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2015年7月21日 (火)

鎌田實の一日一冊(239)

「抱く女」(桐野夏生著、新潮社)
直木賞作家であり、江戸川乱歩賞、泉鏡花賞などたくさんの賞を受賞している桐野の最新作。
1972年9月から12か月にかけての吉祥寺を舞台にした物語。
自由すぎるなかで、どう生きていいかわからなくなっている主人公、おそらく作者自身なのだと思うのだが、
大学の同級生に次々に抱かれても、麻雀をしても、ジャズ喫茶に入り浸っても、どこにも居場所がなかった女性が、
ジャズのドラマーと恋に落ちる。
激しい内ゲバで実の兄が殺される。
そんな状況のなかで、一人の女性の生き直しが始まっていく。
アレン・ギンスバーグやオスカー・ピーターソンが出てきたりする。

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1972年は、ぼくは医学部の4年生だった。
この小説に描かれる、数年前の吉祥寺をよく知っている。
1968年前後、都立西高に通っているとき、吉祥寺や西荻窪がぼくの遊びのホームグラウンドだった。
この本を読みながら、青春時代を思い出した。
家族から離れていく小説である。
人間の自由とは何か、考えさせてくれる。
一人で生まれて、一人で死んでいくことにこだわっているぼくにとっては、自分の人生を考えることができた。
ぼくはこの小説を面白く読んだが、小説そのものがいい出来栄えかというと、そうでもなさそうだ。
本読みの人には物足りないかもしれない。

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