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2014年8月

2014年8月31日 (日)

鎌田實の一日一冊(213)

「北回帰線」(ヘンリ・ミラー、新潮文庫、810円)
このところ、ヘンリ・ミラーに凝っている。
悲しみがあふれている作家である。
凶暴であり、苦悩している作家でもある。
ヘンリ・ミラーは世界に対し、反抗の刃を向けている。
同時に、小説のルールにも反抗している。
男と女の関係でも、つくられたルールにレジスタンスをしている。
狂気があり、恍惚がある。
ポエムを読んでいるような気がする。

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ヘンリ・ミラーの小説には文脈がない。
たたきつけるような激しい言葉が繰り返されていく。
彼の思想の、血みどろで愚劣な、脳みその中身がわかるような小説だ。
感性と知性がめまぐるしく交差する。
性の交わりの記述が、一挙に哲学的な方向へ走り出していく。
ヘンリ・ミラーを読んでいると、自分の不自由さがよくわかる。
自由が大切だと考えてきたが、自分がどれほど非・自由を生かされているか実感する。

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2014年8月30日 (土)

ほろ酔い勉強会

ちょっと前のことになるが、諏訪中央病院で216回目のほろ酔い勉強会が開かれた。
この回のテーマは、「あなたにもできる被災地支援  石巻の被災地現場から」。
石巻市の雄勝診療所の元所長、小倉健一郎先生、東北大学大学院教育研究科准教授の李仁子先生が講師として来てくれた。

140805___5 小倉先生(左から2番目)と李先生(中央)を講師に迎えたほろ酔い勉強会

震災直後、諏訪中央病院から後期研修医や看護師、理学療法士たちが一か月交代で雄勝診療所に支援に入った。
今回はそのお礼の意をこめて、小倉先生はどれだけ助けられたか話してくれた。

                       ◇
次回のほろ酔い勉強会は、9月17日(水)午後2時~4時。
手・肘の病気について、ワクチン外来について、諏訪中央病院の医師が講師を務める。
ご期待ください。

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2014年8月29日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(173)

「記憶探偵と鍵のかかった少女」
記憶は、実はあやふやで、ときにはうそをつく。
意識の中でつくり直され、事実とは違う美しい物語として残ることも。
他人の記憶に潜入できる「記憶探偵」が、ある少女の記憶の謎に迫る物語である。
少女は病院という「檻」の中に入れられそうになるが、自由を得るため、自らの記憶に蓋をした。
次々に起きる奇怪な事件。
少女は被害者なのか、加害者なのか。
わけのわからない映画である。

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真実を知るためには、思い込みを捨てなければならない。
なぜなら記憶はうそをつくから。
9/27から新宿ピカデリーほかで全国ロードショー。

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2014年8月28日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(172)

「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」
とんでもなく不道徳な男、パガニーニ。
しかし、だれも太刀打ちできないような情熱的な演奏をする天才でもある。
悪魔のバイオリニストともいわれる。
喉頭がんで亡くなった後も、教会は教会の墓地に葬ることを認めなかった。

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正直に、自由に、思いのまま生きた。
なんとも魅力的だ。
こんなふうに自由に生きられたらいいな、とあこがれる。
                   ◇
以前、このブログ(http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/170-613e.html )でも紹介した「グレートデイズ! 夢に挑んだ父と子」
「泣いた!泣いた!
不器用な親子に泣かされた。
人間ってすごい。」
鎌田のこのコメントが入った映画の広告が、先日、朝日新聞と読売新聞に掲載されました。

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2014年8月27日 (水)

