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2015年2月

2015年2月28日 (土)

難民キャンプに薬を

外務省のNGO関連支援の補助金が、日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)に決まった。
これからイラクのアルビルを中心に、難民キャンプにできた仮設診療所に薬の供給を応援していく。

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ナガム先生とモスルから追われてきたドクターたちが、モスルからの避難民を同胞としてサポートできるようなシステムづくりをする。
JCFでは10年前からイラクでの支援活動を続けてきたが、補助金をできるだけ有効に、
これぞ人道支援という形が見えるようにいっそう力を入れていきたい。
ご支援よろしくお願いいたします。

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2015年2月27日 (金)

ISのある世界を考える⑩

シリア人は2000万人の国民のうち、350万人が国外へ難民となり、690万人が国内避難民となっている。
国民の半数が過激派組織「イスラム国」を中心にした内戦の被害に遭っているといえる。
「イスラム国」の非道な行いの一方で、アサドの一般市民に対する虐殺もひどい。
いったんはトルコに脱出したシリアの若者たちがいてもたってもたまらず、シリアに戻って反アサドの武装勢力に参加したり、
学校の教師たちが反アサドの一つである「イスラム国」に参加したりしているという。
「イスラム国」の外国人兵士は1万5000人といわれてきたが、最近では2万人を超えた。

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残虐な兵士一人ひとりも、個人としてみていくと、まじめで、友だち思いで、ふるさとが好きで、
国を大切に思っている当たり前の青年なのかもしれない。
それが集団になると、自分のなかにある善的なものを薄め、悪につながる爆破力をあらわしてしまう。
人間は難しい生き物だ。

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2015年2月26日 (木)

ISのある世界を考える⑨

邦人人質事件が緊迫するなか、後藤健二さんを助けようとし、多くの人たちが声を挙げた。
「アイ アム ケンジ」
1月初め、フランスの風刺週刊誌「シャルリ・エブト」などへの襲撃テロ事件では17人殺された。
そのとき表現の自由を訴える人たちが、「私はシャルリ」と訴えた。

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この言葉でぼくが記憶しているのは、J・F・ケネディの演説だ。
東西冷戦下の西ベルリンを訪ねたとき、彼は「私は西ベルリン市民だ」と演説した。
西ベルリン市民は、共産主義の東ドイツに包囲され、身をすくめるようにして生きていた。
その市民の身になって、ケネディは自由主義を訴えたのだ。

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2015年2月25日 (水)

ISのある世界を考える⑧

後藤健二さんが拉致され、人質交換のタイムリミットが迫るなか、
菅官房長官が「人間が行う行為とは思えない」と発言した。
官房長官の言いたいことはわかる。
だが、揚げ足を取るわけではないが、
人間だからこんなことをしてしまうのだ。
人間だからこそ、自分を守るために、残虐なことをしてしまうことがある。

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「イスラム国」はいまだかつてない非道な暴力をふるっているが、
このままでは自分たちがやられるという被害者意識があるはず。
その被害者意識に追い詰められている人間に、2億ドルの支援の在り方などを曲解されないようにするような
言葉の使い方は政治家にとって重要な能力のはず。
日本の政治家は、言葉に対するリスク管理は甘いように思う。
これでは世界のなかで生きていけない。

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2015年2月24日 (火)

