« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »

2015年5月

2015年5月31日 (日)

就職率の向上

今春大卒就職率が96.7%と、2008年のリーマンショック後、最も高い就職率となった。
高校生はバブル期並みの97.5%に達したという。いいことである。
資本主義で大事なのは、雇用が広がること。
人間は働くことでいろんなことを学ぶ。
働くことで将来の設計もできる。
そして、消費が生まれる。
好きな人と結婚し、家を建てたりする。
経済が回りだすのである。

1504282fullsizerender

経済を動かすいちばん大事なことは、仕事にありつけるかどうか。
ここに、最大のエネルギーを注ぐことが大事だ。
若い人の就職率の向上は、とてもいい結果である。

|

2015年5月30日 (土)

ISのある世界を考える(29)

ISの暴力が止まらない。
シリア中部の遺跡都市パルミラで400人が殺されたという。
子どもや女性も含まれているという。
アサド政権の支持者が狙われているというが、逃げ遅れた数千人の市民がまだ残っている。

L1070989

パルミラの博物館の収蔵品は壊された。
とんでもないことだ。
世界人類の宝物だ。
どんな信仰をもつのも自由だ。
偶像崇拝を否定するのもいい。
だが、それを壊す必要はない。
自分たちが祈りを捧げなければいいだけの話である。
ISはもっと大人にならなけばいけないと思う。

|

2015年5月29日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(205)

「ルック・オブ・サイレンス」
ジョシュア・オッペンハイマー監督。
前作の「アクト・オブ・キリング」は各映画祭で絶賛された。
今回はその姉妹編で、30以上の映画賞を総なめにしている。
インドネシアで100万人もの大虐殺が行われた。
根拠もないのに「共産主義者」というレッテルを貼って殺していく人々は、
「国家を守るため」と思い込んでいる。
今回は、この大虐殺を被害者の視点で追ったドキュメンタリー。

Poster2

「人間の血を飲んだ。あまくてしょっぱかった。血を飲まないやつは狂って死んだ」
「過去は過去だ」
多くの加害者は国家を守るためにやったと思い込み、今もそう語る。
主人公の兄が殺された。
助けられるチャンスがあるのに、おじがお金をもらって見殺しをしたようである。
人間はこれほどまでに残虐なことができるのか。
人間のもっている心の闇が見えてくる。
やっぱり人間はおそろしい。

|

2015年5月28日 (木)

音楽家たちの思い

中学3年生の教科書「中学生の道徳」(学研)に、鎌田實のエッセイ「命の力のおすそけ」が載っている。
東京芸大名誉教授、音楽家の畑中良輔さんや、指揮者の若杉弘さん。
お二人とも亡くなられたが、
生前、病院でコンサートを開き、患者さんたちの心を支えてくれた。
「出演料は、地元のボランティアがつくってくれた無農薬野菜です」というぼくの言葉を受けて、
「青野菜コンサート」という名前がついた。

1505151fullsizerender 緑がいい木陰をつくる諏訪中央病院の庭

名ソプラノ歌手の伊藤京子さんが
「今も沖縄の人は戦争の傷跡のなかで生活していています。次は平和を祈って歌います」
と、楽曲に託した平和の思い。
すばらしい音楽家たちの、「二度と戦争をしてはいけない」という思いを書いたエッセイだ。
命の大切さ、そして、戦争をしない国であることの意味を、
子どもたちに考えてもらえたらうれしい。

|

2015年5月27日 (水)

ISのある世界を考える(28)

世界遺産のあるパルミラは20万人の都市である。
ISが入り、刑務所にいた過激派も解放してしまった。
すでに市民17人を殺害し、一軒一軒、政権側の市民を探して殺そうとするISから、
7万人近くが避難したといわれている。
ISの犯行は、急ピッチに進んでいる。

Dscf1612

パルミラはシリアの首都ダマスカスと中部の大都市ホムスともつながっている。
今までISの支配領域はシリアの3分の1程度といわれていたが、
パルミラを取ったことで、東部から中部にかけての半分まで広がりそうだ。
西部で激しい戦いをしているヌスラ戦線とアサド政権の軍隊は、中部にまで兵力を増強できなかったためだと思う。
また、ISは、西部のダマスカス近郊のパレスチナ難民キャンプの一部を制圧。
首都まで迫るISに、アサド政権はダマスカスを守るのが精一杯になりだしている。

