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2014年11月

2014年11月30日 (日)

干し柿

病院の緩和ケア病院のベランダで干した干し柿ができた。
ちょっと黒くなったけれど、
鎌田がいちばんに試食した。
すごく甘く仕上がっていた。
ホスピスの患者さんたちとお茶会で食べることになる。

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今日のお茶会も、とてもおいしかった。
ゼリーや、牛乳寒天、高野豆腐の煮もの、漬物、ケーキなどが並んでいた。
ボランティアや、亡くなった患者さんの家族が一段落したからといって、差し入れしてくれたものだ。
「亡くなったじいちゃんは、最後の最後まで笑顔でいられた。前の病院では、つらい思いもしたが、それも全部忘れて、いい時間を過ごすことができた」
ご家族からそんな言葉を聞くことができ、ぼくたちスタッフも励まされた。

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2014年11月29日 (土)

鎌田實の一日一冊(222)

「ネルーダ事件」(ロベルト・アンプエロ著、早川書房、1836円)

1973年、南米チリが社会主義政権が崩壊の危機を迎えていた時代の、ラテンアメリカ的混沌を描いた傑作。
とにかくめちゃくちゃおもしろい。
主人公の探偵は、革命の指揮者で詩人、ノーベル文学賞を受賞したネルーダから、ドクターを探してくれと依頼される。
だが、探しているのは、そのドクターではなく、妻とその娘ということがわかってくる。

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ネルーダの「二〇の愛の詩と一つの絶望の歌」を読んだが、
この本では、欲望と情熱、狡猾、光と影に満ちた矛盾するネルーダという人間が、
推理小説の形で描かれている。
舞台は、チリからメキシコ、キューバ、東ドイツ、チェ・ゲバラが亡くなったボリビアへ。
チェ・ゲバラ殺害を命じた男まで登場する。
なんともダイナミックだ。
ネルーダを題材にした作品はいろいろある。
イタリア亡命時代を描いた「イル・ポスティーノ」という映画もみた。
「サンチャゴに雨が降る」という映画もある。
小説ってこんなに面白いんだ、と久々に感動した。

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2014年11月28日 (金)

今年も感謝のお米

毎年、新潟県柏崎の方たちが、諏訪中央病院にこしひかりが送られてくる。
無農薬で丹精込めてつくったお米だ。
中越沖地震のとき、諏訪中央病院の医師や看護師がたくさんの薬をもって車に飛び乗り、
すぐに支援に入った。
今もそのときのことを忘れずに、毎年こうしてお米を送ってくれる。
ありがたいことだ。

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ぼくも久しぶりに給食の検食をさせてもった。
院長だったときには検食が仕事だった。
栄養士らに「おいしいよ」「食で、患者さんをしあわせにしよう」と声をかけ、
食の楽しみを大事にしてきた。
少しでも食欲をそそるように、食器も陶器にした。
それは、今も続いている。

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今年も、鎌田のメッセージを添えて、新潟からのおいしいお米を、患者さんたちに食べていただいた。

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2014年11月27日 (木)

病院にキルト作品

諏訪中央病院の一階、リハビリ室へと向かう広い廊下が、
急きょ、アート空間になった。
原田泰治美術館から毎年、すばらしいキルト作品をお借りしているが、
今年も、展示させてもらった。
患者さんはさっそく足を止め、近づいたり、離れたりしながら、見入っている。

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その斜め前には、泰治さんの友人でもある、写真家・宮崎学さんの「1本の柿の木」などの写真パネルもある。
病院のなかに、アートに触れる場があると、患者さんの心も元気をもらえると思う。
原田泰治美術館と、泰治さんに感謝いたします。

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2014年11月26日 (水)

