮎とそばを食べながら、行く年を静かに振り返りたいと思う。

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2012年は大変な一年だった。
東日本の復興は、なかなか進まない。
ぼく個人も、骨折をした。
車いすに乗りながら、被災地支援のために、講演をしたり、コンサートをおこなったり。
東北に通う合間に、チェルノブイリにも、イラクにも行った。
障害のある人たちとともにハワイ旅行にもいった。

なんとか走り続けることができたのは、たくさんの人に応援をいただいたおかげだ。
この一年、心から感謝いたします。

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2012年12月30日 (日)

お知らせ

「がんサポート」1月号は、大空真弓さんとの対談を掲載している。

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1/1付の日経新聞では、広告・新春トップ対談で、ジェネリックの大手、東和薬品の吉田社長と「1%だれかのために」というテーマで対談。
ジェネリック薬品を全面的に使えば、1兆3000億円の医療費が節約できる。
この節約できたお金を在宅医療や緩和医療などに充てることで、日本の医療はもっとあたたかくなるのではないか。

ぜひ、ご覧ください。

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2012年12月29日 (土)

空を見上げよう!

午前5時40分ごろの、東京の空。
太陽が上がる前、一瞬だけ、ものすごく美しい光が見えた。

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今年も忙しく全国を飛び回り、特に9月からは一日も休む暇がなかったが、その一年もあとわずか。
帯状疱疹のほうは、神経痛も残らずにすみそうだ。
帽子をかぶるとこすれて痛かったが、今は痛みもなくなりつつある。

全国を飛び回りながら、おいしいものや美しい景色、あたたかい人に出会ってきた。
それら一つひとつに感動しながら、一日を大切に過ごすようにした。
そのためか、風邪もひかず、元気に一年を終えられそうだ。

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2012年12月28日 (金)

命の授業

福島の原町第一中学の生徒たちに放射線の話をしてほしいと言われ、授業をした。
一年生は、国語の教科書でぼくの「雪とパイナップル」を読んでいる。
この話に感動し、すばらしい手紙や作文を書いてくれた。
質問の手も挙がり、活発な授業ができた。

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その後、全校生徒に教科書にない一回だけの命の授業をした。

子どもたちも不安のなかにいる。
できるだけ子どもたちに笑顔が戻るように、未来に希望や夢をもてるように、命の大切な話をしたつもりだ。

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手を挙げて、自分の意見を述べる子どもたちを見て、つらい状況に負けていないと実感した。

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2012年12月27日 (木)

高校生も協力 チョコ募金

長野県の上田西高校の生徒たちが、チョコ募金の袋詰めに協力してくれた。
ありがたいことだ。
それを信濃毎日新聞が大きく報じ、チョコ募金の存在を長野の人たちにお知らせしてくれている。

Cm チョコ募金の申し込み受付をするJIM-NETのスタッフ

マスコミを通してたくさんの人に知られることも、個人のツイッターなどで広がるのもありがたい。
予約を入れるとすでに7万個近く、チョコ募金にご協力いただいている。
あと9万個。
16万個の完売をめざして、ぜひ、みなさんもチョコ募金のことを広めてください。

チョコ募金は右サイドのバナーから申し込みいただけます。

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◎お知らせ

明日28日朝7時40分~、NHK長野ラジオで、チョコ募金の話をします。
長野の方、ぜひ、お聞きください。

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2012年12月26日 (水)

大王製紙の工場見学

がんばらない介護生活を考えるうえで、排泄の問題はとても大事だと思っている。
いいおむつをつくるために、おむつアテントの開発にもアドバイスをしてきた。
アテントのテープ式のおむつは、ナンバーワンになりつつあるとか。
パンツ式のおむつも、だいぶ伸びてきた。

その大王製紙の三島工場を見てきた。
東京ドーム43個分という広大な広さである。

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環境保護が徹底している。
チリに、東京23区に匹敵するうような広さの山をもち、ユーカリの木を植林している。
そして、10年ごとに伐採してチップにして、紙の原料としている。
原料は植林を繰り返しすることで調達するため、天然林は伐採しないという。

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50万キロワットの自家発電装置をもっていて、ほとんど電力は買わないというのも注目だ。
主に石炭を燃やしているが、リグニンという木の油などを利用して燃やしたり、廃材を利用することもあるという。
CO2の排出問題も、対90年比30%削減を達成したという。

古紙の再生なども徹底されているという。
もちろん、大量に使う水も、工場内で浄化している。

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福島の子どもたちの支援にも理解がある。
大王製紙からは、JCFやJIM-NETに毎年、約300万円の寄付をいただき、福島の子どもたちを守る活動を応援してもらっている。

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2012年12月25日 (火)

クリスマスカード

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白馬の共働学舎からクリスマースカードがたくさん送られてきた。
カードは、『それでもやっぱりがんばらない』に書いた、牛としゃべる青年が書いてくれたものだ。

胃に巨大な肉腫があり、アダムストークス発作という不整脈のある失神発作を繰り返していた。
心臓にペースメーカーを入れた。
人生の質を考えて、彼にかける負担はできるだけ小さくしようということになった。

肉腫は広がらず、今も元気で過ごしている。
ニコニコしていて、ぼくの診察に来ると、言葉数は少ないが親しげに近寄ってくる。
どこの病院でも興奮して、きちんとした治療や検査ができなったが、この青年と仲良くなり、痛みがない検査はすべてさせてくれるようになった。
10年来のつきあいになった。

共働学舎の方たちが彼のことをまるで家族のように大切にしている。
人とのつながりの大切さを、いつもぼくたちに教えてくれる。

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2012年12月24日 (月)

鎌田写真館~メリークリスマス!

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すべての子どもたちに、メリークリスマス!