L1070989 2009年8月、イラク支援の際に訪ねたパルミラ遺跡

先ごろ、ISはイラクのラマディも取った。
イラクから近隣諸国に流れた難民は32万人、国内避難民は342万人になるといわれる。
このISの勢いをどう止めるのか。
そして、パルミラ遺跡を破壊させないためにどうしたらいいか。
貴重な遺跡などを破壊すると、支援のお金が集まる。
目立てば目立つほどお金が集まってくる。
これを変えないかぎり、テロ集団は残虐さをエスカレートする。
お金が集まらないようにする必要がある。

|

2015年5月26日 (火)

ISのある世界を考える(27)

ISがバルミラ遺跡を制圧したという。
イラク政府軍は、アサド政府軍を守るために軍備を西側に集中させている。
東側が手薄ということをよく承知のうえで、弱いところをついてきている。

743

L1070969 2009年8月、イラク支援の際に訪ねたパルミラ遺跡

パルミラ遺跡は世界遺産。
ぼくは3度、訪ねたことがある。
イラクとシリアの間にあるノーマンズランドで健康診断したり、
ユニセフから頼まれ、イラクのドクターやナースともに子どもたちの予防接種活動をしてきた。
その当時、まだイラクはテロが多発しており、夜は危険ということで、
予防接種が終わるとすぐに、当時安全だったシリアへと抜け出した。
ヨルダンまでは帰りきれず、途中のパルミラ遺跡の近くで一泊したりした。
今はISに制圧されているデリゾールなどにも一泊した。
ティグリスとユーフラテスが流れる古い都である。
すばらしい遺跡が、ISの非道な行為で破壊さるれるのはおそろしい。

L1070977

人類の宝物である。
こんな遺跡はそうはない。
ISの暴挙を何とか食い止めたいものだ。

|

2015年5月25日 (月)

ISのある世界を考える(26)

アルビルで自爆テロを計画していた6人のクルド人が逮捕された。
この6人のクルド人はISに加入していたという。
悲劇の民クルドは一枚岩のようになって生きてきたが、
職がなかったり、生きがいがなかったりすると、ISに心を奪われてしまうようだ。

1504216fullsizerender 難民キャンプの子どもたち

ラマディは完全にISに制圧された。
イラク政府軍の敗因は、強いシーア派民兵が戦線に加わっていなかったことが大きかったといわれている。
イラクの7割近くはシーア派。
戦乱が続くならば、いっそシーア派だけでまとまろうとする動きもある。
シーア派のイランはそれを狙っており、民兵部隊の一部を後押ししているともいわれている。
イランの後押しを受けることは、戦争をより拡大し、長引かせる可能性もある。
シーア派とスンニ派の融和が必要なのに、両者の徹底的な対立になってしまう。

|

2015年5月24日 (日)

カレーで元気

高田馬場の横浜ボンベイというカレー屋さん。
チキンカレーもビーフカレーもさらさらのカレーだが、
実に味わい深くうまい。
ここのカレーは、やみつきになる。

150518fullsizerender

ぼくはカレーが大好き。
カレーを食べると元気になる。
ちょっと気になるのは、ごはんがおいしいので、ついついたくさん食べてしまうこと。
糖尿病ではないが、遺伝的にリスクはあるので、多く食べた後の2日間くらいは炭水化物を摂らないようにしている。
これで血糖値も、体重も安定した状態をキープしている。
一時78キロあった体重が、現在は73キロ。
絶好調である。
肩の骨折も、やっと骨が着きだした。
今、腱鞘炎で左の指が痛くてしょうがないが、これが治ればますます元気になると思う。

|

2015年5月23日 (土)

唐組「透明人間」

唐組55回公演「透明人間」を見てきた。
出色の出来栄えだ。
唐十郎の芝居は、言葉が洪水を起こす。
唐が得意とする「水」や「水たまり」というモチーフがちりばめられ、
唐の分裂気味の発想で、世界が閉じたり開いたりしていく。
日本と、中国の福建省が、幻の沼でつながったりしてしまうのだ。
狂犬がいるのかいないのかわからないのに、狂犬病の症状である「恐水幻想」を呼び起こす。
「浮かんでいて、どこまでも逃げていて、そしてまた会うとき、この水中花の誓いを忘れるな。
お前がもうオレを忘れていても、オレはまたこの水中花に似たものをお前にかざそう。
そしたらきっとオレと思え」
こんな意味があるようなないような言葉が機関銃のように続き、
突然、演歌とブルースをごちゃまぜにしたような歌を役者が歌い出す。
そのうちに「透明人間」というのが何なのか、ぼんやりとわかってくる。
縛られた内向きの世界ではなく、外に開かれた、とんでもない、自由な、豊かな世界があることが唐十郎の魔術でわかってくる。