ISのある世界を考える⑦

なぜ、過激派組織「イスラム国」がこれほど暴力をするのか、考え続けている。
人間のなかには邪悪な心があることはよくわかっている。
600万人が犠牲になったといわれるナチスによるユダヤ人大量虐殺は例にあげるまでもない。
人間は、血塗られた歴史を歩んできた。
1991年のクロアチアの独立をきっかけに、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が勃発。
セルビア人とボシュニャク人、クロアチア人がが混在していた国内では独立をめぐって武力衝突が続いた。
なかでも、セルビア人勢力によるスレブレニツァの虐殺では、ボシュニャク人の絶滅を期して男性8000人以上が殺され、
多くの女性がレイプされた。
国内では20万人の死亡者、難民・避難民が200万人を生じたという。
アフリカのルワンダの紛争も、ジェノサイドが行われた。
ツチ族とフツ族の対立で、50万人のツチ族が殺されたのではないかといわれる。
もともと植民地政策で、ベルギーが少数民族のツチ族を大事にしていたが、ツチ族が独立しようとしたとき、
ベルギーは方向転換し、フツ族を後押し。
権力を握ったフツ族は今までの仕返しをはじめた。
メディアを使ってアジテーションを行い、全土で虐殺とレイプが行われたという。
25~50万人の女性がレイプの被害に遭ったとされる。
人間はこういう動物である。
破壊力をコントロールできない。
「イスラム国」のような存在がなぜ生まれたのか、
「イスラム国」とは何か、「イスラム国」を生み出す人間の心とは何か。
そんなことを考えて、3月中旬に緊急出版する本を作製中である。

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2015年2月23日 (月)

ISのある世界を考える⑥

ナイジェリア北東部でテロや誘拐を繰り返しているボコ・ハラム。
ISに従うと宣言している過激派である。
2月4日、ナイジェリアからカメルーンに国境を超え、モスクや家を放火し、
村人100人を虐殺したという。
以前、カメルーンの子ども50人を誘拐している。
昨年4月には、200人の女子生徒を誘拐し、売り飛ばすと宣言した。
その200人はいまも解放されていない。
10歳前後の少女に爆発物をつけ、おそらく遠隔操作で自爆テロの道具にされている。
自爆テロというより、人間爆弾といわれている。

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2015年2月22日 (日)

ISのある世界を考える⑤

過激派組織ISによる文化財の破壊や略奪がひどい。
イラクでは、史跡4300か所が盗掘されているという。
ISは偶像崇拝を極端に嫌い、形あるものを壊している。
シーア派のモスクも壊している。
これまでISに盗掘された遺跡や古美術品の価値は1000億円相当と報じられている。
ISの戦闘員が盗掘者を監視し、その収益の20%を徴収するという、
とんでもないシステムができているようだ。

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2015年2月21日 (土)

乙武さんと対談

乙武洋匡さんが「社会不満足」(中央法規出版)という対談集を出した。
「五体不満足」を出した後、ジャーナリズムの勉強し、スポーツライターになったり、
教育を学び、学校の先生になったりしている。

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「おはよう21」という介護専門誌で、乙武さんと対談した。
日本の介護について質問すると、
介護は家族が担っていて、社会的介護に移行するまでに時間がかかりすぎてしまい、
介護の社会化があやふやになっているという。

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乙武さんはどうも白黒はっきりつけようという性格みたい。
介護を社会化することで、介護の現場で働く人たちの評価も待遇も変わり、
利用者も胸をはって利用しやすくなる、と明確だ。
とてもいい。
どこかの行政の首長になったりすると、おもしろいと思う。
環境、教育、介護の問題など、かなり前向きに取り組んでくれそうだ。
この対談は、次号の「おはよう21」に掲載される。

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2015年2月20日 (金)

ISのある世界を考える④

カリフ制を宣言する過激派組織ISに支持を表明したり、忠誠を誓う過激派組織は、
世界15か国に29グループいるとみられる。
イラク東部、パキスタン、アフガニスタンにまたがる広域をホラーサーン州と呼び、州知事を任命したという。

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ISは最近、コバニを奪われ、勢力巻き返しに躍起である。
「欧州、西洋、あらゆる場所で十字軍を標的にせよ」と、
仕掛け爆弾、ナイフ、投石などで攻撃するようにとメッセージを出した。
ISを支持する29の過激派組織の動きが心配がある。

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2015年2月19日 (木)