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本日24日、チョコ募金サンタクロース大作戦もよろしくお願いします。

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諏訪中央病院の絵葉書できました

諏訪中央病院の美しい四季折々の風景が、絵葉書になりました。
売店にて、10枚セット500円で販売中です。カレンダーもあります。

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2012年12月23日 (日)

スキーの季節

信州に大雪が降った。
新しいスキー板も届いた。
いよいよスキーシーズン到来だ。

スキー板は、一回くらいミスをして骨折しても、へこたれないという意識を自分でつくるために、わざわざ今年の夏から買って、準備していた。

1212122__ 新しいスキー板で、今季もスキーを楽しみたいのだが・・・

だが、スキーを思いっきり楽しむためには、骨折の手術の際、足に入れたプレートを抜く手術をしないといけないが、その手術ができていない。

これから、主治医と相談しなければいけないが、手術しないといけないといわれれば、この板も今シーズンはおあずけになってしまう。
なんとか主治医の許可を得て、気分転換程度に、軽くでも滑ってみたい。

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2012年12月22日 (土)

鎌田写真館~岩次郎小屋の雪景色

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今年は、いつもより早く、雪の季節が到来した。

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2012年12月21日 (金)

お知らせ

本日21日午後7時から、BS・TBSでドラマ「がんばらない」が放送されます。
よろしければ、ご覧ください。

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チョコ募金サンタクロース大作戦(写真の追加あり)

12月24日、高田馬場の鉄板焼き「大都会」の地下の展示室で、チョコ募金サンタクロース大作戦を展開する。
通常のお申し込みの場合は、チョコの発送は来年早々になるが、この日は直接、チョコをお渡しできる数少ないチャンス。
クリスマスツリーとともに、イラクの子どもたちの写真を展示し、ぼくと同い年のJIM-NETの斉藤さんというスタッフがサンタの格好でお出迎えする。

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日時 12月24日11時30分~15時
場所 高田馬場駅から徒歩3分 鉄板焼「大都会」地下
http://www.daitokai.net/

24日は、8時30分から「大沢悠里のゆうゆうワイド」(TBSラジオ)でもチョコ募金についてお話することになった。
以前、ゆうゆうワイドでチョコ募金のことを話したら、1分間に3000回線の電話が殺到したことがある。
今年は、よいスタートを切ったものの、このところ少しだけ申し込み数の伸びが鈍っている。
ピンチを知って、大沢悠里さんが一肌脱いでくれ、ラジオで告知することになった。

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今年のチョコ募金のテーマは「あしたのチョコレート」
平和でクリーンなあしたのために、たくさんの方にご協力をお願いいたします。

右サイドのバナーをクリックしていただき、メールフォームからお申し込みください。
ラジオでは電話番号は言わないが、電話・ファクスでもお申し込みいただけます。
         電話03-3209-0051、ファクス03-3209-0052

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2012年12月20日 (木)

原発事故528

福島第一原発の作業員は、最高1.2万ミリシーベルトの甲状腺被曝をしていたという。
100ミリシーベルトを超えた人は、178人。
100ミリシーベルトを超えると、甲状腺がんが増えるといわれているが、必ず甲状腺がんになるわけではない。

小児甲状腺がんは、100ミリシーベルトを超えると、1万人に1人発生すると、ベラルーシ共和国の甲状腺外科教授ユーリ・ジェミチェクは言っていた。
小児甲状腺がんは珍しいがんで、平常時の発生率は100万人に1人とされている。

1211162__ 明治のたたずまいが復活した東京駅

福島県でおこなわれている甲状腺の検査では、小さなのう胞ができたり、しこりができると「A2」という判定がでる。
A2は病気ではないが、フォローが必要。
ただし、焦る必要はなく、再検査は2年半後でいいということになっている。

原発事故以前は、子どもの甲状腺健診がほとんどおこなわれていなかったため、ほかの地域で、小さなのう胞の発生率がどの程度あるなのか、確認すべきといわれてきた。

甲状腺の治療で有名な、東京の伊藤病院が甲状腺学会に発表したデータでは、15歳以下の2753人中、のう胞が見つかったのは36%であった。
経過観察中に、がんなどの悪性の病気になる子どもはいなかったという。

福島県内では、昨年度実施分で35%、今年は42%で、のう胞が見つかっている。
伊藤病院の発表から考えると、A2判定が35~42%というのは、特に原発事故とは関係ないと考えてよさそうである。

福島では、36万人の子どもがいる。
今のところ、小児甲状腺がんの発生は1例であり、それは原発事故と関係があるとはいえない。
しかし、2例目の子どもが出ると、やはり、事故との関連を考えざるを得なくなる。
しっかりと健診を受けながら、経過を慎重にフォローしていく必要がある。

 


※本日、鎌田實ポッドキャスト“空気に染まるな!” 第16回 配信です。タイトルは「よくばらない」。 鎌田實の散文詩をクリスマスプレゼント。ぜひお聞きください。

iTunesで聴く  → PCですぐ聴く

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2012年12月19日 (水)

うれしいメッセージ

たくさんの方が、チョコ募金に協力してくださっている。
購入の申し込みとともに、あたたかいメッセージをいただき、感謝しています。

2 チョコ募金に寄せられたあたたかいメッセージ

福岡の方--
「こういう支援があるのだと知らないお母さんがたくさんいます。
知ればみなさん協力してくれます。
だから、私はせっせと“広報担当”と化して、心にもおいしいチョコレートをみんなに届けます」

埼玉の方--
「いつのまにか、「日曜はがんばらない」にはまりました。これからもゆったりとした気持ちで拝聴させていただきます」

福島の方々からもこんなメッセージをいただいた。

「鎌田先生、応援しています。福島をいつもありがとうございます」

「鎌田先生、二本松のボランティアの講演会、ありがとうございます。
私は二本松に住んでいるのに、有機農法の会の存在を知りませんでした。
勉強になりました」

「「汚染」という言葉で、故郷を応援されることにつらい思いをしていますが、先日、安達太良山にかかる大きな虹を見て、神様は福島をあきらめていないと涙が出ました」

今週は、ラジオでチョコ募金の話をする。
19日午後2時25分~、「大竹まこと ゴールデンラジオ」(文化放送)
21日午前5時50分~、「高嶋ひでたけのあさラジ!」(ニッポン放送)のラジオ人間ドック
24日、「大沢悠里のゆうゆうワイド」(TBSラジオ)