感謝

熱海市を中心に活動されている方たちが、
東日本復興支援手作り展を開催し、あたたかな手作りの古布の小物、人形、陶器、天然石アクセサリーなどを展示販売。

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その利益をすべて、東日本大震災の復興支援に寄付してくれた。
毎年、たくさんの寄付をいただいている。
今年は31万7776円。
また、画家の松瀬さんがすてきなカレンダーをつくり、その利益金5万円を寄付してくれた。
ありがたいことだ。

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これらは、南相馬で仮設住宅の方たちの健康を支える絆診療所や、障害のある子どもたちの施設に寄付しようと検討中。
お心に感謝し、大切に使わせていただきたいと思う。

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2014年11月25日 (火)

地震の被災者に支援を

朝5時45分ごろから、日が昇り、八ヶ岳の裾野の稜線がくっきりと浮かび上がる。
だが、この日は、しばらくして朝もやがたち、
真っ白い幻想的な風景になった。

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11月22日、長野県北部に震度6弱の地震があり、
たくさんの方から心配をいただいた。
諏訪中央病院がある長野県南部のほうは揺れは大きかったが、大きな被害は出なかった。
北部のほうは約50棟の家が倒壊し、たいへんな被害である。
この地域は非常に寒い。
今日は冷たい雨が降っている。
体育館での避難生活は、高齢者にとってとても過酷だ。
民宿やペンションなどを被災者に利用してもらい、国と県と市町村が負担するなどして、
被災者を守ることが大事だと思う。
暖かいだけでも、心も、体も、元気がでるはず。
この地域は白馬などスキー場がたくさんあるスキー王国でもある。
観光客が来るかどうかは死活問題だ。
この冬、スキーをするなら、支援のためにも、この地域のスキー場へ行ってもらいたいと思う。

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2014年11月24日 (月)

10年来の友情

イラク駐日大使夫人のシーファさんが、チョコ募金のキックオフの会に来て、あいさつしてくれた。
「10年前、イラク大使館から通訳を頼まれて、ホテルに行ったら、
普通はヨルダン人が行かない低いランクのホテルに、有名な先生が集まっていることにまずショックを受けました。
鎌田先生が、イラクのドクターたちにスライドで見せた映像は、私の心に強い印象を与えました。
あんなすばらしい日本の方が、遠いアジアからイラクの隣ヨルダンに来て、こんなすばらしいことを一生懸命やっている。
イスラムで一番大事なことはいろんな人を助けることです。
日本人が遠くからやってきて、私たちの大事な兄弟を一生懸命助けていることが本当にすばらしい。
本当にJIM-NETと鎌田先生はエンジェルとしか言えません。
バスラやバグダッドの病院からがんの専門医が来て、不足している薬、機械について話し合いをし、
それを解決しようと努力してくれました。
このごろ悲しいニュースが多いです。
イスラムは、決してテロリストではありません。
イスラムは平和の宗教です。
最後に一番言いたいのは、みなさん、アラブの子どもたちを助けてくれてありがとうございます」

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シーファさんのボランティア精神は信じられないほどあたたかい。
ぼくたちは何度も、彼女の家でごはんを食べさせてもらった。
ぼくたちが無駄なお金を使いたくないということを、よくわっている。
彼女の妹の結婚式にも招かれた。
シーファさんは、JIM-NETにとって家族の一人だ。
スタッフはみんなシーファさんが大好き。
これからも両国をつなぐ架け橋になってくれるに違いない。

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2014年11月23日 (日)

魚が旨い

先日、四国の土佐へ講演に行った。
お昼ご飯は、はりまや橋の側の商店街にある本池澤という魚屋さんで、
塩サバの焼き魚を食べた。
めちゃめちゃおいしかった。
サバは、DHAやEPAという脂が多く、体にいい。

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また、別の日、瀬戸内海の魚をいただいた。
赤穂鯛の煮つけと、

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カワハギの肝つき、

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そして、写真はないが、あなごの鍋も食べた。

12月中旬まで全国を飛び回り、
下旬から1月初旬まで、イラクのアルビルへ行くことになった。
2キロ痩せて、ウエストも2センチ小さくなった。
魚や野菜を多く食べながら、全国を飛び回っている。

