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2015年6月

2015年6月30日 (火)

チョコ缶のデザイン候補

JIM-NETにとって、子どもたちの絵は宝物だ。
イラクの白血病の子どもたちが描いてくれた絵は、
毎年、チョコ募金の缶にプリントされる。
毎年、この缶の絵を楽しみに、協力してくれる人も少なくない。

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来年のチョコ募金の図案の候補作が決まった。
美しい缶になりそうだ。
チョコ募金は、今年の12月1日から開始する予定。
どうぞ、お楽しみに!
そして、ぜひ、協力をお願いします。

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2015年6月29日 (月)

絵や映画でテロと闘う

先週、「世界難民の日に考える中東のいま」が青山学院大学キャンパスで開かれ、
多くのJIM-NETサポーターらが参加した。
いま、世界中に難民が5900万人いるという現状を考えるきっかけになればと思っている。
ワークショップ「つくってみよう中東地図」では、会場のみなさんに参加してもらい地図を作製。
中東への関心や理解が深まると、とても好評だった。

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その後、活動報告をした。
「亀も空を飛ぶ」のクルド人映画監督バフマン・ゴバディは、難民キャンプで子どもたちに映画作りを教えた。
12~15歳の少年少女がつくった短編映画は、まさに子どもたちが見た現実を映している。
子どもたちがカメラを向けると、ISに捕まった少女がつらい胸のうちを話してくれたりする。
包帯をまいて生活している家族を撮った少年もいる。
眼鏡が壊れれば、眼鏡をつくることができずに不自由ななかで生活する、キャンプの生活も描かれる。

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JIM-NETの佐藤真紀事務局長はキャンプに入ると必ず、子どもたちに絵の具やクレパスをかして絵をかいてもらう。
すごい絵がたくさん残り、その一部がチョコ募金の缶になったりする。
ぼくは聴診器でテロと闘うが、佐藤真紀さんは、イラクの子どもたちの絵でテロと闘っている。
暴力が子どもたちに暗い影を落としてる。
その子どもたちに光を当てるには、芸術や文化にふれさせ、傷ついた心をいやす回路をつくる必要があると思う。
暴力で暴力は解決できない。
心に働きかけることが、大切なのである。

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2015年6月28日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(208)

「善き人に悪魔は訪れる」
衝撃のサスペンスドラマ。
息をのむような展開のなかで、最後でもう一度驚かされる。
人間の心のなかにいる獣が暴れると、こんなことが起きるのか。
人間はいいこともできるが、悪魔にもなる。
なかなかやっかいな生き物である。

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殺人鬼と、子どもを守ろうとする母親の熾烈な戦いが息をのむ。
スリラーやサスペンスが好きな方、ご覧ください。
飽きさせません。

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2015年6月27日 (土)

グリーンボランティアのバザー

諏訪中央病院の病院ボランティアの活動は多様で豊か。
なかでもハーブガーデンをつくっているグリーンボランティアたちの自治能力のすごいこと。
活動費を得るためにバザーを開き、自分たちでつくった野菜やジャムを得る。
先日もバザーが開かれ、大賑わい。
とても魅力的なものが並ぶので、患者さんたちもよろこんで応援してくれるのだ。

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ハーブガーデンのリーダー、萩尾エリ子さんは、ハーブの研究家でアロマテラピーのトレーナー。
ハーブとアロマの専門店「蓼科ハーバルノート」を経営している。
緩和ケア病棟の患者さたちから希望があると、病棟でハーブを使ったマッサージなどもする。

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その萩尾さんの本『香りの扉、草の椅子――ハーブショップの四季と暮らし』(地球丸)は、
ハーブのある暮らし方を、美しい写真とともに提案している。
よろしければ、お読みください。

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2015年6月26日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(207)

「ふたつの名前を持つ少年」
戦争が終わって70年。
ドイツ人のペペ・ダンカート監督が実話をもとに作った。
ポーランドのユダヤ人は、約300万人が殺害されたといわれている。
8歳の主人公はたったひとり、ユダヤ人ではないと言い続けながら、終戦までの3年間を生き抜いた。
「アメリカで映画化したら、おもしろくて軽くなる。でも、ドイツで作るといい映画になる」と、
主人公の本人が感想を述べている。
言いえて妙である。