ぜひ、聞いてください。

チョコ募金の問い合わせ、申し込みは、右サイドのバナーをクリックしてください。

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2012年12月18日 (火)

原発事故527

南相馬で開かれた第2回「そうだ、先生にきいてみよう」に来てくれたお母さんから、質問の手紙が来た。
自宅は毎時0.2マイクロシーベルト、実家は0.7マイクロシーベルトだという状況で、できるだけ子どもたちを仙台や山形に連れて一泊しようと心がけているが、これが意味があるのか、という質問だ。
この返事はブログでもいいということなので、ここでぼくの考えを述べたいと思う。

121121___2 雪をかぶる八ヶ岳

同様の悩みをもつ人も多く、今月も福島百年未来塾のあとの懇親会で、二本松のお母さんから同じような質問があった。
その方は、看護の仕事をしているので、職場を見捨てるようで仕事をやめられなかった。
ただ、子どもを福島で育てるのが心配で、しかも、フルタイム働いているめに保養にも連れて行けないという。
そのときも、次のような内容を話した。

チェルノブイリでは、1クール23日間の保養をおこなってきた。
ぼくの考えでは、23日間、連続でなければ意味がないというわけではなく、離れている期間が合計で約3週間になるようにすることが大事だと思う。
土日を利用して、山形や会津若松へ行ったり、夏休みや冬休みに家族で他県へ3泊、4泊の旅行をするというのもいい手だと思う。
小学校以上の子どもたちは、夏休みにリフレッシュに呼んでくださるボランティアの呼びかけにこたえて、北海道や沖縄などできるだけ知らない土地を見せ、いろいろな体験をさせてあげることも、子どもの人生にとって役に立つはずである。

チェルノブイリでは、26年たった今でも、高汚染地域では子どもたちの保養を続けている。
一方、福島では、1年目の夏、みんながあれほど関心高く、子どもたちを県外に出そうとしたのに、時間の経過とともに無頓着になりはじめているのが気になる。
週末の短い保養でも、毎月、毎年と継続していくことが大切だと思う。

長野県は、募金を集め、福島の子どもたちの保養を受け入れている。
ぼくが代表をしているJCF(日本チェルノブイリ連帯基金)では、県からの依頼でいろいろなボランティア団体に声をかけ、保養の受け皿づくりに取り組んでいる。
長野県に来てもいいという方は、JCF(電話0263-46-4218)の神谷事務局長に相談してみてください。
この冬休みや来年の春休みの計画を立てるのに、何かお役に立てるかもしれない。

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2012年12月17日 (月)

南三陸の海の幸

南三陸から生ガキやホタテなど、たくさんの海の幸が届いた。

ホタテとアワビはお刺身でもいただいたが、ホタテはバター炒めに、アワビは殻のまま焼いた。
カキは鍋にした。

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カキは、亜鉛が豊富にとれる優秀な食品だ。
外食ではときどきカキフライを食べているが、フライだと、AGEという血管を老化させる物質をふやしてしまう。
このAGEは、最近注目されていて、コーン油や人工甘味料などがAGEを10倍増やすといわれている。
だから、カキはフライにするより、鍋にするほうがいいのだ。
野菜なども、蒸したり、ゆでたりするほうがいい。

これらの海の幸は、先日のボランティアのお礼ということで、歌津の保健師さんからいただいた。
おいしく、しあわせな時間をすごし、幸せホルモンのセロトニンもたっぷり分泌されただろう。

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2012年12月16日 (日)

お知らせ

季刊誌「コトバ」10号は、「昭和」という時代をまな板の上に載せて、分析している。
ぼくの連載「我々はどこから来たのか」は、今回で10回目。

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東京医科歯科大学で学んだ三木成夫先生の教えに触発されて、イースター島やタヒチ島を巡り、かつて黒潮にのって日本列島にやってきたであろう我々祖先に思いをはせた。
三木先生から教えられた大切なことを書いている。

ぜひ、ご覧ください。

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2012年12月15日 (土)

風歌

加藤登紀子さんのニューアルバム「風歌 KAZEUTA」をときどき聴いている。
「そこには風が吹いていた」「島歌」など、風にちなんだ曲が入っている。

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ぼくはもともとおトキさんの歌った「千の風になって」が好きだったが、その「千の風になって」も収録。
がんばらないレーベルの「ふくしま うた語り」に入っている「貝殻のうた」も入っている。
この歌も、とてもいい。
おトキさんの空気にぴったりだ。
温かで、やさしくて、絶望的な状況のなかでもう一度立ち上がろうという空気がある。

「風歌」ぜひ、聴いてください。

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2012年12月14日 (金)

久々の「いのちの対話」

「鎌田實×村上信夫 いのちの対話in桑名」には、1000人近くの人が集まった。
関西全域からだけでなく、広島、岡山、東京、福島などからも、「いのちの対話」ファンのたくさんの方々が来場。
久しぶりの「いのちの対話」に、待ってました、とうれしい声をかけてくれた。

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三重県の旧二見町で、ステキなレストランを経営していた五味さん夫妻も会場に来てくれた。
五味さんは、南極越冬隊のシェフを2度つとめた“南極料理人”。
年齢のため、お店は引退したということだが、手作りのさば寿司をもってきてくれた。
肉厚のさばのうえに昆布がまかれ、こんなにおいしいさば寿司は初めて、というほどの旨さだった。

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今回の「いのちの対話」の一部は、「日曜はがんばらない」(毎週日曜10時~、文化放送)で放送する予定だ。
また、来年2013年2月2日(土)にも「いのちの対話in四日市」の開催が決まった。
来場したたくさんの方が、次回もぜひ、と言ってくれた。
次回の開催については、詳しいことが決まり次第、お知らせするので、ご興味のある方はこのブログや鎌田のHPをチェックしていてください。

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2012年12月13日 (木)

戦火から本を守る

アメリカがイラクを攻撃しはじめたとき、イラクの南部の大都市バスラは戦火にみまわれた。
そのとき、バスラの図書館員の女性が、命がけで本を守った。
数百年前の本など大切な本を、隣のレストランに運び出し、その後、自分の家で本を管理したのだ。
この話が、「バスラの図書館員」という絵本になった。