1505159fullsizerender 異界に続く唐組の紅テント

状況劇場の時代の役者は一人もいなくなった。
しかし、久保井研の演出は見事。
そして土屋真衣がいい女優になってきた。
唐組の新しい空気を作り出す奇優が出てきてほしい。
舞台に立っているだけでも、観客をひきつけてしまう、不思議な空気をもった役者が出てきたとき、再び唐組は飛翔する。
期待している。

|

2015年5月22日 (金)

お知らせ

現在発売中の「女性自身」にイラク避難民支援の活動が、「武器で子どもを救えない」「テロと聴診器で闘う」などと題して取り上げられています。
フェスイブックなどでも多くの方が賛同してくれています。
今こそ、暴力や憎しみの連鎖を断ち切るために、愛の手を差し伸べる必要があります。
ぜひ、お読みください。
近々、今年度3回目のイラク難民キャンプに行く予定です。
難民キャンプで診療しながら、健康と命と平和について語り、
自分の健康が、命を大切にすることにつながり、それが平和へとつながるという考えを訴えてこようと思います。
みなさんの支援が必要です。
東京の五反野幼稚園からは、JCF支援に50万円のご寄付いただきました。
涙が出るほどうれしいです。
『1%の力』『「イスラム国」よ』(河出書房新社)の応援をお願いいたします。
印税はすべてISに迫害を受けているシリア難民やイラク避難民のために使います。
よろしくお願いいたします。

|

2015年5月21日 (木)

安保法制、慎重な審議を

トルコで開かれたNATO外相会談に日本も参加した。
ウクライナのクリミア半島を今年3月併合する際、「核兵器を準備していた」とプーチンが言っている。
その後もウクライナ東部では、ロシア軍の兵器が提供されるだけでなく、ロシア軍の兵士も隠れるように参加し、住民の煽動を行ったりして、
かつての冷戦に近いような状況が起こり始めている。

それだけではない。
シリアのISや、リビア、アフガニスタンなど15か国、29武装勢力が跋扈している。
NATOのアフガン治安部隊の維持費だけで年間約6000億円かかるという。

NATOは、安倍首相が安保法制を変えようとしていることにつけこんで、
お金や人、武器も出してほしい、と予想どおりの期待を寄せている。
日本は独自で非軍事を貫き、人道支援を行ったほうが日本の立場をよくすると思う。
安保法制が国会で審議されるが、慎重に審議してほしい。

|

2015年5月20日 (水)

ISのある世界を考える(25)

攻防が続いていたイラク西部アンバール県の県都ラマディがついに5/18、ISによって制圧された。
イラク政府軍はすべて撤退したという。
ティクリットではイラク政府軍が勝ったが、その後はISが反撃を強めていた。
ラマディは、バグダッドから100キロの要衝。
街道は、モスルやアルビル、ヨルダンへも続いている。
この地がISに落とされると、しばらくこう着状態が続くだろう。
ISを制圧するのはまだまだ時間がかかりそうだ。


◇お知らせ◇

31日午前8時~「サンデーモーニング」(TBS)に出演します。
ぜひ、ご覧ください。

|

2015年5月19日 (火)

ISのある世界を考える(24)

ティクリットはISから奪還したものの、その周りではISとイラク政府軍やシーア派民兵との戦いは激烈になっている。
特にラマディはひどい。

ラマディはアンバール県の県庁所在地で、バグダッドに近く、スンニ派の住人が多い。
そこがISに制圧され、県庁庁舎にはISの黒い旗が掲げられたという。
そのため、13万人が避難民となり、バグダッド近郊に押し寄せている。

ラマディから逃げた人たちは、バグダッドで「ISの仲間ではないか」と疑われ、差別されている。
恐怖のために、お互いを敵視するようになっているのだ。
この構造を変えないかぎり、ISの思うがままになってしまう。

|

2015年5月18日 (月)

ISのある世界を考える(23)

