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2014年8月31日 (日)

鎌田實の一日一冊(213)

「北回帰線」(ヘンリ・ミラー、新潮文庫、810円)
このところ、ヘンリ・ミラーに凝っている。
悲しみがあふれている作家である。
凶暴であり、苦悩している作家でもある。
ヘンリ・ミラーは世界に対し、反抗の刃を向けている。
同時に、小説のルールにも反抗している。
男と女の関係でも、つくられたルールにレジスタンスをしている。
狂気があり、恍惚がある。
ポエムを読んでいるような気がする。

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ヘンリ・ミラーの小説には文脈がない。
たたきつけるような激しい言葉が繰り返されていく。
彼の思想の、血みどろで愚劣な、脳みその中身がわかるような小説だ。
感性と知性がめまぐるしく交差する。
性の交わりの記述が、一挙に哲学的な方向へ走り出していく。
ヘンリ・ミラーを読んでいると、自分の不自由さがよくわかる。
自由が大切だと考えてきたが、自分がどれほど非・自由を生かされているか実感する。

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