原発の趨勢、日米の違いは何か

世界最大の原発保有国アメリカで、原発5基が運転終了、廃炉となる。
これで、アメリカの原発は99基になった。
このニュースを聞くと、日本だけが遅れているような気がする。
日本では2020年度まで総括原価方式が行われる。
いくら原発にお金がかかっても、それに利益を上乗せして電気代を決めるので、
安定した収入を得られる原発をなかなかやめられない。
もちろん、そこでもっと儲ける人たちもいる。

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アメリカでは、電力自由化に伴う価格競争が激しく、原発はシェールガスのよる火力発電に勝てない。
圧倒的にシェールガスによる火力発電が多くなっているのに加え、風力発電も盛んになっている。
原発の優位性は、今後ますます低下していくとみられる。
こうした大きな流れに日本はなぜ、学ぼうとしないのか。
困ったものだ。

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2015年2月18日 (水)

ISのある世界を考える③

デンマークで2月14日、連続銃撃テロがあり、2人が死亡。
警官5人が負傷した。
容疑者は、テロ組織には属さないが、イスラム教スンニ派過激組織ISの指導者に忠誠を誓う言葉をSNSに書きこんでいたとか。
またしても、とんでもないことが起きた。

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クウェートに、アメリカの部隊が4000人到着したというといううわさもある。
オバマ大統領は、地上戦をする許可を議会でとっている。
過激派組織ISが制圧しているモスルでは、ISの礼拝の指導者が、
「モスルから逃げ出すものは不信仰者である、
十字軍と同じである、そうした者たちの財産は戦利品としても合法である」
と説教をしているらしい。
もしアメリカと地上戦になれば、モスルにいるとみられる200万人が大変なことになる。
難民や避難民の救援がますます必要になってくるだろう。

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2015年2月17日 (火)

ISのある世界を考える②

サウジアラビアの南にある小さな国イエメンが、微妙な状況になった。
イスラム教シーア派武装組織フーシ派が大統領官邸を制圧、首都の実権を握ったようである。
フーシ派が政権掌握を宣言し、憲法宣言をしている。

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イエメンでも2011年の「アラブの春」で、サレハ政権が壊れ、その後、政権の弱体化が続いていた。
シーア派が権力を握ったことで、隣接するスンニ派のサウジアラビアは穏やかではない。
シーア派のイエメンとシーア派のイランが協力すれば、厄介なことになると考えている。
さらにこのイエメンには、アルカイダ系の過激派がいる。
今年1月のフランス週刊誌襲撃事件は、このアラビア半島のアルカイダが指導したとみられている。
イエメンが無政府状態になる可能性がある。
そうなれば、一般の国民はとんでもない被害を被ってしまうだろう。

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2015年2月16日 (月)

ISのある世界を考える①

過激派組織IS(「イスラム国」)が侵攻していたシリア北部のコバニを、
1月末、クルド人民防衛隊(YPG)が奪還した。
ISは、約1000人の戦死者を出しているもよう。
長い戦いだった。

ぼくがアルビル郊外のダラシャハラン・キャンプを訪ねた1月3日、
コバニから逃げてきた市民から戦争の模様を聞いた。
ISは最新鋭機を持ち、コバニを制圧しかかっているが、
クルド人防衛隊だけでなく、クルド人自治区の治安部隊ペシュメルガが、
アメリカ軍を中心とした有志連合の空爆の支援を受けながら応戦。
いずれ近々、クルドがコバニを制圧するだろうと予想していたが、その通りになった。

このコバニ奪還に、アサド政府軍は何もタッチできていない。
もともとここはシリアのクルド人が住む地域であった。
ペシュメルガは、トルコを通ってコバニに入ったようである。

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トルコはなかなか難しい存在だ。
シリアのアサドとは仲良くなれない。
さりとてトルコ国内に約1500万人のクルド人がいて、そのクルド人のなかに反トルコ活動をしているクルド労働者党PKKが存在している。