シリアの反体制派が巻き返しをはかりだした。
反体制派の自由シリア軍はヌスラ戦線と連携し、
シーア派のアサド政権を揺さぶっているという。
どうもスンニ派のサウジアラビアとトルコが反体制派にテコ入れをしているのではないかといわれている。
反体制派は、アサド政権のお膝元であるダマスカス南部のパレスチナ難民地区ヤルムーク地区も一時期、制圧した。
この地区には、友人の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の幹部の清田ドクターが救援に入っている。
国連の機関なので十分に安全に注意していると思うが、
政府と反政府の攻防のあるところに、支援に入るというのは大変なことだと思う。
なんとか早く政治的な解決をはかり、戦争状態を止めてもらいたい。
そして、両方に医療や教育の支援をすることが大事である。
ISが制圧したイラクの大都市モスルにも、イラク政府軍の攻撃が始まるだろう。
また多くの難民が出る。
とにかく難民を助けていくことが急務である。

                 ◇

「日曜はがんばらない」(文化放送)のスポンサーになってくれ、これまでも多くの支援をしてくれていた化粧品とサプリメントの会社「アルソア」の副社長が、緊急支援として100万円を寄付してくれた。

また、福島出身の大越さんという方が東京でコンサートとぼくの講演会を開いてくれ、その利益10万円をJCFに寄付してくれている。
6月になったら、またイラク難民キャンプに支援に行く。
このお金を有効に使って、難民キャンプで健康講演会や、できたら料理教室を開き、巡回診療を続けていきたいと思う。

|

2015年5月17日 (日)

動画「地雷と気化爆弾」

シリア内戦では、危険で残虐な兵器が多く使用され、一般市民が犠牲となっている。
燃料気化爆弾は殺傷力が高く、生き残ってもシビアな障害が残る。
残虐な兵器を買わないように、国連決議が必要だ。

Photo 今年1月、ザアタリキャンプで出会ったイサームさんは地雷で足を失った

地雷は地雷禁止条約があるが、シリアは批准していない。
シリアで農業をしていた青年は、自分の農地で地雷を踏み足を失くした。
JIM-NETでは、日本外務省のNPOを支援する事業から支援をもらい、そうした兵器により障害を負った、ヨルダンのザアタリキャンプや都市難民の人々の機能回復訓練を行っている。
義手や義足づくりは、外務省の支援事業の対象から外れるため、「希望の足プロジェクト」として、鎌田實の本『1%の力』(河出書房新社)の印税などを充ててきた。

「地雷と気化爆弾 兵器が傷つけるもの」という、この動画を見てください↓


気化爆弾や地雷の恐ろしさがわかる。
兵器として使うだけでなく、作ることをやめないといけない。
ISは逃げるときに、地雷を埋めていくという。
戦争が終わった後も、子どもたちが地雷の被害に巻き込まれたりする。
危険で残虐な武器の使用禁止を、世界がすすめなければいけない。

|

2015年5月16日 (土)

キャンドルセレモニー

諏訪中央病院看護専門学校で、キャンドルセレモニーがあり、1年生がはじめて白衣を着た。
去年までは、キャッピングセレモニーといい、はじめてナースキャップをかぶった看護師の卵が、臨床に出て行った。
キャップは、若干であるが感染症のリスクがあるということがわかり、諏訪中央病院ではすでに廃止してきた。
看護学校はナイチンゲール精神を受け継ぐため、セレモニーとして行ってきたが、
今年からはキャンドルという形になった。
専門学校の玄関のところにあるナイチンゲールの銅像に火を灯し、
その火を一人ひとりが受け継いで、病む人たちのために、自分の力のすべてを使うことを誓った。

1505161fullsizerender

150516fullsizerender キャンドルセレモニーで、ナイチンゲール精神を誓う看護師の卵たち

長い間、諏訪中央病院看護専門学校の校長をしてきた。
久しぶりに看護学生から出席の依頼があり、開会のあいさつをし、
「これから、看護のやさしさを学ぶための闘いのはじまり」とメッセージを送った。
この5年間、国家試験全員合格が続いている、まれな学校である。
先生たちの教育が厳しく、行き届いている。
臨床の看護師の先輩たちの指導がいい。
地域の患者さんたちも、看護実習に協力的である。
たいへん恵まれた環境で、看護師を育てることができている。
3年後、立派な看護師になることを祈る。

|

2015年5月15日 (金)

