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2015年1月11日 (日)

鎌田實の一日一冊(226)

「ほかならぬ人へ」(白石一文著、祥伝社文庫、669円)

直木賞受賞作の表題作と「かけがえのない人」2編を収録。
男と女の愛は、一筋縄ではいかない。
ベストの相手を探すことだって簡単ではない。
「自信なんて感情に任せてつっ走ってているうちについてくるんじゃないの、ちょうど筋肉みたいに」
主人公の明生は、良家の息子で一人だけ名門大学に入れず、うだつが上がらない。
しかし、弱さのなかに純粋な心を持ち続けている。
そんな主人公がキャバクラで出会ったなずなに一目ぼれし、結婚する。
だが、そのなずなには、真一という忘れられない人がいる。
結局は、なずなは明生を裏切り、真一の元へ。
明生には、東海さんという素敵な職場の先輩が現れるが、彼女は病に倒れる。
好きな人とうまくいかない話が繰り返されていくが、
それでも恋することは素敵だということが伝わってくる。

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ぼくは、「かけがえのない人へ」のほうが好き。
主人公のみはるはエリートで、美男子の婚約者がいる。
しかし、はちゃめちゃな黒木という上司と別れることができない。
黒木は、母親に裏切られ続けてきたが、その母が末期がんとわかると、複雑な思いを抱えながら母の面倒をみる。
なんとも魅力的な男だ。
黒木を忘れることができないみはるは、結婚式の前夜、黒木の元に走るが、すでに黒木はいない。
「かけがえのない人へ」は、
黒木という男のカッコよさが際立っている。
情愛は、他人の人生をひっぱりこみ、ときには傷つける。
だが、傷ついても、傷ついても、人を好きになることは簡単には止められないのだ。
人間て不思議な生き物だ。

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