クルドもとても難しい。
約2500万人の民族といわれているが、クルド人自身の国はない。
イラク国内には約600万人いるといわれているが、イラクのクルド人は隙あらば独立したいと思っている。
そのために、治安部隊ペシュメルガの力を大きくしている。
もしかしたら、イラク政府軍よりも強いのではないか。

このペシュメルガは、ISと闘う大きな戦力となっており、
今のところ、ISと闘うことで、イラク政府軍と協力し合っているが、
これが将来まで続くとは限らない。
いつかまた、イラク中央政府とクルドが袂を分かつ時が来るのではないか。

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2015年2月15日 (日)

鎌田實の一日一冊(234)

「父と息子の大闘病日記」(神足裕司、神足祐太郎著、扶桑社)
重度のくも膜下出血で倒れた作家でコラムニストの神足裕司さん。
奇跡的に助かったが、高次脳機能障害が残った。
突然、声が出ることもあるが、しゃべりたいときにしゃべるのが難しい。
しかし、原稿は書ける。
彼はこんなことを書いている。

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「技と言うのはいつも同じように等しく力を出せるということだ。
ぼくはプロフェッショナルというのは相手になんでも合わせられるということも、一つではないかと思う。
たとえば113文字ちょうどぴったりの文字数の原稿とかね。
ヘルパーさんだって、料理人だって、頼まれる人によってアレンジしてちゃんとこなすのではないかと思う。
あれもできない、これもできないと言っているようではプロとは言えないと思う。
プロはプロらしく仕事をしろということだ。
ぼくは今プロとして仕事ができているかとても心配だ。
お金をもらうのがプロということだけはない。
お金をもらうからには覚悟と質が必要だ」

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ある雑誌で、ぼくは神足さんと対談した。
にこにこ聞いてくれているが、簡単に言葉は出てこない。
それでも、目と目で会話は成り立ったように思う。
数日後、ぼくへの思いやぼくに言いたかったことなどを、原稿に書いてくれた。
生きるスタイルは人それぞれ。
神足裕司は、神足裕司の生き方をしていると思った。

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2015年2月14日 (土)

鎌田實の一日一冊(233)

「ポケットに名言を」(寺山修司、角川文庫)
寺山修司が「青春の名言」という本を出してから10年後、
大幅に書き換えて出したのがこの名言集。
「堕落は快楽の薬味なのよ。
堕落がなければ快楽もみずみずしさを失ってしまうわ」(マルキ・ド・サド「ジュスティーヌ」)
少し前、坂口安吾の「堕落論」を読んだばかりだったので、
サドの言葉には興味をひかれた。
安吾よりもっと「堕ちろ」とサドは言っているようだ。
堕ちれば堕ちるほど、「闇の子供たち」(梁石日)に出てくる大人のように心が壊れていく。
人間は脳を発達させないから、コントロールしきれない本能と複雑な心をつくってきた。
実に厄介な生き物である。
旅をしていると、自分の厄介さ、どうしようもない部分が見えてくる。

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サルトルの「出口なし」の言葉。
「じゃ、これが地獄なのか(中略)地獄とは他人のことだ」
難民キャンプには、「イスラム国」に親を殺されたり、兄弟をさらわれたり、処刑されたりした子どもたちがいる。
まさに、サルトルの言葉のように、地獄は人間と人間の間に作り出されている。
非道で残忍な行いをする「イスラム国」の兵士たちも、一人一人はおそらく、当たり前のように家族や友だちを大事にする心もあるだろう。
なんとも人間の心は難しい。
難民キャンプの悲惨な光景を見て、心が暗くなってくる。
ちょっとだけ明るい言葉を探した。
「もし世界の終わりが明日だとしても、今日、私は林檎の種をまくだろう」(ゲヤルグ・ゲオルギウ)
明日のことはだれにもわからない。
今日、一日を精一杯過ごそうと思う。

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2015年2月13日 (金)

