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2015年4月10日 (金)

鎌田實の一日一冊(236)

「教団X」(中村文則著、集英社)
560ページを超す大作。
人間の心の不思議さをダイナミックな構想力で描いている。
136億年前に宇宙が生まれたビッグ・ヒストリーを使いながら、なぜ神が生まれてくるか、
中村流の構想で描くことに見事に成功している。
二つの小さな宗教集団の話である。
一方は宗教とはいえないような緩い集まりで、哲学的な会話がなされていく。
もう一方は、性の解放をし、オカルトに陥っていき、世界のテロリスト集団とつながっていく。

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一人ひとりの小さな闇と、国家という邪悪な闇が連動し、爆発し、敵対していく。
遺伝子や視床下部、人間の欲望の話など、読み切るのに壁のように立ちはだかる箇所が何箇所かあるが、
分かりにくくても二度三度読んでいくと、奥が深いことがかわる。
人間の邪悪な心がダイナミックに展開されながら、世界や国家の話になっていくのだが、
エンディングがちょっと貧弱であった。
もっと爆発的な終わり方でもよかった気がしないではない。
中村文学は世界で注目され、読まれている。
この人の構想のダイナミックさは、世界が受け入れているのだろう。

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