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2014年6月 8日 (日)

鎌田實の一日一冊(206)

「女のいない男たち」(村上春樹著、文藝春秋、1700円)
村上春樹の久々の短編集。
6つの短編のオムニバス。
つながらないような、つながるような、うまい構成でできている。
4話目までは、うーん、かったるいなと思った。
あとはノーベル文学賞をもらうだけの村上なのに、失礼な言い方だが、まるで直木賞作家の上手な小説を読んでいるようで、かったるかった。
ところが、5、6話目は、それまでのかったるさを見事に覆す。
村上ワールドがちらっちらっと出てくる。
渡辺淳一が亡くなった。
ぼくは、渡辺淳一が最後の「流行作家」だと思っていたが、
村上春樹もそうではないかと思った。
うまい。

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暗喩が見事。
「孤独はフランスから運ばれ、傷の痛みは中東からもたらされる。
女のいない男たちにとって、世界は広大で痛切な金剛であり、そっくりそのまま月の裏側なのだ」
「女のいない男たちになるのはどれくらい切ないことなのか、心痛むことなのか、それは女のいない男たちにしか理解できない。すてきな西風を失うこと」
特に最後の「女のいない男たち」はわかりにくいが、「すてきな西風を失うこと」というのは見事な表現だ。
本の種明かしはできないが、自分もいつかすてきな西風を失う日がくるんだろうと思った。
本質を書こうとしている村上春樹の作品から、読者なりの本質を読み取れればいい。
一歩間違えれば、通俗小説のようだが、ぎりぎりのところで人間の不思議な心やどろどろした心を表現している。
やっぱり村上春樹は村上春樹だ。

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