鎌田實の一日一冊(212)
「君たちはなぜ、怒らないのか 父・大島渚の50の言葉」
(大島武、大島新著、日本経済新聞出版社、1620円)
映画監督・大島渚の言葉を、二人の息子が書き下ろした。
(大島武、大島新著、日本経済新聞出版社、1620円)
映画監督・大島渚の言葉を、二人の息子が書き下ろした。
大島渚の素顔がわかり、ほほえましい。
「勝負をするときは、お互い強いやつ、ついてるやつと組まないと勝てない」
『戦場のメリクースマス』は大島作品のなかでも好きな作品の一つだが、
デイビッド・ボーイと坂本龍一、ビートたけしというキャストを集めるのは、大島渚の人生哲学が反映しているからだと思う。
6年間もわいせつ罪の裁判が行われた『愛のコリーダ』。
このときのチーフ助監督は、その後『月はどっちに出ている』が大ヒットした崔洋一。
人たらしで、人をマネジメントすることに、天才的な能力をもっていたようだ。
大島渚の主張は、はっきりしている。
芸術か、わいせつか、という観点をいっさい拒否。
もともとわいせつなどというものは存在しない。
存在するとすれば、それは取り締まる側の警察官、検察官のなかにあるのみだ。
「わいせつ、なぜ悪い」というのが、この裁判に臨む大島渚の態度だった。
『絞死刑』や『儀式』『青春残酷物語』、みんな好きな作品である。
大島渚は常に新しいものをめざし、今までと違う製作方法を選んだ。
そして、今までと違う人との出会いを楽しんだ。
大島渚ファンのぼくにとっては、えらくおもしろく、楽しく、刺激的な本だった。
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