来年は御柱

来年は諏訪大社の御柱の年。
奉納する巨木が切り倒され、氏子たちが燃え始めている。
氏子の数は800人。

3dsc_0121 初夏の花つつじも満開(岩次郎小屋の庭で)

木遣りを歌い、「よいさ、よいさ」と木の皮をきれいにしていく。

その模様を報じる新聞↓
150515fullsizerender_2
いよいよ御柱の幕が開く。
茅野市を含めた諏訪盆地全体が、来年の4、5月を目指して狂い始める。

|

2015年5月14日 (木)

聴診器でテロと闘う(17)

アルビルにいるスタッフと連絡を取った。
4月中旬、ぼくがアルビルを脱出したその日に爆弾テロがあったが、
現在、治安状態は回復。
外出も自由にできるようになり、食事を食べに行けるとのこと。
いまぼくたちの事務所には、14歳の骨肉腫の子が居候している。
ラマディからバグダッドに逃げてきた子だ。
一時、バグダッドの郊外には、ラマディから逃げてきた大勢の人が押し寄せた。
バグダッドではそのなかにISが混じっているのではないかと疑心暗鬼になり、
ラマディから逃げてきた人たちを毛嫌いし、差別する風潮があった。
骨肉腫の子もバグダッドの病院には通いづらいので、ぼくたちが支援しているナナカリ病院で治療することになった。
家がなく、ホテルに泊まるお金もないため、事務所に居候してもらっているのだ。
08img_0403
JIM-NETとJCFのスタッフは今も細かな支援を続けている。
特にいまは、6月に鎌田が行くとき、ダラシャクランとアルビルの難民キャンプで健康講演会を開こうと、準備を着々とすすめてくれている。
できたら、アルビルでは料理教室も開こうかとも思案中。
ぼくたちが支援しているナナカリの仮設診療所のドクターたちがやれるかどうか検討してくれている。

自分の命や健康を大事にすることは、他者の命や健康を大事にすることにつながる。
難民キャンプで健康づくり運動。
気合を入れて、取り組もうと思っている。

|

2015年5月13日 (水)

聴診器でテロと闘う(16)

難民キャンプでは、生活の問題や心の問題を抱えた人たちがいる。
人間関係がギスギスして、ときには殴り合いになったりしているという。
ぼくの手を握る男性は、慢性呼吸不全を患っている。
たばこをやめるようにすすめると、「わかった」と言いながら、
胸からたばこを出して、ぼくに一本すすめて火をつけた。
「まず友だちになろう。たばこを吸った後、先生の言うことを聞く」
本当かどうかわからない。
うまいことを言われた。

15dsc03695

だが、この人たちに無理強いはできない。
何度も、やわらかく言いながら、本人がその気になってくれるのを待つのが大事だと思っている。
厳しい病気も本当の話をしながら、できるだけきちんと治療が受けられるように軌道に乗せる。
慢性疾患の人には、薬を届け続ける。
その繰り返しが、必ず平和へつながると信じている。

11dsc03623

13dsc03621

自分の命を守ることが大事だ。
わがままでいい、利己的な生き物でいいのだ。
しかし、人間は弱い生き物、一人では生きていけない。
自分だけでなく、家族や仲間の命も大切にしたい。
そして、他者の命を大切にすることが広がっていったとき、
必ず憎しみの連鎖は断ち切れる。
本来、宗教が、人間と人間の関係をつないでくれると思っていたが、
ときにその宗教がむき出しに原理に走る。
イスラム原理主義がまさにそうである。
そんなときこそ、命や健康という基本的な視点に立ち返ることが大事ではないか。
自分の健康を自分で守る、周りの人の健康にも目を向ける。
そうすることで、命に対する考え方が変わり、平和への考え方も育っていく。

16dsc03821

これからも「イスラム国」に迫害を受けた人たちに愛の手を差し伸べていきたい。
民族、宗教、宗派を超えて理解し合うことで、この動乱の地にも、安寧が来るはずだ。
その日が来るまで、ぼくは聴診器でテロと闘おうと思っている。

|

2015年5月12日 (火)

聴診器でテロと闘う(15)

骨肉腫になって左腕を切断した男の子がいた。
生きるためにどうしてもせざるを得ない選択だった。
「ISに家や学校を奪われ、今度は病気で腕を奪われた。ぼくに希望はない」と泣いた。
この後もアルビルのナナカリ病院の小児科で、骨肉腫のフォローをしていく必要があることを説明した。