1211241__ 真っ黄色に色づく銀杏

ぼくは、その図書館員が生きているか気になって、JIM-NETの現地スタッフで院内学級の先生であるイブラヒムさんに探してもらったことがある。
彼女はなんと図書館長に出世していた。

たくさんの本を運び出したため、腰を痛めていた。
ぼくはヨルダンでコルセットを買い、イブラヒムさんにもたせた。

日本でも、1944~45年にかけて、日比谷図書館が40万冊の蔵書を疎開させた。
図書館員や都立一中の生徒たちが、奥多摩や埼玉県志木市に何度も運び、本を戦火から守ったのだ。

戦火から文化を守ろうとする思いは、時代や国を超えている。
この取り組みを紹介したドキュメンタリー映画「40万冊の図書」が、本日13日から3日間、東京・日比谷図書文化館で上映される。
この映画には、イブラヒムさんが取材した際の映像も使われている。

上映スケジュール
12月13日(木)①10:30~12:05 ②13:00~14:35 ③15:00~16:35
12月14日(金)①10:30~12:05 ②13:00~14:35 ③15:00~16:35
12月15日(土)①10:20~12:00

場所 千代田区立日比谷図書文化館

詳しくはこちら↓

http://hibiyal.jp/data/card.html?s=1&cno=1602

ぜひ、ご覧ください。

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2012年12月12日 (水)

鎌田實の一日一冊(157)

「弁当づくりで身につく力」(竹下和男著、講談社、1260円)

竹下先生がはじめた「弁当の日」をぼくは応援している。
二人で共著もある。

先日、「弁当の日」がはじまった学校がある町、香川県の綾川町に行ってきた。
竹下先生はこの町に生まれ、今も住んでいる。

ぼくはこの町にある陶(すえ)病院の大原院長をよく知っている。
この先生から頼まれ、地域で生き、地域で死ぬことについて講演をした。
ちょうど、竹下先生は東北に講演に行っていて会えなかったが、奥さんとお子さんがごあいさつに来てくれ、新刊のこの本をいただいた。

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このなかに、すてな作文が紹介されていた。
弁当の日がはじまった竹宮小学校の、ひじきのたきこみごはんをつくった女の子の作文である。
自分で食べてみて、おいしくなかった。
だが、お父さんは「おいしかった」と言って、にっこり笑ってくれたことが書かれている。
「お父さん、ごめんね。今度はもっとおいしいものをつくってあげる。(中略)お父さんのやさしい心は私にはとてもうれしかった。そして、ますますお父さんが好きになった」
なんだか、じんとくる作文である。
これからも「弁当の日」が、日本中の学校にもっともっと広がるといいな。

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岩沼、二本松へ

青森の階上町から南下して宮城県の岩沼へ。
今回、南三陸、陸前高田、八戸、階上とすべて海岸沿いを訪ねてきた。
岩沼でも大きな被害がでて、市の40%は崩壊と浸水している。
180人の人名も失われた。
市の職員も4人亡くなった。
住民に避難を呼びかけて、命を落としたという。
まだ子どもが小さい方もあり、遺族はいたたまれない思いだろう。

なんとかみんなで悲嘆を支えようと、講演で話をした。
講演の後、サイン会をしていると、「来てよかった」「元気がでた」「これからは泣くことも平気かもしれない」と話しかけてくれた。

この後、講演をしに福島の二本松へ。
第五回福島百年未来塾で、「困難な時代をどう生きるか、命・食・放射能・絆を考える」と題して講演した。

無農薬研究所が主催である。
20年かけて土地を変えながら、無農薬農業に取り組んできた人たちが、放射能のために甚大な被害を被っている。
ヘリコプターの農薬散布などに抵抗してきた人たちだ。
食の安全をずっと考えてきた人たちだ。
それが、一瞬で放射能に汚染されてしまった。
ここにも悲しみがあふれていた。

原発の城下町から来た人もいた。
原発はいやだと思いながら、なかなかいやだと言えなかったという。
よくわかる。空気に負けてしまうのだ。

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1時間半の講演が終わると、今度は1時間、みんなで収穫祭をした。
つきたてのもちや料理がいっぱい並んだ。
農家の人たちが心をこめてつくってくれたものだ。
たくさんの人が集まり、若いお母さんがどうやって子どもを守るか、泣きながら質問してきたりした。
おばあちゃんは丹精こめてつくった野菜を食べてもらえず、生きがいをなくしかけている。
こうした状況を変えていくには、徹底的に放射能を測定し、その数字をオープンにすることが基本だと思う。
福島の米も野菜も、95%はほとんど放射能が検出されていない。
出たとしても、100ベクレル以下という規制値をはるかに下回る、5ベクレルとか、10ベクレルだ。
で、したほうがいい。
お米は全袋調査をしたことで、昨年に比べて買ってもらえるようになった。

無農薬野菜なども、放射能ゼロのものだけをしっかりとデータを明記して出したら、無農薬野菜を買っていた人たちも、安心でき、さらに福島の農家を応援したくなるとい気持ちになるのではないか。
測定結果をしっかり示すことは、消費者もどれを買うか、それぞれの価値観で選択できるようになる。

それにしても、こんなに農業を愛している人たちがいることを知り、うれしくなった。
この人たちの情熱をなんとか支えてあげたいとも思った。

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2012年12月11日 (火)

東北の縄文

八戸にある是川・中居遺跡はすごい。
ぼくは、季刊「コトバ」で「我々はどこから来たのか」という連載をしているが、ぼくたちのルーツを探る縄文の文化にふれるのはとてもうれしい。

3000年ほど前のものが多く、そのうるしの工芸には目をみはるものがある。
焼き物やかご、弓矢などにもうるしがぬられている。
しかも、芸術的だ。
黒いうるしが塗られた上に、赤が重ねられ、現代アートにも負けないくらい感性の鋭い作品がいっぱい残っている。