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2014年11月22日 (土)

情報公開の徹底を

製薬企業売上上位10社が、講師を医師に頼み、その謝金が110億円になるという。
年50回以上講演を行い、1000万円以上の謝金を受け取った医師も10人いたというから驚きだ。
医師たちが専門性を高めるために勉強会を開くことはいいことであるが、
一つの企業のために50回以上講演することは、医師としていいことなんだろうか。
たとえば、高血圧の患者さんを診るときに、たくさんの薬のなかから、謝金をもらっている会社の薬を処方するというのは、
きちんと医学的な判断が働いているのか、勘ぐられても仕方ない。

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ぼく自身、断りきれず、年1、2回、製薬会社の依頼で講演することもある。
そんなときは、講演料は寄付することにしている。
過日も、講演料で、ドクターカマタの減塩みそ汁や、寒天ゼリー、CD「ひまわり」「プラハの春」などを買い、
それを会場のみなさんにプレゼントした。
これらの商品の収益は、イラクや福島の子どもたちの支援に使われる。
会場のみなさんからも、日本チェルノブイリ連帯基金の募金箱に寄付していただいた。
日本チェルノブイリ連帯基金にしてみれば、ぼくが商品を買ったことと、会場から寄付をいただいたことで、
一回で二度おいしいグリコみたいな、いい回転もできる。
ただ今回のように情報公開をしたことは、一歩前進である。
全例、情報公開されていけば、医師と製薬会社の親密な関係はのぞましいものではない、という軌道修正に役立つ。
情報公開の徹底が必要である。

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2014年11月21日 (金)

鎌田實の一日一冊(221)

「なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白」(東小雪著、講談社)

地元で演劇活動をし、尊敬を集めていた父親が、実は小雪さんが小さいころに性的虐待をしていた。
家庭内の虐待は表に出づらい。
特に性的な虐待は、隠されていることが多い。
虐待を受けた子どもは、人に助けを求められず、ひとりで苦しむことになる。
小雪さんも、拒食症になり、リストカットをし、精神科の薬をオーバードーズし自殺未遂を図った。
宝ジェンヌになったあとも、心の傷は治らなった。

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現在、快方に向かっているのは同性のパートナーの支えがあったからだという。
パートナーと幸せをつかみ始めているなかで、ようやくカミングアウトできるようになった。
自分と同じように虐待を受けた人や、セクシャルマイノリティーの人のために、全国を駆け回っている。
                   ◇
東小雪さんには、「日曜はがんばらない」(文化放送)のゲストに来ていただいた。
この回の放送は、こちらから聞けます。

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2014年11月20日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(185)

「ミンヨン 倍音の法則」
佐々木昭一郎監督。
ポエティックな映画である。
存在感のある韓国の大学生ミンヨンが主人公。
彼女は日本で暮らしたことがある。
韓国語、日本語、英語ができるトリリンガル。
ある日、祖母が残した古い写真に心とらわれる。
そこには、祖母の親友だった佐々木すえこ一家が写っていた。
そして、その家族を訪ねていく。
韓国と日本という国を越えて、詩的なハーモニーができていく。

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いま、韓国と日本はギクシャクしているが、こんなときにこの映画は、国を越えて人間どうしシンパサイズできることを教えてくれる。
英語名は「ハーモニクス ミンヨン」ととてもいい。
せっかく詩情あふれる映画なのに、邦題はあまり気に入らない。
岩波ホールで上映中。

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2014年11月19日 (水)

お知らせ

本日、午後7時30分から、NHKの「クローズアップ現代」に鎌田が出演します。

テーマは、「“最後のとき”を決められない」。
延命治療について考えます。
ぜひ、ご覧ください。

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アベノミクスは偽物

日銀が11月初旬に決めた追加の金融緩和で、株高は1万7000円台。
円安も加速している。
結局、アベノミクスは株高を誘導しているだけで、
実際の経済成長を示す数字は出ていない。
2%の物価目標も達成は困難で、デフレからの脱却はできていない。