12dsc03642

好きなことは何かと聞いたら、
「サッカー」という。
テントのなかでサッカーをすると、少し元気になったようだ。
みんながはやしたてると、ニコッと笑った。
日本の中田選手は知っているかと聞くと、「知らない」。
「メッシなら知っている」
メッシを連れてくるわけにはいかない。
アルビルに有名なサッカー選手がいる、とキャンプの人たちから言われた。
まるで、その選手を連れてきてほしいと言われているようだ。
だが、どこに頭を下げに行ったらいいのか・・・これから考えたいと思っている。

18dsc03813

22歳の若いお母さんは、両手の指の関節が腫れて痛み、炊事ができないという。
関節リウマチだと説明した。
治りにくい病気だと言うと、涙をぽろぽろ流した。
治りにくいけれど、いい薬がある、痛みはなくなり、炊事もできるようになる。
完全に治らなくても進行を食い止めることができる。
時間をかけて、そう説明した。
こういう患者さんたちを放置せず、できるだけ水準の高い専門医につなげ、
きちんと治療の軌道に乗せること。
そして、精神的なサポートをすること。
それがISに家や家族、故郷を奪われ、なおかつ病気になった人たちを支えることになると信じている。

|

2015年5月11日 (月)

聴診器でテロと闘う(14)

まともな飲み水がないという難民キャンプには、給水車をまわすことにした。
「日曜はがんばらない」(文化放送)の相方である村上信夫さんが、お母さんの名前で100万円を寄付してくださった。
給水車の後部には、JIM-NETのマークがついており、ドホークのある地域をまわっている。

06p1290516

10dscn1182

砂糖がたくさん入ったチャイをもらったが、変なにおいがした。
薬も大事だが、安全できれいな水と豊富な食料が大事である。
そして、人間と人間の関係があればもっと生きやすくなる。
人との絆があるコミュニティーでは、血管がつまりにくくなるという「ロゼット伝説」のように、
健康と命には、絆が大切なのだ。

|

2015年5月10日 (日)

聴診器でテロと闘う(13)

80歳の男性は、モスル近郊で農業をしていた。
ヤジディ教徒。
家族は、ISが攻めてきたときに逃げ、
夫婦は、隣のアラブ人に助けられながら暮らしていた。
隣のアラブ人がモスルに行くというので、一緒についていき、
イスラム教に改宗することを強要され、信仰告白をさせられた。
江戸時代のキリシタン弾圧の、踏み絵のようなものである。

05img_0258

この男性が、精神的な暴力を受けたのは間違いない。
以来、体に力が入らず、抜け殻のようになってしまった。
腰が曲がり、立ち上がる力もなくなったという。
ぼくの手を握り、必死で立ち上がる姿が印象的だった。
ISの肉体的、精神的な暴力によるPTSDをケアすることも、これから重要になるだろう。

|

2015年5月 9日 (土)

カレー、つけめん

JIM-NETのメンバーに差し入れを届けに行き、
帰りに鍋カレーを食べた。
カレーにチーズがかかり、オーブンで焼いている。
うまい。

1504287fullsizerender_2

この前、オヤジさんが亡くなった大勝軒ではじめてつけめんを食べた。
たくさんいる弟子たちがけんかしないよう、それぞれのれん分けし、独立させていると聞き、
えらい人だなと思いながら食べた。
うまい、が、汁が濃くてのどが渇く。
お湯で割ったがそれでも濃かった。
                       ◇
5月11日(月)、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」(8.30~)に出演。
『「イスラム国」よ』をテーマに話します。
ぜひ、お聴きください。

|

2015年5月 8日 (金)

聴診器でテロと闘う(12)

深谷先生という心臓の専門医がいるということが知らていたわけではないが、
心臓の冠動脈疾患や、先天性の心疾患の人がたくさんやってきて、深谷先生もびっくり。
難民キャンプでは、急性の感染症や胃腸障害、高血圧、糖尿病が多いと予想していたが、
循環器疾患が多いのに驚いた。

Img_9351

ストレスが多い生活に加え、肉や脂が多い食事ということも原因かと考えられる。
少しでも散歩して運動する。
肉を1割減らし、野菜を1割増やす。
そうした生活改善を丁寧に呼びかけていく必要がある。

|

2015年5月 7日 (木)