サイトウキネンフェスと子どもたち

サイトウ・キネン・フェスティバルin松本が始まった。
長野県と実行委員のご厚意で、福島から郡山ジュニアオーケストラのメンバーと保護者45人が招待された。
6時間かけて、松本までやってきた一行は、「子どものための音楽会」と「兵士の物語」を鑑賞した。
「子どものための音楽会」で、ベートーベンの「第9番」を指揮したのは、なんと小澤征爾さん。
サプライズである。
音楽を志す、小中高校生のメンバーは、目を輝かせた。
「カッコイイ」
「迫力がすごい」
小澤さんは、子どもたちにわかりやすく語りかける。
「第一楽章はもやもやとしているんだよ」と言いながら、かっこいい指揮をした。

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来年からサイトウ・キネン・フェスティバルは、セイジオザワ・フェスティパルに名称を変更するという。
音楽には人を元気にする力がある。
悲しいときやつらいときには音楽がなぐさめてくれる。
うれしいときには、もっとうれしくさせてくれる。
この日、音楽につつまれた子どもたちはとてもうれしそうだった。

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2014年8月26日 (火)

南相馬でロックフェス開催

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南相馬で9月20日、騎馬武者ロックフェスティバルが開かれる。
会場は、雲雀ケ丘野馬追祭場地。
「太陽族」など、プロと地元のアーティストが参加し、南相馬の未来を照らす。
フェスの最後には、ロックバンド太陽族の企画で、みんなの花火を打ち上げる。
参加は無料。

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この応援をかねて、六本木で、加藤登紀子さんと、LUNA SEAのスギゾーさん、鎌田で鼎談を行った。
上の写真は、そのときの会場の様子だ。
9月20日の騎馬武者ロックフェス、ぜひ、たくさんの人に来ていただきたいと思う。

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2014年8月25日 (月)

絵本原画展

ぼくと長谷川義史さんは、二人とも丸眼鏡で、ヒゲ面。
「ほうれんそうはないています」(ポプラ社)を描いてもらうとき、「二人でビューティ・ペアを組もう」と、ラブレターを書いた。
その長谷川さんの原画展が、大阪の淀川に面したすてきなギャラリーで開かれている。

長谷川義史 絵本原画展
「ほうれんそうはないています」

期日 9月27日まで
会場 空色画房 大阪市北区菅原1-5
   開廊は木金土のみの12.0~19.0

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「ほうれんそうはないています」(ポプラ社)をよんだ方も、そうでない方も、ぜひ間近で原画を見てみてください。
感動します。

長谷川義史さんのHP↓

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2014年8月24日 (日)

心の憩いの場所

考え事をするときなど、いつもここを散歩する。
尖石遺跡。
美しい雑木林があるが、その手前には湿原のような水辺がある。
雑木林の落ち葉の上を歩くと、
まるで今も縄文人がいるような気がしてくるから不思議だ。

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尖石遺跡は、縄文時代の人口密度が高く、「縄文銀座」ともいわれた地。
気候が穏やかで、雑木林からどんぐりや木の実がたくさん採れた。
鹿や熊などの肉にもありつくこともできた。

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尖石という石が発見されている。
この近くから黒曜石が出ており、それを使って矢じりが作られた。
ここには矢じりの生産工場があったとも推測されている。
その矢じりは遠く青森の三内丸山遺跡からも出土。
当時、長野から運ばれたと考えられている。
縄文人になったぼくは渋面をつくり、林の中をうろうろと歩き回る。

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2014年8月23日 (土)

知識、衛生、栄養

本来なら今頃、シエラレオネへ行く予定だった。
世界の最貧国で、寿命最短国である。
ダイアモンドが出たために、それを奪い合う争いで国が疲弊した。
そこへ、今回のエボラ出血熱の感染が拡大した。
現在、シエラレオネだけで約400人の死者が出ている。

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もともと貧しいために、栄養状態が悪く、体力、抵抗力がない。
医療体制も貧弱だが、医療関係者160人が感染し、80人亡くなり、さらに医療現場は困窮している。
スラム街の閉鎖病棟が壊され、マットレスやベッドなどが持ち去られた。
エボラ出血熱という病気がどんなものか、どうやって感染するのか、正しい知識を啓蒙していくことが求められる。
エボラ出血熱は、今回ほどではないが、過去にも流行している。
今回の流行を抑え込むには、有効な治療薬がない以上、3つのことが重要だ。
病気に対する基本的な「知識」と、「衛生」状態や「栄養」状態の改善。
これを速やかに徹底して、病気への抵抗力を上げることが大切だ。