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加害側と被害側の問題はいつでも大きな問題だ。
日本も、中国や韓国と理解し合い、許し合ったりすることが難しい。
もう何回も謝ったではないかと言いたくなってしまうが、被害を受けた側はなかなか忘れられない。
小説や映画などの芸術や文化を介して、難しい心を理解し合おうとする努力が大事なんだろう。
この映画は弱いけれど強い「人間」というものの不思議な力を感じさせてくれる。
生きる勇気を与えてくれる映画である。
戦争がどれほど人の心をむしばんでいくかも、みせてくれる。
美しい映画である。
美しい風景のなかに、絶望と希望が何度も交錯する。
8歳の少年が生きるんだと思いつづけ、生き抜く姿は感動的である。
とてもいい映画です。

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2015年6月25日 (木)

聴診器でテロと闘う(22)

マルチシモーネ診療所にいるぼくたちを、男の子が訪ねてきた。
これまでぼくたちはモスルの小児病院に薬を送ってきたが、その薬で白血病が治った男の子がお礼のあいさつに来たのだ。
今、ぼくたちは難民キャンプなどで支援活動をしているが、それ以前からのつながりに助けられることが多い。

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アルビルのJIM-NETの事務所に、ファルージャから来た肉腫の男の子が一時、間借りしていた。
夜中に激痛に襲われ、暴れ苦しんだ。
すると、深夜にもかかわらず、ドクター・バッサムが駆け付け、痛み止めを打ってくれた。

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このドクター・バッサムの娘ラナさんはダウン症で生まれたが、その後、白血病になり、
JIM-NETが送った薬でよくなった経緯がある。
テロの危険があるなかで、こういう関係にぼくたちは助けてもらっている。

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2015年6月24日 (水)

聴診器でテロと闘う(21)

モスル大学医学部5年生の女学生は、ISによる戦乱状態のため大学に通えなくなった。
あと一年間、スロベニアの大学に通えば、医師になることができる。
彼女の夢を後押しするため、JCFでは募金活動を始めた。
沖縄の久米島の病院長、深谷先生が第一号の寄付をしてくれたので、ぼくたちは、生活費や学費を届けに行った。

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コンクリートがむき出しの建設中のビルに、モスルから逃げてきた家族6人で生活していた。
ぼくたちの訪問を歓迎してくれ、手作りの料理を用意してくれた。
何度も停電になった、暗い晩餐会で、女学生はこう言った。
「やっと夢が達成しそうです。イラクの子どもたちを助けられる医者になりたい」
ISの迫害のなかで負けない生き方はできるはず。
一人でも多くの若ものたちに夢を達成できるチャンスを与えたいと思う。

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2015年6月23日 (火)

聴診器でテロと闘う(20)

6月上旬に、クルド人自治区のドホークやヘンケの難民キャンプに行った。
イラクにはクルド人が700万人住んでいる。
クルド人の多くはスンニ派である。
ペシュメルガという治安部隊が強いため、ISの侵入をぎりぎり防いでいる。
そのため難民が押し寄せ、すでに100万人以上が流入している。
国連が作ったキャンプに入りきれず、建設中の建物などに個別避難している状態だ。
JIM-NETは水が足りないところに給水車をまわしたり、食糧の炊き出しをしたりしながら、
医療的支援も行っている。

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イラク中央政府からの送金が滞っており、病院では増加する患者に対して薬が足りない。
ぼくたちが7年間支援しているアルビルのナナカリ病院でも薬が不足しつつある。
公務員の給与も滞っているという。
問題が山積みのなかで、日本の支援が期待されている。

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2015年6月22日 (月)

健康づくりは地域づくり

陸前高田の健康づくりの会が再開した。
町が完全に流れさてしまった陸前高田は、やっと土木工事が済み、これから建物が建っていく。
だが、本当の復興とは、建物だけの復興ではないはず。
県立高田病院の前院長の石木先生は地元に残り、地域医療を展開してきた。
そこに有志が集まり、人間と人間の関係の復興を一生懸命に模索している。

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先日、その陸前高田の健康づくり再開のために、健康で長生きのための講演会をしに行ってきた。
看護師でケアマネジャーの菅野さんから頼まれて、陸前高田の古い町並みの絵を描いてきた画家の佐藤さんのお宅を訪問した。
慢性呼吸不全で在宅ケアを受けている。
講演会場には、佐藤さんが描いた、津波の前の古い町並みの絵も並んだ。