B級グルメが大好き

先日、大阪へ行った。
新幹線の地下に、めっせ熊というお好焼き屋さんにはよく行く。
焼きそばが大好きだからだ。
大阪は安くて、うまくて、ボリュームがある。

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その翌日は、四天王というラーメン屋さんに行き、ラーメンを食べた。
味噌ラーメンを食べたが、野菜が山盛りでうまかった。
とにかく旅をするときは、野菜をできるだけ多くとるようにしている。

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2015年2月12日 (木)

後藤さんの死を悼む(4)

後藤健二さんが殺害される数日前、
イラクからJIM-NETにメッセージが届いた。
差出人は、イブラヒ・ムハムド(44)。
イブラヒムは、ぼくたちJIM-NETのイラク駐在のスタッフで、後藤さんと交流があった。


2004年8月、イブラヒムの妻は、白血病になった。
イラクでは治療できず、ヨルダンの首都アンマンに逃れ、がんセンターで治療を受けていた。
そのとき、アンマンの事務所に駐在していたJIM-NETの佐藤事務局長と出会う。
佐藤事務局長は日本に帰らざるを得なくなり、そのときヨルダンにいた後藤さんにイブラヒム夫婦の支援継続を依頼した。
後藤さんは、イブラヒムを支え、奥さんを何度も見舞っている。
奥さんは残念ながら亡くなったが、その後、イラクに帰るイブラヒムを、金銭面でも応援してくれたという。

後藤さんは、イブラヒムにこう言った。
「あなたの日本人の友人たちは遠く離れたところにいる。
でも、私はここにいるからあなたを助けたい」

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これがきっけでイブラヒムは日本が好きになり、
学校の教師を辞め、JIM-NETのスタッフとなって、
小児病院の院内学級の先生として、イラクの戦争で傷ついた子どもや、白血病の子どもを助ける活動をずっと続けている。

イブラヒムからのメッセージはこんなものだった。
「10年前、私の妻が亡くなるときにしてれたことを忘れません。
私は健二さんが今回のような困難を乗りきる勇気があることを知っています。
イラクから、家族、友人とともに、救出されることを祈ります」

後藤さんを助けたいという、多くの人たちの願いは叶わなかった。
とても残念である。
後藤さんが伝えたかった虐げられた子どもや弱い人たちを、ぼくたちは支え続けようと決意した。
後藤さんの思いのこもったバトンを受け継いでつもりで、これからも走り続けようと思う。

後藤健二さんのご冥福をお祈りいたします。

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2015年2月11日 (水)

後藤さんの死を悼む(3)

後藤さんは、2010年12月2日にこんなツイートをしている。
「取材現場に涙はいらない。ただありのままを克明に記録し、
人の愚かさや醜さ、理不尽さ、悲哀、命の危機を伝えることが使命だ。
でも、つらいものはつらい。胸が締め付けられる。
声に出して自分に言い聞かせないとやっていられない」

後藤さんがどんな思いでアラブの地に立ったのかわかる。
アラブは貧しいのである。
イスラム原理主義という日本人にはわかりにくい、厳しい生き方をしないと、
心を支えられないのではないか。

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もともとサウジアラビアを中心にした湾岸の国では、
イスラムの教えにできるだけ忠実に生きようとするふつうのアラブ人たちが多いという。
イスラム教には、許しや喜捨を大事にする教えがある。

過激な原理主義を失くしていくには、この地域の貧困に目を向けなければいけない。
そして、子どもたちに教育のチャンスを与え、
その教育を通して、世界にはいろんな生き方があり、お互いに多様性を認め合うことが大事だということを学ぶ必要がある。

後藤さんの思いのバトンを受け継いで、
これからも、貧しい人たち、難民キャンプを歩き続けようと思う。
イスラム原理主義者も同じ人間。
いつかわかるときが来る。

憎しみには愛を。
憎しみに憎しみを返すことがないように、自分にも言い聞かせている。
憎しみには愛を!