聴診器でテロと闘う(11)

トプサワ難民キャンプには、シリアのコバニから避難してきた人たちが生活していた。
国連の支援がないため食べ物や水の補給がない。
若者たちが近くの市場で、力仕事などをして、わずかな給料をもらっているという。
めまいを訴える高齢の女性がいた。
同行したマルユーセフ病院のアシール医師は、CT撮影など入院検査をしようという意見だった。
それに対して、深谷先生の意見は、大きな病気が隠れているとは思えない、入院検査は必要ないという意見。
鎌田は、本人や家族に意見を聞いた。
本人は、「入院したくない」。
家族は「少し心配。でもお金がないので入院はとても無理」という。

1504219fullsizerender

1504218fullsizerender

そこで鎌田は、もう少し様子をみて、めまいが消えなければ入院検査をしてもいい。
そのとき、かかる経費は支援しよう、と言った。
大事なのは自分たちで決めること。絶対的な方針を出すのはむずかしい。
どれも正解である。
アシール医師がまたこのキャンプに来るので、入院を希望する場合は、病院を紹介してくれることになった。
 

14dsc03685

ここでは、ミルクと紙おむつを配った。
紙おむつは、大王製紙からいただいた。
大王製紙からはそのほかにも400万円の寄付をいただき、現地で購入したミルク代にもなっている。

07p1290562_2

外からはわからないように、衛生用品を女性に渡すと、非常に喜ばれた。

たくさんの応援のおかげだと思っている。

|

2015年5月 6日 (水)

聴診器でテロと闘う(10)

絶望のなかで、希望を見つけた。
「聴診器でテロと闘う」小さな仲間たちと出会ったのだ。
一人は9歳の白血病の女の子シャーマ。
ナナカリ病院の白血病の子どもたちと家族をピクニックに招待した。
公園でピクニックをしておやつを食べた後、みんなで食堂に行って、好きなものを注文した。
子どもたちは大喜び。
貧しく、なかなか食堂でご飯を食べることができないシャーマも、
ひさしぶりの食堂での食事に、とても喜んでいた。
おなかいっぱい食べ終わった後、シャーマの夢は何かと聞いた。
「お医者さんになること」
「私のような病気の子どもを助けるのだ」と言った。
うれしくなってしまった。
「「ダーイッシュ」(IS)に負けない大人になるんだ」とも言う。
かっこいい。
聴診器でテロと闘う仲間が増えた。

1504212fullsizerender

二人目は、生後8か月の女の子。
1月にザータリキャンプを訪ねたとき、ある母子に出会った。
赤ちゃんには、心室中隔欠損が見つかった。
以前、諏訪中央病院で心臓外科をしていた、いま沖縄の病院にいる深谷先生が診断した。
心臓に開いた穴は小さい、自然にふさがる可能性があるので、経過をみていいという説明に、
お母さんは少しほっとしたようだった。
「この子に勉強の機会を与えて、この子をお医者さんにしたい。
人を助ける人になってほしい」

今回、再会し、お母さんに夢は変わっていないか、と聞くと、変わっていないと答えた。

8か月の女の子が無事に成長してくれることを願う。
8か月なのに5000グラムしかない。
母乳の出が悪いので、人工栄養を与えているが、ミルクの飲ませ方にも問題があることがわかった。
ミルクもただ配ればいいわけではない。
次回は、難民キャンプで、ミルクの与え方教室をしようと思う。
三人目は、アルビルの難民キャンプで出会った医学生のザマーハ。
モスル大学の5年生だったが、ISが侵略したため、家族と逃げた。
モスル大学にはもう通えない。
スレイマニアの大学に編入してあと1年学べば、医者になることができるという。
しかし、彼女はあきらめていた。
家にはお金がない。
自分だけが遠く離れたスレイマニアの大学に行けるわけがないという。
その話を聞いたぼくたちは、子どもたちの教育資金を集めようと思った。

1504213fullsizerender

子どもたちに教育の機会をもたらすことは、希望につながる。
銃ではない方法で、テロと闘う人たちが増えていってほしいと願うばかりだ。
                    ◇
これからJCFは子どもたちの教育のための募金を開始する。
『「イスラム国」よ』『1%の力』(河出書房新社)の印税を寄付しているが、
もっと本が売れれば、ここから教育資金に回してもいいと思う。
これらの本を買っていただくか、JCFへの寄付を、ぜひお願いいたします。

|

2015年5月 5日 (火)