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日銀の幹部は「我々もぎりぎりの決断をしている」と語っている。
言い換えると、日銀が博打をしているのだ。
とんでもないことだ。
投機をしている人にとっては、アベノミクスはありがたいだろうが、
一般の市民にとっては実質収入は下がり続けるばかり。
しかも、輸入材料が上がり出し、生活しずらい空気が広がっている。
これまでのところを見るかぎり、アベノミクスは偽物である。
これで日本の経済が本格的によくなるとは思えない。
綱渡りをしているリーダーがバランスを失い、とんでもないことが起きる可能性が出てきた。

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2014年11月18日 (火)

洞窟の手形の意味は?

科学誌「ネイチャー」に、インドネシアのスラウェシ島で発見された動物壁画が、
3万9900年前の世界最古の芸術作品である可能性があると発表された。
今まで最古といわれていたものは、北スペインにあるエル・カスティージョ洞窟。
4万800年前のものといわれたり、測定法によっては3万3700年前ともいわれている。
イラウェシ島の壁画が最古になるのか、まだ判断は下っていない。
スラウェシ島の壁画には、バビルサというイノシシ科の動物が描かれている(↓)。
が、ぼくはその周りにある手形に引き付けられた。

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この手形は、スペインのアルタミラ洞窟や、エル・カスティージョ洞窟にもみられる。
この手形は、何を意味しているのか。
「人間らしくヘンテコでいい」(集英社)にも書いたが、文字がなかった時代、「おれは今ここにいる」「おれは生きている」という表現ではないかとぼくには思える。
人間が生きてくうえで、この「自分が生きている」という感覚はものすごく大事なことだと思う。
現生人類の祖先たちの自意識は、やがて装飾や言葉、埋葬、祈りなどを生み出していった。
                       ◇
本日11/18の毎日新聞の鎌田の連載「さあこれからだ」は、
我々の祖先がつけた手形に思いをはせ、利己的で利他的な生き物である我々について書いた。
ぜひ、お読みください。

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2014年11月17日 (月)

松山バレエ団Xmas公演

バレリーナの森下洋子さんとは、東日本大震災の被災者支援の活動で知り合った。
松山バレエ団の理念は、「芸術は人々の幸せのためにある」。
震災以降、この思いに立ち返り、困窮した世相の中でも平和を祈ってともに集い、少しでも手を取り合おうとする人々の心と心の結びつき、生きること、出会うことの輝きと尊さを描き出せるよう演出を深めている。
その森下洋子さん主演の「くるみ割り人形」全幕公演が長野県塩尻市で開かれる。
初演から32年目を迎える松山バレエ団「くるみ割り人形」は、チャイコフスキー3大バレエの一つ。
少女クララが魔法で姿を変えられた醜いくるみ割り人形の中に秘められた魂の輝きに気付き、大切に愛することで人形の魔法を解き、元の王子の姿に戻し、王子との出会いと別れを通じて心の成長を遂げる物語だ。
主演は、舞踊歴63年目を迎える日本のバレエのパイオニア、森下洋子さん。
共に主演する鈴木正彦さんは、長野県の白鳥バレエ学園出身、
またミストレス朶まゆみさん、今回雪の女王という主要な役を演じる佐藤明美さんも長野県出身という。
ゆかりの深い長野での公演となる。
バレエファンの方も、初心者の方も、美しい舞台に心洗われることだろう。

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松山バレエ団 2014 Xmas 
くるみ割り人形 スペシャルバージョン
  台本・構成・演出・振付 清水 哲太郎
   出演 森下洋子 松山バレエ団

2014年11月23日(日・祝)
開場13:30 開演 14:00
会場 レザンホール大ホール
全席指定 7,000円(3歳以上入場可)
主催  (一財)塩尻市教育委員会
後援 塩尻市/塩尻市教育委員会
協賛 白鳥バレエ学園
問い合わせ 松山バレエ団公演事務局 03-3408-6640 松本まで