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2015年2月10日 (火)

後藤さんの死を悼む(2)

「目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。それは祈りに近い。
憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。-そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」
「イスラム国」に殺された後藤健二さんの言葉だ。

「教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」という言葉、何となくわかる。
アラブの人はあたたかくて、やさしい。
イスラム教は、許しの宗教だと言う人もいる。
「目には目を」というハムラピ法典の言葉は今もイスラム世界に残っているが、
それは被害を受けたら許してもいいというのが大前提。
許せないときは、目をやられたら、目だけだぞ、という罰をを与えるときの限界を示していると教わった。

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「イスラム国」は、資本主義社会を憎悪している。
その憎悪を溶かす方法はないのだろうか。
彼らも同じ人間。
イスラムには、喜捨という考え方があるはずだ。
どこかに同じ人間として通じ合えるチャンネルがあると思う。
彼らの憎悪に負けて、こちらも憎悪をかきたてるのではなく、
アラブの世界に愛を広げることができたらいいなと思う。

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2015年2月 9日 (月)

後藤さんの死を悼む(1)

1月20日、湯川さん、後藤さんを拘束し、身代金2億ドルを要求する動画が動画投稿サイトに配信された。
その3日前の17日、安倍首相がエジプトで演説。
「イスラム国」(IS)の脅威にさらされている周囲の国々の難民支援などに、
総額2億ドルを拠出すると述べた。
安倍首相の演説が、直接、「イスラム国」の凶行を誘ったかどうかはわからない。
日本の拠出する2億ドルは、非軍事分野で、生活支援や教育支援、医療支援に使われるという。
ぼくも、その通りだと思っていた。

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しかし、ODA大綱が11年ぶりに改定される動きを見ると――。
新しい大綱は名称を「開発協力大綱」にし、今後は非軍事目的ならば他国の軍にも支援できるという内容になっている。
また、今後のODAは、日本企業による投資の環境整備に使い、途上国の経済成長を促し、それを日本企業の利益ににつなげる国益重視の姿勢も鮮明のようだ。
今まで途上国の貧困対策を最優先してきたが、途上国の経済成長の重要性を強調しながら、日本の国益重視に傾こうとしている。
これまで日本の支援は尊敬されてきた。
今後が心配である。
これまでもODAで、ヨルダンの警察車両の購入費や、
イラクの警察の訓練を英国の軍事整備会社に依頼するための費用が、
平和構築の名の下に行われてきたといわれる。
もし事実だとすれば、「イスラム国」は日本の支援を曲解したのかもしれない。

日本は透明性の高い支援をすべき。
医療支援を中心にしながら、子どもたちが教育を受けられる環境整備をすることが
イスラム原理主義者の過激な動きを減らしていくことにつながるのではないか。

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2015年2月 8日 (日)

鎌田實の一日一冊(232)

「堕落論」(坂口安吾著、新潮文庫)
イラクの砂漠のなかで、読んだ。
一日中動きまわって、体はへとへとだが時差のために眠れない。
坂口安吾を読みながら、安吾の予言に自分のことを見抜かれたと思った。
「人はあらゆる自由を許されたとき、自らの不可解な限定とその不自由さに気づくであろう」

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自分の自由のなさにこのごろ、気がつき始めている。
自由だと思っていたが、決して自由ではない。
安吾はこう書く。
「人間は永遠に自由ではありえない。なぜなら人間は生きており、また死なねばならず、そして人間は考えるからだ」
「人間は変わりはしない。ただ人間へ戻ってきたのだ。
人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。
それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。
人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外のなかに人間を救う便利な近道はない」
「人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。
だが、人間は永遠に堕ち抜くことはできないだろう。
なぜなら、人間の心は苦難に対して鋼鉄のごとくではありえない。
人間は可憐であり、静寂であり、愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる」
もっと自由に堕ちたっていいんだ。
どんなに堕ちたって、堕ちたって、堕ちたって、堕ちぬくことはできない。
結局、大した堕落はできないのだとしたら、もっと勇気をもって、自由に堕落をすればいいのだ、と砂漠のなかで考えた。