1211304___2 八戸の港

何から何までうるしがほどこされているのをみると、うるしを採取する仕事なにど、仕事が分業されていたのではないかと思う。
東北には、1万年前の旧石器時代の跡があるので、おそらく2万年前にカムチャツカ半島を下ってきた人たちが縄文文化をつくったのではないか、と学芸員から説明を受けた。

遮光土偶もすごい。サングラスのように見えるのは、デフォルメされた表現。
このデフォルメという手法が、感性の豊かを物語っているように思える。
3500年前の水差し口がある焼き物は、今の急須によく似ている。

Photo 縄文の祈りの声が聞こえてくるような、合掌土偶

国宝に指定されている合掌土偶はさらにすばらしい。
乳房と女性器がみられるので、おそらく女性。
仮面をかぶって、頭の後ろでとめている。
茅野市の縄文のヴィーナスより400年ほど新しいようであるが、茅野でも仮面土偶がでているので、同じように、お祭りとか、祈りの儀式に使われていたのではないか。
この合掌土偶は一段高いところに奉られるようにあったという。
狩猟の豊かさや自然の恵みを祈り、子どもが無事に生まれ育つことを祈っていたのかもしれない。

細工も芸術的。
縄文がこすられて、消されているところもある。
補修のあともあるという。
この時代にすでに土偶の補修をする技術があったことも驚きである。

合掌土偶をじっとみていると、縄文の声が聞こえてくるような気がする。
見ていて、あきない。

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八戸、階上へ

南三陸、陸前高田をへて、青森県八戸市へ。

高台のしゃれたカフェを見つけ、ブルーマウンテンブレンドを飲んだ。
そこから八戸のまちを望む。
まちも港も、津波で大きな被害を受けたのだ。

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八戸から少し南へ下ったところにある階上(はしかみ)は人口1万5000人という小さな町。
神社の宮司さんが東門というジャズのライブハウスをやっているとのこと。
ちょっとしゃれている。

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ここ階上は、ウニやアワビが有名。
ウニやアワビがあふれるほど入ったいちご煮は、めちゃくちゃおいしかった。

夜遅く、青森屋という温泉宿に到着。
ここでは毎晩、津軽三味線のライブがある。
ぼくは父・岩次郎の影響を受けて、津軽三味線が大好き。
津軽三味線を聞くと岩次郎さんのことを思い出す。

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講演も、用意した話ではなく、岩次郎さんの話ばかりしてしまった。
しかも予定の1時間を超え、2時間近くも。
岩次郎さんがぼくの頭の後ろについているような気がしてならない。

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2012年12月10日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(125)

「拝啓、愛しています」

2011年の韓国映画。
12/22、シネスイッチ銀座、シネマート新宿ほか、全国順次公開。

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鎌田も、次のようにコメントしています。

「韓国映画はしばらく見ないと決めていたが、見てよかった。
愛、友情、支えあい。
ジーンときた。
いい映画は、やっぱり、いいなあ」

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温かいつながり

陸前高田の市長にお会いした後、復興商店街に行った。
そこで、にこまるという店で丼を食べた。
海藻とシイタケの丼で、これが非常にうまかった。

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ワタミの会長がこの町の参与になり、コールセンターをつくるなど、きめ細かい支援をしているようだ。
ワタミの居酒屋は進出しないで、地元の若者たちがやってい居酒屋を教育したりしながら、起業するコツを教えているようだ。
このシイタケもワタミで買ったりしているようだ。
カツオもうまかった。

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講演の後、打ち上げ会で若者40人ほどが集まった。
みんな陸前高田をよくしたいと熱い思いを抱いている。
県外からも何人かボランティアで入り、そのまま居つきそうになっている人たちもいるという。

今回、南三陸と陸前高田を訪ねるのは4、5月ぶりだった。
そのときに会った人が、今回も訪ねてきくれた。
東北は、人と人のつながりが密だなと思う。
つながりを大切に、また応援に行きたいと思っている。

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2012年12月 9日 (日)

地域医療の同志

県立高田病院の院長・石木先生は、震災前から諏訪中央病院の地域医療に関心があり、陸前高田でもやりたいと言っていた。
以前、医師が地域からいなくなるというNHKのテレビ番組があったが、石木先生は陸前高田から、ぼくはスタジオから“共演”したことがあった。
その後、盛岡でのぼくの講演会に来てくださったこともあった。

Img_7646 石木先生とカマタ

石木先生は、今回の津波で奥さんを亡くした。
それでも、ずっと地域の人を支え続け、いまはプレハブの県立高田病院で、その陣頭指揮をとっている。
当初、医師が足りず4人しかいかなったが、いまは9人になった。

なかなかツワモノの石木先生、今後も応援したいと思った。

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きっと仕事に救われるときが

今回は陸前高田を訪ねた一つの目的は、三人の保健師さんたちに会うことだった。
一人は家と夫を失い、なかなか立ち直れなかった。
もう一人は家と夫とその後の事故で右腕を失った。
たくさんの大切なものを失い、みんな悲嘆に暮れていた。

Img_7643 陸前高田の市役所は、嘱託も含めて100人を超える職員が亡くなった

仕事を続けるかどうか、ぼくに相談してきた。
ぼくは絶対にやめてはいけないと話した。
「仕事があなたを救う。
あなたの仕事は人を助けることができる。人を助けているうちに、あなた自身が救われるときが絶対に来るから、仕事を続けなさい」と強く、背中をおした。
二人とも、迷いながらも、徐々に立ち直ってきているという。

三人目は、住んでいた家と、あと少しで引渡しとしいう新築の家を流された。
1800万円が消えたという。
それでも明るい。

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2012年12月 8日 (土)

昼はデイサロン、夜は居酒屋

南三陸で講演をした後、陸前高田へ移動。
夜は陸前高田で在宅ケアをしている介護、看護、医療の人たちに講演した。
当初は、参加者約100人だったが、うわさを聞いた市民がさらに50人参加。
陸前高田の在宅ケアをすすめる第一回の会合になった。
市民も参加したことで、とてもいい感じになった。

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建物だけつくればいいということではなく、その地域に血を通わすような在宅ケアを広げたい。
そんな思いをもつ若者たちが多いこともわかった。