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在宅ケアのネットワークの人たちも50人ほど集まり、
医師や看護師、薬剤師、PT、OTたちがぼくを囲んでの懇親会を開いてくれた。
温かい人たちである。

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2015年6月21日 (日)

うまいもの

イラクの難民キャンプに行く合間を縫い、陸前高田や北海道、富山に行った。
北海道ではいつものようにスープカレーと札幌ラーメンを食べてきた。

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富山では鮨人というお気に入りのお寿司屋へ。
新幹線が通り、金沢はホテルもお寿司屋さんも予約でいっぱい。
富山駅から車で5分ほどの鮨人も予約でいっぱいだというが、それでも金沢に比べればまだまだ予約がとれる。

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ここの店は親方が全力投球。
どうしたらうまい魚をうまく食べられるか、常に考えている。
哲学のある寿司屋である。
北陸へ行くときには、富山で鮨人に行くのもいい。

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2015年6月20日 (土)

ISのある世界を考える(34)

暴力と貧困はつながっている。
アフリカのソマリアでは、少年兵に月50ドルの給与が渡される。
生きるために戦闘員になっていくのだ。
ソマリアのイスラム過激派アルシャバブも、洗脳と金をキーワードに勢力を拡大している。
そして、もちろんシリアにも少年兵がいる。

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ISがイラク、シリアだけでなく、ナイジェリアやソマリア、リビアに浸透しはじめているのは、
月10億円といわれるISの資金源だ。
これが戦闘員の給料になっている。
財源は、サウジアラビアを中心にした湾岸の富豪からの資金のほか、人質の身代金、石油密売、美術工芸品の転売など。
これらの資金の流れを絶つ必要がある。

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2015年6月19日 (金)

半人前でも十分

イラクの食堂に入ると、まず前菜が出てくる。
これは値段に含まれない。

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これ以外に、ライスに鶏や羊がのったメインディッシュを頼むわけだが、
一般的な日本人の胃袋にとってはかなり量が多い。
2人で1皿くらいでちょうどいい感じだ。
6人で行くと、前菜と3皿のメインデッシュで済むから安上がり。
メニューはどの食堂でも同じようなものが出るので、飽きるといえば飽きるのだが、とてもおいしい。

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2015年6月18日 (木)

ISのある世界を考える(33)

2014年のイラクの子どもの犠牲者は679人と、国連が発表した。
拉致された子どもは1297人いるという。
ぼくらがドホークで巡回診療したとき、ISに7か月間拉致された子どもたちを数十人の単位で見た。
15歳の少女も戦闘員の妻にされていた。
子どもたちの人権が侵害されているのである。

1506097fullsizerender ドホークの難民キャンプの子ども

また、シリアでは少年兵が徴用されているという。
シリアでの子どもの死者数は368人だが、これはシリア政府軍の空爆によるものという。
つまり、アサド政権の空爆で、子どもたちが巻き添えになっているのだ。
一刻も早く、子どもたちが安心して生きることができる世界にしないといけない。

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2015年6月17日 (水)

ISのある世界を考える(32)

イラクでは厳しい抗争が繰り広げられている。
イラク政府軍とシーア派民兵、ペシュメルガの合同軍がISに熾烈な戦いをしている。
交通の要衝ラマディをISから奪還するため、米軍の教育訓練要員が3550人投入され、武器が与えられたが、
米軍部隊が地上戦に参加することはないようである。

1506094fullsizerender イラクのドホークにある難民キャンプの子どもたち

ラマディがどうなるかによって、モスル奪還が実現するかどうか決まってくる。
まだまだ激しい攻防戦が繰り広げられるようである。

続きを読む "ISのある世界を考える(32)"

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2015年6月16日 (火)

ISのある世界を考える(31)

シリアのISにアメリカの特殊部隊が急襲作戦を行い、
ISの幹部を殺害したという。
こととき、奴隷となっていたヤジディ教徒の若い女性が一人いて、解放されたという。
イラクの国会議員でヤジディ教徒のビアン・ダーヒルさんの家を訪問した。
ダーヒルさんは、ヤジディ教徒救出のため、ヘリコプターでシンジャー山に向かった。
そのとき、20人ほどのヤジディ教徒がヘリに捕まりぶらさがったため、ヘリが落下。
彼女も大けがをした。
命がけで走り回っている。
彼女から聞いた話では、まだ2000人近くのヤジディ教徒が拉致されているという。
人権という意味でも、早くなんとかしてなければいけないと思う。
                   ◇
6月上旬にイラクの難民キャンプを訪ね、健康講演会を開いたときの様子が、
共同通信から配信されました。