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2015年2月 7日 (土)

鎌田實の一日一冊(231)

「闇の子供たち」(梁石日著、幻冬舎文庫、741円)
人間のどうしようもない業が爆発し、小さな子どもたちがその生贄になる。
子どもが性的なおもちゃにされ、生きたままの子どもが臓器売買の組織の餌食にされる。
実父に売春宿に売り渡され、エイズになって戻ってくる少女。
村人から村八分にされ、森の中で蟻に食われて死んでいく。
そんな子どもの人生を考えると、人間の欲望というものが恐ろしくなる。
同じ時代に生きる人間として、どこかで、自分も、子どもたちの人生を蹂躪するものに加担しているのではないか、
と震えてくる小説である。

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年末年始、イラクの難民キャンプを訪ねた。
日中は難民キャンプの子どもたちの診て、
夜は時差のために眠れず、この「闇の子供たち」を震えながら読んだ。
世界には、子どもたちの悲しみがあふれている。
なんとかしなければいけない。

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2015年2月 6日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(194)

「パリよ、永遠に」

シュレンドルフ監督作品。
この監督作は、ヒットした前作「シャトーブリアンからの手紙」をニュースエブリィの映画コーナーでも、このブログでもおすすめしたが、今回の作品も、おすすめだ。
連合軍が近づき、ナチスドイツがパリ壊滅作戦を決行しようとする。
ヒトラーの命令を受けたコルティッツ将軍は、ノートルダム大聖堂やブルボン宮殿、オペラ座などに爆薬を仕掛けるが、
そのスイッチを入れるかどうか、心理的な攻防戦が繰り広げられる。
命令に違反すると、ドイツでは家族も処罰されるという、とんでもない親族連座制がある。
将軍は、家族を殺したくないために、パリ壊滅作戦を実行しようとする。
それを止めようとするのは、中立国スウェーデンの総領事、ノルドリンク。
パリで生まれた彼は、美しいパリを守ろうと、必死にコルティッツを説得する。

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コルティッツ将軍は、ヒトラーの忠実な兵士であった。
ヨーロッパ東部のユダヤ人虐殺にも加わった。
ロッテルダムも破壊している。
残虐で、“優秀”なヒトラーのしもべ。
そのコルティッツ将軍が、ノルドリンクと対話を繰り返すうちに、
凶暴さに追いやられていたあたたかな人間性を取り戻していく。
2015年1月、パリの風刺週刊誌襲撃テロで、射殺された3人の犯人の一人が、
パン屋さんでお金が足りなくて、パンが買えなかった貧しい女の子にパンを買ってあげたことを思い出す。
コルティッツは、最後に自分の人生をかけて結論を出す。
人間を信じてもいいと思わさせてくれる、
息が詰まるようないい映画である。

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2015年2月 5日 (木)

鎌田實の一日一冊(230)

「物語のおわり」(湊かなえ著、朝日新聞出版社、1512円)
「空の彼方」という終わりのない物語に、主人公たちが自分なりの終わりをつくっていく。
小説家になることを夢見ていた若い女性は、結婚のため、小さな山陰の町を出ることができない。
町を出て、自分の夢に走り出すのか、それとも夢を捨て、安全な道を選ぶのか。

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写真家になるのをあきらめようとする男性。
妊娠がわかった後、がんが見つかる女性。
最後は、それぞれが北海道へ向かって旅をする。
それぞれが、おわりのない物語をもちながら、物語の終わりに向かって、
見事に一つのテーマが収斂していく。
剛腕でねじ伏せられるような説得力をもった作品である。
湊かなえがもっている、腕っぷしの強さを楽しめる傑作である。

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2015年2月 4日 (水)

カマタはウソつき?

