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2013年3月 9日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(133)

「わすれないふくしま」

四ノ宮浩監督作品。
たくさんの人にみてもらいたい。
静かな怒りが全編にみなぎっている。
ふるさとを奪われた人の悲しみ。
働く場を失った人の憤り。
「原発さえなければ」と壁に悲痛な叫びを残して、自ら命をたった菅野さん。

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たくさんの命が奪われた。
たくさんの夢や生きがい、希望を奪われた。
そのなかで必死に生きる人たちの姿が淡々と描かれていく。
ぼくたちがどれほど大きな間違いをしたかがわかる。
美しい福島を、ぼくたちは忘れてはならない。

「先祖になる」

池谷薫監督作品。
いい映画だ。
主人公の佐藤直志というおじいちゃんがなんとも素敵。

陸前高田で息子を津波で亡くし、家が崩壊した。
それでも、仮設住宅に住むことを拒否し、津波で残ったすきまだらけの家にベニヤ板を張り、生活をはじめる。
77歳の老人が、「家が流されたら、また建てればいい」とすべてを受け入れながら、新しい家を完成させる。
いい笑顔をしているのだ。

こんなおじいちゃんになりたいと思う。
ぼくとは一まわり違う。
あと12年でこの域に達することができるか、ちょっと自信がない。

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今度、陸前高田に行ったときには、佐藤直志さんに会ってみたくなった。
佐藤さんを支える菅野さんも魅力的。
ぼくと一つ違いの団塊の世代。
東北大学に入ったけれど、学園紛争に嫌気がさし、2年で中退。
ふるさとに帰る。
みそやしょうゆなどの製造販売をする。
この菅野さんが、佐藤さんをあたたかく支えるのである。
この友情がなんともいい。

「わすれないふくしま」と「先祖になる」は、同じように震災後に生きる人たちを描いたドキュメンタリー。
だが、決定的な違いは、「見えない放射能」が身近にあるかどうか、だ。
福島では、やはり放射能との戦いが深い傷を残している。
「先祖になる」は、希望に満ちたとてもすてきな映画である。

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