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2015年6月15日 (月)

今夜 BS日テレ「深層NEWS」に出演します

今夜、BS日テレ「深層NEWS」に、JIM-NETの佐藤と一緒に出演します。
イラクから帰国したばかりの鎌田と佐藤が、最新の現地の状況をお伝えします。

http://www.bs4.jp/shinsou/

2015年06月15日(月)
22:00~23:00

「イスラム国から逃れて ~鎌田實医師の難民支援~」
【ゲスト】鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)
     佐藤真紀(日本イラク医療支援ネットワーク事務局長)
     高橋和夫(放送大学教授)

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鎌田劇場へようこそ!(206)

「雪の轍」
大きな映画だ。
愛や正義、憎しみ、嫉妬などを見事にまな板の上に載せながら、
大河の流れのように静かに語りかけてくる。
トルコのカッパドキアの洞窟を利用したホテルが舞台。
そこで繰り広げられる愛や公平さ、友情の物語。

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カンヌ国際映画祭パルム・ドール大賞を受賞している見ごたえのある作品である。
6/27よりロードショー。

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2015年6月14日 (日)

鎌田實の一日一冊(237)

「家族シネマ」(柳美里著、講談社文庫)
代表作「命」三部作を読んで、すごい作家がいるなと思った。
これは、1997年の芥川賞受賞作品。
家族から解き放たれようと思う主人公は、おそらく著者自身だろう。
壊れてしまった家族と、元に戻そうとする父親。
家族というやっかいな病気の、いいことも悪いこともこの作品に描かれている。

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自由に生きるということはどういうことか、考えさせられる作品である。
最後の母の言葉が胸に迫ってくる。
「これであんたも一人になれたわね。家を抜けられたのよ」
人間はさびしい生き物である。
だから、だれかと一緒にいたいと思う一方で、一人でいたいという思いもせめぎ合う。
縛り合わないような家族でいたいと思いながら、そう簡単なものでもない。
それそれがまず自立することが、大事なのだろう。
柳美里の作家魂が見事に現れている。
柳さんは鎌倉の家を売り、南相馬に引っ越しをしたという。
南相馬に行ったときには、会いたいなと何となく思っている。

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2015年6月13日 (土)

鎌田塾

地域医療を担う若い医師たちが、地域の食生活改善推進委員の方々に指導してもらいながら、健康づくり運動を支えてきた健康食を囲む夕食会。
この「鎌田塾」も、毎年、恒例になった。
今回は、30人以上の若い医師が集まった。

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地域の人たちと共同作業をすることはとても大事だ。
地域の人からSOSが出たとき、専門家としてすぐに応えられるようにするためにも、
「鎌田塾」はお互いの顔を知り、関係を密にする機会になる。
こういう地域医療の活動が充実しているため、諏訪中央病院で研修したい、働きたいという若手の医師は多い。
情熱をもった医師を、地域が育ててくれるのだ。

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2015年6月12日 (金)

お知らせ

6/20は世界難民の日。
難民の保護と援助に対する世界的な関心を高め、UNHCRや国連機関、NGOによる活動に理解と支援を深める日にするために制定された。
今、世界中の難民の数は5000万人といわれている。
貧困と暴力は隣り合わせ。
貧困の一つである難民問題を減らせば、平和に一歩近づくはず。
今月もイラクの難民キャンプを訪ね、帰国したばかりの鎌田や佐藤事務局長のイラク報告と、難民を考えるワークショップにぜひ、ご参加ください。

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世界難民の日に考える「中東のいま」
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◆開催日時 2015年6月21日(日)15.30~18.30(15.0開場)
◆会場 青山学院大学 青山キャンパス9号館2階920教室
◆出演 福田直美、内海旬子(ワークショップ)
      鎌田實、佐藤真紀(現地報告)
◆資料代 500円
◆主催 特定非営利活動法人 日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
    青山大学人権研究会

◆予約・お申し込みは、下記メールフォーム、電話からお願いします。
電話 080-4837-4015/03-6228-0746

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2015年6月11日 (木)

聴診器でテロと闘う(19)

ぼくたちが泊まっているアルビルのホテルに、女の子が訪ねてきた。
モスルからドホークに逃げてきたが、
ドホークで腹部にしこりが触れるということで検査をしたら、
リンパ腺の腫瘍があることがわかった。

