鎌田實の一日一冊(165)
「月の輪草子」(瀬戸内寂聴著、講談社、1365円)
清少納言が、和泉式部や紫式部のことをどんなふうに思っていたのか。
寂聴さんの想像なのだが、清少納言が寂聴さんにおりてきているような感じがしないでもない。
「男たち・・・もう顔も忘れてしまった。男の体の特徴なんて、誰と誰がごちゃごちゃになって格別な思いなんてない。ただ不思議にささやかれた愛語や手紙の一説が昨日のことのように思い出されることが・・・」
「『枕草子』・・・ああ、そんなもの書いたようだけれど、自分が書いたことを忘れるくらいだもの、人がいつまで読んでくれるかなどと大それた期待がない」
こんなことを90歳近くになった清少納言に語らせている。
小説だとわかっていても、本当に清少納言がこんなことを考えていたのではないかと思うような仕掛けになっている。
| 固定リンク