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2014年8月22日 (金)

病院の庭

テレビ番組が、諏訪中央病院のグリーンボランティアや食改さんの活動を取材した。
グリーンボランティアのおかげで、病院の庭はとてもきれい。
花が咲き誇っている。

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病院の表玄関の工事も進み、建物が立ち上がってきた。
いい病院ができそうだ。

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2014年8月21日 (木)

緊迫のイラク⑬

スンニ派過激派組織「イスラム国」に制圧されていた、北イラクのモスルにあるダムが、
米軍の支援を受けたクルド人部隊により奪回された。
このダムは、イラク最大のダム。
「イスラム国」により壊されると、イラクが甚大な洪水に見舞われる恐れがあった。

L1050836 イラク難民キャンプ(2008年撮影)

今回の米軍が空爆は、なんといっていいか難しい。
ただ、「イスラム国」が、クルド系住民のヤジディ教徒を「悪魔崇拝」などとし、拉致したり、500人を処刑。
また、キリスト教徒を迫害したりしている。
このことを考えると、仕方ないことなのか。

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2014年8月20日 (水)

ガザで戦闘再開

一時的な停戦を延長してきたが、期限を待たずに、またもや戦闘が開始された。
停戦中の18日の夜中、UNRWAの清田先生と話した。
ガザは完全に封鎖され、物資が届かないため支援食糧が必要という。
これまでガザでの死者は、約2000人。
イスラエル側の死者は67人。

Img_6760 ガザの少年は、今どうしているだろうか(2012年6月撮影)

ハマスはガザの解放を要求しているが、イスラエル側は飲む気がなく、停戦続行は難しいのかもしれないが、
もう両者とも戦争を続けていいことはまったくない。
なんとか話し合いをしながら、和平の道を探ってほしい。

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2014年8月19日 (火)

甲子園に平和を祈る

8月15日の終戦の日、朝日新聞の依頼で甲子園を見に行ってきた。
観戦したのは、第1試合の明徳義塾と智弁学園の対戦。
智弁には、高校通算73本塁打の岡本君がいる。
一方、明徳義塾には、コントロール抜群で、高校生とは思えないスライダーをもつ名投手・岸君がいる。
点数は明徳が10-4とワンサイドで勝ったが、途中まではなかなか白熱したおもしろい試合であった。

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明徳のキャッチャーの水野君は7番バッター。
非力な感じがしたが、大事なところでアンダーを打ち、そのヒットがピッチャーをリードするうえで、差をつけたように思う。
力の差はわずか。
野球はいい風をどう吹かせるかが、勝負の分かれ目になる。
明徳がわずかな差で風をつかんだように思えた。

いつまでも平和のなかで、野球ができる日本であってほしい。
二度と戦争の起きない国になってほしい。
集団的自衛権や秘密保護法など問題はあるが、
なんとか平和な日本を守り続けなければいけない。

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2014年8月18日 (月)

新刊予約スタート

1%は誰かのために生きなさい。

自分、自分、自分、の時代。
今こそ誰かのための「1%の力」が必要だ。
「1%なら」、心も体も動きだす。
「1%ずつ」、事態は好転する。
「1%だけ」視点を変えてみると、
見えないものが見えてくる。
「あと1%」を積み重ねると、
「101%」の結果にたどり着く。
みんなが「1%」生き方を変えるだけで、
個人も社会も幸福になる。

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「1%の力」(鎌田實著、河出書房新社)
2014年9月18日発売 / ¥1,000(税別)/ B6変 / 216ページ
Amazonなどで、予約を受け付けています。
ぜひ、ご予約、ご購入をお願いします。

