鎌田實の一日一冊(168)
「低線量汚染地域からの報告-チェルノブイリ26年後の健康被害」(馬場朝子、山内太郎著、NHKE出版、1470円)
原子炉から140キロの町、ウクライナ共和国ジトミール州ホロステンのほとんどは、年間積算放射線量が0.5~1ミリシーベルトか、1~5ミリシーベルト。
毎時0.1マイクロシーベルトが多く、高いところでは0.2マイクロシーベルトである。
この地域で慢性疾患をもっている人が78%いる。
ウクライナのドクターたちは、小児甲状腺がん以外に、血管性の病気が多いと報告しているが、IAEAやWHOは認めていない。
放射線をフリーラジカルの一種と考えれば、当然、動脈効果は起きやすくなる。
ウクライナのドクターたちが危惧していることが起きていても不思議ではない。
この本のなかで、ミトコンドリアの研究をしているドクターが、低線量被爆によって細胞のなかのミトコンドリアが影響を受けると指摘している。
ミトコンドリアは細胞全体のエネルギーを生み出す役割をしているが、細胞の老化ともかかわりが深い。
ミトコンドリアが影響を受ければ、細胞全体の老化を早める可能性はある。
この本では確定的なことは何もいえない。
低線量被爆を根拠なくだいじょうぶということはいえないことは確かである。
わからないことは疑っておくことが必要だ。
だから、今の状況では、検診と保養、放射能の見える化をしっかりすすめるべきだ。
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