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2014年11月16日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(184)

「おみおくりの作法」

イギリス映画。
ベネチィア国際映画祭監督賞。
孤独に死んだ人を見送る孤独な市の民生係の男の映画。
亡くなった人の写真や宗教を探し、知り合いを探しだし、葬儀に来てもらう。
生前の姿を想像しながら弔辞を書き、その人に合うBGMも選ぶ。
しかし、だれも葬儀に列席せず、彼ひとりということが多い。

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仕事として効率が悪く、彼は市から解雇されることになるが、
その最後の仕事ですばらしいお見送りを実現する。
そのとき、彼自身にも大変なことが起きるのだが・・・。
最後の数分のために、この映画はあるといっていい。
どんなふうになっても、人間はいいなと思える映画である。
2015年1月、シネスイッチ銀座などでロードショー。

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2014年11月15日 (土)

鎌田写真館~縄文の柱

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仮面の女神(↓)は、今から4000年ほど前のものといわれる。
力をもった人が亡くなった後、一緒に埋葬された可能性がある。
祈りの道具だった可能性もある。

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その近くに8本の建て柱の跡が見つかった。
その穴の大きさに合わせて、4000年前、おそらくこんな形で建っていたのではないかと推測される柱は、堂々としたものだ。
美しい秋の空にそびえる柱は、まるで御柱祭の柱のようだ。
このあたりは縄文人たちの大切な祈りの場であったのかもしれない。

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2014年11月14日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(183)

「イロイロぬくもりの記憶」
シンガポール映画。
監督はアンソニー・チェン。
カンヌ国際映画祭新人監督賞を獲った。
そのほかの映画賞も受賞している。

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決してうまくいっていない一人息子を育てている家族の物語。
父親は解雇され、そこにフィリピンからのメイドがやってくる。
そのメイドが、やんちゃな小学生の息子と気が合っていくのが面白い。
メイドも小さな子どもを故郷に残してきている。
生きていく以上、問題も発生する。
それでも、ぶつかり合いなから、あたたかなぬくもりを感じさせる生き方があることを、
この映画は見事なタッチで示してくれている。

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2014年11月13日 (木)

ホスピスの夜

諏訪中央病院の緩和ケア病棟で、カラオケと飲み会が催された。
新しい緩和ケア部長に赴任してきた専門医の片岡先生が、“ママ”になり、バーを開いた。
カラオケを指名されると、「音痴なの」といいながらカラオケのマイクを持った。

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火曜日のぼくの回診にも、患者さんの説明をよくしてくれて、回診しやすい。
1月には腫瘍精神科医がやってきて、患者さんを心の面からサポートできると思う。
新病棟ができると、緩和ケア病棟もそこに移る。
さらに、質の高い医療を提供し、評判は高くなっていくだろう。

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病院のリビングで、カラオケをしているとき、
ある患者さんは病室にいた。
寝たきりで出られないが、「お酒が大好き」という。
午前中の回診のとき、ぼくが「お酒も飲みたい?」と聞くと、「飲みたい」と答えた。
日本酒を4種類用意しているので、何がいいですかと聞いてみた。
男性は、「真澄」を選んび、「うめえ、うめえ」と顔がほころぶ。
そこへ、仕事を終えた息子さんがやって来た。
「一緒に飲みませんか」と看護師にすすめられた。
「こんなうれしそうな親父を見るのは久しぶり。ぼくも一緒に飲もうかな」

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父と息子は、病室で乾杯。
息子は泣いている。
男性も掛布団を顔の上までかけながら、涙を拭っていた。
暖かな雰囲気。
こんな親子のしみじみとしたお酒もいいものだ。

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2014年11月12日 (水)

鎌田實の一日一冊(220)