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お知らせ

「サライ」9月号は、「長寿日本一の国 信州を歩く」と題して、長野県の健康長寿の秘訣を紹介しています。

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減塩や野菜たっぷり、ジビエなどの食、生きがいを持ち続けること、歩くことなど・・・
鎌田だけでなくいろんな方々が、いろんな角度から、健康の秘訣をわかりやすく解説しています。
ふらりと信州に行ってみたくなります。
ぜひ、ご覧ください。

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2014年8月17日 (日)

しらす丼

長崎と福岡に講演に行った。
その帰り、わずかな時間がで、急にどんぶりを食べたくなった。
しらす丼↓

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しらす丼は、どんぶりのなでも、シンプルなどんぶりだ。
長崎市の高台から見た風景。

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2014年8月16日 (土)

お知らせ

「日経ビジネス」8/11、18合併号では、鎌田が「賢人の警鐘」を書いている。
テーマは「命に関わる人々は、もっとクリーンでいなければならない」。
医師や科学者、製薬会社、医療機器メーカーなど、命にかかわる人たちにクリーンであってほしいと思って書いた。

日本人間ドック学会は、スーパー健康人を調べた結果、従来は「高血圧」とされてきた上の血圧が147の人まで「健康」に含まれるというデータを示し、波紋を呼んだ。
日本高血圧学会は、この考え方を否定している。
ぼくは、こう考える。
日本高血圧学会のいうように、130/85以上はやはり要注意で、生活指導が必要である。
でも、すぐに薬を出したりしない。
日本人間ドック学会が緩めた、147/94くらいまでは、生活指導を重視しながら、なんとか薬なしで血圧をコントロールする方法でもいいのではないか。
40年間、地域で健康づくり運動をしてきた経験から、そう考えている。

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どちらの“基準”が正しいのか。
そもそも、その基準はどう決められているのか。
学会では、製薬資本から援助をもらい、臨床試験データの改ざんなどの事件も発覚するなど、癒着が問題になっている。
まず、それらをクリーンしてから、国民のために基準値がどうあるべきか、きちんとした議論をしてもらいたい。

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2014年8月15日 (金)

8月15日

69年目の敗戦の日である。
ぼくは今日この日を、甲子園で迎える。
甲子園では連日、平和の時代に生まれた若者たちが、無心に球を追い、熱闘を繰り広げている。
かつて多くの若者たちが、戦争に行き、帰らぬ人となった。
野球や勉強、音楽、恋愛・・・。
戦争がなければ、当たり前のように人生を謳歌していたはずだ。

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チェロとピアノの名曲「夜の歌」を残した作曲家・尾崎宗吉も、戦場で命を落とした。
この曲に心を鷲掴みにされ、毎朝聞いている。
明日16日の朝日新聞朝刊に、「ぼくが見た8月15日の甲子園」が掲載されます。
ぜひ、読んでください。

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2014年8月14日 (木)

ガザ 停戦延長

イスラエルの新大統領に、前国会議長のリブリン氏が就任した。
その前任者は、建国の父ともいわれるシモン・ペレス氏。
オスロ合意を達成しは、ノーベル賞を受けけている。
イスラエルでは、大統領は大きな権限を持っていないが、和平推進派のペレス氏がいたことはとても重要だった。
しかし、その後任のリブリン氏は右派。
ネタニヤフ首相も右派であり、イスラエルの強硬路線に歯止めをかけるのが難しそうだ。

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エジプト政府の仲介で、一時的な停戦が延長されているが、今後どうなるか予断は許されない。
なんとか本格的な停戦につなげてほしい。

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2014年8月13日 (水)

人口急減社会

少子化と大都市への人口流出で、地方の急激な人口減少が深刻化する、という厳しい予測が出された。
日本創生会議人口減少問題検討会が、全国1800市町村のうち約半数が「消滅する」というデータを出し、波紋を呼んだ。
特に20~30代の若年女性人口が、2040年には現在の50%以下に減る町があるという。