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両親は、「お金がなくて、泊まるところもない」と途方に暮れている。
ぼくたちが支援しているナナカリ病院で治療を受けてもらうことにした。
泊まるところはリカア先生を通して、マルチシモーネ教会のテントか仮設の住宅に住めるように手配した。
今、イラクでは国内避難民は320万人。
120万人が国外に難民として逃れている。
そのなかで真っ先に犠牲になるのは、子どもたちだ。

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2015年6月10日 (水)

聴診器でテロと闘う(18)

今年1月、4月と次いで、この6月、イラクの難民キャンプを訪ねた。
重症の病気の人を病院まで連れていき、治療費を負担しているJIM-NETは、
とても信頼されるようになった。

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北イラクのドホークでのこと。
35歳のラシーマさんと4歳のハセイン君に会った。
シリアのラッカにあるISの収容所から逃げてきたという。
一緒に捕まっていた15歳と14歳の女の子、12歳の男の子は安否の確認ができていない。
もしかしたら男の子はISの戦闘員にさせれ、女の子は奴隷として売られていった可能性もある。
2人はラッカからトルコへ、トルコからドホークへ、この日、ようやく帰ってこれた。
病院へ連れて行き、全身の健康チェックをすることになった。

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2015年6月 9日 (火)

人間の心はやっかいだ⑥

日本を代表する電機メーカーのシャープやソニーが大変なことになっている。
ソニーといえば、ウォークマン。
ウォークマンが売れに売れ、世界中の若者からウォークマンを持つことがあこがれになったが、
2000年代になり、アップル社からiPodが出ると、その地位を失っていく。
実はソニーは99年にiPodのようなデジタルオーディオプレーヤーを商品化していた。
しかし、アメリカの映画会社やレコード会社の権利をもつソ二―は、その会社の音楽を売ることで利益を上げるようにしたため、
ユーザーには使いにくかったのである。
モノづくりに専心していれば、おそらくソニーはiPodを作れたのだと思う。
そして、iPhoneを作れた可能性も高い。

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1980年、パナソニック(当時の松下電器)はパソコンの試作機を作っていた。
スティープ・ジョブズは自宅のガレージでパソコンらしきものに格闘していた時期である。
このときに松下電器がパソコンをつくっていたら、世界は変わっていたかもしれない。
経営の神様・松下幸之助がいた時代である。
先駆的で革命的だった経営者の心がどこかで曇ってしまったのだろうか。
あるいは時代の先を見る目がなかったのか。
人間の心がほんのちょっとどっちかへ動くことによって世界は変わる。
人間の心はやっかいで難しい。
「何がなんでも」とか、「世界がほしくなるようなものをつくる」とか、
どこかで向こう見ずな心が必要なときがあるような気がする。
自分を取り巻いている現実の「顔色」をうかがわないで、
未来を見据えながら心を動かすことが必要だと思う。

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2015年6月 8日 (月)

人間の心はやっかいだ⑤

台湾の海峡で原人の化石が見つかった。
日本の国立科学博物館らが国際チームとして調査。
北京原人、ジャワ原人、インドネシアで見つかった小型のフローレス原人に次ぐアジア第四の原人化石だという。
すでに発見されていた3つの原人グループは、ホモ・エレクトスという種。
700万年前、直立二足歩行する人類の祖先がアフリカに出現し、
おそらくアフリカから移動しながら、遺伝的な変化をとげ、それぞれの特徴を備えていったのだと思う。

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ぼくたちの心のなかには、とにかくどこかに移動したいという欲求がある。
沢木耕太郎の『深夜特急』などを読んで、どこかへ行ってみたいという好奇心がある。
ぼくのなかにもこの好奇心がある。
それがチェルノブイリやパレスチナ、イラクやヨルダンに行かせたりしているのではないか。
だれよりも動き回り、自由に飛び回ってきたが、
本当に自分が自由であるのか考え込んでいる。
ずっと「いい子」を演じてきたような感じがしている。
これが本当の自分だったのかどうか、
これが本当の自分の姿だと言っていいのか、考え込んでいる。

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2015年6月 7日 (日)

人間の心はやっかいだ④

1965年、インドネシアでは軍事クーデターが起き、政情不安定のなかで「共産党員狩り」が起きた。
共産主義者により自分たちの国がのっとられると思いこまされた人々が、
ほんの少しクレームを言った人を「共産主義者」とレッテルを貼り、約100万人を虐殺した。

