「奇跡のひと」と対談
「奇跡の人」といえば、ヘレン・ケラーが三重苦を克服する感動的な物語だ。
その同時代、生まれたときから見えない、聞こえないという障がいをもつ少女が実在した。
「奇跡のひと マリーとマルグリット」は、目と耳に障害をもつ少女マリーと、彼女の言葉を教える修道女マルグリットを描いた映画だ。
おそらく言葉の存在を理解していたのだと思う。
それに対して、マリーは言葉の存在そのものがわからなかったのではないか。
ひとつの言葉を覚えるのに、ものすごく苦労する。
雪のシーンは感動的だ。
ふんわり降ってくる雪に、マリーは感触で雪を感じる。
臭いと感触が彼女のすべて。
彼女が大事にしていたナイフにも、「ナイフ」という言葉があることを、苦労して知る。
そして、「リンゴ」や「ニンジン」といった言葉も覚えていく。
野生の女の子マリーが徐々に変わっていく。
「こんにちは」という、ものではない言葉があることにも気づく。
大切な人が亡くなり、「死」という言葉も知っていくのだ。
彼女自身が、聾だ。
手話をフランス語にし、さらに日本語に通訳してもらった。
とても大変なコミュニケーションだが、実はそれほど大変ではなかった。
彼女の目を見て、体の動きや表情をみていると、フランス語がわからないぼくでも、
彼女が言おうとしていることが、わかるのだ。
そのことを彼女に伝えると、すごく喜んだ。
人間は言葉を超えることができるのだ。
イラクの難民キャンプの話をすると、目を輝かせた。
ぼくがインタビュアーのはずが、いつの間にか彼女がインタビュアーみたいになった。
周囲の人がぼくのことを「日本に来てはじめて興味をもった人間」と言ったが、とても光栄なことだ。
対談が終わると、彼女がハグをし、「日本に来てよかった」と言った。
アリアーナ・リヴォアールは20歳。
すてきな女の子だ。
ぜひ、「奇跡のひと マリーとマルグリット」を見てください。
6/6~シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー。
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