編集長の遺言
月刊誌「がんサポート」は、創刊10周年を迎えた。
ぼくは創刊号からボランティアで巻頭対談をしてきた。
編集長、深見さんの意気込みにほれたからである。
一般の人が読むがんの雑誌というのは、経営的に大変である。
いくつも雑誌があったが、ほとんど廃刊に追い込まれている。
ぼくがこの雑誌を応援しているのは、いいかげんなサプリメントや健康食品の広告を載せないという主義を守っているからである。
おそらく雑誌をやりくりするには、のどから手が出るほどお金はほしいであろうが、その主義を貫く姿勢は、頭が下がる思いであった。
その深見編集長が、盲腸がんになった。
がんは肝臓や肺、骨に転移していた。末期である。
そんななか、ぼくは編集長の緊急のリクエストに応じて対談をしにいった。
彼が命がけで訴えたことがいくつかある。
①抗がん剤治療は進歩したが、副作用の対策は十分とはいえない。
②進行がんの患者も、適正ながん治療を行えるようにしたい。「手遅れだ」とか言わずに、困難だけれどそれでも治療を受けたい人には、適正な治療がおこなえるようにすべき。
③がんの患者団体の連合をつくり、もっと国民目線でがん治療の進歩を獲得したい。
④これは、ぼくに向けての宿題であったが、がんになっても楽しく生きられるエンジョイヤーが増えるよう、日本の文化を変えたい。
深見さんはみずからの死を覚悟しながらの鬼気迫る状況のなかで、そう語った。
それは、「がんサポート」4月号に掲載され、この10年、日本のがん治療を変えたいと活動してきたジャーナリストの遺言状になった。
今、がんと闘っている方、そのご家族、すばらしい雑誌です。
ぜひ、読んでください。
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