「情事の終り」(グレアム・グリーン著、新潮文庫)

グレアム・グリーン自身の奔放な経験が、この名作を生み出したと言われている。
イギリス人の大富豪を夫にもつ、アメリカ生まれの女性と10数年間に及び、激しい恋をした。

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主人公の作家は、人妻のサラと不倫関係を続けていた。
しかし、突然、サラは去っていく。
作家と、サラの夫は、第三、第四の男がいるのではないかと疑う。
不倫の恋は終わっていたが、作家は探偵を雇う。
それにより、情事の後の想定外のてんまつが見えてくる。
探偵の調査で、彼女にはたくさんの男たちがいることがわかってくるが、
「第三の男」は、男ではなかった。
カトリック教徒ではなく、神を否定して自由奔放に生きたサラが、最後に神にすがる。
グリーン自身を投影した作家は、神に盾を突く。
憎悪や嫉妬、罪の意識、性的欲求、宗教などをもりこみながら、人間の業に迫る優れた小説だ。

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2014年11月11日 (火)

ホスピスの干し柿

諏訪中央病院の緩和ケア病棟でボランティアをしてくれている人たちが、
柿を持ってきた。
渋柿。
皮をむいて、病棟のベランダにつるして干し柿にする。
冬の空気のなかで甘くなった干し柿を、患者さんたちに食べてもらうのだ。
これが、毎年恒例の行事になっている。

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干すというのは、先人のすごい知恵だと思う。
干し芋は甘みが増し、カルシウムも23倍増強する。
しいたけは、干すとビタミンCが10倍に。
高野豆腐も、干すことでレジスタンスタンパクが増え、亜鉛や鉄分が多くなる。
乾物は、健康にいいのだ。
今年の干し柿も、きっとおいしくなると思う。

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2014年11月10日 (月)

アルビル郊外のイラク国内避難民

スンニ派過激派組織「イスラム国」は、クリスチャンやクルドのヤジディ教徒を弾圧している。
アルビル郊外の砂漠には、そうした弾圧を受けた人たち、多くはクリスチャンが押し寄せている。
教会や学校に分散して生活している人もいれば、砂漠のテントで生活している人も。
砂漠に雨が降ったりすると、地面がぬかるんで悲惨な状況だ。

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世界中から若者を吸い寄せている「イスラム国」。
だが、実態は非道なテロ集団である。
イラク政府の「イスラム国」掃討作戦に協力したとして、同じスンニ派の村を襲い、
322人を殺害した。
暴力に正義などない。

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2014年11月 9日 (日)

鎌田写真館~父母の紅葉

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父と母の菩提寺は、見事な紅葉で染まっていた。
父、岩次郎さんが亡くなって17年。
母のふみさんが亡くなって37年になる。
この二人にもらわれ、育てられたことは、ぼくにとってとても大きなことだった。

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以前、青森県の恐山に行き、イタコに岩次郎さんの霊を降ろしてもらったことがある。
「あの世で幸せだ、心配するな、お前のことはよく見てるぞ」
父は、そう言ってくれた。
今年も紅葉に包まれながら、岩次郎さんとふみさんに感謝した。

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2014年11月 8日 (土)

「1%の力」が2位

関西のテレビ「おはよう朝日です」(朝日放送)で、「1%の力」(河出書房新社)がベストセラーズランキングの2位に。
「王様のブランチ」(TBS)でも2位にランキングされた。

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たくさんの人がこの本を応援してくれている。
講演会場でも、沖縄で10冊買ってくれた方がいた。
新宿でも6冊、5冊買って、友だちにプレゼントするという方も。
この本の印税を、JIM-NETの「希望の足プロジェクト」に寄付することを知った読者から、
「イスラム国」から子どもたちを守る活動に役立ててください、と励まされた。
ありがたいことだ。

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2014年11月 7日 (金)