陸前高田の仮設住宅には、干し柿がつるされていた。
ここに、昼はデイサロンやお茶っこクラブ、夜は居酒屋(といっても、お酒を売る許可がないので、お酒は自分でもちこむ)になるスペースがある。

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ぼくが訪ねたとき、おばあちゃんたちがデイサロンに集まっていた。
看護師が2人いて、血圧を測ったり、健康の話している。

90歳のおばあちゃんも2人いたが、実に元気で、おかしい。
津波なんかで負けていないという。

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「家が流れた人は何人?」とぼくが聞くと、「全員、全員」と大笑い。
「家を流されなければ、ここにはいないのよ」という。
本当はつらいことなのだが、笑い飛ばす力は力強い。

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広がるチョコ募金

チョコ募金が好調だ。
受付開始から3日にして、2万8700個の予約があった。
チョコレートの発送は、障害者の共同作業所から順次おこなわれる。
とても張り切って、発送にあたってくれているようだ。

関東周辺の生協の連合会であるパルシステムからは、1万個の購入の申し出をいただいた。
ありがたいことだ。
頚椎障害で一時期、寝たりきりになりかけた70代の女性から、こんなうれしい絵手紙をいただいた。

001

この女性は、リハビリで復活し、ほとんど握力のない手で絵手紙をかいている。
こういう方がたに、ちょっとずつチョコを買っていただき、口コミで広がってきた。

昨年購入して「とてもよかった」という長野県の方からは、
「自分がとても楽しめて、喜びをだれかと分かち合え、それがだれかのためになる。イラクや福島につながっていく。そう考えただけでうれしくなってしまいます」
とうれしくなるメッセージをいただいた。

JIM-NETの佐藤事務局長が、11月27日からの5日間、毎日新聞「時代を駆ける」で紹介されたが、そこでもチョコ募金の取り組みが紹介された。
この新聞を読んで、新しいお付き合いもはじまった。
こうやって少しずつだが、福島やイラクの子どもを応援してくださる人が増えている。

明日9日の「日曜はがんばらない」(文化放送、10:00~)では、チョコ募金のことを話す。
村上信夫さんも、友情でたくさん募金していただいた。
村上信夫さん、ありがとう。

みなさんも、ぜひチョコ募金のことを広めてください。
この取り組みが「伝言ゲーム」のように広がるといいなあ。

                 ◇

村上信夫さんとは、12/9、三重で「いのちの対話in桑名」で、久しぶりの命の話をする。
日本中どこをあるいても、NHKラジオでやっていた「いのちの対話」を聞いていてくださった人が多い。
今回の「いのちの対話」は一日だけの復活。
ぜひ、会場に聞きに来てください(詳しい内容はくちらhttp://www.ffield.jp/)。
この模様は、少しだけだが、後日、「日曜はがんばらない」で紹介する予定。

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2012年12月 7日 (金)

居心地のよい「ひなたぼっこ」

南三陸の「ひなたぼっこ」はケアマネジメントをする事業所。
いま、6人が働いている。

ここで働く三浦さんは、町の保健師さんだった。
在宅ケアが好きで、地域の在宅ケアの充実をめざし、退職して開業した。
やっと軌道にのったところで津波にあった。
事業所を失った。
500万円かけた投資が全部流れてしまった。
ご主人も失った。

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それでも、夢をあきらめなかった。
再開を計画していたところで、難民を助ける会が、彼女に支援の手をさしのべた。
「ひなたぼっこ」という建物をつくるのに1000万円の寄付をしてくれたのだ。
なかなかできる支援ではない。

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内部は、薪ストーブがあって、とても居心地がいい。
南三陸は町のほとんどが流されてしまい、カフェなどもない。
「ほっと一息つけるところがあったら、どれほどいいだろうな」とぼくが提案したら、「私もそう思う」と三浦さんも言う。

諏訪中央病院の若い医師たちが中心になって、みんなでヨガをしているが、そのとき1回500円の募金をつのっている。
そのお金の約7万円を託されたぼくは、ひなたぼっこに渡してきた。
仮設住宅で暮らす人たちが精神的に疲れたときにここに来て、お茶をのんでいただくとき、そのお茶代にしていただくことになった。

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南三陸にボランティアに行ったら、ぜひ、ひなたぼっこを訪ねてみてほしい。
居心地のいい空間に、ほっと一息つけると思う。

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仮設での介護

南三陸の老人保健施設を訪ねた。
ここで、震災直後、原村でカナディアンファームをやっている友だちのハセヤンが炊き出しをしたという。
ハセヤンは、なかなかやる。

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ハセヤンが得意の大工仕事で建てた漁師さんの作業小屋は今もある。
この小屋のおかげで、漁にでる決意ができたという漁師さんもいるそうだ。

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往診にいくと、89歳のおばあちゃんが入浴サービスを受けていた。
3人のスタッフにかこまれて、とてもしあわせそう。

要介護5で、お嫁さんが介護している。
仮設住宅暮らしだ。
お嫁さんは津波で娘さんを亡くした。
娘さんの夫が、2人の子どもを必死に育てている。

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おばあちゃんの介護は納得しているので、どんなことがあってもやり続けるが、子ども2人を残して亡くなった娘が不憫で・・・と泣く。
家をさらわれ、娘を亡くした悲しみはとても大きい。

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復興はまだ遠く

久しぶりに南三陸に入った。
遠い、とにかく遠い。
諏訪中央病院で外来をして、電車に飛び乗り、乗り継ぎながら南三陸に着いたのは7時間後。
夜遅く温泉宿に着いた。
おかみが挨拶にきてくれて、震災の日から今日までの話をしてくれた。

Img_7580 宿から見た朝焼け

このあたりは二階まで浸水したものの、二階以上はなんとかなったことと、小さな温泉のほうがダメージが少なかったため、2011年5月3日まで、避難所として開放していたという。
将来、地域の産業を復活させ、地域の雇用を確保していくためには、会社の経営者たちに元気になってもらいたいと、地域の経営者を泊めたそうだ。
そして、すべてのスペースは、町の人たちに開放した。
困ったことは、上水道が止まっていたので、トイレの排水などだった。
5月3日以前は、まったくの持ち出しだったが、それ以降は国から決められたお金をもらえるようになって、少し息がつけるようになった。

