チェルノブイリ訪問記⑤
ウクライナの放射能汚染地域ジトミール州ナロジチ地区へ行った。
ここは、年間5ミリシーベルト以上の高汚染地域で、1991年につられたウクライナのルールによると強制移住地域にあたる。
まちの3軒に一軒は無人。
強制移住がはじまり、希望者から転居からおこなわれていったが、途中でウクライナの経済が悪くなり強制移住ができなくなっていく。
結局、5ミリシーベルトの地域でも住まざるをえなくなったのだ。
この結果に対して、ふるさとを離れたくなかった多くのまちの人は、不安と不満と歓迎のごちゃまぜの感情だったようだ。
ナロジチ地区の外側に、1~5ミリシーベルトの地域がある。
移住選が与えられ、自己選択ができる地域で、出ていった人と、残った人たちがいる。
0.5~1ミリシーベルトの地域は放射線管理区域とされ、保養と健診、食品の放射能の見える化が徹底して行われた。
だが、結局、この国は経済が厳しい状況になり、いい基準をつくったはずなのにその通りに実行されず、多くの人が町に残ったことになる。
2万5000の人口は、いま1万1000人。
年間110人の子どもが生まれている。
ナロジチ地区の病院のセルゲイ副院長と話をした。
彼は33歳。医学部を卒業後、両親がいる出身地で、勤務医になった。
彼はに7歳の子がいる。
その子をこのまちで暮らさせているのかと聞くと、
いまは0.1マイクロシーベルトくらいなので、家族と一緒に暮らすほうがいいと考えている、という。
かつては1.2~1.5マイクロシーベルト以上の放射線があったが、除染と27年の時間が経過したことによって、町の多くの地域が0.1マイクロシーベルトになった。
強制移住区域ではなく、移住選択区域に替えてらおうという動きもあるという。
福島県の医師たちの子どもの多くは、福島県外に出ている、と福島の若い親たちから聞かされてきた。
福島で暮らすことについて「だいじょうぶ」と言いながら、自分の子どもは県外に出しているということに対して、不信感をもっているのだ。
この副院長は、家族がばらばらにならないことを選んだ。
だが、この地区で子どもを育てるために、注意も怠らない。
放射能の食品の測定。特に子どもが食べるものは、安全な地域から作物を買っている。
保養はどうだ、と聞くと、
年3回、行っているという。
国が補償してくれるのは1回のみ。その1回さえも、国の経済が厳しく、許可がでないことがある。
あとの2回は、彼自身が自分のお金で子どもを保養に出している。
一回の保養は24日間。
0.1マイクロシーベルトの地域でも、子どもを24日×3回、安全な地域に出している。
ここは日本もみならったほうがいいと思う。
何もしないで、汚染地域に住んでいいということではない。
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