あるブロガーが、「1%の力」(河出書房新社)を取り上げて、書評している。
「浅沼ヒロシの書評ブログ晴読雨読日記」。
「カマタ先生はウソつきだ」と書いている。
『がんばらない』なんて本を出して、無理しない生き方をすすめているくせに、
本人はずーっと頑張りつづけている。
こんども「たった1%」なんて言っているけど、カマタ先生の「1%」は「1%」ですまない。
100%全力投球したあとに、「あと1%がんばろう」と励ます。
「え~っ! それじゃ101%じゃない!」
やっぱりカマタ先生は、とことんムチャぶりする人だったのかぁーーー!
・・・なんて、楽しく笑わせながら、核心をついてくる。

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これまでにも
「人は一瞬で変われる」(集英社)
「この道より道まわり道」(潮出版)
なども書評してくれている。
自分の書いたものが、どんなふうに受け止められているのか。
感想をいただくのは、とても力になる。

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2015年2月 3日 (火)

堤未果さんと対談

ベストセラー「沈みゆく大国アメリカ」(集英社新書)の堤未果さんと、
「週刊プレイボーイ」2/2号で対談した。

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アメリカで起きた悲劇が、日本でも医療特区から広がる可能性が大。
日本も中流以下は「医療費破産」か、「死」か、という時代になりはじめるのか。
どうやって国民の命を守るか、日本は土俵際に来ている。
対談を読んでもらえれば、アメリカの日本への激しい“攻撃”がわかると思う。

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2015年2月 2日 (月)

鎌田實の一日一冊(229)

「離陸」(絲山秋子著、文藝春秋、1890円)
芥川賞受賞作家、渾身の作品という感じがした。
めちゃくちゃ面白い小説。
恋人の女優が、好きな人ができたといって失踪する。
日本からフランスへ、さらにパレスチナ、エジプト・・・。
姿の見えない昔の恋人はどんな人間だったのか。
何がなんだかわからなくなっていく。
フランスで別の男と結婚し、子どももいるが、その子どもも置いて再び姿を消す。
その恋人が、1930年代に生きていた可能性も出てきて、何が事実なのかわからなくなっていく。

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どんな事実も時間に経つにつれ、感覚が少しずつズレて、新しい物語に収まっていく。
それぞれのズレをそのまま、記憶のなかへ閉じ込めるのである。
そして、そこから物語が始まる。
人生とは、事実の積み重ねではなく、ズレの違いによってつくられる。
そんなことを感じさせてくれる小説。
読み始めたらひきこまれて、止まらなくなった。

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2015年2月 1日 (日)

チョコ募金ほぼ完売

シリア難民やイラクの病気の子どもたちの支援をはじめ、福島の子どもたちの支援活動のためのチョコ募金。
「イスラム国」の非道を伝えるニュースが影響しているのか、
JIM-NETの電話は鳴りっぱなし。
あっという間に、16万個用意したチョコレートが、ほぼ完売となりました。
ありがとうございました。
心からお礼を申し上げます。

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今朝、「イスラム国」に捕らわれていたジャーナリストの後藤健二さんの悲報が飛び込んできました。
許すことができない残虐な行為です。
しかし、こんな時代からこそ、支援を必要としている人たちに手を差し伸べることが大事だと思っています。

ぼくたちJIM-NETでは、慎重に安全を確認しながら活動しています。
いま支援をしているアルビルとドホークの難民キャンプは、今のところ安全な状態です。
4月と7月には、チョコレート16万個分の愛情をもってイラクへ赴き、診察室を積み込んだ自動車で、難民キャンプを回る予定。
足を失った若者のリハビリや、難民キャンプの診療所に薬を届けることができます。
日本が「戦争に反対し、困っている人たちに手を差し伸べ続けている国」ということを、示したいと思っています。

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