鎌田劇場へようこそ!(130)
「こうのとり、たちずさんで」
「ふくしま・うた語り」のなかに、加藤登紀子さんが作詞作曲した「スマイルレボリューション」というのがある。
その曲の解説で、この映画について書いている。
テオ・アンゲロプロス監督の1991年の作品である。
マストロヤンニとジャンヌ・モローが主演。
1988~98年、共産圏の国で民主化運動が活発になるなか、アルバニアには自由がない。
アルバニアとギリシャの国境のまち、ふきだまりが舞台。
国とは何か、難民の夢とは。
「飛び立ってよそにいけるか、死か、それが国境だ」というセリフが出てくる。
ところどころギリシャ悲劇をモダンにしたような形で、斬新で不思議なシーンが続く。
マストロヤンニは言う。
「私たちはまた国境を超えた。ふるさとに着くまであといくつの国境を超えなければいけないのか」
人が本当に身も心も属していると感じるひとつの場所、ふるさと。
そのふるさとを求めて、ぼくらは生きている。
ときには本当にふるさとを求めて旅にでる。
「そして、忘れるな、旅のときが再び訪れたことを」
このセリフは、監督自身が言いたいことなんだと思う。
ホモ・サピエンスはずっとこの言葉を胸に生きてきたのではないのだろうか。
出アフリカに成功したときから、旅はずっと続いている。
しびれるほど美しいシーンが続く。
さすがアンゲロプロス。
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