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未婚化、晩婚化などの影響で、子どもの出生率が下がり、現在でもすでに生産年齢人口は8000万人を切った。
このまま、大都市への一極集中が進めば、地方の市町村は存続が危うい。
住みやすいコンパクトシティをどうつくるか、が問われている。
しかも、早くしないといけない。
若者が出て行ってしまった後では、住みやすい環境を作っても、なかなか戻って来ない。
東北の被災地の将来推計はさらに厳しい。
津波に町を襲われたが、これから人口流出という深刻な問題が町に襲い掛かる。
防潮堤ができたらとか、土地のかさ上げをしたらとかというよりも、もっと早く住みやすい町をどうつくるか。
防潮堤にかけるお金で、魅力のあるコンパクトシティをつくったほうが、消滅自治体にならないのではないか。
安全な地域をつくれば、復興かというとそうではない。
このままでは、消滅の可能性が高くなってしまう。
人口急減社会にどう対応するか、大事な問題である。

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2014年8月12日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(171)

「さまよう刃」
めちゃくちゃいい映画である。
東野圭吾のベストセラー同名小説を、韓国に舞台を変えて映画化した。
娘がレイプされ、薬物を過剰投与され、殺される。
その犯人である高校生を、父親が殺す。
父親が娘を亡くした被害者になり、今度は娘を殺した奴を殺害した殺人者になった。

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一つの事件が一人の人生を変えていく。
人間の心の奥までえぐろうとする、見ごたえのある映画だ。
監督はイ・ジュンホ。
俳優も、なかなかの顔ぶれだ。
9/6から角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ新宿などで全国ロードショー。

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2014年8月11日 (月)

100年前のつけ

パレスチナ問題は、100年前にさかのぼる。
第一次世界大戦中、イギリスは、オスマントルコから独立しようとしていたアラブ人に、トルコに対して反乱を起こすかわりに、戦後の独立を承認
すると約束する一方、ユダヤ人にも国家設立を支援するバルフォア宣言を出す。
いわゆる「二枚舌外交」である。
その後1948年、イスラエルが建国され、パレスチナは悲劇の民となり、現在に至っている。

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結局、列強のエゴが問題なのである。
いまイラク、シリア、イランで起きている問題もそうだ。
第一次世界大戦後、オスマントルコ崩壊後、列強のぶんどり合戦により、民族や宗教を無視した国境の線引きが、
現代に火種を残したのである。
今年は第一次世界大戦開戦から100年。
列強のエゴによるつけが、今も大きく世界を混乱させている。

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2014年8月10日 (日)

鎌田實の一日一冊(212)

「君たちはなぜ、怒らないのか 父・大島渚の50の言葉」
     (大島武、大島新著、日本経済新聞出版社、1620円)


映画監督・大島渚の言葉を、二人の息子が書き下ろした。
大島渚の素顔がわかり、ほほえましい。
「勝負をするときは、お互い強いやつ、ついてるやつと組まないと勝てない」
『戦場のメリクースマス』は大島作品のなかでも好きな作品の一つだが、
デイビッド・ボーイと坂本龍一、ビートたけしというキャストを集めるのは、大島渚の人生哲学が反映しているからだと思う。

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6年間もわいせつ罪の裁判が行われた『愛のコリーダ』。
このときのチーフ助監督は、その後『月はどっちに出ている』が大ヒットした崔洋一。
人たらしで、人をマネジメントすることに、天才的な能力をもっていたようだ。
大島渚の主張は、はっきりしている。
芸術か、わいせつか、という観点をいっさい拒否。
もともとわいせつなどというものは存在しない。
存在するとすれば、それは取り締まる側の警察官、検察官のなかにあるのみだ。
「わいせつ、なぜ悪い」というのが、この裁判に臨む大島渚の態度だった。