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この大虐殺は、オッペンハイマー監督の「アクト・オブ・キリング」「ルック・オブ・サイレンス」というドキュメンター映画でも知られる。
「アクト・オブ・キリング」は加害者側からとらえ、「ルック・オブ・サイレンス」は被害者側からとらえた。
映画の中で、虐殺をした幹部は「私にも上官がいて命令に従っただけだ」と言い、
加害行為をした農民も「イカれないために犠牲者の血を飲んだ」と悪びれない。
どこかで「良心」が沈黙させられてしまっている。
家族を殺された人たちも、加害者たちも、今も同じ村に住んでいる。
デマやうわさに人間は弱い。
人間は、ある空気を読み、どんなことでもしてしまうことがある。
だからこそ、空気がよどんできたときには、窓を開けて空気を入れ替える勇気をもつことが大切だ。
それが、自分も残虐な加害者にならないために必要なことだと思う。

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2015年6月 6日 (土)

人間の心はやっかいだ③

過激派組織ISの兵士の数はなかなか把握できない。
現在3万人という人もいれば、5万人という人もいる。
元ISメンバーの女性の、「外国人女性150人を説得し迎え入れた」という証言も報道されている。
民主主義国家の「正義」は、強欲な資本主義社会が行き詰まり、宗教共同体の「善」と、不気味なぶつかり合いを始めた。
合理的で科学的なものを追求する資本主義社会に対して、抵抗するものはイスラム原理主義以外にもいろいろある。
でも、お互いへの寛容さが必要である。

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とを聞かないシーア派に暴力を加えている。
宗教共同体の「善」がすべてになり、どんな暴力を使っても許されると思い込んでしまっている。
ジハードで人を殺しても、あるいは自分が殺されても、
自分は天国に行けると信じてしまう。
信じ込んでしまうと、相手の身になることを忘れてしまう。
ぼくらの心はやっかいだ。

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2015年6月 5日 (金)

人間の心はやっかいだ②

地下鉄サリン事件で17年間逃亡していた元オウム信者の高橋克也。
一審で無期懲役が言い渡された。
彼は地下鉄サリン事件以外にもVX襲撃事件や仮谷さん監禁致死事件など、いくつもの事件にかかわっている。
彼の心のなかも闇である。
今も教祖である松本死刑囚を「グル」と呼んでいる。
17年間逃げながら、一人で修行を続けていたという。

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高橋被告は一審裁判の最後で、意見陳述をした。
「かかわってしまった一連の事件はなぜ起きたか。
自分はいま何をしなければならないか。
その解答を探すために事実と向きあう」
これだけの事件を起こし、たくさんの被害者が今も苦しんでいる事実を知りながら、
未だに自分探しをしているようなところがある。
これでは被害者たちは納得できないだろう。
オウム真理教のなかでも犯罪にかかわった幹部とは違い、彼は目立たず、下級の兵士のような役割で犯罪にかわっていたようである。
一度受けた洗脳はなかなか解けないのだろうか。
人間の心は闇である。

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2015年6月 4日 (木)

人間の心はやっかいだ①

名古屋で77歳の女性が殺害された。
殺害の仕方は、残虐である。
頭を斧で殴り、マフラーで首を絞めている。
殺人容疑で逮捕された女子学生(19)はかつて、中学の同級生や高校の隣に座る男子生徒にタリウムを飲ませたと供述している。
少年はタリウムの後遺症で、視力が極端に低下してしまった。
1997年の神戸連続児童殺傷事件は記憶に新しい。
犯人は「酒鬼薔薇」を名乗り、被害者の少年の頭部を切り取って中学校の正門前に置いた。

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この19歳の女子学生も、表面上はふつうの大学生であった。
人間の心のなかには、大なり小なり獣がいる。
自ら生命体として生き延びるために、ぼくたちの祖先は闘ってきた。
その闘うという感覚が、妙な形で残っているのかもしれない。
人間は、信じられないほどやさしく、自分以外の人のために何かをすることができる反面、
残虐な行為を働く。
突然、心の中の獣が暴れるのである。
人間の心の闇に光を入れ、
周囲の人たちを傷つけず、本人の人生も台無しにしないようにするためには、
どうしたらいいのか考えている。

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2015年6月 3日 (水)

ISのある世界を考える(30)

バグダッドで2つのホテルで爆弾テロがあり、ISが犯行声明を出した。
市民が10人が亡くなったという。
シリアのパルミラ遺跡では、アサド政権寄りとみられる約20人を処刑したとか。
ISの残酷な行為は依然、続いている。
米国で対テロ訓練を終えたタジキスタンの司令官がISに合流したという。
ISの吸引力はまだあるようである。
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ISが勢力を盛り返す一方で、比較的治安のよいクルド自治区に難民が押し寄せてきている。
その数100万人以上。
キャンプを作っても作っても対応しきれない。
70万人は建設中のビルなどに分散して生活している状態だ。
クルド自治区は、イラク政府からの財源が滞っている。
石油価格の暴落も、イラクにとっては痛手になっているようだ。

クルド人は世界に3000万人いるといわれ、イラクには700万人が生活しているといわれる。
フセイン時代には迫害され、1988年、毒ガスによりハラブジャ市民5000人が虐殺された。
クルド人の多くはイスラム教徒であり、スンニ派も多い。
ヤジディ教徒もいる。
ぼくたちの事務所は、クルド自治区のアルビルにある。
この地域の難民を支援し、なんとかあたたかな血を通わせたいと思っている。

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2015年6月 2日 (火)

安保法制国会、慎重な審議を

慎重に丁寧に審議してほしい。
「存立危機事態」「攻撃切迫事態」「重要影響事態」など、
定義があやふやなものがありすぎる。
定義があいまいなほど、時の政権により、勝手自在に解釈されてしまいそうな気がする。
日本はむしろ「永世中立国」のようなポジションで、戦争しない国を売り物にし、
どこかで戦争が始まったとき、戦争を止めさせるメッセージを出せる国になったほうがいいと思う。
そういう国になれる、いちばんの候補は日本だ。
日本は70年間、戦争をしていない。
広島、長崎で被曝し、戦争の苦しみはよくわかっている。

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今国会で「国際平和支援法」を通して、他国の軍隊の後方支援のために、自衛隊をどこにでも派遣できるようにすることが本当にいいことなのか。
日本はアメリカと共同歩調をとることで、抑止力になると考えているようだが、はたしてそれほど効果はあるのだろうか。
日米防衛協力ガイドラインには、尖閣有事、米軍は後方支援にまわると協定が結ばれている。
アメリカは中国にプレッシャーをかけたいが、中国がアメリカの出方をみるために尖閣諸島にちょっかいを出したとき、本当にアメリカが体をはって守ろうとするかは怪しい。
韓国との問題もしかり。
日韓はもっと仲良くできるはず。
中国と韓国が協力して日本叩きをしているのはとてもまずい。
外交力で勝負してもらいたいものだ。

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2015年6月 1日 (月)

想像してください

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「振り返ってみたください、歴史を。
人間は何度も何度も残虐な傷つけ合いをしてきました。
大きな戦争もしてきました。
戦争になると憎悪が募って、市民が市民を傷つけたりしてきました。
地球が震えています。
球体の中に憎悪と悲しみがあふれ出し崩壊寸前です。
不必要な血が流れ、溺れることのない涙があふれています」

この詩は、『「イスラム国」よ』(河出書房新社)のまえがきにを書いたもの。
ジョン・レノンの「イマジン」を聞きながら旅をして、イメージしたものだ。
過激派組織「イスラム国」のことを書いた本はたくさん出版されているが、
なかでも、この本はまったく毛色が違う。
なぜ「イスラム国」が生まれてきたのか。
本当に「イスラム国」を無くすにはどうしたらいいのか。
人間の生き方や心に光を当ててみた。
もちろん、自分の心にも光を当て、自分の心のなかにいる獣についても書いた。
今を生きているすべての人にとって、どんな発想の転換が必要なのかを書いた。
それは日本人の生き方のヒントになるはず、と信じている。
たくさんの人にこの本を読んでもらいたい。
写真を見てもらうだけでも価値がある。
JIM-NETが支援活動を続けるなかでかかわった子どもたちの笑顔、ときには悲しい顔が出てくる。
遠い国のことではなく、同じ血が流れる人間世界に起きていることが感じられると思う。

Photo

『「イスラム国」よ』の印税は、「イスラム国」に迫害された避難民の支援のために使われます。
ぜひ、ご協力をお願いいたします。

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