チェルノブイリ訪問記⑥
ウクライナ政府は、事故後25年の健康被害の状況をまとめた。
その小児科の担当教授エフゲーニャ・ステバーノバさんに話をうかがうことができた。
ウクライナでは低線量被曝でたいへんなことがおきていると思われがちだが、決してそうではないと教授は言う。
たとえば、貧血などが40数%に増加している。
それは事実だが、その貧血がすぐに白血病につながるということではない。
貧血の原因として、低線量被曝も一つの要因ではあるが、国の経済が悪化したことや、食べ物の汚染により、好きなものを食べられなくなったことなどいくつもの要因も関係している、とウクライナのドクターは考えているようだ。
だからといって、低線量被曝を軽くみているわけでない。
放射線が血管内膜を変化させることは、科学的に究明できている。
放射線は細胞のなかにあるミトコンドリアの被膜などに影響を与え、細胞の老化を早めるということも、アメリカとの共同研究で研究されている。
放射線は、DNAを傷つけるだけでないく、フリーラジカルとしての放射線が血管内膜や細胞を傷つけ、がんのリスクをわずかだが高めていることも、データから明らかになっている。
低線量なら被曝していいと思わないほうがいい、というのはこのためだ。
これは、ベラルーシやロシアのドクターとの共通した考えだそうだ。
周産期の異常も事故後多くなっている。
異常というと、子どもの心臓や手足の奇形といったことをイメージする人が多いが、そうではない。
ウクライナで増えている周産期の異常とは、やや小さな赤ちゃんが生まれやすかったり、流産が多かったりすることを言う。
この点は、ぼくたちがベラルーシで見てきたことと一緒だと思った。
子どもが重い病気になったり、心臓や手足に障害をもって生まれてくるということはほとんどないが、
それでも低線量被曝の健康への影響はある。
その事実を冷静にとらえ、小さい子は高汚染地域に住まわせないようにするために、この25年の健康被害の状況をまとめたのだという。
理にかなった説明を受けた。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 標茶町(2022.11.22)
- 本別へ(2018.06.02)
- 地域包括ケアは工夫次第(2018.02.05)
- 本別の豆まき(2018.02.03)
- 元気な十勝で、地域包括ケア(2018.02.02)