『絞死刑』や『儀式』『青春残酷物語』、みんな好きな作品である。
大島渚は常に新しいものをめざし、今までと違う製作方法を選んだ。
そして、今までと違う人との出会いを楽しんだ。
大島渚ファンのぼくにとっては、えらくおもしろく、楽しく、刺激的な本だった。

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2014年8月 9日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(170)

「グレートデイズ! 夢に挑んだ父と子」

頑固で不器用な父親が、失業して家にかえってきた。
脳性まひの障害がある息子と、なかなか打ち解けられない。
父親にトライアスロンに出場した経験があることを知った息子は、一緒にアイアンマンレースに出たいと提案する。

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アイアンマンレースは、ただのトライアスロンではない。
もっとも厳しいレースだ。
水泳は3.8キロ、自転車は180キロ、ランニングは42.195のフルマラソン。
こんな過酷なレースを、障害をもっている子と一緒にやってのけることができるのか。
やがて不器用なオヤジと息子との「挑戦」の日々が始まる。
もう、とにかく感動ものである。

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2014年8月 8日 (金)

お知らせ

8月11日の「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京、20.0~)は、ストレスの解消法を特集する。
鎌田は、セロトニンとオキシトシンという二つの幸せホルモンについて、VTR出演する。
ぜひ、ご覧ください。

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2014年8月 7日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(169)

「監視者たち」
姿なき完全犯罪組織を暴く、韓国の警察内特殊組織の活躍を描いたサスペンスアクション。
韓国では大ヒット。観客動員数500万人を超えたという。
迫力がある。
韓国映画は、人間のどろどろした悪の心を表すのがうまい。
人間の善を描くには、善を描くだけでは薄っぺらくなってしまう。
強力な悪に対峙するとき、本当の善の在り方が見えてくる。

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それにしても韓国映画は元気。
ハリウッド映画に負けないような映画づくりをしている。
日本と韓国はあまりいい関係とは言えないが、せめて文化の面ではつながっていることが大事。
どちらの国の人も、お互いの国の映画を見合うような余裕があるといい。
サスペンスやアクションが好きな人はぜひ、どうぞ。

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2014年8月 6日 (水)

イラク戦争と子ども絵画展

イラク戦争開戦から10年が過ぎた。
あのとき、米国大統領が「核を含め危険な兵器がある」と戦争を始めてしまったために、
イラクの子どもたちがどれほど苦しんだか。
この絵画展を見ていただくとわかる。
アメリカの軍需産業、石油産業は大儲けしたが、その陰で泣いている子どもたちがいることを忘れていけない。

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イラク戦争と子ども絵画展

日時 2014年8月9日~14日(14.0~18.0)
    9日18.0~オープニングパーティ&アラブの楽器ウード演奏
         イラク・シリアの現地報告
    10日14.0~17.0 羊のフェルトで小物作り(参加費1000円、
                     前日までに予約をお願いします)
会場 B-gallery(JR池袋駅メトロポリタン口徒歩6分)

http://www.bgallery.info/access.html

主催 JIM-NET
後援 駐日イラク共和国大使館

8月は6、9、15日と戦争の罪を考え、平和への誓いを新たにするとき。
ぜひ、絵画展においでください。

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2014年8月 5日 (火)

鎌田實の一日一冊(211)

「ユマニチュード入門」(本田美和子ほか著、医学書院、2160円)
「ユマニチュード」の「ユマ」はフランス語でヒューマニティの意。
かつて植民地の黒人が自らの「黒人らしさ」を取り戻そうという「ネグリチュード」という言葉を起源とする、「人間らしさ」という意味の造語だ。
このユマニチュード、認知症のケアとして大流行である。
目を見ながら話すこと、会話の続け方、手の支え方や触れ方、立つことなど、看護・介護の基本を徹底させている。

