鎌田實の一日一冊(238)
「無意味の祝祭」(ミラン・クンデラ著、河出書房新社)
フランスで数十万部突破のベストセラー。
30か国で翻訳されている。
ミラン・クンデラは「存在の耐えられない軽さ」で有名な作家である。
エスプリがよく利いている。
ショーペンハウエルやスターリン、フルシチョフが出てきたりする。
人生に意味なんかない。
人生の本質は無意味で、その無意味を愛さなければならない。
人生はなんでもありと考えていい。
無意味だから、お祭りのように楽しく生きてもいい。
一回だけの人生だから。
今回はおちゃらけたクンデラが肩の力を抜いて、政治や歴史を茶化している。
ちょっと面白い本である。
1968年プラハの春。
脳外科医と2人の女性の三角関係を描きながら、自由を叫ぶプラハの春のなかで、
ソ連の戦車軍団がやってきて、彼らの人生が翻弄されていく。
外科医を愛してしまったテレーサのセリフ。
「人生は私にはとても重いのに、あなたはごく軽いのね。私、その軽さに耐えられないの」
ノーベル文学賞を受賞した南米の詩人ネルーダと同じようにクンデラは、愛を語らせるとうまい。
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