気仙沼につくったばかりの水産工場があったが、流されてしまった。
新しい冷凍機械などを入れて50億円の投資をしたが、すべて流されてしまい、経営的に苦渋の日々だったが、社員を辞めさせることなく運営することができた。
この心意気は、大したものである。
おかみは、「おかげさまで、今までは来なかった九州や関西のお客さまが東北支援のために来て泊まってくれる」と感謝の気持ちを述べていた。

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Img_7584 南三陸の広い範囲が津波で奪われた

南三陸では、基本的には高台移転を考えており、今まで町があった場所には、工場や商店街をつくるという。
地盤沈下が激しいため、かさ上げしないといけないそうだ。

住民に聞くと、1年9ヶ月たっても、復興という感じはまったくしないという。
新しい建物がたたないため、ヤキモキしている。
このままでは若者が仕事を求めて、どんどんよその町へ出て行きそうだ。
住民に聞いても、行政マンに聞いても、縦割り行政のなかで復興はなかなかすすまないという。
国土交通省がいいと言っても、財務省でOKがでなかったり、復興庁が理解を示してもその後なかなか話がすすまなかったり・・・。

住民のいらだちと不安が痛いほどわかった。

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2012年12月 6日 (木)

鎌田實の一日一冊(156)

「扉を開く人 認知症の本人が語るということ」(クリスティーン・ブライデン著、NPO法人認知症当事者の会編集、永田久美子監修、クリエイツかもがわ、2100円)

46歳でアルツハイマー型認知症と診断されたキャリアウーマン。
その人自身が語っている。

アルツハイマー病は壊れていく脳細胞があっても、いいところがまだいっぱい残っている。
その残された部分を最大限に使って、ご主人の支えを受けながら、病気になっていく自分を語っていく。

スーパーに買い物にいくと、自分がどこにいるかわからなくなってしまって、脱出できなくなる。
講演旅行に行くが、その旅の準備がたいへん。
計画を立てるのが苦手。
何を持っていったらいいのかも、決めることができない。
決めても、何を決めたのかすぐに忘れてしまう。
パニックになってしまうこともあるという。

でも、できることも多い。
洗濯機は今も使いこなせる。
終了音が鳴ったら、すぐに洗濯物を干す。
ほかのことをしていると、洗濯物のことは忘れてしまうので、すぐに干すのだ。
これなんかは、ぼくも同じような気がする。
やりかけにしないで、必ず終わらせるようにしている。

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世間では認知症に対して、ぼけているとか、苦しんでいるとか、子どものようだとか、何も解らないと思い込んでいるが、けっこういろんなことが解っている。
苦手なことがあったり、判断ができないこともあるが、霧の中いるような感じで、感情やスピリチャリティーは残っている。
著者は、そこに目を向けてほしいという。
認知症患者は「心がからっぽで、抜け殻ではない」と言う。

いまケアをしている人にとって、ヒントになる本。
ケアをしてない人にとっても、人間とは何かを考えさせてくれる哲学的な本だ。

「私は残された一瞬一瞬を宝のように大切にしていくつもりです。
私は全力をつくして認知症の人のために提言を行い、変革に貢献しました」
というクリスティーン・ブライデンの言葉は力強い。

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2012年12月 5日 (水)

いのちの党発足

本日12月5日の夜、「いのちの党」が発足する。
山梨で農業をはじめた菅原文太さんが働きかけてきた。

JALの稲盛会長や鳥越俊太郎さん、そして、鎌田實も参加することになった。
この時期に新しい党を発足することは、いろいろな憶測を生むが、選挙には出ない。
命を大切にする国づくりを強く呼びかけていこうという、ゆるやかな集まりだ。

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Img_1739 菅原文太さんとカマタ

このままでは日本は落ちるところまで落ちてしまう。
今回の選挙も、本当に入れたい党や人がなかなか見つからない。
政治にはなんとか立ち直ってもらいたい。

いのちの党は、政治ではないもっと広い土俵で、国づくりを支えられたらいいなと思う。

いのちの党の志

―いのちの党は、この国が経済先進国であるだけではなく、真の民主主義の精神が国民と政治に根ざした国となるよう、現在と未来の選挙民と立法府、行政府に提言するための、志を持つ個人の緩やかな集まりである-

1、国民主権の憲法の約束にいのちを吹きこみ、国民こそが真の意味での主権者となる社会をつくることを願い、提言する。
2、消費を楽しむ三次産業の社会から、生産を楽しむ一次、二次産業の社会への転換を目指し、そのために生産基盤となる地方に眼差しを注ぎ、かけがえのない価値を持つ農山村を再生し、活力をつける政策を提言する。
3、個人の尊厳を大切にし、人と生きもののいのち、地球のいのちを守ることが公共の精神の柱となる社会を願い、提言する。

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2012年12月 4日 (火)

チョコ募金が好調なスタート

福島やイラクの子どもたちを支援するチョコ募金の受付が、3日から始まりました。
現時点で、なんと1万1000個を突破。大口予約の申し込みもあり、あわせて2万個を超えました。
幸先のよいスタートです。

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今年のチョコ募金のコンセプトは「あしたのチョコレート」。
すでに鎌田の講演では何箇所か試験的にチョコ募金をお願いしました。
各会場にもっていった200個は、短時間でほとんど完売しています。
ありがたいことです。

今年の缶のデザインもかわいいと評判です。
アラビア文字のデザインがかっこいいという声も聞こえています。
チョコレートは、六花亭のおいしく安全なチョコレートです。

これから、大沢悠里さんや永六輔さん、大竹まことさん、菅原文太さんらのいろいろな番組で取り上げていただく予定です。
みなさんも、ぜひ、ご協力ください。
お申し込みはこちらから↓

http://www.jim-net.net/choco/

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鎌田實の一日一冊(155)

「モーツァルトとレクター博士の医学講座」(久坂部羊著、講談社、1470円)