鎌田實の一日一冊(238)

「パプーシャ その詩の世界」(ムヴィオラ)
映画「パブーシャの黒い瞳」で描かれた、ロマ初の女性詩人は、
ブロニスワバ・バイスという実在の人物。
書き言葉を持たないロマの女性が、言葉を学び、言葉を操る詩人になった。

Ck

「五月には世界のすべてが美しくなる、何もかもが生きたがる。
緑の草は目を奪い、金色の太陽はわたしたちに呼びかける、森で心をあたためなさいと」
こんな言葉で始まる詩「私は貧しいジプシー女」などを収録。
素敵な詩集です。

|

2015年5月 4日 (月)

かっこいい歌

神野美伽さんのコンサートに行ってきた。
渋谷公会堂に行くのは、43年ぶり。
岡林信康のコンサートに行ったことがある。
神野さんのコンサートは素晴らしかった。
「男船」や「酔歌」「ソーラン節」「座頭市子守歌」など、
ドスの利いたハスキーな迫力のある演歌である。
新曲「風岬」もいい歌だ。
映画「ひまわり」のあの名曲に、日本語の歌詞をつけて歌ったが、実によかった。
「悲恋」もとてもすばらしかった。
どちらも「怨歌」になっている。

1dsc_0001

とにかく何を歌ってもうまい。
この一年、3回ほどニューヨークのライブハウスに立った。
大江千里のピアノと、アントニオ古賀のギターで、おおいに盛り上がった。
テレビ番組で、ライブを成功させるために体を鍛えていたが、
その姿勢もすばらしい。
もともと神野さんの生き方に共感し、かっこいいと思っていたが、
あらためて歌もかっこいいと思った。
8月は名古屋ブルーノートでライブをやるらしい。
今度はジャズを歌うのだろうか、と楽しみにしている。

|

2015年5月 3日 (日)

鎌田實の一日一冊(237)

「医師と行く諦めていた夢が叶う旅」(坂本泰樹著、幻冬舎)
著者は泌尿器科のドクター。
一人でも多くの病気を抱えている人に旅行を楽しんでもらおうと、
フリーの旅行医師の活動を始めた。
「空飛ぶドクター」の名称を商標登録し、神戸のNPO法人の理事になり、
高齢者向けの旅行を支援している。

Photo_2

交換留学生としてアメリカの高校へ留学した経験がある著者は、英検一級。
「語学の達人」を自称している。
海外旅行の経験も豊富だ。
その両方を生かし、海外旅行にも添乗している。
プレスリーのファンという末期がんの患者さんの願いで、プレスリーの故郷メンフィスを訪ねるなど、事例も載っている。
こういうチャレンジングな医師が多くなると、病気があっても、高齢になっても旅ができると思う。

|

2015年5月 2日 (土)

お知らせ

明日5/3の「日曜はがんばらない」(10.0~10.30、文化放送)は、ロックの女王・白井貴子さんがゲスト。
なんとアカペラで歌ってくれる。
さらに5/10の同番組のゲストは、倍賞千恵子さん。
倍賞さんもアカペラで、しみじみとした歌声を披露してくれた。

7dsc_0014


ぼくの突然の無茶ぶりにもかかわらず、お二人とも歌詞もないのに、さっと歌える。
やはり、プロはすごい。
ぜひ、お聴きください。

|

2015年5月 1日 (金)

ソースかつ丼

B級グルメ好きのぼくは、ソースかつ丼も大好き。
写真は、会津のソースかつ丼だ。

1504231fullsizerender

長野県駒ケ根市にもソースかつ丼のお店が十数軒ある。
有名なのは、福井市のまちなかにある自由軒。
このごろ行列ができ、行っても食べられない。
ソースかつ丼はどこでもそんなに変わらないと思うが、やっぱり一番の違いはソースの味だ。
岡山の駅前で食べたソースかつ丼は、ソースがデミグラスソースだった。
厚さも違う。
福井のはキエフカツレツやミラノカツレツのようにたたいて薄くしており、これはこれでおいしい。
駒ケ根のは、厚いので、ぼくにはちょっと重たいが、若い人に好評だ。
会津のはその中間くらいの厚さだ。
行楽シーズン、東北を応援するためにも、会津にソースかつ丼でも食べに行ってみませんか。

|

« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »