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2015年5月23日 (土)

唐組「透明人間」

唐組55回公演「透明人間」を見てきた。
出色の出来栄えだ。
唐十郎の芝居は、言葉が洪水を起こす。
唐が得意とする「水」や「水たまり」というモチーフがちりばめられ、
唐の分裂気味の発想で、世界が閉じたり開いたりしていく。
日本と、中国の福建省が、幻の沼でつながったりしてしまうのだ。
狂犬がいるのかいないのかわからないのに、狂犬病の症状である「恐水幻想」を呼び起こす。
「浮かんでいて、どこまでも逃げていて、そしてまた会うとき、この水中花の誓いを忘れるな。
お前がもうオレを忘れていても、オレはまたこの水中花に似たものをお前にかざそう。
そしたらきっとオレと思え」
こんな意味があるようなないような言葉が機関銃のように続き、
突然、演歌とブルースをごちゃまぜにしたような歌を役者が歌い出す。
そのうちに「透明人間」というのが何なのか、ぼんやりとわかってくる。
縛られた内向きの世界ではなく、外に開かれた、とんでもない、自由な、豊かな世界があることが唐十郎の魔術でわかってくる。

1505159fullsizerender 異界に続く唐組の紅テント

状況劇場の時代の役者は一人もいなくなった。
しかし、久保井研の演出は見事。
そして土屋真衣がいい女優になってきた。
唐組の新しい空気を作り出す奇優が出てきてほしい。
舞台に立っているだけでも、観客をひきつけてしまう、不思議な空気をもった役者が出てきたとき、再び唐組は飛翔する。
期待している。

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