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2015年4月24日 (金)

聴診器でテロと闘う(6)

25歳の青年ラードさんは、イラクからシリア一帯にかけての最大の部族といわれるジャボリー族の若者である。
スンニ派で、ハシャードシャリ―という民兵組織に入った。
戦いの初めの日、ISの戦闘員に撃たれた。
弾は腹部と足を貫通。
足は骨折し、手術が行われた。
腹部は腸が損傷し、腹膜炎を予防するため、人工肛門がつけらていた。

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日本人医師が来たということで、彼は期待していたようだ。
しかし、病状を説明すると、彼の表情は曇った。
人工肛門は、立ててトイレに行けるようになれば、いつでも取ることができる。
問題は足。大腿神経が完全に切れているようで、足の内側部がまったく動かない。
見込はよくないと話すと、若者は悲しそうな顔をした。

ぼくは彼にこう言った。

「リハビリをして関節を柔らかくすれば、長下肢装具を着けて歩ける。
足はひきずるかもしれないが、歩くことはできる。
希望を捨ててはダメだ」
この部族からは400人の若者が、ISとの闘いに出ているという。
中東は複雑だ。
宗教、宗派、部族の違いで、自分たちを守るために闘わなければならない。
暴力と暴力のぶつかり合いのなかで、医療は希望の光になる。
平和への一歩になるよう、巡回診療を続けようと思う。

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