原発事故570

福島第一原発事故の当時18歳以下の子どもの甲状腺検査が進められている。
対象者37万人のうち、29万5000人の検査結果が出たところで、
甲状腺がんは57人という結果になった。
さらにがんの疑いがあるのは46人いた。

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チェルノブイリ原発事故では、6800人の子どもが甲状腺がんになった。
急激に増えたのは、事故後4、5年目。
福島では、放射性ヨウ素(I-131)がどれくらい放出されたのか推定の域を出ないため、
同じように4、5年目で増えるのかは定かではない。
しかし、慎重にみていく必要はある。
甲状腺がんと確定された57人は、原発事故が影響しているとも言えないし、していないとも言えない。
これから2016年まで、2巡目の健診が行われる予定である。
できるだけ質の高い健診をして、早期発見することが大事だ。
幸いにしてチェルノブイリでも、甲状腺がんの予後はよく、ほとんどの子どもたちは助かっている。
福島の子どもたちの命を守ることは十分できるはずだ。
できだけスピーディに、的確に、検診をすすめてほしい。

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2014年11月 6日 (木)

薄情な政治

労働者の実質賃金が14か月連続でダウンしている。
安倍政権がいちばんを力を入れてきたことは、株価の維持である。
株価を維持し、一部の人たちを儲けさせ、いかにも景気がいいように見せかけてきた。

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しかし、このところ安倍政権の経済成長戦略に新しい発想がまったくないことに驚かされる。
年金はカットし、75歳以上の後期高齢者医療の保険料はアップを考えている。
10年後には、団塊の世代が要介護者になりはじめるが、
介護職員を現在の150万人から250万人に増やす必要があるといわれている。
だが、介護職員の給料は月平均21万円、薬剤師23万円、看護師32万円という現状のままでは、どうにもならない。
すべての労働者の月平均33万円と比べると、介護職の給料はべらぼうに安いのだ。
これでは、離職者が増えるのも無理はない。
政治は、高齢者にも容赦ない。
年金が受給額が低い人に関しては、制度間調整をして、医療や介護の保険料の低減化や、1割負担の救済措置などが必要である。
もう少しあたたかい政治を行ってもらいたいものだ。

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2014年11月 5日 (水)

お知らせ

イラクの子どもの医療支援やシリア難民の妊婦、母子の支援、「希望の足プロジェクト」などさまざまな活動を行っているJIM-NET。
活動10周年を記念し、イラクからの2人のゲストとともに、戦争について語り合うイベントを開催する。
また、毎年恒例のチョコ募金もキックオフ!
イマーンさんのが描いてくれた花のイラストのチョコ缶のお披露目もある。
ぜひ、ご参加ください。

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JIM-NET10周年&2015チョコ募金キックオフ

日時 2014年11月8日(土) 開場 10:30~
会場 立教大学12号館地下1階会議室(池袋西口)

10:30~18:00 展示「JIM-NETの10年」
11:00~12:00 ムスタファ君を囲んで車座トーク
13:00~13:45 羊ぐるぐるワークショップ
14:00~16:30  Part1①集団的自衛権の問題とNGOの現状を考える
  (ムスタファ・イマッドさん/アブ・サイードさん/池住義憲さん(立教大学特任教授)/土井敏邦さん(ジャーナリスト)/玉本英子さん(アジアプレス・予定)/佐藤真紀(JIM-NET事務局長)
18:00~20:30 Part1②「イラク戦争から11年~それでも平和をあきらめない~」
  (ムスタファ・イマッドさん/アブ・サイードさん/熊岡路矢さん(JVC前代表・日本映画大学教員)/鎌田實(JIM-NET代表)/佐藤真紀(JIM-NET事務局長)
参加費
車座トーク:500円(資料代)
ワークショップ:1000円(資料代、材料費込)
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2014年11月 4日 (火)