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かつてバリデーションという技術が注目された。
認知症の人を価値ある人間として接することによって、行動・心理症状が激減する。
それに近い。
ユマニチュードの技術は、ぼくたちが40年前からやってきたこととそう変わらない。
人と人が接する技術をこいう形で教え込まないとならない時代になっているのだと思った。

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2014年8月 4日 (月)

ガザ避難所

ガザ地区の避難者は17万人を超えている。
ガザ地区には国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の運営する学校が約200あるが、そのうちの81が避難所になっている。
UNRWAの清田先生と再び電話で話したところ、
水がないという。
食糧は国連から運び込まれたが、トイレなどは人数が多すぎて、衛生状態が悪化している。
ノミ、ダニなども発生している。
危険な感染症は起きていないが、水が足りないのでかなり危険だという。

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こんな状況の避難所にまでイスラエルはたびたび空爆し、子どもが犠牲になった。
戦いの応酬で犠牲者が増えていくが、過激派のハマスの人気は決して下がっていないという。
むしろ2か月前、ヨルダン川西岸を支配している穏健派のファタハと一つの政権にしようというときのほうが、ハマスに対する支持は下がった。
あまりにもイスラエルの攻撃が市民を巻き込んでいるため、頼れるのはハマスだという人が増えているようだ。
イスラエルが地上部隊の規模を縮小させる可能性を示しているが、ハマスの攻撃はやまず、
戦いが収束するか見通しがつかない。
これではなかなか平和はこない。

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2014年8月 3日 (日)

鎌田實の一日一冊(210)

「愛ふただひ」(渡辺淳一著、幻冬舎、1620円)
渡辺淳一の最後の作品。
これまで渡辺淳一作品は、あまり読んでいない。
野口英世の生涯を描いた「遠き落日」を読んだことがあるくらい。
なんとなく、読みたいと思わずに過ごしてきた。
亡くなった後、渡辺さんの小説はどんなものか興味がわいた。

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この作品は、著者を想像させる70代の医者が性的不能になるが、
29歳の看護師と、52歳の家庭のある女性、40代の独身の弁護士という3人の女性をどう喜ばすか、という話。
あまりわくわくドキドキしなかった。
解剖的な話や統計的な話が出てきたりして、小説としてのクオリティは低いと思った。
渡辺淳一先生の最後を飾るには、ちょっとさびしい作品だった。

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2014年8月 2日 (土)

「さあこれからだ」英訳版

7/29の毎日新聞朝刊「さあこれからだ」が英訳され、ニュースサイトMAINICHIに掲載されました。
ガザの犠牲者をこれ以上増やさないために、
1963年、西ベルリンでのケネディ米国大統領の演説に倣い、世界中の「私はガザ市民である」という共感が大切です。
戦乱のガザ地区で生まれた小さな命を守るためにも、一刻も早い和平を祈ります。

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Applying President Kennedy's Berlin Wall speech to Gaza

The battle in the Gaza Strip in Palestine rages on. On the night of July 17, the Israeli military embarked on a land invasion. In similar battles six years ago, over 1,300 Gaza residents were killed. The situation worries me. The stated reason for the invasion is to stop soldiers of the Islamic fundamentalist group Hamas from using underground tunnels to get into and attack Israel. There are countless numbers of these tunnels, with those connecting Gaza and Egypt having been used in the past to transport weapons and food.

全文はこちらから↓

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2014年8月 1日 (金)

原発事故568

中部電力が1985~2004年に建設会社などからお金を集め、
政治家に裏金として2.5億円を渡したという。
朝日新聞によれば、建設会社への見返りとして、原発関連工事などの発注額に上乗せしたという証言もあるという。

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その分、だれが出しているかというと、電力消費者である。
総括原価方式のため、電力をつくるためのすべての経費が電気代となり、ぼくたちは何も知らされず高い電力を買わされる。
それだけでなく、原発の黒い利権を強固なものにしてしまう。
憤りを感じる。

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