なつかしい青森
青森に来ると、岩次郎の影を感じる。
岩次郎はよく、ホヤやナマコ、菊の花、身欠きにしんなど、ふるとさの味をよく取り寄せていた。
そんな父の影を探して、時間がないのに、つい青森市場に寄ってしまった。
飛行場へ行くまでに10分あった。
10分あれば何でもできると思っているぼくは、青森市場にある食堂で、海鮮丼を頼んだ。
津軽三味線が流れている。
懐かしいリンゴ箱が、椅子やテーブルになっている。
子どものころ、岩次郎さんの実家からリンゴ箱が送られてきた。
なかには、もみ殻に包まれたリンゴが入っている。
そのもみ殻が外にもれないように、ふるさとの新聞が敷かれていた。
岩次郎は、その新聞を隅から隅まで読んでいた。
ふるさとを出て、苦労しながら、病気の妻を守り、行き場のないぼくを拾って育ててくれた岩次郎さん。
とてつもなく大きな存在だ。
海鮮丼はうまかった。
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