ドクターのコーヒー屋さん

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広島県の尾道市立御調(みつぎ)病院で病院祭があり、講演に呼ばれた。
そのとき出会った呼吸器内科のドクターがおもしろい。
そのドクターは、山の中に入って、本を読んだり、コーヒーを飲んだりするためにワゴン車を持っていた。
それを、病院に持ち込んで、臨時のコーヒー屋を開き、1杯100円で地域の人に振る舞っていた。

このドクターは、地域に入り、地域の人たちといろんなことができるドクターだと感じた。
手伝ってくれる職員たちとも、和気あいあいといい雰囲気。
チーム医療がよくわかっている人だと思った。
こういう先生にお出会いできるのは、うれしいことである。

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2014年11月 3日 (月)

鎌田實の一日一冊(219)

「炎を越えて 新宿西口バス放火事件後三十四年の軌跡」(杉原美津子著、文芸春秋、1400円+税)

いい本である。
著者は、1980年の新宿西口バス放火事件の被害者。
全身80%の火傷を負い、十数回の皮膚移植を受けた。
そのとき使われた非加熱血液製剤から、C型肝炎に感染。
それがもとで肝臓がんになり、今、末期となった。
非加熱製剤は、アメリカではすでに使わりなくなっていたが、日本ではまだ使われており、C型肝炎やHIVの感染を起こしている。
あのとき、非加熱製剤が使われなかったら、と著者は思う。

Photo

彼女は事件のバスのなかで、全身が炎に包まれた。
たくさんの野次馬が、バスを取り巻いていたが、誰一人として助けてくれなかった。
人間てそんなものかなと思ったという。
その燃え盛るバスを、偶然、カメラマンをしていた兄が撮影し、スクープになる。
バスのなかに、妹がいることを知らないまま。
仲がよかった兄だが、それ以降、疎遠になった。
兄と再び会うようになるのは、兄が母を介護し看取ってからのことだ。
放火犯のMの生い立ちを知り、彼女はかわいそうだなと思う。
自分がこれほどの地獄を味わっても、この人はMさんに同情する。
死刑の判決が下りなかったときも、よかったと思った。
仮釈放されたら、家に呼んですき焼きをごちそうしたいとまで思ったという。
周りの人は、犯人を憎めというが、自分は憎むことができなかった。
過酷な運命を強いられ、自らの生と死を見つめる。
なんともすごい人である。

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2014年11月 2日 (日)

うなぎ

大阪の柿右衛門といううなぎ屋さんで、信じられないようなうなぎを食べた。
淀川の天然うなぎだという。
天然ものはこの季節、なかなか獲れないらしいが、奇跡的に手に入ったという。
白焼きとかば焼きにして、食べさせてくれたが、
とにかく大きい。
身が厚く、脂がのっており、4人で食べきれないほど。
味も、今まで食べたうなぎのなかで、ナンバーワンだ。
高千穂や四国などで、天然うなぎは何度か食べたことがあるが、
これほどのおいしいうなぎは初めてだ。

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この店、うまくて、安くて、最高。
これからの季節は、たぶん天然うなぎは手に入らない。
おやじさんが作ったカラスミや、ふぐがおいしい季節になるという。

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2014年11月 1日 (土)

憲法九条

今年のノーベル平和賞は17歳のマララさんらが受賞した。
が、日本国憲法の九条も候補として話題になっていた。
ぼくたちは海外で医療支援活動を続けてきたが、そのときに外国から受け入れられるのは、日本に憲法九条があるからだった。
憲法九条は、世界の憧れの的である。
形骸化しているというのも事実であるが、
これがあるとないでは、まったく違う。
憲法九条は日本の宝であるだけはなく、世界にとっても大事な宝物になりうる。
なぜなら、日本がこれを守り、世界もこれにならうようになれば、
戦争のない世界がつくりだせるからだ。
憲法九条に、ノーベル平和賞を受賞させたかった。
来年以降、可能はある。
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先日、共同通信の取材で、憲法九条について語った。
その記事が、京都新聞(10/17)や信濃毎日新聞(10/19)などに掲載された。

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