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2015年5月 6日 (水)

聴診器でテロと闘う(10)

絶望のなかで、希望を見つけた。
「聴診器でテロと闘う」小さな仲間たちと出会ったのだ。
一人は9歳の白血病の女の子シャーマ。
ナナカリ病院の白血病の子どもたちと家族をピクニックに招待した。
公園でピクニックをしておやつを食べた後、みんなで食堂に行って、好きなものを注文した。
子どもたちは大喜び。
貧しく、なかなか食堂でご飯を食べることができないシャーマも、
ひさしぶりの食堂での食事に、とても喜んでいた。
おなかいっぱい食べ終わった後、シャーマの夢は何かと聞いた。
「お医者さんになること」
「私のような病気の子どもを助けるのだ」と言った。
うれしくなってしまった。
「「ダーイッシュ」(IS)に負けない大人になるんだ」とも言う。
かっこいい。
聴診器でテロと闘う仲間が増えた。

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二人目は、生後8か月の女の子。
1月にザータリキャンプを訪ねたとき、ある母子に出会った。
赤ちゃんには、心室中隔欠損が見つかった。
以前、諏訪中央病院で心臓外科をしていた、いま沖縄の病院にいる深谷先生が診断した。
心臓に開いた穴は小さい、自然にふさがる可能性があるので、経過をみていいという説明に、
お母さんは少しほっとしたようだった。
「この子に勉強の機会を与えて、この子をお医者さんにしたい。
人を助ける人になってほしい」

今回、再会し、お母さんに夢は変わっていないか、と聞くと、変わっていないと答えた。

8か月の女の子が無事に成長してくれることを願う。
8か月なのに5000グラムしかない。
母乳の出が悪いので、人工栄養を与えているが、ミルクの飲ませ方にも問題があることがわかった。
ミルクもただ配ればいいわけではない。
次回は、難民キャンプで、ミルクの与え方教室をしようと思う。
三人目は、アルビルの難民キャンプで出会った医学生のザマーハ。
モスル大学の5年生だったが、ISが侵略したため、家族と逃げた。
モスル大学にはもう通えない。
スレイマニアの大学に編入してあと1年学べば、医者になることができるという。
しかし、彼女はあきらめていた。
家にはお金がない。
自分だけが遠く離れたスレイマニアの大学に行けるわけがないという。
その話を聞いたぼくたちは、子どもたちの教育資金を集めようと思った。

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子どもたちに教育の機会をもたらすことは、希望につながる。
銃ではない方法で、テロと闘う人たちが増えていってほしいと願うばかりだ。
                    ◇
これからJCFは子どもたちの教育のための募金を開始する。
『「イスラム国」よ』『1%の力』(河出書房新社)の印税を寄付しているが、
もっと本が売れれば、ここから教育資金に回してもいいと思う。
これらの本を買っていただくか、JCFへの寄付を、ぜひお願いいたします。

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