著者は、ドクターでミステリー作家。
一般の人があまり知らない医学の話がおもしろい。
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牛乳は骨粗しょう症の予防にならないとか、しゃっくりのとめ方とか、アルコールを飲むとトイレに行きたくなる理由とか、血圧と高いとなぜ悪いのかとか。
それに、おもしろくて、ウソがいっぱいの医学とか、モーツァルトの耳は出来損ないだったとか、なんだかわけありの話がいっぱいだ。
とても楽しい本だ。

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動画:後輩たちが頑張ってます

和田小学校の子供たちが、鎌田實の「ようこそ先輩」収録をきっかけに、国際医療貢献に興味を持ち、エコキャップ活動にのりだした。

ペットボトルのキャップ800個が、子供1人分のワクチンになる。

子供たちの活動は、和田の町全体をまきこんで、目標の100万個を大幅に上回る130万個を達成!ワクチン1600人分に相当する。

ぼくの後輩たちが、がんばっています!

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2012年12月 3日 (月)

冬到来

今朝、岩次郎小屋に雪が降った。

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八ヶ岳は真っ白だったが、いよいよ里にも雪が積もるようになった。
本格的な冬がはじまった。

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鎌田劇場へようこそ!(124)

「東ベルリンから来た女」

来年1月公開。

2012ベルリン国際映画賞銀熊賞受賞。
ベルリンの壁が崩壊する9年前の話である。
東ベルリンの病院で働いていた優秀な小児科の女医さんが、西側に移住申請親したため、田舎の病院に左遷される。
しかも、秘密警察が反体制的ということで、彼女を監視する。
それでも彼女は、西側に脱出しようともがく。

主役を演じるのは、ニーナ・ホスという女優。
ほとんど笑顔のない演技をし、独特の存在感をかもし出している。

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彼女は激しく、孤独を選ぶ。
自由のない東側の考え方を拒絶する。
病院に自転車で通うシーンが印象的。
この光景がなんとも美しく、かっこよく、毅然としている。
最後にも、西側に脱出するとき、真っ暗闇のなかを一人の女の子を自転車の荷台に乗せて走る。

どんでん返しが待っている。
拒絶してきた東側の社会のなかで、新しい愛の形が育っていく。
こんな愛の形があったのかと思うような、すてきな映画である。
映画の好きな人にはぜひ、ぜひ、おすすめの映画だ。

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原発事故526

チェルノブイリ原発事故の収束作業にかかわった11万人の作業員を20年間、フォローしたいくなかで、137人の白血病を確認したという。
これら11万人は、86~90年までに積算で200ミリシーベルト未満の比較的低線量被曝だった人を対象にしている。

1211148__ 福島で

被曝量が100ミリシーベルトを超えるとがんになる率が0.5%高くなるといわれている。
11万人の0.5%は550人。
このことを考えれば、白血病が確認されたのは137人だが、おそらく400人近くはほかのがんを発生している可能性がある。
チェルノブイリの作業員にがんが多いのではないかということはずっと言われてきているが、統計的にはわからないが、おそらく間違いない事実ではないかと思う。

問題は、10ミリシーベルトとか、20ミリシーベルト以下というさらに低線量の被曝による健康被害のリスクだ。
これはなかなかわからない。
わからないこそ注意していったほうがいい。

やっぱり原発はできるだけ早く、絶対につくらにないことを決定し、2030年には原発をゼロにするという大目標をもつべきではないだろうか。

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2012年12月 2日 (日)

そば3種

茅野市の登美のそばは、やっぱりうまい。
この店オリジナルの田舎そば、十割そば、九一のつなぎを使ったそば。

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九一そばは、おろしで食べた。
生ワサビをきかせて食べると、天下一品だ。

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12/3チョコ募金受付開始

JIM-NETのチョコ募金2013のお披露目会には、たくさんの人か集まってくれた。
チョコを買っていたただいたばかりでなく、それぞれがたくさんの人に広めてくれるということだ。

Img_7578

Img_7574 2013年のデザインをお披露目

Img_7579 チョコ募金を応援してくれている篠田さんと

チョコ募金の受付は、いよいよ3日からスタート。
みなさんも、ツイッターやブログ、口コミなどでたくさんの人に紹介してください。

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2012年12月 1日 (土)

がんばらない経済学⑭

中国の商務大臣が、「日本と中国の産業は密接につながっている。今のような状況はみたくない」と言い、中国政府は、法律に基づいて、すべての外資系企業とその人員を守ることを強調したという。

チャイナリスクを感じた世界は、中国への投資をひかえはじめている。
今年の夏、激しい反日デモが起きるまで、中国への投資は日本が最大であった。
だが、その日本もいまはチャイナリスクを感じて投資を控えるだけでなく、貿易も減らしている。
もちろん、日本も苦しい。
チキンレース、我慢比べになってきている。
中国にとっても、経済は厳しい状況にさしかかっている。
世界からチャイナリスクが語られるようになり、中国から東南アジアへと工場が移転されはじめたことに、やっと中国も気がつきはじめた。

Img_7516 快晴の日の八ヶ岳

日本は、ここががんばりどころである。
中国に対しては毅然とした態度が大事だと思うが、机の下でお互いに分かり合えるパイプを探すのが政治家の役割である。
ぼくが政治家だったら、尖閣諸島について、中国人も日本人も納得できるような棚上げの舞台をつくってみせるのだが。
それだけの大きな政治家がいないのは残念である。

あれだけの権力を長く保持していた自民党も、中国とのパイプをつくれない。
民主党は完全にお子様ランチ。
石原さん一流の揺さぶりのわなに簡単にはまって、国有化して、その国有化の意味を中国に説明することもできず、こんなチキンレースになってしまっている。
中国の政治家はガキだ。
日本の政治家も、中国の政治家も、もっと大人にならなければ。

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諏訪中央病院カレンダー

諏訪中央病院の2013カレンダーができました。
四季折々の美しい風景がお楽しみいただけます。

病院の売店で1部500円で販売中。
ポストカードもあります。

Suwachu2013

題字:鎌田實
イラスト:小海保美
写真:笹川康成

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